CT・MRI実践の達人

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検査時の状況判断や工夫によって、診断の一手段としての画像の価値が大きく変わるということはままある。特にCT・MRIにおいて正確で迅速な結果を得るには、「必要かつ十分な画像情報を提供する」という強い意思がなければならない。「疾患、病態」と「機器、検査」の双方の理解を深め、ベストなCT・MRI検査を実践するために、レジデントのみならずCT・MRI検査に関わるすべてのスタッフ必携の書。
聖路加国際病院放射線科レジデント
発行 2012年07月判型:A5頁:224
ISBN 978-4-260-01475-5
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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  • 序文
  • 目次
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 「画像検査は自動販売機ではない!」日頃から口を酸っぱくして言い続けていることである.コインを投入して自動販売機のボタンを押してジュースやコーラを買うようには,画像を得ることはできない.そこには,必要かつ十分な画像情報を提供するという強い意志をもったプロフェッショナル集団が介在しなければならない.放射線科看護師,診療放射線技師,放射線科医の三位一体の画像チームである.この中心にあって汗水流して日夜頑張るのがCT・MRI担当の放射線科レジデントである.専用のPHSを渡されて,日夜,緊急検査の依頼を受け,技師,看護師と検査を計画して実践し,画像結果を吟味し,最終的に画像診断レポートを作成する.画像検査自体も毎年進歩する.CT・MRI,超音波その他の検査も含めてどの検査が最も鋭敏で,最も正確な結果を出し得るのか,そのためにはどの画像条件を選択適応すべきか.広い範囲の画像診断について的確に判断するのは言うほどに簡単ではない.毎日勉強し,冷や汗かきながら,病院における臨床活動の円滑な流れに貢献している.
 この日常的活動の中から,聖路加国際病院放射線科版のレジデントマニュアル『CT・MRI実践の達人』が生まれた.現在の画像診断の中核をなすCTとMRIを正しく実施するために,各種の疾患を頭に描きながら各臓器の標準的な検査の進め方を項目ごとに解説した.決して名人技ではなく,ある年月,みんなで一緒に練り上げた成果であり,達人という名に相応しい実践的ガイドブックでもある.石山主将のもとでの野球チーム・実践ミーティング・メモのようなものである.送りバントのミスやサインの見落としは決して許されない.必ずバットにあて走者を進塁させなければならない.ヒットが出て普通.時々ホームランを打つことも期待される.よい画像はよい診断に,よい診断はよい臨床に繋がる.フットワークのよい放射線科レジデントが作ったこのマニュアルによって画像の質全体が向上すれば,きっと病院全体の質の向上に繋がるであろう.大きな夢をもちたいものである.
 この『CT・MRI実践の達人』を完成するにあたっては,聖路加国際病院放射線科レジデントのチームワークのよさはもちろんではあるが,常に温かくも厳しくも前方を明るく照らして続けてくれた医学書院の菅 陽子氏に改めて感謝します.

 最後に,昨年3月11日の東日本大震災の多くの犠牲者の方々のご冥福を心からお祈り申し上げます.

 2012年4月
 齋田幸久

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はじめに
 知っておきたいCTの基本事項
 知っておきたいMRIの基本事項
 MRIプロトコールの組み立て方
 造影剤と腎機能

CT編
 A.頭頸部
  1.脳,眼窩部
  2.副鼻腔
  3.側頭骨
  4.頸部
 B.胸部
  1.胸部(大血管除く)
  2.心臓冠動脈(心電図同期撮影)
 C.腹部・骨盤
  1.上腹部(肝,胆嚢,副腎,膵)
  2.腎,尿路,膀胱
  3.下腹部,骨盤部
  4.消化管(小腸造影,大腸コロノグラフィを含む)
  5.悪性腫瘍の転移検索
 D.血管系
  1.脳血管
  2.頸動脈
  3.肺血管(肺動脈,気管支動脈)
  4.腹腔内,骨盤部動脈
  5.大動脈
  6.透析シャント,上肢動脈,下肢動脈
  7.下肢静脈
 E.骨格系
  1.椎体
  2.四肢,その他

