理学療法ジャーナル Vol.57 No.10
2023年 10月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 ACP──個人の人生史を尊重し受け入れる

 本特集では,ここ数年で頻回に耳にするようになった「ACP」について,さまざまな視点,疾患,立場からまとめていただきました.近年,理学療法士が長期にわたって患者と深くかかわる機会が増えましたが,人生の最期にかかわることはまだまだ経験不足です.本特集で「患者一人ひとりの刻一刻と変化する意思に寄り添い,日頃の話し合いを通して価値観の共有を図るプロセス」であるアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)について理解を深め,生活機能を支える理学療法士の存在意義を議論する機会にしていただきたいと思います.

ACP(Advance Care Planning;アドバンス・ケア・プランニング)──より豊かな医療者-患者関係を築くための実践のすすめ 木澤義之
 ACPとは,これからの病状の経過に備えて,本人の価値観を今後の治療,ケアの内容,生活などに反映させるための話し合いのことを指す.ACPは意思決定能力が十分でないときに,本人の意向を家族などが代弁できるように,家族などとともに行われることが望ましい.また,その話し合いはバッドニュースを含むことが多いため,本人の準備状態に応じて行うことが重要である.

理学療法倫理とACP 堀 寛史
 理学療法を哲学・倫理学として捉える場合,常に当事者性の課題について考える必要がある.それは物語性のある自己をもつ主体としての人間(対象者)を考えることである.ACPに際して,医療従事者として意思決定に関与する際には,実在論と構築の哲学的要素を事前に理解し,結論を急がず,対象者自身の主体性から答えが出るのを待つことが重要である.

がん患者のACPと理学療法 上野順也
 昨今,がん患者の増加には目を見張るものがあり,がん患者やその家族の生き方を支えるうえで,ACPが重視されるようになってきた.がんとともに生きる,治療を選択する,最終段階を見据えどう生きていきたいかを決定する.さまざまながんの段階でACPは活かされる.がん医療を受けてよかったかは患者本人次第である.これは,個々人により変化することを理解し,医療者は,本人が言語化した「意向」を大切にしたい.本稿では,がん患者のACPと理学療法について記述する.

心不全患者のACPと理学療法 阿部隆宏
 心不全は急性増悪による入退院を繰り返しながら徐々に治療抵抗性へと進展する.患者は経過のなかで,さまざまな身体的・精神的苦痛を経験し,そして治療やケアに対する選択をしなくてはならない.理学療法士をはじめとする医療者は基本的緩和ケアにおいて,常に双方向のコミュニケーションを図り,ニーズに応じた介入と選考を支援することが重要である.本稿では心不全におけるACPをはじめとした基本的緩和ケアについて概括する.

慢性呼吸器疾患患者のACPと理学療法 川越厚良,他
 非がん性呼吸器疾患患者の終末期は,予測不能な増悪や回復があるため判断が難しく,ACPは診断された日から早い段階で行っていくことが望ましい.呼吸リハビリテーションは患者とコミュニケーションを図る重要な機会となり,緩和ケアと同一線上にあるとして,ACPを導入・継続するための主要な柱となる.終末期においては,「症状の緩和」を念頭に,患者個々の思いに配慮した呼吸器疾患特有の手技・動作指導が求められる.

急性期病院におけるACPと理学療法──救命救急センターでのACP 齊藤 彬,他
 昨今,医療業界のなかでACPが急速に広まっている.重症患者が入室する救命救急センターや集中治療室では“救命”された患者以外にも,終末期医療が必要な患者が一定数存在する.救命救急・集中治療にかかわる医療従事者にも終末期医療を見据えた知識が必要である.救命救急センターで理学療法士もチームの一員としてACPを理解・実践するために,用語の整理を行い理学療法士の役割について概説していく.

在宅医療におけるACPと理学療法 中田隆文
 在宅高齢者の在宅医療は人生の終末期が焦点となりACPは重要となる.理学療法士は身体機能を維持・向上させ,さらなる障害予防,症状緩和,活動参加の実現の鍵を握る専門職で,その自覚が必要である.対象者の特性を踏まえて信頼関係を築き,理学療法の専門性を活かして予後予測し,医療・介護連携において役割を果たし,ACPに関して経験と実績を積み重ねることが求められている.

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特集 ACP──個人の人生史を尊重し受け入れる

ACP(Advance Care Planning;アドバンス・ケア・プランニング)──より豊かな医療者-患者関係を築くための実践のすすめ
木澤義之

理学療法倫理とACP
堀 寛史

がん患者のACPと理学療法
上野順也

心不全患者のACPと理学療法
阿部隆宏

慢性呼吸器疾患患者のACPと理学療法
川越厚良,他

急性期病院におけるACPと理学療法──救命救急センターでのACP
齊藤 彬,他

在宅医療におけるACPと理学療法
中田隆文


■Close-up NICU
NICUと医療安全
守岡義紀

NICUの個別発達ケア
藤本智久

NICUにおける予防的視点──早産児における位置的頭蓋変形の予防
内尾 優


●とびら
1cm上をめざして
中島 愛

●単純X線写真読影達人への第一歩 7
胸部大動脈瘤
中尾周平,他

●インシデント,ヒヤリハットから学ぼう 4
ベッドサイドにおける転倒・転落インシデントレポートと転倒・転落予防策
射場靖弘,他

●難しい症例のみかた 4
10歳女児の環軸椎回旋位固定に対する理学療法
西川正一郎

修正大血管転位症,重症心不全に対し植込み型補助人工心臓を装着した1症例──治療目標をどう設定するか?
天尾理恵

●中間管理職の悩み 4
部門発展のために,管理職は何をすればよいのでしょうか?
[回答者]大垣昌之

●臨床実習サブノート 臨床実習で技術のステップアップをめざそう 7
治療技術① 関節可動域運動
伊藤彰良

●報告
関節可動域の目測精度における理学療法士の臨床経験年数による比較
仲山 勉,他

広範囲肩腱板断裂に対する半腱様筋腱・薄筋腱移植術後の理学療法とその治療経過
俵 伊吹,他

●症例報告
成長期の陸上選手に生じた両側第4腰椎椎弓根部疲労骨折の1例
竹内章悟,他

●卒業論文のひろば
半腱様筋の伸張低下が下肢伸展挙上の制限に影響する
木村美月,他    

●私のターニングポイント
人との出会いで変わった人生の軌道
松田直樹

●My Current Favorite 19
Social networking service(SNS)による情報収集と情報発信
平塚健太

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