医療系教育機関における著作物の利用について

2021.02.15

医学部、歯学部、薬学部、看護学部等(看護師等学校養成所)の
医療系教育機関における著作物の利用について

株式会社 医学書院

著作権法第35条について


著作権法第35条は、学校その他の教育機関が授業の過程における利用に供することを目的とする場合、その必要と認められる限度において、無許諾で著作物を複製(複写・複製機器による紙その他の媒体への複製)し、若しくは公衆送信(インターネットその他の通信回線による送信並びに通信機器への蓄積)利用できることを規定しており、複製については無償、公衆送信については一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)へ所定の補償金を支払う必要があるとしています。同規定はその但し書きとして、利用する著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は無許諾では利用できないことを付記していますが、この但し書きに該当する場合は補償金を支払ったとしても無許諾で複製あるいは公衆送信利用することはできず、権利者の許諾が必要とされています。

この「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」について、弊社では以下のように考えています。

医療系教育機関と弊社が発行する出版物について


医療系教育機関における授業の殆どは当該領域の専門職養成を目的とした専門教育であり、一部の例外を除いて、教育を受けた学生は国家資格を得て当該領域の専門職になります。

一方で弊社が発行する書籍、雑誌等の出版物は、その大半が当該教育機関に在籍する学生あるいは専門職としての医療従事者を利用者として想定し、それぞれ購入し利用して頂くことを目的としています。

そのような出版物を医療系教育機関における授業(演習、実習等も含みます)で利用する場合、著作権法第35条との関連が問題となりますが、上記の通り、弊社が発行する出版物は当該教育機関の学生あるいは専門職としての医療従事者を主たる利用者として想定しているものであることから、それが著作権法の規定によって無許諾・無償あるいは無許諾・補償金で利用されることは当該出版物の販売に大きな影響を及ぼすものと考えます。当該教育機関では学生向けの教科書(具体的には弊社発行の標準教科書シリーズ、新臨床内科学、内科診断学、系統看護学講座等の教科書群等)・参考書、辞書・事典類の利用、またそれ以外にも専門職向けの臨床書、研究書、マニュアル、各種指針書、専門雑誌等の利用もあると思います。教科書・参考書等についてはもとより、当該教育機関に在籍している学生は、ほぼその殆どが卒業後は専門職として医療関連業務に従事することから、専門職向けの出版物も教育課程においては重要かつ利用価値の高い著作物であり、教材として十分その役割を果たすものと考えます。

許諾の必要性について


前項の考え方を前提とし、弊社としては、前項記載の出版物はもとより基本的には弊社が発行する全ての出版物に掲載された図表等の著作物を、医療系教育機関における授業等で学生全員が購入することなく複製配布あるいは公衆送信することは、ほぼ例外なく著作権法が規定する「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当すると判断しております。出版物の複製・公衆送信利用が、一回あるいは一授業単位の利用が少数、小部分であっても、日常的・継続的に行われ、それが結果的に多数の出版物から年間通して一定数以上の文章・図表等が利用され学生に配布・配信されるのであれば、下記記載の「採用品の利用」の場合を除き、許諾が必要です。

従って、その利用にあたっては弊社あるいは弊社がその権利の管理を委託している一般社団法人出版者著作権管理機構(JCOPY)から許諾を得て、所定の使用料をお支払い頂きたいと考えます。そうすることによって本来の出版物等の発行と流通を確保すると共に、利用にかかる使用料を適切に著作者に還元し、知的財産権の確保と著作物創作の循環サイクルを確保することにつながるものと考えております。

許諾不要で利用できる場合について


•小部分の非恒常的利用

前項にかかわらず、その利用がごく少数、小部分である場合、たとえば一つの出版物からたまたま図表1~2個を複製利用し、全学生に配布しても、そこまで許諾が必要ということではありません。非恒常的に行われる少数、小部分の複製・公衆送信利用は「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」とは必ずしも言えないと考えます。

•採用品の利用

(「許諾不要で無償利用」できる場合と「許諾不要だが補償金(有償)の対象」となる場合)
採用品として学生全員が出版物を購入してご利用頂いている場合、その授業の過程における当該採用品出版物の複製利用(公衆送信利用は除く)は一般的には「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」とはなりませんので権利者の許諾なく無償で利用することが可能です。また、その公衆送信利用は権利者の許諾なく利用することが可能ですが、著作権法第35条第2項に規定される補償金の対象となり、SARTRASへ補償金を支払う必要があります。

弊社出版物を採用された場合について


前項にかかわらず、弊社は採用品として学生全員が購入してご利用頂いている当該出版物を、当該教育機関に在籍する学生、教職員が当該教育機関の内部で利用すること(授業利用、教職員間利用等を含みます)を目的として複製あるいは公衆送信利用することについては無償で許諾致します。従って、弊社が許諾した部分に限っては前項の補償金の対象からは除外されます。

なお、上記の「当該教育機関の内部」は教育機関、在籍学生、所属教職員間であれば場所を問わない(学校と自宅間、交通機関による移動中等)公衆送信を含みます。

「改正著作権法第35条運用指針」について


「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」を含む著作権法第35条の様々な要件に関する判断基準については「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」を制定し、下記のサイトで公開しておりますのでご参照下さい。
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221.pdf

なお、上記運用指針の17ページに「全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない可能性が高い例」として「雑誌等の定期刊行物で発行後相当期間を経過したものに掲載された記事等の言語の著作物」とありますが、全部を利用できることに対する判断基準としてはそれだけでなく、16ページにもある通り「当該論文が市場に流通していないこと」も含めて総合的に判断する必要があります。現在弊社では発行雑誌の全て(バックナンバー、休刊、廃刊等過去に発行されたものも含みます)を弊社ならびに医書ジェーピーの電子配信サイト(https://store.isho.jp/)において雑誌単位ならびに記事・論文・文献単位で販売しております。このことから考えて、弊社は弊社が発行する定期刊行物に掲載された記事・論文・文献等に関して、その全部を複製又は公衆送信しても著作権者等の利益を不当に害することとはならない著作物は、定期刊行物発行後の経過期間に関わらず、当該著作物が電子媒体あるいは紙媒体により市場に流通していない、あるいは購入できない記事・論文・文献等に限定されるものと判断しております。

現在、上記フォーラムでは「市場に流通していないこと」と「発行後相当期間が経過していること」との関係について更に検討を加え、上記運用指針を明確なものとする作業を行うこととしておりますが、それまでの間は上記の弊社見解も含めて適切にご判断頂きますようお願い申し上げます。

以上、医療系教育機関に在籍される先生方のご理解とご協力をお願い申し上げます。

2021年