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レジデントのための消化器外科診療マニュアル

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各疾患の診断・治療のみならず、輸液、輸血、感染症対策、栄養管理、呼吸管理等の基本から緩和ケア、インフォームド・コンセントのノウハウまで、外科医に必要な知識とデータを凝縮したコンパクトガイド。手術のポイント、手技上のコツ、術後合併症対策なども丁寧に解説。レジデントはもとより、経験を積んだ消化器外科専門医にも有用な頼りになる1冊。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 森 正樹 / 土岐 祐一郎
発行 2012年10月判型:A5変頁:480
ISBN 978-4-260-01658-2
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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 外科領域で扱う消化器疾患は多種多様です。各臓器の悪性腫瘍,良性腫瘍はもとより各臓器に特有の良性疾患,炎症性疾患などがあります。最近は専門化が進み,専門領域における高度な知識と技量が要求される時代になりました。他方で,栄養管理・輸液管理や感染症対策,術前術後管理,抗癌剤投与法と副作用対策,外科病理学的知識,緩和医療への理解など,総論的な事項に関しても深い知識と実践が要求されています。それだけに消化器外科医を志す若い医師にとっては,勉強し,理解する量が膨大になってきています。勉強の手段は外来,病棟,手術場などでの実践的な修練・経験に加え,従来の紙媒体の教科書や新興の電子媒体の教科書など,幅広くなっています。また,iPadなどで必要な情報はほぼ瞬時に取り出せるようになったため,そのような手段での勉強も広く行われています。しかしこのような時代にあってもベッドサイドで“パッと開いてサッと勉強できる”マニュアル本の存在は重要性を失っていないように思います。
 今回,大阪大学消化器外科学講座とその関連施設で活躍している消化器外科医の知恵を結集して,医学部学生,初期研修医,後期専攻医などが消化器外科学を勉強するのに役立つ『レジデントのための消化器外科診療マニュアル』を作成しました。ワシントンマニュアルと同じサイズのコンパクトな紙面に図表を含む多くの情報を盛り込むため,内容の取捨選択とレイアウトに苦慮しましたが,実践の場で役立つものができたのではないかと喜んでいます。
 全体を2色刷りにして見やすくし,多くの図と表を使用して,内容を理解しやすいように心がけました。必要に応じてカラー図を用いてさらに見やすくし,直近の話題に関してはサイドメモの形にまとめて随所に挿入し,各項目の最後には必要最小限の文献を入れました。“自分が必要な箇所を短い時間で的確に理解できる”ということがこの本の目標ですが,それは十分に達成できると確信しています。病棟,外来,手術場,研究室,出張先病院などで,この本が必携のものになることを期待しています。また,レジデントクラスだけではなく,中堅以上の指導者にとっても知識の整理に一役買うものと期待しています。
 最後にこのような本の作成を企画し,全面的に支援いただいた医学書院の関係者,特に林 裕さん,金子哲平さんに感謝申し上げます。

 2012年9月
 大阪大学大学院消化器外科学
 森 正樹 土岐祐一郎

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総論
1 輸液管理
2 輸血
3 栄養管理
4 感染症対策
5 創傷管理
6 血液凝固と線溶現象
7 術前評価
8 呼吸管理
9 循環管理
10 ドレーン管理
11 臨床免疫
12 腫瘍学一般
13 外科病理学
14 放射線療法
15 化学療法
16 緩和ケア
17 インフォームド・コンセント
18 リスクマネジメント

