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神経眼科学を学ぶ人のために 第2版

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神経眼科臨床・研究の第一線で長年活躍する著者による、決定版テキストの改訂版。解剖生理、診察・検査・診断から治療まで、明快かつシンプルな記述で臨床に必要な知識を網羅。圧巻のカラー図版・症例写真・画像所見を掲載したビジュアルなレイアウト。基礎知識から最新知見まで、読者の知りたい情報にたどりつきやすい紙面構成。眼科医、神経内科医、視能訓練士など神経眼科臨床に携わる、すべての医療関係者の必携書。
三村 治
発行 2017年10月判型:B5頁:344
ISBN 978-4-260-03218-6
定価 10,120円 (本体9,200円+税)
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第2版の序

 『神経眼科学を学ぶ人のために』は2014年10月に初版を出版し,幸いなことに多くの眼科医・神経内科医・視能訓練士の方々からご好評をいただいた.その初版出版からもうすでに3年が経過しようとしているが,最近の神経眼科学の進歩はまさに日進月歩である.もちろん小型化したERGやswept-source OCT,OCT angiographyなど診断技術の進歩も著しいが,さらに分子標的薬などの新薬の神経内科・神経眼科疾患への応用も本格化している.また2015年6月からはA型ボツリヌス毒素製剤(BTX-A)の斜視への保険適用拡大も始まった.このBTX-A注射に関しては治験段階では水平斜視のみが対象であったにもかかわらず,適応が上下斜視や麻痺性斜視など広い範囲に認められ,核下性眼球運動障害だけでなく,核上性や機械的斜視にも応用でき,眼球運動系の神経眼科疾患に悩む多くの患者にとって治療の選択肢が拡がることにつながっている.
 この改訂版ではこのような最新の診断技術や治療手段の進歩について解説するとともに,本文中にsagging eye症候群,不思議の国のアリス症候群やvisual snow症候群など13項目,CloseUpでも13項目の新しい疾患概念や知見について概説した.さらに昨今急速に拡まった国内外の神経眼科と関連する各種疾患の診断基準や診療ガイドラインの作成や改訂をできる限り和訳して掲載させていただいた.
 また,初版での誤った記載や誤字・脱字などを修正するとともに,参考文献の全面的な見直しも行ったが,その際に新しい文献を追加する場合には古い文献の削除も並行して行い,総文献数の増加は最小限にとどめるように努めた.しかし,初版の3つの目的別の記述(太字,細字の箇条書き,CloseUp)はそのまま踏襲し,初心者からエキスパートまで,また医師だけでなく視能訓練士の方々にもわかりやすい記載を目指している.

 本書が多くの読者に神経眼科学への一層の興味を湧かせ,神経眼科学の知識と診療技術を修得していただくことで,神経眼科疾患に悩む多くの患者の診療の一助になれば筆者にとって大きな幸いである.

 2017年9月
 三村 治

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第1章 神経眼科の解剖と生理
 A 視覚路
  1 網膜
  2 視神経,視交叉,視索
  3 外側膝状体(LGN)
  4 視放線
  5 大脳皮質視覚領
 B 眼球運動系
  1 中枢経路
  2 最終共通経路
 C 対光反射経路
  1 瞳孔
  2 対光反射

