渡辺式家族アセスメント/支援モデルによる
困った場面課題解決シート
困った状況を冷静に分析し、その対応策を考えるために
もっと見る
「対応に困った家族に対して、対策が1つしか思いつかない」「家族との関係が膠着している」——こうした状況に遭遇することはないだろうか? 本書で紹介する「困った場面課題解決シート」を使用して、患者・家族と援助者(医療者)とのパワーバランスや心理的距離を分析し、困った状況への対応策を考えていく。
- 販売終了
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
まえがき
本書の原題とも言うべきテーマは,「行き詰まった患者(当事者)・家族とのかかわりを打開する,困った場面の課題解決」の方法論を提示することにあります。
そもそものスタートは2年前にさかのぼりますが,当時柳原は家族看護研究会で,渡辺はコンサルテーションの場で,現場の人たちと事例を通して家族支援方法を検討していました。医療や福祉の現場は,平たい言い方をすれば「困ったことだらけ」で,援助者たちの,かかわりにおける方法の手詰まり感,状況の行き詰まり感は深刻なものがありました。
何が原因なのか,誰が悪いのかではなく,その場で「何が起きているのか」に焦点をあてて,ちょうど絡まった毛糸を1本1本ほぐしていくような分析作業をしつつ,全体を俯瞰する見方をすれば,事態の解決は可能です。当時われわれが使っていた〈渡辺式家族アセスメントモデル〉は,そのことを目指したものでした。患者(当事者),家族,そして援助者自身の「困り事」と「対処」の視点から紐解き,相互作用をとらえる方法です。
看護職の研修会などでの反応は「事例を解く過程が,なるほどと言う感じで腑に落ちた」という声がある一方で,「いざ自分で分析しようとすると名人芸のような気がする」「状況はわかっても,それからどう支援すればよいか迷う」などの声が聞かれていました。
数多く事例分析をしてみると,困った場面というのは千差万別にあるのではなく,あるパターンがあることに気付いてきました。そこを整理できれば,状況理解のスピードは格段に上がります。そこで取り組んだのが〈家族・看護師関係パターン10〉および〈家族間調整における関係パターン7〉という類型化と命名の作業でした。同時に分析過程を記述する簡便な記録紙が重要と考えて開発したのが,本書で紹介する「困った場面課題解決シート」です。この1年,本シートを使ってセミナーや家族看護研究会で事例分析を積み上げ,『家族ケア』誌に掲載してきました。本書はそれをベースに編集されたものです。
このように10年あまりで少しずつ改変を加え続けられている「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」なのですが,名称には「渡辺式」という個人名の冠がついています。これは開発者の名前というより,〈患者(当事者)と家族,そして援助者自身も大事にされるなかでの,現場に根ざした実践を!〉という理念が込められているものなのです。われわれの研究会のメンバーが,「うーんこの名前,学問的には少し“ダサイ”かな。アカデミックな格好良さはないけど,何かこうニッポンという感じがするよね。地味でダサくて,でも分をわきまえた清廉さが身上のようなモデルだ」と評していましたが,まさしく日本型の家族支援,地に足をつけた実践をわれわれは願いとして,この名称としています。
この「渡辺式」は,家族看護学で開発したモデルですが,家族支援にかかわる多くの専門職,すなわちソーシャルワーカー,臨床心理士の方々にも活用いただけるものであることは,家族療法学会などで確認しております。
「困った場面課題解決シート」を,解決志向型の家族支援モデルとして,多くの方々に活用していただけることを願っています。
2012年1月
柳原清子,渡辺裕子
本書の原題とも言うべきテーマは,「行き詰まった患者(当事者)・家族とのかかわりを打開する,困った場面の課題解決」の方法論を提示することにあります。
そもそものスタートは2年前にさかのぼりますが,当時柳原は家族看護研究会で,渡辺はコンサルテーションの場で,現場の人たちと事例を通して家族支援方法を検討していました。医療や福祉の現場は,平たい言い方をすれば「困ったことだらけ」で,援助者たちの,かかわりにおける方法の手詰まり感,状況の行き詰まり感は深刻なものがありました。
