BRAIN and NERVE Vol.75 No.9
2023年 09月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 特集の意図
  • 収録内容

開く

妊娠中には神経疾患の病態の変動が生じるだけではなく,治療薬の選択,変更など医療者が注意を払わなければならない問題が多くある。本特集では主な神経疾患を中心に,プレコンセプション・ケアの進め方,妊娠における病態変化,治療薬の選択や投与を踏まえたマネジメントにおける注意点などをまとめていただいた。また,向精神薬を服用する妊産婦への対応,重要な課題となりつつある着床前診断についても取り上げている。産婦人科との連携を図りながら,妊娠・出産という大きなライフイベントに寄り添いたい。             

妊娠・授乳中の薬剤動態と安全性評価  藤岡 泉 , 村島 温子
妊娠中・授乳中であっても薬剤を投与するか否かは,リスク(副作用)とベネフィット(効果)のバランスをみて判断される。当該領域ではリスクばかりが強調されがちだが,慢性疾患合併妊娠では,疫学研究で安全性が評価されている薬剤,薬剤の特性からリスクが考えにくい薬剤を使用し,原病がしっかりコントロールされている状態で妊娠することが良好な妊娠転帰を得るための必要条件である。基本的考え方を中心に解説する。

妊娠とてんかん  木村 唯子 , 岩崎 真樹
女性のてんかん患者では,妊娠前から内服調整や葉酸の補充が求められる。催奇形リスクの低い抗てんかん薬を選択し,発作のコントロールに必要な最小限の投与量を目指す。また,妊娠に伴って発作頻度が変わる可能性や自然分娩に向けた対応,抗てんかん薬の内服下でも授乳が可能であることなど,適切な情報提供も重要である。産科や精神科など必要な診療科と連携し,安心した環境で妊娠・出産が迎えられるよう調整を図る。

妊娠と脱髄疾患およびその類似疾患  清水 優子
代表的な自己免疫性脱髄性疾患である多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)と鑑別疾患である視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD)は,女性が多く罹患し,妊娠可能な年代に発症する。妊娠可能年齢の患者では妊娠を念頭に置き,プレコンセプションケアと母胎への影響を考慮し,治療を選択しなければならない。本論では,MSとNMOSDの妊娠合併の特徴,疾患修飾薬およびB細胞治療をはじめとする生物学的製剤に関する最新情報の概要を述べる。          

妊娠と脳血管疾患  平野 照之
妊娠は,凝固異常,妊娠関連ホルモン,母体の血行動態,血管壁の変化から脳血管疾患のリスクとなる。脳血管障害は妊産婦死亡原因の14%を占める。日本産科婦人科学会の調査では,脳出血,くも膜下出血,脳梗塞,脳静脈血栓症,子癇・高血圧性脳症が多く渉猟された。妊婦では可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)や後方可逆性脳症症候群(PRES)を発症することがあり,両者の合併も多い。妊婦の破裂脳動脈瘤は早期の外科的治療が望ましい。

妊娠と頭痛  清水 利彦
前兆のない片頭痛は妊娠期間において改善する。これは内因性エストロゲンの持続的上昇と変動の欠如によるとされている。一方,前兆のある片頭痛では視覚症状などの前兆が出現することが報告されている。片頭痛患者では,妊娠中に妊娠高血圧や子癇前症を生じるリスクは健常者と比較し有意に高い。このため頭痛診療において片頭痛を有する妊婦は心血管系疾患発症の高リスクであることを認識する必要があると考えられる。

妊娠と神経筋疾患  水地 智基, 三澤 園子
免疫性または遺伝性神経筋疾患を有する女性が妊娠をすることがしばしばある。免疫性疾患,遺伝性疾患ともに妊娠中に増悪する可能性がある。妊娠中の疾患活動性コントロールは,妊娠転帰に関わる重要な要素であり,リスク・ベネフィットを勘案して症例ごとに治療薬を検討する。近年,生物学的製剤や核酸医薬品などの新規治療薬が次々と開発され,多くの患者が恩恵を受けているが,妊婦に対する安全性のエビデンス集積が課題となる。

妊産婦と向精神薬  寺嶋 彰子, 小笠原 一能, 尾崎 紀夫
妊娠を希望する女性に対しては,将来の妊娠に向けて事前に薬剤調整を行うことが望ましい。妊娠判明時に向精神薬を内服していた場合,一部に重篤な催奇形性などの影響が指摘されている薬剤もあるが,急激な中止は精神症状の悪化を招く可能性が高く,深刻な結果をもたらすこともある。このため患者・家族と双方向的な情報共有を重視しながら,慎重に減薬・変薬を行い,精神症状を注意深く観察することが必要である。

着床前診断と脳神経疾患  山田 晋一郎, 勝野 雅央
新しい重篤性の定義の下に,単一遺伝子の変異を原因とする遺伝的素因がある夫婦に対して罹患児の妊娠を回避する目的で行われる重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(preimplantation genetic testing for monogenic disorder/single gene defect:PGT-M)の申請および審査が開始された。PGT-Mの対象となり得る神経筋疾患においては,近年急速に治療薬開発が進んでいることから,その適応をめぐっては技術的・社会的・倫理的観点から十分な議論が必要であると同時に,脳神経内科医が主体的に関わっていくべき課題である。

開く

医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 妊娠と神経疾患

妊娠・授乳中の薬剤動態と安全性評価
藤岡 泉,村島温子

妊娠とてんかん
木村唯子,岩崎真樹

妊娠と脱髄疾患およびその類似疾患
清水優子

妊娠と脳血管疾患
平野照之

妊娠と頭痛
清水利彦

妊娠と神経筋疾患
水地智基,三澤園子

妊産婦と向精神薬
寺嶋彰子,他

着床前診断と脳神経疾患
山田晋一郎,勝野雅央


■総説
「社会的苦しみ」としての戦争トラウマ
中村江里

未診断疾患イニシアチブのこれまでの成果と将来像
鈴木寿人

■症例報告
高齢者キアリI型奇形の1手術例
佐竹洸亮,他


●医師国家試験から語る精神・神経疾患
第9回 フィッシャー症候群の診断根拠を述べることはできますか?
古賀道明

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。