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Evidence Based で考える 認知症リハビリテーション


編集:田平 隆行/田中 寛之

  • 判型 B5
  • 頁 312
  • 発行 2019年09月
  • 定価 4,536円 (本体4,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03923-9
ナラティブを超えたエビデンスベースのリハビリテーション介入戦略
認知症のリハビリテーションが医療現場に浸透するなか、以前にも増して、根拠に基づいた評価や介入の実施がセラピストに求められている。そこで本書では、エビデンスがあり、かつ、適応と限界、アウトカムとの関連が明確に示されている最新の認知症リハビリテーションの評価法、介入法を、先行研究を踏まえて紹介している。さまざまな時期・場所における介入戦略の実例も豊富に提示。「臨床」と「研究」をつなぐための1冊。
序 文


 近年,認知症のリハビリテーションに関連する研究報告は急速に増加しています.そうした新しい知見を臨床現場に伝えたい,そして活用してほしい.そのような純粋な思いから本書を企画しました.
 2015年に策定された新オレンジプランのなかで,適切な認知症リハビリテーションと称し,「...


 近年,認知症のリハビリテーションに関連する研究報告は急速に増加しています.そうした新しい知見を臨床現場に伝えたい,そして活用してほしい.そのような純粋な思いから本書を企画しました.
 2015年に策定された新オレンジプランのなかで,適切な認知症リハビリテーションと称し,「認知症の人に対するリハビリテーションについては,実際に生活する場面を念頭に置きつつ,有する認知機能等の能力をしっかりと見極め,これを最大限に活かしながら,ADL(食事,排泄等)やIADL(掃除,趣味活動,社会参加等)の日常の生活を自立し継続できるよう推進する.このためには認知機能障害を基盤とした生活機能障害を改善するリハビリテーションモデルの開発が必須であり,研究開発を推進する」としています.つまり,リハビリテーションの最大の対象は生活障害なのです.可能な限り本人や家族が望む生活習慣,生活環境,生活行為の実現に向けて介入する必要があるといえるでしょう.そのためには,生活障害の特徴をとらえ,その基盤となる疾患や症候,重症度,認知機能との関連を考察することは不可欠といえます.ほかにも,運動障害,感覚器障害,栄養状態,身体合併症など高齢者特有の複合疾患・機能障害の問題や,家族介護者や居住場所など人的・物理的環境は生活障害に密接に関係しています.
 本書の1つ目の特徴は,適切なリハビリテーションを実施するうえで重要な基礎的知見,生活障害に関係する因子を網羅し,先行研究に基づいて解説している点にあります.したがって,本書ではあえて「認知症とは」,「アルツハイマー病とは」,「認知症の人とのかかわりかたとは」などといった定義的なことや,教科書的なことは最小限にしか記載していません.
 2つ目の特徴として,介入では生活障害,活動,栄養,運動,認知機能,家族支援などこれまで重要とされてきた項目に最新の知見を加えて整理しました.そのうえで「適応と限界」を記載しています.どのような状態(重症度や症候)や環境(病院,自宅など)にある方が適応で,限界はどこなのか,これを理解することが介入選択の判断材料として重要であり,本書はそのことに貢献できると考えています.
 また,認知症の方と出会うさまざまな場所での介入戦略を整理している点も大きな特徴です.時期や場所で認知症の症候や重症度,身体合併症などの特徴に違いがあることから,それぞれの特徴を知り,症例報告によって具体性をもたせることで,臨床での介入戦略に役立てることができると思います.
 一方,エビデンスベースを強調しているため認知症の方に重要であるナラティブな側面や理論的側面については,本書では紙面の都合上あまり触れていない点はご了承ください.
 認知症の非薬物療法やリハビリテーションに関する臨床の知見を研究として蓄積し,研究の知見を臨床に応用することができる「臨床と研究をつなぐ」ための1冊として,本書をぜひご活用いただきたいと思っています.そしてわれわれも,読者の皆様に負けないよう,これからもエビデンスを重ね「認知機能障害を基盤とした生活機能障害を改善するリハビリテーションモデルの開発」に邁進していく決意でいます.

 「認知症のリハビリテーション」とは? という難題に本書は答えられているでしょうか? ぜひご一読いただき,感想をお寄せいただければ幸いです.

 本書は,発刊までに多くの方にご尽力いただきました.執筆のみならず校正段階でもわれわれからの無理な注文にも快く応えてくださいました執筆者の諸先生方にまずはお礼を申し上げます.そして企画から発行に至るまで,何度も大阪まで行き来し,われわれの意見を尊重していただいた医学書院の北條立人氏に心より感謝申し上げます.

 2019年8月
 田平隆行,田中寛之
目 次
chapter 1 リハビリテーションに役立つ 認知症の基礎知識
 1 根拠に基づいた認知症リハビリテーション介入を行うために
 2 リハビリテーションに役立つ認知症発症の関連因子
 3 認知症の重症度別特徴
     軽度認知障害・軽度認知症
     中等度・重度認知症

chapter 2 根拠に基づいた 認知症のリハビリテーション評価
 1 評価・介入の進めかた
     認知症における目標設定
     認知機能,ADL,BPSDおよび背景要因の関連性の評価
 2 認知機能
     軽度認知障害・軽度認知症の認知機能評価
     中等度・重度認知症の認知機能評価
 3 ADL
     軽度認知障害・軽度認知症
     中等度・重度認知症
 4 BPSD
     BPSDの出現モデルと評価
     幻覚・妄想
     agitation
     睡眠―覚醒
     食行動
     うつ・アパシー
     不安
     異常行動
 5 身体合併症
 6 言語症状
 7 栄養
 8 感覚器
 9 環境―治療戦略としての物理的環境評価
 10 活動の取り組みかた(engagement)の評価
 11 QOL(quality of life)

chapter 3 根拠に基づいた 認知症のリハビリテーション介入
 1 知っておくべき薬物療法のメリット/デメリット
 2 認知症者へのリハビリテーション介入
     認知的介入
     ADL介入
        軽度認知障害・軽度認知症
        中等度・重度認知症
     作業療法介入
     音楽介入(Music Therapy)
     Simulated Presence Therapy
     生活リズムアプローチ
     運動介入
     認知症者とのコミュニケーション
     栄養介入
     感覚器障害を併発した例への介入
     家族介護者支援
     パーソンセンタードケアの効果とその評価
     介護ロボット介入

chapter 4 根拠に基づいた 症例への評価・介入
         ─時期別にみられる代表的認知症症例と評価・介入戦略の例
 1 急性期病院で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─せん妄を合併した認知症の疑いのある症例への包括的介入
 2 回復期リハビリテーション病院で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─ナースコール利用訓練と物理的環境支援を通して「している」と
      「できる」ADLの乖離軽減に至った一例
 3 医療療養型病院で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─病前の生活環境を入院生活に反映できた一例
 4 もの忘れ外来で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─バスを利用した外出支援を行った一例
 5 介護老人保健施設で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─内科的疾患により入所に至った意欲低下を伴う一例
 6 訪問リハビリテーションで出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─早期介入事業と訪問でかかわった前頭側頭型認知症者
 7 認知症初期集中支援チームで出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─初期段階の認知症者に対する地域生活支援
 8 精神科外来で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─外来通院をする認知症患者へのリハビリテーション介入について
 9 精神科急性期病棟で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─ICFに基づく評価・介入による退院後の生活再建
 10 精神科認知症治療病棟で出会う認知症症例への評価・介入戦略
     ─排泄介助の方法提案と活動介入を通して焦燥性興奮を軽減でき,
      退院に向けた流れができた一例

索引