何が原因なのか,誰が悪いのかではなく,その場で「何が起きているのか」に焦点をあてて,ちょうど絡まった毛糸を1本1本ほぐしていくような分析作業をしつつ,全体を俯瞰する見方をすれば,事態の解決は可能です。当時われわれが使っていた〈渡辺式家族アセスメントモデル〉は,そのことを目指したものでした。患者(当事者),家族,そして援助者自身の「困り事」と「対処」の視点から紐解き,相互作用をとらえる方法です。
看護職の研修会などでの反応は「事例を解く過程が,なるほどと言う感じで腑に落ちた」という声がある一方で,「いざ自分で分析しようとすると名人芸のような気がする」「状況はわかっても,それからどう支援すればよいか迷う」などの声が聞かれていました。
数多く事例分析をしてみると,困った場面というのは千差万別にあるのではなく,あるパターンがあることに気付いてきました。そこを整理できれば,状況理解のスピードは格段に上がります。そこで取り組んだのが〈家族・看護師関係パターン10〉および〈家族間調整における関係パターン7〉という類型化と命名の作業でした。同時に分析過程を記述する簡便な記録紙が重要と考えて開発したのが,本書で紹介する「困った場面課題解決シート」です。この1年,本シートを使ってセミナーや家族看護研究会で事例分析を積み上げ,『家族ケア』誌に掲載してきました。本書はそれをベースに編集されたものです。
このように10年あまりで少しずつ改変を加え続けられている「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」なのですが,名称には「渡辺式」という個人名の冠がついています。これは開発者の名前というより,〈患者(当事者)と家族,そして援助者自身も大事にされるなかでの,現場に根ざした実践を!〉という理念が込められているものなのです。われわれの研究会のメンバーが,「うーんこの名前,学問的には少し“ダサイ”かな。アカデミックな格好良さはないけど,何かこうニッポンという感じがするよね。地味でダサくて,でも分をわきまえた清廉さが身上のようなモデルだ」と評していましたが,まさしく日本型の家族支援,地に足をつけた実践をわれわれは願いとして,この名称としています。
この「渡辺式」は,家族看護学で開発したモデルですが,家族支援にかかわる多くの専門職,すなわちソーシャルワーカー,臨床心理士の方々にも活用いただけるものであることは,家族療法学会などで確認しております。
「困った場面課題解決シート」を,解決志向型の家族支援モデルとして,多くの方々に活用していただけることを願っています。
2012年1月
柳原清子,渡辺裕子
目次
開く
第1章 渡辺式家族アセスメント/支援モデルとは何か
1.渡辺式家族アセスメント/支援モデルの定義
2.渡辺式家族アセスメント/支援モデルのめざすもの
3.困った場面課題解決シートとは
1 シートの特徴
(1)援助に行き詰まりを感じた場面や時期を特定した分析ツールである
(2)援助者自身をも分析対象とする
(3)援助者とある特定の対象者の二者関係に焦点をあてた分析ツールである
(4)個々の理解から関係性へと視点を拡げるツールである
2 シートの用い方
(1)カンファレンスで用いる場合には事前配布が望ましい
(2)記入方法
4.10パターン別援助方策
1 関係性の全体像
2 10のパターンの概要
(1)パターン1-① 見えない壁に阻まれ型
(2)パターン1-② 途方に暮れた立ちつくし型
(3)パターン2-① 両者譲らずがっぷり四つ型(「家族先手」編)
(4)パターン2-② 両者譲らずがっぷり四つ型(「援助者先手」編)
(5)パターン3-① 糠に釘型
(6)パターン3-② 追えどもかわされ不発型
(7)パターン3-③ 自己満足支配型(理想の家族押しつけ型・まかせてちょうだい型)
(8)パターン4-① 堪え忍び型
(9)パターン4-② 逃げども追われる型
(10)パターン4-③ 召使い型
3 各パターン別の援助方策
4 10パターン別援助方策の活用方法
第2章 渡辺式家族アセスメント/支援モデルの背景となる理論・概念と考え方
1.援助者も含む人々の相互作用に注目する“わけ”-家族システム理論
2.「困り事」と「対処」と「背景」をとらえる“しかけ”-家族ストレス対処理論
3.「渡辺式」が小児から高齢者までの幅広い家族に対応が可能な“わけ”
-家族発達理論
4.文脈・ストーリーをとらえるという“方法”-ナラティヴアプローチ
5.「Here and Now 今ここで」に絞り込む“わけ”-解決志向アプローチ