トピック 術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)プロトコール

各論
1 食道疾患
 A 食道癌
 ■食道切除再建
 B 逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア
 C 食道アカラシア
2 胃・十二指腸疾患
 A 胃癌
 ■幽門側胃切除術
 ■胃全摘術
 B 胃・十二指腸潰瘍
 C 胃GIST・悪性リンパ腫・MALTリンパ腫
3 小腸疾患
 A イレウス
 B 小腸腫瘍
 C 小腸出血
 D 急性腸管虚血
 E メッケル憩室
 F クローン病
4 大腸疾患
 A 大腸癌
 ■大腸癌手術
 B 潰瘍性大腸炎(UC)
 C 虫垂炎(急性虫垂炎)
 D 大腸憩室症
 E 虚血性腸炎
 F 大腸穿孔
 ■腸管吻合術
 ■人工肛門造設術
5 肛門疾患
 A 痔核
 B 痔瘻
 ■痔核手術
 C 直腸脱
6 肝疾患
 A 肝細胞癌
 B 肝内胆管癌(胆管細胞癌)
 C 肝内結石
 ■肝切除術(外側区域切除,左葉切除)
7 胆道疾患
 A 胆石症(胆嚢結石,総胆管結石)
 B 急性胆管炎
 C 急性胆嚢炎
 ■腹腔鏡下胆嚢摘出術
 ■総胆管結石手術
 D 胆管癌,胆嚢癌,十二指腸乳頭部癌
8 膵疾患
 A 膵癌
 ■膵頭十二指腸切除術
 ■膵体尾部切除術
 B 膵嚢胞性腫瘍
 C 膵内分泌腫瘍
 D 急性膵炎
 E 慢性膵炎
9 門脈・脾疾患
 門脈圧亢進症,脾機能亢進症(脾臓摘出術)
10 腹膜疾患
 A 鼠径ヘルニア
 B 大腿ヘルニア
 C 腹壁瘢痕ヘルニア

索引

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手になじむ「阪大消化器外科マニュアル」
書評者: 北川 雄光 (慶大教授・外科学)
 本書をまず手に取ったとき,研修医時代に白衣のポケットに入れていた『ワシントンマニュアル』を懐かしく思い出した。手触り,重さ,色合いから想起したのだが,編者である森正樹教授,土岐祐一郎教授の序文を拝読し,編者がこれを意図して見事に実現していることにまず驚かされた。

 医療現場最前線の「常識」も年々進化し,年配の指導医にとっては教育している内容が本当にup to dateなのか? エビデンスはあるのか? ふと不安になることがあるのではないだろうか。日本において消化器外科医は,手術関連の知識・技量はもとより周術期全身管理,集中治療,集学的がん治療,感染症対策など極めて広範な知識・技術が要求される。このすべてにおいて,一人の指導医が最前線の知識をもってレジデントを教育していくことは必ずしも容易でない。本書は,大阪大学大学院消化器外科関連のそうそうたる執筆者らが,その洗練された知識のすべてを投入した珠玉の一冊として編集されている。

 このような分担執筆による成書は,往々にしてそれぞれのパートはよく書かれているが,統一性がなく記述のバランスもばらばらになりやすい。ところが本書では,分担執筆にもかかわらず書式や記載のレベルが統一され,ポイントが明らかにされエッセンスが絞りこまれている。それでいて,随所に織り交ぜられた図・表は知識の整理に効果的であり,極めて明瞭に提示されている。おそらく周到な打ち合わせ,綿密な推敲がなされたものと推察される。

 さらに,「サイドメモ」は,レジデントが記憶しておくべき事項が魅力的な読み物のような形で頭に入ってくる仕組みになっている。しかも,グレーバックで統一され,私はついついサイドメモを拾いながら一気に読み進めてしまった。最近のトピックや自分の専門と離れた分野のエッセンスを知りたい指導医にとっても魅力的なコラムだ。また,本書では各論のみならず総論も大変充実し,レジデント諸君が習得すべき基本概念がしっかりと,しかも簡潔に記述されている。「外科総論」の骨格を若い時代に身につけることは,その後新知見が導入された場合もそれらを的確に吸収するために大いに役に立つはずである。

 また,本書は各ページにインデックスが付され,目的の項目に到達しやすく,手になじむ。読者は使い込むうちに,どのあたりに何が書かれていたかを自然に記憶していくことになろう。そうした意味では,iPadに慣れた世代にとってもより使いやすい必携のマニュアルとなっている。救急外来や,外勤当直などさまざまな場面でレジデント諸君の心の支えになることは確実である。