第2章 神経眼科診察法
 A 問診
  1 発症状況
  2 疼痛の有無
  3 日内変動と発症後の経過
  4 家族歴
  5 既往歴・手術歴
 B 視診
  1 歩行状況
  2 頭位
  3 顔貌,容貌
  4 眼球突出度
  5 眼瞼の状態
 C 眼位・眼球運動検査
  1 Hirschberg法
  2 交代遮閉試験・プリズム試験
  3 向き運動検査
  4 眼球運動記録
 D 視神経乳頭の見方(検眼鏡および眼底写真による)
  1 乳頭サイズ
  2 境界
  3 色調
  4 陥凹
  5 乳頭内・近傍短絡血管
  6 乳頭周囲網膜神経線維の浮腫混濁
  7 血管の拡張・多分岐
 E 瞳孔・対光反射の観察
  1 瞳孔サイズ,瞳孔不同,瞳孔の形
  2 対光反射
 F 中心フリッカ値の測定
 G 視野の測定
  1 Goldmann動的視野計
  2 Humphrey自動視野計(HFA)
  3 眼底視野計
 H 色覚検査
  1 パネルD-15テスト
  2 Farnsworth-Munsell 100-Hueテスト
 I OCT検査
  1 SD-OCTの水平断面および垂直断面の画像
  2 黄斑・乳頭周囲網膜神経線維層厚の観察
  3 網膜神経節細胞層厚の観察
  4 網膜外層の観察
  5 OCT angiography(OCTA)
 J 自発蛍光検査
 K 電気生理学的検査
  1 網膜電図(ERG)
  2 視覚誘発電位(VEP)
  3 EOG,電気眼振図(ENG)
  4 外眼筋筋電図(EMG)
  5 視線追跡(解析)装置
 L 放射線画像検査
  1 CT
  2 MRI
  3 MRA
  4 拡散テンソル画像(DTI)
 M 遺伝子診断
  1 視神経疾患
  2 眼球運動異常
 N 髄液検査
  1 髄液圧
  2 細胞数
  3 細胞の種類
  4 蛋白
  5 その他
 O 特殊自己抗体検査

第3章 視神経・視路疾患
 A 視神経に腫脹をきたす疾患
  1 乳頭腫脹
  2 うっ血乳頭
  3 視神経炎
  4 視神経周囲炎
  5 乳頭血管炎
  6 虚血性視神経症
 B 遺伝性視神経症
  1 Leber遺伝性視神経症(LHON)
  2 優性遺伝性視神経萎縮(DOA)
 C 外傷性視神経症
 D 圧迫性視神経症
  1 甲状腺視神経症
  2 鼻性視神経症
  3 その他の圧迫性視神経症
 E 栄養欠乏性視神経症
 F 中毒性視神経症
  1 エタンブトール視神経症
  2 メチルアルコール中毒性視神経症
  3 シンナー中毒性視神経症
  4 薬剤性視神経症
 G 悪性腫瘍による視神経症
  1 浸潤性視神経症
  2 悪性腫瘍随伴視神経症
 H 放射線視神経症
 I 視神経萎縮
 J 視神経の先天異常
  1 朝顔症候群
  2 乳頭傾斜症候群
  3 視神経乳頭コロボーマ
  4 中隔視神経形成異常症
  5 視神経低形成,視神経異形成
  6 鼻側視神経低形成(NOH)
  7 視神経乳頭小窩
 K 視神経の腫瘍
  1 視神経鞘髄膜腫(ONSM)
  2 視神経膠腫
  3 視神経乳頭メラノサイトーマ
 L 視交叉の異常
  1 視交叉部腫瘍
  2 視交叉部の炎症・外傷
 M 視交叉以降の視路病変
  1 視索病変
  2 外側膝状体病変
  3 視放線・後頭葉病変
  4 可逆性白質脳症(PRES)
 N 視神経疾患と間違えやすい網膜疾患
  1 急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)
  2 多発消失性白点症候群(MEWDS)
  3 錐体ジストロフィ
  4 視神経網膜炎