6.かかわりの難しさへの対応と方策の“考え方”-コンフリクトと意思決定支援
第3章 〈援助者-家族関係パターン〉別実践例
事例1 精神看護 パターン1-① 見えない壁に阻まれ型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)母親のストーリーを考える
(2)援助者のストーリーを考える
(3)両者の関係性
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推測される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)関係性を構築する必要性をチームでアセスメントする
(2)いつ,誰が,誰に,どのように働きかけるのが効果的かを戦略的に考える
(3)目的を明確にしたうえで,話し合いのテーブルを設ける
2 家族のパワーレベルを上げる
(4)家族の話に十分耳を傾け,改めてともに考える関係性を構築する
事例1:記入例
事例2 がんターミナル期の家族
パターン2-② 両者譲らずがっぷり四つ型-「援助者先手」編
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)Bさんのストーリーを考える
(2)姉のストーリーを考える
(3)援助者(退院調整看護師)のストーリーを考える
(4)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを下げる
(1)援助者の困惑を自身で解明し,かかわり方を改める
(2)家族メンバーそれぞれが直面している現実を描いてみる
(3)「防衛機制」を理解して,それを解く
(4)意思決定する人は誰で,その人に影響を与えている人は誰かを考えてみる
2 患者・家族のパワーレベルを下げる
(5)看護師の立ち位置を変える
-『死のストーリー』から『生のストーリー』への支援の転換をはかる
(6)「あなたが望む最良」を支援するという姿勢で支援にあたる
(7)Bさんの残された時間を支える人々(家族)のエンパワメント
(8)甘えられる人的環境づくり-システムづくり
事例2:記入例
事例3 NICU パターン3-② 追えどもかわされ不発型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)母親のストーリーを考える
(2)援助者(NICU看護師)のストーリーを考える
(3)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを下げる
(1)援助者の期待や価値観からの家族像(レッテル)をいったん白紙にし,
対象者の体験していることを,内側に入り込むようにして,描いてみる
(2)家族と横並びの関係づくりをこころがける
2 家族のパワーレベルを上げる
(3)家族の育児歴(経験知)を使って対処力を高めていくようにする
(4)ともに歩む関係をつくって家族をエンパワメントする
(5)問いかけを通して母親自身が自分の考えを言語化できるようにしていく
(6)人の存在や社会サービスを使って育児力を補い,
家族のエンパワメントをはかる
事例3:記入例
事例4 クリティカルケア パターン4-① 堪え忍び型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)妻のストーリーを考える
(2)援助者(ICU看護師)のストーリーを考える
(3)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)スタッフ間でカンファレンスをもち,むやみに妻への警戒心や恐れをもたず,
以前の関係性のなかで普段の態度を持続することを相談する
(2)固い組織的対応と柔らかい対応を使い分ける
2 家族のパワーレベルを下げる
(3)妻を支えていける可能性のある人を探す(家族の人的資源の開発)
(4)組織で対応し,責任と誠意ある態度を示していく
(5)苦しみを傾聴し,残された時間のよりよい時間の協働を提案していく
事例4:記入例
事例5 在宅ケア パターン4-③ 召使い型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)長男のストーリーを考える
(2)援助者のストーリーを考える
(3)両者の関係性
