推薦のことば(青木 眞)/
はじめに(萩原將太郎)
推薦のことば
症例検討会で,血液疾患,特に悪性リンパ腫などは頻出疾患である.その理由は全身に表現される臨床像の多様性にあり,内科医の総合診療的な力が最も試される疾患であるためである.ちなみに本邦に導入が遅れた専門領域に感染症,膠原病,そして血液・腫瘍学の3つがあり,それらの共通点は「特定の臓器を扱わない」点,すなわち全身を診る点にある.いわゆる総合診療的資質が求められる専門領域である.
筆者が最も信頼する血液内科医である萩原將太郎先生は沖縄県立中部病院の後輩であり,それゆえに血液内科専門医である前に優れた総合診療医である.彼に症例を相談するようになって既に20年を超えるが,その安定感は揺るぎがない.萩原先生は,また研修医教育も旨いが,これもその基礎となる総合診療的アプローチを重視する姿勢ゆえである.
本書のタイトルは「よくわかる血液内科」であるが,通読して感じることは,基礎的な病態生理の説明など,その専門性の高さであり,各章の冒頭にある実際の症例に象徴されるように臨床的に書かれた教科書・成書の印象に近い.このため簡単に「総合診療の初学者が通読」できるようなタイプの本ではない.その意味では貧血や血小板減少,リンパ節腫脹といった個別の問題に遭遇した時に辞書的・教科書的に開くといったことのほうが使い方としてはよいのではないかと個人的には思う.もちろん,第8章(危ない病気・症状を見逃さないために)のような腫瘍学的緊急症(Oncological emergency)といった内容は初学者も目を通しておくべきである.
「血液内科学が得意科目になるシリーズ」と題して,医学書院 総合診療医学誌である『JIM』『総合診療』に連載された内容などをもとに編纂された本書が初学者からベテランまでの多くの読者を得ることを望みます.
2017年11月
感染症コンサルタント 青木 眞
はじめに
血液は,からだ中を隈なく流れ,酸素運搬のみならず,感染防御,腫瘍免疫までを司る重要な生命維持システムです.そして血液の疾患は全身の病気であり,見逃すと重篤な状況に陥ることが少なくありません.
と,ここまで読んだだけで「あっ,やっぱり血液は難しそう.できれば避けて通りたい」と思う読者も多いのではないでしょうか?
でも,気軽に相談できる血液内科医がいない.血液の勉強をしてみたいけれど専門書は取っ付きにくい.う~ん,困りましたね.
本書は,「血液内科学が♡得意科目♡になるシリーズ」として医学書院の医学誌『JIM』『総合診療』で2年間連載した内容に,筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター水戸協同病院で総合診療科の若手医師を対象に行った5年分の特別講義録を加えて書き直したものです.
各章はクリニカルプロブレム毎に分かれており,数話ずつの代表的な症例を紹介しています.症例をもとに一緒に推理しながら楽しく血液内科を学べるように工夫しました.
読者の皆さんが,
1.血液を理解して,患者さんにもわかりやすく説明できる
2.病気の鑑別診断ができる
3.初期対応ができ,必要な場合には適切に専門医につなぐことができる
これら,3つのことができるようになることが目標です.
総合診療,一般内科を担当している先生方はもちろん,ジェネラリストとして活躍されているすべての医師,研修医,レジデント,コメディカル,これから医療者をめざす学生さん達のお役に立てれば幸いです.
2017年12月
萩原將太郎