総合診療 Vol.32 No.10
2022年 10月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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「処方カスケード」のクリニカルパールズ

鈴木智晴(社会医療法人 仁愛会 浦添総合病院 病院総合内科)

 本特集はポリファーマシーの一形態である「処方カスケード」について特集しました。処方カスケードに着目したのは、院内の「ポリファーマシーカンファレンス」という、薬剤師と医師が集まり、患者さんの薬剤を最適化するために相談する定例会議がきっかけでした。カンファレンスでは処方カスケードが見つかることが多く、常に問題意識を持っていました。同時に、介入を行う意義も大きいと考え、今回処方カスケードを取り上げた次第です。
 本特集では錚々たる著者の先生方にご寄稿を依頼しました。ご執筆の先生方のお原稿に共通していたことは、プロブレムに対する鑑別診断を列挙するという、診療のエッセンスを大切にすることと、処方した薬に責任を持ち、自分の処方を含め厳しく見直すメタ認知の重要性でした。
 頂いたお原稿を楽しみながら、また勉強しながら隈なく拝読しましたが、多くの素晴らしい学びがあり、読者の皆様の診療に役立つ特集号になったと確信しております。お忙しい中ご寄稿くださいました先生方へ、心より御礼申し上げます。
 最後に、今回[各論]17項目のサブタイトルはすべて徳田安春先生にご考案いただきました。「これ自体がクリニカルパールズだ!」と感じるものが多々あり、目次までもが勉強になると思われます。本特集、ぜひお読みください。


徳田安春(臨床研修病院群 プロジェクト群星沖縄)

 臨床医学の父ウィリアム・オスラーは、19世紀後半から20世紀前半に活躍した医師である。オスラー先生は当時の医師に対して、「“Cultivate a skeptical attitude toward drugs”(薬に対する懐疑的な態度を養うべきだ)」と述べた1)。その頃から薬の効果の過大評価と、薬の副作用の多いことに注意すべき、との警告を発していたのである。
 本特集で扱っている「処方カスケード」の原因は薬であるが、隠れた要因は、副作用に気づかずに、対症療法をしてしまう医師自身である。薬剤性の症候かどうかを考える具体的な方法は、下記の3点を参考にしてほしい。

 薬剤性の症候かどうかを疑うポイント
 ①薬と症候の病態の関連が医学的に説明可能
 ②薬と症候の発症とに時間的関連性がある
 ③薬以外に他に明確な原因が不明

 常に薬剤性も考えて、病態生理や時間的タイミングを考慮し、薬剤以外の他の原因との因果関係の確らしさの比較を行うことが大切だ。
 もう1つ、オスラー先生のクリニカルパールを紹介する。「“Not every malady has a drug”(すべての病気に対して薬があるわけではない)」1)。ある症候をみたときには、対症療法を考える前に、むしろその症候が薬剤性であるかを考えるべきであろう。

文献
1)Silverman, M, et al : The Quotable Osler. American College of Physicians, Philadelphia, 2007.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 日常診療に潜む「処方カスケード」――その症状、薬のせいではないですか?

■総論
「処方カスケード」とは?
鈴木智晴

■各論
①抑うつ――抗うつ薬を使う前に、これらの薬をチェックせよ!
松田能宣

②不眠――眠れない理由に薬も
今村弥生

③認知機能低下――認知症=Alzheimer病とは限らない、薬も考えよ!
関岡叙衣│天野雅之

④味覚障害――味覚障害はコロナとは限らない
笹木 晋

⑤咳嗽――ACE阻害薬だけではない、薬剤性咳嗽の原因
倉原 優

⑥不整脈――命にかかわる薬とは?
大石悠太

⑦浮腫――見逃しが多い薬剤性浮腫
松山 拓│矢吹 拓

⑧食欲不振――痩せ薬リスト?
濱田 治

⑨嘔気――吐き気はクスリのリスク
中川龍太郎│北 和也

⑩GERD、胸やけ――内視鏡検査の前にチェックしておくべき薬
原田 拓

⑪頻尿――トイレが近いのはこの薬を飲んでからでは?
児玉泰介

⑫下痢――下痢の原因にARBも!
中野弘康

⑬痙攣――痛み止めでも痙攣することあり
林 祐一│西田承平│鈴木昭夫

⑭振戦、パーキンソニズム――抗精神病薬だけではない薬剤性振戦
辻 浩史

⑮転倒――転倒リスクを高める薬剤は鎮静薬だけではない〜薬剤の種類と予防、中止のタイミング
藤井達也

⑯高尿酸血症・痛風発作――その痛風発作、薬のせいではないですか?
鈴木智晴

⑰ビタミンB12欠乏――制酸薬でビタミン欠乏?
金 昇赫│綿貫 聡

今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
「処方カスケード」のクリニカルパールズ
鈴木智晴|徳田安春

●ゲストライブ
なぜ僕らは現場で「教育」するのか?――“どうする!? サロン”始めます。
佐田竜一|木村武司|長野広之

●What’s your diagnosis?|238
膝カックン!――“押されたんじゃなくて引っ張られたの”
酒見英太|岩下靖史

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|30
田舎で医師が定着するには?
仲田和正

●高齢者診療スピードアップ塾|効率も質も高める超・時短術|10
「腎機能障害」でのCT、単純か? 造影か?
増井伸高

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|69
左手が使えない!
照屋翔次郎|杉田周一|本永英治|徳田安春(監修)

●患者さんには言えない!?|医者のコッソリ養生法|14
翌日に疲れを残さない、ぐっすり「睡眠」の養生4
日中にすべきこと編
須田万勢

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|31
眼に良いブルー、眼に悪いブルー
上田剛士

●臨床小説|後悔しない医者|今と未来をつなぐもの|30
自分を信じる医者
國松淳和

●投稿 GM Report
専攻医から見た新専門医制度における総合診療専攻医の育成
大塚勇輝|小比賀美香子|大塚文男

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