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推測される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)冷静に現状を把握する(巻き込まれ支配されている現状に気づく)
(2)巻き込まれを招いている認知の歪みに気づく
(3)「枠の中で頑張る」姿勢を保持する
(4)チーム間で援助の方針と枠組みを共有する
2 家族のパワーレベルを下げる
(5)カンファレンスを開催し,家族の不満を十分に聴く
(6)家族のニーズを確認し,共有する
(人と問題を切り離す,過去から未来へ,主張からニーズへ)
(7)できること,できないことを示し,合意を形成する。
合意形成が困難な場合は,組織の判断に委ねる
事例5:記入例
付録:困った場面課題解決シート
1.渡辺式家族アセスメント/支援モデルの定義
2.渡辺式家族アセスメント/支援モデルのめざすもの
3.困った場面課題解決シートとは
1 シートの特徴
(1)援助に行き詰まりを感じた場面や時期を特定した分析ツールである
(2)援助者自身をも分析対象とする
(3)援助者とある特定の対象者の二者関係に焦点をあてた分析ツールである
(4)個々の理解から関係性へと視点を拡げるツールである
2 シートの用い方
(1)カンファレンスで用いる場合には事前配布が望ましい
(2)記入方法
4.10パターン別援助方策
1 関係性の全体像
2 10のパターンの概要
(1)パターン1-① 見えない壁に阻まれ型
(2)パターン1-② 途方に暮れた立ちつくし型
(3)パターン2-① 両者譲らずがっぷり四つ型(「家族先手」編)
(4)パターン2-② 両者譲らずがっぷり四つ型(「援助者先手」編)
(5)パターン3-① 糠に釘型
(6)パターン3-② 追えどもかわされ不発型
(7)パターン3-③ 自己満足支配型(理想の家族押しつけ型・まかせてちょうだい型)
(8)パターン4-① 堪え忍び型
(9)パターン4-② 逃げども追われる型
(10)パターン4-③ 召使い型
3 各パターン別の援助方策
4 10パターン別援助方策の活用方法
第2章 渡辺式家族アセスメント/支援モデルの背景となる理論・概念と考え方
1.援助者も含む人々の相互作用に注目する“わけ”-家族システム理論
2.「困り事」と「対処」と「背景」をとらえる“しかけ”-家族ストレス対処理論
3.「渡辺式」が小児から高齢者までの幅広い家族に対応が可能な“わけ”
-家族発達理論
4.文脈・ストーリーをとらえるという“方法”-ナラティヴアプローチ
5.「Here and Now 今ここで」に絞り込む“わけ”-解決志向アプローチ
6.かかわりの難しさへの対応と方策の“考え方”-コンフリクトと意思決定支援
第3章 〈援助者-家族関係パターン〉別実践例
事例1 精神看護 パターン1-① 見えない壁に阻まれ型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)母親のストーリーを考える
(2)援助者のストーリーを考える
(3)両者の関係性
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推測される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)関係性を構築する必要性をチームでアセスメントする
(2)いつ,誰が,誰に,どのように働きかけるのが効果的かを戦略的に考える
(3)目的を明確にしたうえで,話し合いのテーブルを設ける
2 家族のパワーレベルを上げる
(4)家族の話に十分耳を傾け,改めてともに考える関係性を構築する
事例1:記入例
事例2 がんターミナル期の家族
パターン2-② 両者譲らずがっぷり四つ型-「援助者先手」編
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)Bさんのストーリーを考える
(2)姉のストーリーを考える
(3)援助者(退院調整看護師)のストーリーを考える
(4)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを下げる
(1)援助者の困惑を自身で解明し,かかわり方を改める
(2)家族メンバーそれぞれが直面している現実を描いてみる
(3)「防衛機制」を理解して,それを解く
(4)意思決定する人は誰で,その人に影響を与えている人は誰かを考えてみる
2 患者・家族のパワーレベルを下げる
(5)看護師の立ち位置を変える