第4章 眼球運動障害
 A 核上性眼球運動障害
  1 側方注視麻痺(水平注視麻痺)
  2 垂直注視麻痺
  3 内側縦束(MLF)症候群(核間麻痺)
  4 One-and-a-half 症候群
  5 斜偏位とocular tilt reaction(OTR)
  6 眼球運動失行症
  7 単眼上転麻痺(DEP)
  8 Fisher(Miller Fisher)症候群
  9 進行性核上性麻痺(PSP)
  10 開散不全
  11 輻湊痙攣
  12 周期性内斜視
  13 眼球運動クリーゼ(眼球上転発作)
 B 核および核下性眼球運動障害
  1 動眼神経麻痺
  2 滑車神経麻痺
  3 外転神経麻痺
  4 複合神経麻痺
 C 眼運動神経先天異常
  1 Duane症候群
  2 Möbius症候群
 D 神経筋接合部障害
  1 重症筋無力症
  2 Lambert-Eaton筋無力症候群
  3 蛇毒による眼球運動障害
 E 筋原性眼球運動障害および機械的眼球運動制限
  1 甲状腺眼症
  2 眼窩筋炎
  3 強度近視性進行性内斜視(固定内斜視)
  4 慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)
  5 外眼筋線維症(CFEOM)
  6 Brown症候群
  7 sagging eye症候群
  8 鼻内視鏡術後の内直筋損傷

第5章 眼振・異常眼球運動
 A 眼振の定義と分類
  1 定義
  2 分類
 B 先天眼振,乳児眼振
  1 律動眼振
  2 振子様眼振
  3 周期性交代眼振(PAN)
  4 新生児点頭痙攣
 C 後天眼振
  1 下向性眼振
  2 上向性眼振
  3 輻湊眼振
  4 シーソー眼振
  5 後天律動眼振
  6 反跳眼振
  7 Bruns眼振
 D 眼振様運動
  1 オプソクローヌス
  2 眼球粗動
  3 矩形波様眼球運動(SWJs)
  4 上斜筋ミオキミア

第6章 眼瞼の異常
 A 眼瞼の位置・形態異常
  1 眼瞼下垂
  2 上眼瞼後退症
 B 眼瞼の機能異常
  1 眼瞼痙攣
  2 片側顔面痙攣
  3 眼瞼ミオキミア
  4 顔面ミオキミア
  5 眼瞼チック
  6 顔面神経麻痺後遺症としての攣縮
  7 眼瞼の異常連合運動

第7章 瞳孔異常をきたす疾患
 A 緊張瞳孔,Adie症候群
 B Horner症候群
 C 楕円瞳孔,中脳性瞳孔偏位
 D Argyll Robertson瞳孔
 E 動眼神経麻痺
 F 前眼部虚血(ASI)

第8章 眼窩に異常をきたす疾患
 A 甲状腺眼症(GO,TAO)
 B 特発性眼窩炎症
 C 粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALTリンパ腫)
 D IgG4関連眼疾患
 E 頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)
 F 眼窩先端症候群,上眼窩裂症候群
 G 眼窩先端部真菌症
 H 副鼻腔粘液嚢胞・膿嚢胞
 I 眼窩蜂巣炎,眼窩周囲蜂巣炎
 J 眼窩壁骨折(眼窩吹き抜け骨折)
 K 眼窩静脈瘤

第9章 全身疾患と神経眼科
 A 重症筋無力症(MG)
  1 重症筋無力症
  2 小児の重症筋無力症
  3 高齢者の重症筋無力症
 B 多発性硬化症(MS)
 C 急性散在性(播種性)脳脊髄炎(ADEM)
 D 甲状腺眼症(GO,TAO)
 E 肥厚性硬膜炎
 F 側頭動脈炎
 G 内頸動脈解離
 H 脳腫瘍
  1 脊索腫
  2 嗅神経芽腫
  3 線維性骨異形成
 I Arnold-Chiari奇形
 J 神経線維腫症1型
 K 転換性(非器質性)視覚障害
 L visual snow症候群
 M 不思議の国のアリス症候群

