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脳と頭蓋底の血管系アトラス

臨床解剖のバリエーション

監訳:寳金 清博
訳者代表:中山 若樹

  • 判型 A4
  • 頁 304
  • 発行 2018年03月
  • 定価 19,440円 (本体18,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03457-9
脳血管解剖のリアルがここにある!
脳神経外科医、特に血管内治療を専門とする医師にとって、脳血管解剖を熟知しておくことは必須である。本書は何百にものぼる実際の解剖例に基づき、脳と頭蓋底の神経血管解剖の多種多彩なバリエーションを呈示したアトラスの日本語版。通常の解剖書には記載されていない様々な血管構築のパターンやバリエーションを、豊富な解剖写真・イラスト・臨床画像を通して学べる。実臨床で必ず役に立つ、真実の脳血管解剖がここにある!
序 文
日本語版の序(寳金清博)/(Walter Grand)/はじめに(Walter Grand)


日本語版の序

 『Vasculature of the Brain and Cranial Base─Variation in Cl...
日本語版の序(寳金清博)/(Walter Grand)/はじめに(Walter Grand)


日本語版の序

 『Vasculature of the Brain and Cranial Base─Variation in Clinical Anatomy(2nd Edition)』(Thieme,2016)が日本語に翻訳され,『脳と頭蓋底の血管系アトラス─臨床解剖のバリエーション』として出版となった.初めてこの領域の専門書を手にする先生方も,本書を数頁めくれば,その素晴らしさをすぐに実感されるはずである.
 ただ,本序文であらためて,本書の卓越性を述べる責任が私にはある.私と同世代の脳神経外科医には説明のいらない自明なものであるが,若い読者のために,その理由をここで述べておきたい.

 私が脳神経外科医になって最初に購入した専門書は,「Radiology of the Skull and Brain」のシリーズであった.これは,言うまでもなく,Thomas H. Newton先生とD. Gordon Potts先生による歴史的な名著であった.私の世代のほとんどの脳神経外科医は,この「ニュートンの血管撮影の本」をバイブルとしてきた.このバイブルは,1974年に出版された.私がこのNewton & Pottsを手にしたのは1979年であり,出版からまもなくの頃であった.それ以後,私は,Newton & Pottsを上回る血管撮影の本は世に現れないと確信していた.
 その確信がよい意味で間違いであったことを証明したのが本書である.Newton & Pottsの偉業から実にほぼ半世紀を経て,本書は出版された.こうした画像診断の科学は,ゲノムなど新しいテクノロジーの影響を受けない学問領域である.したがって,圧倒的な名著が出ると,新しい画像診断のイノベーションが起こらない限り,その著書を上回るものを世に出すことは極めて難しいことになる.
 Newton & Pottsの偉業は依然として燦然と輝いている.しかし,脳神経外科医や神経放射線診断を専門とする放射線科医にとって,本書はNewton & Potts以上に臨床的で,実用的である.本書は,ベッドサイド,手術室,あるいは日常のカンファレンスで,必要十分で正確な知識を提供してくれる.
 その点では,新しい時代の脳・頭蓋を扱う脳神経外科医にとって,新しいバイブルの出現と言っても過言ではない.
 特に,頭蓋底に関する美しい写真やイラストは,他の専門書では必ずしも理解が容易でない外科・手術解剖と血管の関係の理解を可能にしてくれる.さらに,臨床解剖では1人として同じ血管系がないことは自明であるが,臨床の科学として明確なバリエーションのパターンを分別している本書には,驚嘆すべきものがある.

 もう1つ,本書がNewton & Pottsと比して優れている点は,やはりそれが日本語による翻訳である点である.こうした専門書を母国語で読めることは,利用者にとって大きな魅力である.時間の節約,理解度の優位性の点で,日本語訳となった本書は,日本語訳のないNewton & Pottsとは一線を画している.本書は,中山若樹講師を中心とする北海道大学脳神経外科のグループによって翻訳された.短期間に集中的な力を注ぎ込んで,本書は完成した.そのエネルギーの大きさには,同じ教室の一員ではあるが驚いている.ただひょっとすると,原著を翻訳する作業そのものが,脳神経外科医である翻訳者たちにとって,知的興味を刺激するものであったかもしれない.本書の監訳者として,この機会をご紹介いただいた医学書院と担当の医学書籍編集部 飯村祐二氏には深く感謝するものである.

 本書は,約300頁のボリュームをもった専門書である.それだけに,頚部から脳底部,頭蓋内の血管系を中心とした画像診断,臨床外科にかかわる必要かつ十分な情報が,本書1冊で完全にカバーされている.
 しかし本書は,先生方の本棚ではなく,先生方の日常臨床の場に常備していただきたい.カンファレンス室,ベッドサイド,手術室に置いていただき,目の前の患者さんのために役立つ知識の整理とレベルの高い議論に役立てていただけば幸いである.

 2018年2月吉日
 寳金清博




 この第2版は,初版と同様に,脳と頭蓋底の何百もの人体解剖に基づくものです.それは私の40年にわたる病理解剖学における神経血管解剖研究の,個人的な集大成です.
 しばしば,非常に経験豊かな脳神経外科医でさえ正確な解剖には自信がなく,また神経放射線科医も血管造影フィルム上での複雑な血管系には自信がないことがあるでしょう.これが,まさにポイントです! イラストや写真は,脳神経外科医にとっての手術のビジョンを広げ,神経放射線科医,神経血管内治療医,神経内科医の感性を,より鋭いものにしていくことでしょう.
 神経血管解剖学領域において,血管の分岐構造に関するバリエーションほど興味深いものはありません.非常に数多くの脳血管のバリエーションを集積したのちですら,同じ血管は1つもないということがいえると思います.より細かくより微細に脳血管を観察すればするほど,様々な個体差が発見されます.本書では,脳と頭蓋底の血管系のバリエーションを分類整理するにあたって,明快さを担保するために,やむなく多様なバリエーションを単純化しなければならなかったことをお断りしておきます.
 なおこの第2版における画期的な改訂として,各章の終わりに神経血管内治療に関する事項を追記しました.