-『死のストーリー』から『生のストーリー』への支援の転換をはかる
(6)「あなたが望む最良」を支援するという姿勢で支援にあたる
(7)Bさんの残された時間を支える人々(家族)のエンパワメント
(8)甘えられる人的環境づくり-システムづくり
事例2:記入例
事例3 NICU パターン3-② 追えどもかわされ不発型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)母親のストーリーを考える
(2)援助者(NICU看護師)のストーリーを考える
(3)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを下げる
(1)援助者の期待や価値観からの家族像(レッテル)をいったん白紙にし,
対象者の体験していることを,内側に入り込むようにして,描いてみる
(2)家族と横並びの関係づくりをこころがける
2 家族のパワーレベルを上げる
(3)家族の育児歴(経験知)を使って対処力を高めていくようにする
(4)ともに歩む関係をつくって家族をエンパワメントする
(5)問いかけを通して母親自身が自分の考えを言語化できるようにしていく
(6)人の存在や社会サービスを使って育児力を補い,
家族のエンパワメントをはかる
事例3:記入例
事例4 クリティカルケア パターン4-① 堪え忍び型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)妻のストーリーを考える
(2)援助者(ICU看護師)のストーリーを考える
(3)関係性の整理
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推察される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)スタッフ間でカンファレンスをもち,むやみに妻への警戒心や恐れをもたず,
以前の関係性のなかで普段の態度を持続することを相談する
(2)固い組織的対応と柔らかい対応を使い分ける
2 家族のパワーレベルを下げる
(3)妻を支えていける可能性のある人を探す(家族の人的資源の開発)
(4)組織で対応し,責任と誠意ある態度を示していく
(5)苦しみを傾聴し,残された時間のよりよい時間の協働を提案していく
事例4:記入例
事例5 在宅ケア パターン4-③ 召使い型
〔シートの上段〕
I 対象者と援助者のアセスメント
1 それぞれのストーリーと関係性
(1)長男のストーリーを考える
(2)援助者のストーリーを考える
(3)両者の関係性
2 パワーバランスと両者の心理的距離と向き
(1)パワーバランス
(2)心理的距離と向き
3 推測される関係性パターン
II 援助の方策
1 援助者のパワーレベルを上げる
(1)冷静に現状を把握する(巻き込まれ支配されている現状に気づく)
(2)巻き込まれを招いている認知の歪みに気づく
(3)「枠の中で頑張る」姿勢を保持する
(4)チーム間で援助の方針と枠組みを共有する
2 家族のパワーレベルを下げる
(5)カンファレンスを開催し,家族の不満を十分に聴く
(6)家族のニーズを確認し,共有する
(人と問題を切り離す,過去から未来へ,主張からニーズへ)
(7)できること,できないことを示し,合意を形成する。
合意形成が困難な場合は,組織の判断に委ねる
事例5:記入例
付録:困った場面課題解決シート
書評
開く
ケアに行き詰まった場面での解決方法を示す指南書
書評者: 鈴木 和子 (家族支援リサーチセンター湘南)
最近,家族ケアに関する実践書の出版が増えている。それは,在宅ケアだけではなく,施設内でも特に在宅への移行期などには家族支援が必要不可欠になってきたためであろう。本書は,患者を含む家族へのケアに真剣に取り組む看護師や福祉職がケアに行き詰まった場面での解決方法を示す指南書である。この本の基本となっているのは,長年の間ケーススタディを積み重ねて著者らが開発した「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」に基づいた課題解決シートに記入しながら,困った場面で今,何が起こっているのかを自然に解き明かしていく道筋を示すことである。