索引

Close Up 目次
 ・M経路とP経路
 ・眼球摘出後変化? でも臨床的に重要な接合部暗点!
 ・プリーの移動や脆弱化で斜視が起こる!
 ・メラノプシン含有網膜神経節細胞
 ・Humphrey視野は5つのリングで読もう!
 ・パターンVEPはブラウン管と液晶画面で潜時が異なる!
 ・北米では多施設治療トライアルNORDIC study が終了!
 ・ANCA関連血管炎は疾患名も抗体名も名称が変わっている!
 ・小児の視神経炎は成人とは大きく異なる!
 ・3種類の血液浄化療法にはそれぞれに長所・短所がある!
 ・抗MOG抗体
 ・女性の虚血性視神経症では抗カルジオリピン抗体も原因の1つ!
 ・日本発のイデベノンがLHONに有効!
 ・DOAでは実は患者はそれほど困っていない!
 ・視神経近傍血管腫では手術で視機能悪化も!
 ・Wernicke脳症
 ・強度変調放射線療法(IMRT)
 ・下垂体卒中
 ・鞍結節髄膜腫でも妊娠で悪化することがある!
 ・蝶形骨縁髄膜腫
 ・トルコ鞍空洞症候群
 ・中心性同名半盲では読書困難が起こる!
 ・側方注視麻痺と共同偏視
 ・Collier徴候
 ・動眼神経麻痺の複視消失率にはトリックがある!
 ・動眼神経麻痺後には眼瞼に異常連合運動が起こる!
 ・先天上斜筋麻痺は後天滑車神経麻痺とは別物!
 ・滑車神経麻痺は確定するまで両側性を疑え!
 ・下直筋鼻側移動術では内転作用に注意!
 ・外転神経麻痺では内直筋後転より外直筋短縮を!
 ・甲状腺眼症のパルス療法は今や時代遅れかも!
 ・意外と有効なトリアムシノロンアセトニド局所注射!
 ・満足度の高い甲状腺眼症の斜視手術!
 ・再発性眼窩筋炎では早期に免疫抑制薬の導入を!
 ・上外直筋縫合術では付着部から8mmの筋腹に制御糸を!
 ・高騰する米国での鼻内視鏡手術の合併症訴訟!
 ・眼振は緩徐相が重要!
 ・眼振の頻度は意外に多い!
 ・潜伏眼振は乳児内斜視とDVDを合併しやすい!
 ・Arnold-Chiari奇形では多彩な眼振がみられる
 ・下斜筋ミオキミアって本当にあるの?
 ・ボツリヌス療法とは?
 ・眼輪筋切除には炭酸ガスレーザーを用いるのが便利!
 ・先天Horner症候群
 ・散瞳薬点眼試験による交感神経障害部位判定法
 ・アプラクロニジン点眼試験
 ・Tolosa-Hunt症候群はステロイドへの反応での診断・治療が可能!
 ・外眼筋が癒着していない斜視手術はかえって厄介なことがある!
 ・アイステストの機序
 ・clinically isolated syndrome(CIS)の診断基準
 ・日本発のフィンゴリモド

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神経眼科学を学びたい人のバイブルになる一冊
書評者: 後藤 浩 (東京医科大教授・眼科学)
 わが国の神経眼科学の第一人者である三村治教授の単独執筆による『神経眼科学を学ぶ人のために 第2版』を拝読させていただきました。実は神経眼科関連の本は脅迫観念もあってか,新刊が出版されるたびに中身を吟味することもなく購入する癖があります。これは取りも直さず,神経眼科学が苦手ゆえのせめてもの償い,あるいは抵抗の現れでしょう。本書は,そういった神経眼科を学ぶ気持ちは持ち合わせている,少なくとも学ばないといけないと思っている眼科医や視能訓練士にはうってつけの書籍です。

 まず,第1章の「解剖と生理」は必読のパーツです。ここを読破しただけでも神経眼科学のスタートラインに立てた気分になれます。しかも一般に敬遠されがちなこの解剖と生理に関する解説は,たった18ページに凝縮してくれています! でもやはり,この18ページを理解するのが辛いのも事実です。各論では美しい写真やわかりやすい図がふんだんに使用され,さらに解説は箇条書きを基本としているので,神経眼科学を苦手にしている者には大変ありがたい,読みやすい構成となっています。さらには三村先生が「ココだけは押さえておいてほしい!」と思われたところは文字が強調体になっているので,試験でいうところの“ヤマ”を親切に教えていただいているようなものです。随所に散りばめられた“Close Up”コーナーでは,神経眼科学に関するトレンドのみならず,目から鱗の落ちるようなコメントや情報が満載です。例えば,視神経の走行の特徴とされるWilbrand knee(Wilbrandの膝)なるものは,もしかしたら存在しないかもしれない,などの情報は大変興味深く読ませていただきました。