 Walter Grand, MD
 Senior Author


はじめに

 この第2版では各章の終わりに神経血管内治療に関する事項が添えられており,これにより解剖学的アトラスに臨床的な局面が加えられたことになる.これは,Adnan H. Siddiqui博士とJ Mocco博士の多大なる神経血管内治療経験に基づくものである.また初版におけるPaul Dresselによる血管系バリエーションに関する貴重な具体例のほとんどが,この第2版にも引き継がれている.
 第2版では,解剖学的写真は,より最新のデジタル機器を用いた処理によって大いに改善されている.初版で用いられていた解剖学的写真のいくつかは,改良版に置き換えられている.そして可能な限りカラー写真を用いた.これも初版からの改善点である.
 微小血管解剖の基礎とバリエーションが,臨床神経科学で研鑽を積むうえでの基盤であることは,私の変わらぬ堅固な信念である.脳神経外科学,神経学,神経放射線学と神経血管内治療に携わる医師と学生にとって,診療を行うにあたり神経血管解剖をマスターすることは必須の条件である.外科解剖学は,手術中や検査処置室で学ぶものではない.外科解剖学を学ぶことには忍耐が必要で,また反復を必要とする.しかしそれが臨床に反映されたとき,人は自らの知識に歓喜するはずである.
 第2版においても,私は頻度(%)の言及は回避することにし,「しばしば」,「時々」,「まれに」といった用語にとどめるようにした.なお,血管の正確なサイズは図(イラストや写真)の中には記載されていない.そのため第2版では,付録1としてアトラスにおける個々の血管の相対的な大きさの一覧を掲載した.
 図の倍率は実際の大きさとは異なる印象を与えることがあるが,各血管の相対的な大きさや他の構造物との位置関係は同一のままである.それを確認するべく手術で血管を計測することは,あまり一般的ではない.通常,脈管バリエーションの各シリーズは,少なくとも20例,場合によっては100例もの解剖事例に基づくものである.いくら反復して症例を重ねようとも,常に何かしら1つのバリエーションが見つかるものである.物事には時間と忍耐と考証がなければならない.
 写真はある状況下であればよいものであるが,それに基本的なイラストが付属していることが必須である.イラストなしで理解の難しい高解像度の写真ほど苛立つものはない.詳細なスケッチに時間を費やすことを厭わず,現実と認識の“ギャップ”を埋めることは,学習プロセス(付録2)の各過程において,何かしらの解剖学的知見を得ることにつながる.
 血管解剖に取り組むにあたっては,脳と頭蓋底の血管系の枠組みである脳と頭蓋底の正常解剖も勉強しなければならない.脳や頭蓋骨の単純な観察だけでなく,頭蓋骨の孔や縫合,脳回や脳溝に至るまで,放射線学的および解剖学的な文献レビューも大切であろう.初版に引き続き第2版においても,これらの基本的な事項は再び示されている.MRIは,実際の脳や頭蓋標本を見ることの代用にはならない.
 第2版においても,血管構築のパターンやバリエーションに注目することを基本としている.しばしば,特定の血管分岐には名前がない.バリエーションが非常に複雑で多様な場合には,特定の血管に名前を付けることにする.多くの解剖書は,バリエーションを考慮に入れておらず,主幹動静脈の特定の分岐に無理やり名前を付けようとしている.しかしバリエーションに関する理解は,特定の血管にラベルを付けるのと同じくらい重要である.
 イラストは,血管造影の投影でできるだけ正確に反映するよう留意した.第2版でも,イラストはたいへん素晴らしい芸術的才能をもつPaul Dresselの力量に依存している.彼は元のイラストと同様に今回も非常に注意深く努力してくれた.
 初版におけるイラストをさらに発展させるため,第2版発刊までの間に,さらに多くの死体脳解剖が筆頭著者によって行われた.この莫大な解剖は,ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部および生物医学部と,Raymond Dannonhoffer博士のサポートなしでは実現できなかった.われわれは彼らに非常に感謝している.
 私は,Jody Leonardo博士,Rabih Tawk博士,Andrea Chamczuk博士,Gus Varnavas博士,Russel Bartels博士,Natasha Frangopoulos博士,Jennifer Lin博士,Alex Mompoint博士,Josh Meyers博士,バッファロー一般財団,John Tomaszewski博士,バッファロー総合病院病理学,Lucille Miller─Balos博士,Peter Ostrow博士,Reid Heffner博士,Raymond Dannonhoffer博士,ライカマイクロシステムズ(Larry Bisell)および,故Louis Bakay博士から,援助とアドバイスをいただいた.また,脳神経外科主任教授Elad I. Levy博士の支援にも感謝する.

 Walter Grand, MD
 Senior Author
目 次
1 基本解剖
2 外頚動脈
3 内頚動脈
4 頚動脈眼動脈三角
5 後交通動脈,前脈絡叢動脈
6 中大脳動脈
7 前大脳動脈,前交通動脈
8 脳底動脈分岐部,後大脳動脈
9 椎骨脳底動脈
10 静脈系

付録1 血管径
付録2 中大脳動脈のロードマップ・スケッチ

索引