京都看護大学様導入事例
知識を知恵に

大学立ち上げ当初から電子教材の活用に取り組まれていた京都看護大学様。建学の理念や独自のカリキュラムを実現するための方法の一つとして導入されたとのことですが,具体的に普段の教育にどのように電子教科書を活用されているのでしょうか。まだまだ試行錯誤とのことですが,導入から4年経過し,基礎教育から臨地実習,国家試験の対策,さらには臨床に出てからの自己学習,自己教育までを見据えた先の長い展望を持たれています。導入に携わっていただきました豊田久美子先生に電子教材の活用についてお話を伺いました(学生サポートに従事しておられる教務部の姚衛華様に取材協力をいただきました)。

  • 豊田久美子先生
    (学校法人京都育英館 京都看護大学 最高顧問)
  • 姚衛華様
    (学校法人京都育英館 京都看護大学 教務部)

知識を知恵に

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豊田久美子先生

―電子教科書導入の理由は?

開学の折,本学の理念「智・人・命をいつくしむ力」に基づいたカリキュラムを実践的,効率的に学ぶ手段として電子教材を検討しました。現在,医学書院eテキストに加えて,電子書籍,電子教材,教員作成ファイルの共有閲覧サービスを活用しています。

看護の知識は膨大で多様なものです。その知識を効率的に調べ,学び,活用し,知恵としてしっかりと自分の中に取り込めるようにしたいと考えて電子教材を導入した経緯があります。そういった取り組みが本学の特色として学生にも評価されているようです。

また,本学では,電子教科書に加えて教員が作成した教材なども電子配信できるサービスも導入しており,授業資料のペーパーレス化,効率化に一役買っています。電子教科書,とりわけ医学書院eテキストを導入したのは,講義のテキストを医学書院メインで扱っていたことが大きな要因です。医学書院eテキストは1タイトルから導入可能で,紙の教科書と同じような扱いになっているのが魅力です。学年が進んでから新たに科目タイトルを追加することもできますし,より授業計画に合わせてフレキシブルに環境を整えることができると考えました。冊子+電子版であれば,冊子体に+20%の予算で電子版を導入できますので,導入時の負担を調整することもできます。

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京都看護大学の校舎

閲覧から活用へ―実習を経て進化

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電子教科書ではフルカラーの図表がより見やすくなっている

―医学書院eテキストを実際に使ってみていかがでしたでしょうか?

現在,教科書は冊子と電子版をセットで導入しています。電子と冊子の使い分けは学生や教員に任せていますが,教員から配布する資料は全て電子化しています。

慣れない学生は紙の資料を欲しがりますが,iPad上での活用方法をサポートするようにしています。そうすることで,情報の活用スキルが磨かれますし,いつでもどこでも気軽に必要な情報に辿り着けるようになります。大学で講義を受ける際,iPadに収載されているeテキストに直接書き込んで,自宅に置いてある冊子体でじっくり復習する学生が多いですが,冊子体の教科書やノート,ルーズリーフにメモを取って,iPadを様々な場所に持ち込んで予習や復習に使用する場合もあると聞いています。

本学としては,教員の講義や資料,出版社の教材をうまく織り交ぜて,学んで得た知識をポートフォリオとして蓄積し,いつでも振り返ることができる形を目指しています。この繰り返しが膨大な情報や知識を知恵として醸成していくプロセスになるのかな,と考えています。

電子化された教科書という意味では想像どおり便利に活用していますが,iPadの多数の機能も含めて教育に活用するとなるとその壁は思ったより高かったように思います。既にあるアプリの機能を最大限に活かすことで,学生にとって理解のしやすい授業が実施できる取り組みなど,教員側も勉強しながら学生と効率的な方法を固めていきました。

―電子教科書(eテキスト)の利便性はどのようなときに感じますか?

電子教科書を使うと,紙ではできなかったことが色んな形でできます。例えば,検索です。調べたい語句をその教科書の中から調べられますし,複数の教科書から横断的に検索することもできます。疾患名で横断検索すると,小児や成人,老年,母性と対象別の情報を集めることができます。同じ疾患でも対象が違うと付随する情報が変わってきますので,検索の仕方を工夫するだけで得られる知識が変わってくるのが感動です。

非常に情報量の多いテキストを隅々まで読み込むことは難しいことですが,検索によって,調べたい語句の関連情報を一瞬で網羅できます。学生も工夫して使っているようで,電子教材が得意な学生の活用事例を学内で共有したりする仕組みを作れればと思っています。

また,動画コンテンツもどんどん使っています。動画を見ると一目瞭然ですし,イメージ化もしやすく学習効果が高まります。実習前や演習前に技術動画を確認することで,実習指導者からの話の理解も深まりやすいです。

実習に出ると自分の知識を確認する場面が格段に増えてきますので,eテキストの活用頻度も上がります。最初は見るのがメインだった学生が,実習に行ってテキストの活用が進化していることに気づきます。より能動的に電子教材を活用している姿を見かけると学生の成長を感じることができます。

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iPadを使って学習している様子

―実際に授業でのご活用はいかがでしょうか?

授業で紙のノートにメモを取るか,iPadに記録するかは学生に任せています。iPadなどの電子ものが得意な学生はどんどん工夫してiPadを活用していますが,苦手な学生もいるのでそういった学生へのサポートも重要だと思っています。学生用の詳しいマニュアルや,学生向けの研修などがあればありがたいですね。

データのやり取りはDropboxなどのクラウドサービスを活用しています。授業内容変更の連絡は学校サイトへの連絡だけでなく,各学生にメール配信も行っています。少しサービスし過ぎかなとも思っていますが,学生と学校が双方,効率的に学べるなら,それに越したことはないと思っています。

―電子教材(iPadなど)の活用で情報の流出など新たな心配事はありませんか?