 全体を通じて感じたこととして,神経眼科の領域も光干渉断層計(OCT)によって病態生理の理解が格段に深まってきたことです。今までよくわからなかった病態の一部がOCTの登場によって“神経眼科的疾患の可視化”を実現し,以前よりも身近に感じられるようになり,苦手意識の払拭にも貢献しているように思います。

 初めて,あるいは改めて神経眼科学を学びたい人や,眼科専門医試験の受験前などの諸事情によって,いや(?)でも神経眼科学を学ばなくてはならない方に,本書はきっとバイブルとして重宝されることになるでしょう。
眼科医ならもちろん,緑内障専門家には特に読んでほしい
書評者: 相原 一 (東大大学院教授・眼科学)
 三村治先生の『神経眼科学を学ぶ人のために 第2版』が出版された。神経眼科分野でも,従来の画像検査の改良とともにOCTやOCTアンギオにより,より詳細な病態が捉えられて診断に役立つようになった。また治療法も増え,ガイドラインも確立されてきた。そのような背景を基に,初版をさらに充実させた本書は,新たな疾患概念や“CloseUp”という魅力的な著者のつぶやきがちりばめられている。“CloseUp”を読んでいるだけでとても楽しく,著者の広い知識があふれ出ている。

 そんな本書のタイトルは『神経眼科学を学ぶ人のために』であるが,眼科医ならもちろん,小生のような緑内障専門家には特に読んでほしい。乳頭所見,視野障害は神経眼科学の分野であり,神経眼科学の知識なくして緑内障専門家を標榜してはならない。緑内障は眼圧については独自の分野かもしれないが,結局は神経障害である以上,神経眼科学の一部である。正常眼圧緑内障は神経眼科的疾患の知識なくしては診断できない。そして緑内障分野でも最近話題になっている乳頭篩状板を挟んだ脳脊髄圧と眼圧の圧勾配についてはまさに神経眼科領域の話題でもある。眼球裏面まで存在するくも膜下腔を介した脳脊髄圧と眼内からの眼圧,乳頭血流灌流圧,ひいては近視性眼軸延長に伴う眼球変形ストレスのバランスは視神経乳頭症というべきで,バランスが崩れれば,うっ血乳頭,乳頭腫脹,乳頭陥凹,乳頭構造障害ひいては乳頭蒼白となり種々の疾患に至る。本書でも多くの画像とともに乳頭視神経疾患を詳細に記載してあり読み応えがある。また,間違いやすい網膜疾患から乳頭,視交叉以降の視路疾患,さらに眼球運動障害,眼瞼,瞳孔,眼窩,全身疾患の順に非常に簡潔明瞭な記述で解説され,神経眼科学の魅力を余すことなく伝えている。

 神経眼科学は眼科医にとってややとっつきにくい分野かもしれない。なぜなら眼科の特徴は眼で見える所見が多い点であり,画像診断機器が発達し,定量化・デジタル化され把握しやすい。しかし,見た目でわかる疾患にわれわれ眼科医は慣れ過ぎていないだろうか。眼科には見える病変部の構造障害が視機能障害と一致している疾患が多いが,一方,見えている構造障害と,視機能障害つまり患者の見え方との解離がある,要は見えない病変部からの眼疾患が実はとても面白いのである。どうしてこの患者はこのように訴えるのか。末端で見える手掛かりを捉えた上で知識を総動員して,その人の視機能障害の訴えに合致する答えを推理するところが神経眼科学の醍醐味なのである。ぜひ,本書を一読することをお薦めしたい。

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