第1章では,この問題解決シートの構成とそこに何を記入するのかが示されているが,一般的なアセスメントツールとは異なる点が挙げられている。それらは,1.援助に行き詰まりを感じた場面や時期を特定した分析ツールであること,2.援助者自身をも分析対象とすること,3.援助者とある特定の対象者の二者関係に焦点を当てて分析すること,4.個々の理解から関係性へと視点を拡げるツールであるということである。また,その分析過程から,援助対象者と援助者自身の内面で起こっていることをストーリーとしてまとめるという作業により,この方法をさらに深いものにしている。最後に,援助者と対象者の関係性に起こっているパワーバランスを分析してパターン化し,それらから有効な援助方策と援助的コミュニケーションの方法が具体的に示されていて,その日から「これは使える!」と思わされるから不思議である。
第2章では,このユニークな方法が家族システム理論,家族ストレス対処理論,家族発達理論,ナラティヴアプローチなど家族看護学の主要な理論から生まれた経緯と,困難な場面で有効な「Here and Now 今ここで」に絞り込む解決志向アプローチ,かかわりの難しさへの対応と方策のためのコンフリクトと意思決定支援について解説されている。
そして第3章では,援助者―家族関係パターン別に多様な実践事例(精神看護,がんターミナル期の家族,NICU,クリティカルケア,在宅ケア)を用いて援助プロセスが詳細に解説されているが,いずれも圧巻であり,読み進むうちに視界が開けてくるような感覚が非常に楽しく,実践者には,かつてないほど納得がいくツールであることがわかるであろう。また,評者としては,それぞれの事例の記述から真珠のような言葉の輝きを読み取ることができたのであるが,それらを全部挙げることはできないので,ぜひ,読者がそれぞれに自分にとっての宝となる言葉を発見してほしいと願っている。
書評者: 鈴木 和子 (家族支援リサーチセンター湘南)
最近,家族ケアに関する実践書の出版が増えている。それは,在宅ケアだけではなく,施設内でも特に在宅への移行期などには家族支援が必要不可欠になってきたためであろう。本書は,患者を含む家族へのケアに真剣に取り組む看護師や福祉職がケアに行き詰まった場面での解決方法を示す指南書である。この本の基本となっているのは,長年の間ケーススタディを積み重ねて著者らが開発した「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」に基づいた課題解決シートに記入しながら,困った場面で今,何が起こっているのかを自然に解き明かしていく道筋を示すことである。
第1章では,この問題解決シートの構成とそこに何を記入するのかが示されているが,一般的なアセスメントツールとは異なる点が挙げられている。それらは,1.援助に行き詰まりを感じた場面や時期を特定した分析ツールであること,2.援助者自身をも分析対象とすること,3.援助者とある特定の対象者の二者関係に焦点を当てて分析すること,4.個々の理解から関係性へと視点を拡げるツールであるということである。また,その分析過程から,援助対象者と援助者自身の内面で起こっていることをストーリーとしてまとめるという作業により,この方法をさらに深いものにしている。最後に,援助者と対象者の関係性に起こっているパワーバランスを分析してパターン化し,それらから有効な援助方策と援助的コミュニケーションの方法が具体的に示されていて,その日から「これは使える!」と思わされるから不思議である。
第2章では,このユニークな方法が家族システム理論,家族ストレス対処理論,家族発達理論,ナラティヴアプローチなど家族看護学の主要な理論から生まれた経緯と,困難な場面で有効な「Here and Now 今ここで」に絞り込む解決志向アプローチ,かかわりの難しさへの対応と方策のためのコンフリクトと意思決定支援について解説されている。
そして第3章では,援助者―家族関係パターン別に多様な実践事例(精神看護,がんターミナル期の家族,NICU,クリティカルケア,在宅ケア)を用いて援助プロセスが詳細に解説されているが,いずれも圧巻であり,読み進むうちに視界が開けてくるような感覚が非常に楽しく,実践者には,かつてないほど納得がいくツールであることがわかるであろう。また,評者としては,それぞれの事例の記述から真珠のような言葉の輝きを読み取ることができたのであるが,それらを全部挙げることはできないので,ぜひ,読者がそれぞれに自分にとっての宝となる言葉を発見してほしいと願っている。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。