こういった時代ですので,情報に関するいろいろな事件や事故を耳にします。本学でも電子教材を活用することの大前提として,モラルの指導は徹底して行っています。学年が変わるときや,実習前など,節目節目で学生に伝えるようにしています。

ただし,やってはいけないことや事件や事故の怖さを伝えるだけでなく,周りの人がどのように思うか,自分の行動は間違っていないか,セルフチェックできるように情報感度を高めてもらい,学生からどんなささいなことでも疑問や不安があれば,質問は随時受けるようにしてサポートしています。

環境整備について

―電子教材導入までの準備,環境整備について教えてください。

学生にはできるだけいい環境で学習してもらいたいと思っておりますので,導入が決まると,電子教材の提案をしていただいた書店の担当者に相談に乗ってもらいながら,必要な準備を進めました。

大学立ち上げ時から電子教材活用については構想に入っていたので,Wi-Fi設備については,大講義室,研究室,多目的ホール(食堂を含む),サロンに導入していました。電子コンテンツやアプリは同じものを学生が授業までにダウンロードをして用意しておく必要がありますので,1台で一度に最大200台のWi-Fi機能付きの端末(iPadを含む)を同時につなぐことができるWi-Fi機器(無線LANルーター)を複数台,複数カ所に設置しています。

インターネットを無線で利用するためには無線LAMルータが必要となる

インターネットを無線で利用するには無線LANルーターが必要となる

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自分たちの手技をiPadで撮影している様子 ―撮影した動画は客観的に振り返る教材になる

それでも,電子教科書はデータ量が大きいので,学生が一斉にダウンロードするとスムーズにいかないことがありました。学生には余裕をもって準備するように伝えていますが,授業直前に慌ててダウンロードする学生が少なからずいて,混みあうこともあります。数年使っているとサポートする側も混みあうタイミングがわかるので学生に早め早めに案内するようにしています。

教員作成資料を電子化して学生に配布する仕組みも導入しておりますし,学生各自の状況に応じて,いつでもどこでも自由に学べるようにしています。学生はMicrosoftのWordやExcelなどのソフト(iPad版Office)の方が使い慣れているようで,iPadでレポートが作成されることが多いですね。

―学生サポートはどのようにされていますか?

電子教材のサポートを含めて学生サポート一環は教務事務が担当しており,ログインのためのパスワードを無くした学生への対応や,初期設定の技術的なサポートなど日々行っています。当然,使い始めのころは質問も増えますが,サポートする側も対応例を蓄積していきますので,導入当初よりずいぶんスムーズになってきています。

本学は,学生と一緒に大学を作っていく方針ですので,学長に対する意見箱を設置したり,学生と教員の懇談会,クラスも担任制をとっています。いつでも気軽に相談できる環境を整えることに留意しています。本学で蓄えた情報を卒業して臨床でも活用してもらいたいと思っています。

学生の声

―使っていただいている学生さんのご感想はいかがでしょうか?

学生にアンケートへの協力をお願いし,eテキストの使用について感想を聞いてみました。

アンケートによると,まず実感するのは,“コンパクトで持ち運びが楽になる”ということのようです。学校や実習施設,自宅への持ち運びが楽になるというのは想像していたのですが,学内でも食堂や図書館,演習室など気軽にiPadを持ち歩いて,分からないことがあったときにすぐに調べたり,先生や友達に質問したりできるというのは,思った以上に活用されているなと感じます。

また,学年が上がるにつれ,活用度も増えています。実習や演習を経て問題意識や学習意欲が高まるのと,国家試験が近づいてくることで摸試の準備や間違った問題の確認などに活用されているようです。

―アンケートには,卒業後の使用に関する質問があったり,卒業生にアンケート協力もご依頼されていますね。

各学年に卒業後どのように活用したいかの要望を聞きました。また,卒業生が来校するイベントでアンケートをお願いしたものがあります。こちらも思った以上に卒後の活用を期待する声が大きかったです。特に卒業生からは,臨床に出て疾患や薬の知識を確認したり,分からなかったことを辞書のように調べたりするのに実際に役立てているという話を聞きました。

―学生さんからは卒業後の閲覧や,コンテンツダウンロードやマーカー,書き込みがもっと簡単にできるように等,eテキストに関する課題やご要望についてもいただいております。卒業後の閲覧は現在対応しておりますし,その他の機能についても,今後開発側と連携して,日々の運用で見えてくる課題を,どんどん改善,機能追加していきたいと思っています。

ジェネラリストナースを目指す

―最後に今後の目標について教えてください。

学生個々の活用はもちろんですが,学生同士や教員がもっと有機的につながって学習や研究を深めることができないか模索しています。クラウドで授業風景をつないで,遠隔地でも同時に最大225台の端末(PC,iPad等)が一つの仮想教室上で授業できるシステムも整備しました。提携の大学や教育機関と同時に講義を行い,教育の垣根を電子によって取り払って,教育の可能性を高めたいと考えています。

今後,地域包括ケアシステムの時代になり,情報リテラシーがますます重要になってくると思っています。電子教材を導入して終わりではなく,環境の変化に合わせて10年後も20年後も自立して生きていくナースに育ってもらいたいです。日本中,世界中とつながって,情報をやりとりしながら,目の前の患者さんやご家族に向き合い,自分の周りの医療者と素晴らしい関係を結べるジェネラリストナースの育成に全学あげて取り組んでいます。

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