 森教授,土岐教授率いる大阪大学大学院消化器外科は,診療,研究,教育すべてにおいて日本のトップを走り,外科医不足の時代にあって多くの入局希望者が殺到している大教室である。また,関連施設のネットワークを生かして,重要な臨床研究の成果を次々と発信し,多くの優秀な人材を輩出している。永年の伝統と,隆盛を誇る大教室が築き上げたエッセンスが凝縮された本書は,『阪大消化器外科マニュアル』として定番となり,『ワシントンマニュアル』をはるかに凌駕する存在となるものと確信している。
消化器外科で遭遇する全領域の疾患をカバー
書評者: 國土 典宏 (東大大学院教授・肝胆膵外科学)
 手に取ってみて,まず持ちやすくて開きやすい診療マニュアルだと感じた。白衣のポケットに入れるには少し大きいかもしれないけれど,病棟や外来,医局の机の上にこんな本が一冊あっても良い。若い世代はスマートフォンやタブレット端末を好むかもしれないが冊子体も良いと思う。

 帯に「外科医に必要な知識とデータを凝縮,頼りになるコンパクトガイド」とあるように,消化器外科で遭遇する全領域の疾患をカバーして最新の情報が詰め込まれている。各疾患の診断基準,ステージングやガイドラインなどが要領よくまとめられている。最後に外科的事項という比較的長い項目があり,手術方法などを豊富な図や写真を使い詳細に解説してある。マニュアルだから多くの図は入れにくいだろうというのが常識だが,上手に図をふんだんに入れているところが素晴らしい。膵頭十二指腸切除などの記述は本格的な手術書並である。本書は一部を除き二色刷りだが,他の類書に比べて全体にカラフルな感じを受ける。また,サイドメモが所々にあり,手術のコツや用語の解説が簡潔になされているのも特徴であろう。

 類書のマニュアル本に比べて「処方例」などの記載は少ないので,ベッドサイドに常時携帯するレジデント虎の巻というよりは,術前カンファランスや患者へのインフォームドコンセント直前の知識の整理に使うのが最も勧められる本書の活用法ではないか。前半の総論部分は通読するのも良いくらいまとまっているし,読みやすい。

 ここまで褒めすぎたかもしれないので,あえて注文をつけると,索引機能がもう少し充実していれば素早い検索ができるかもしれない。本書のスマートフォン版を作ればよいという意見もあるだろう。日本語用語に英語をどこまで附記するのか,この判断も難しかったと思う。また,手術写真について,カラー写真は美しく見やすいが,一部の白黒写真はやや見づらいのですべてカラーにしてほしいところである。各論項目については筆者の専門領域について特に詳しく拝見したが,肝疾患の章に転移性肝癌の項がないのが少し残念であった。最近大きく進歩しているホットな領域で教科書的に書きにくい領域かもしれないが,ぜひ改訂時に考えていただきたい。

 また,サイドメモで胃癌に関する有名な臨床試験であるJCOG9912,SPIRITS試験,ToGA試験などを取り上げているのは専門外の医師にとってむしろありがたいと思った。ただ,大腸癌,膵癌など他の領域にこれに対応するサイドメモがないので,ページ数の問題もあろうが次回改訂時に検討していただきたいと思う。サイドメモでは書ききれないとおしかりを受けるかもしれないが,森正樹教授ご専門の癌幹細胞についてもサイドメモをリクエストしたい。

 「レジデントのための」と銘打ってはいるが,序文にあるように本書は中堅以上の指導者の知識の整理にも大いに役立つだろう。最新の情報が詰まっているので,特に専門外領域の最新知識の取得に便利である。ただ,最新の情報は,出版した瞬間からどんどん古くなってしまうのが宿命である。大変かもしれないが,短いスパンでの改訂作業を期待したい。

 この素晴らしい消化器外科マニュアルを一門だけでまとめ上げた大阪大学外科同窓諸兄の総合力に敬意を表しつつ,すべての消化器外科医に本書を推薦したいと思う。

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