MRI編
 F.脳
  基本シーケンス
  1.スクリーニング
  2.急性期脳梗塞
  3.脳出血(原因検索)
  4.血管病変(もやもや病,血管奇形,動静脈瘻,動脈瘤,静脈血栓症)
  5.脳転移検索
  6.脳腫瘍(占拠性病変)
  7.外傷,脳挫傷
  8.脳炎
  9.多発性硬化症
  10.痙攣,てんかん
  11.めまい,内耳道~脳幹部病変
  12.認知症
  13.下垂体(下垂体腺腫精査など)
  14.新生児スクリーニング
 G.眼窩
  基本シーケンス
  1.眼窩
 H.頸部
  基本シーケンス
  1.咽頭,喉頭(咽頭周囲頭頸部領域)
  2.頸動脈プラークイメージング
  3.耳下腺,顎下腺,舌下腺
 I.脊椎・脊髄
  基本シーケンス
  1.スクリーニング
  2.圧迫骨折
  3.椎体・椎間板炎
  4.仙腸関節炎,仙椎病変(不全骨折など)
 J.胸部
  1.乳腺
  2.心臓
  3.縦隔腫瘍
 K.上腹部
  基本シーケンス
  1.肝
  2.膵管,胆管,胆嚢(MRCP)
  3.膵
  4.腎,副腎
  5.腎動脈(および下肢動脈)
 L.骨盤部
  基本シーケンス
  1.子宮
  2.卵巣
  3.前立腺
  4.膀胱
  5.精巣
  6.停留精巣
  7.胎児
 M.骨・関節
  1.骨折・骨髄炎
  2.肩関節
  3.膝関節
  4.股関節
  5.顎関節
  6.手関節(および関節周囲を含む炎症性疾患)

 あとがき
 略語一覧
 索引

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画像検査への理想と熱意が込められた一冊
書評者: 似鳥 俊明 (杏林大教授・放射線科)
 現代医療におけるCT/MRIの重要性は時を経るにつれ増しているようである。規模の大小,地域にかかわらず,日本中の病院のCT/MRI検査室は隙なく詰まった予約をこなすのに忙しく,緊急検査の依頼電話が鳴り響いている。少し気を抜くとCT/MRI検査は心のこもらない流れ作業に堕ちる危険をはらんでいる。そのような現実の中で,本書は「医療の中でますます重要になっている画像検査は,その特性を熟知し,患者の状態から必然性を熟慮した実施がなされるべきである」という理想と熱意が伝わる書である。聖路加国際病院放射線科のレジデントが常にポケットに入れているマニュアルの発展型とも言えようが,全国のCT/MRI検査室に常備され活用されれば,現状の医療現場が少し余裕を取り戻すのではないかとの期待もできる。

 主訴,問診,理学的所見,血液検査などから想定された疾患を念頭に置いて,いかに画像検査の組み立てを行うのが望ましいかが,よくまとめられて記載されている。簡潔な記載の中に連日実際に多彩な症例をこなしている自信が垣間見られる。特にCT/MRIの適応に関する文章は明快である。またMRI検査の推薦シーケンス,断層面の設定が具体的に示されており,さらにその撮像所要時間が逐一記載され強調されているが,現場では大いに参考となろう。既にプロトコールの確立している施設でも見直しの材料となるはずである。医療人こそ常に自己に対して批判的でありたい。

 ページをめくって気が付くのは,Memo欄に比較的大きなスペースが当てられていることだが,施設や個々の患者の状態に合わせた読者のmodifyの必要性を強く意識し,想定した故であろう。経験を重ねてゆく読者の手による書き込みで汚れた本書はさらに,練達の士,エキスパートのone's desk-side bookと呼ぶにふさわしいものとなるのだろう。
救急や外来でCTやMRIをオーダーする際に必須の書
書評者: 杉村 和朗 (神戸大病院長/神戸大大学院教授・放射線医学)
 胃透視を行うに当っては,まずはバリウムを作るところから始まり,配合,濃度,添加物,それに加えてフィルムや増感紙についても医師によって好みがあった。単に好みという訳ではなく,エキスパートといわれる医師の写真は明らかに優れていた。透視技術だけではなく,事前の準備やベテラン技師による撮影条件のさじ加減が,二重造影の質に大きな差を与え,診断能に大きく影響していた。画像診断医は単に出来上がった写真を読むのではなく,優れた診断ができる写真を手に入れるところから始まっていることを,身をもって教えられていた時代である。

 本書の責任編集者である齋田幸久先生といえば,胃透視の第一人者であり,多くの著書や論文を出しておられる。写真を撮るのは技師任せ,出来上がった画像をモニターで診断するだけの診断医では高度な診断ができないと常々おっしゃっている。従来の画像診断に比べて,CT,MRIは簡便になっているととらえられがちであるが,患者からいかにして優れた情報を引き出すかによって,診断能が大きく変わってくる。優れた診断を行うには,豊富な経験と知識を基に,CT並びにMRIに習熟した技師をはじめとする医療スタッフとの協力関係によって,診断に適した画像を得ることが不可欠である。齋田先生の,「優れた画像診断を行うには,読影に足る画像を得た上で,豊富な知識と経験が不可欠である」というマインドは,聖路加のスタッフ,レジデント,医療スタッフに浸透している。それを石山光富医師という優れた診断医に引き継がれ,診断部の仲間を巻き込んでそのマインドを一冊の書にまとめあげたのが本書である。

 CTは広範囲を高速で撮影できるようになったが,目的部位の情報をうまく引き出すためには撮影プロトコールの設定がより高度になっている。またMRIはさまざまなコントラストの画像が得られるが,これをさまざまな方向で撮像したり,拡散強調像や,MRAといった画像,脂肪抑制等を行うと,撮像時間も長くなり,出てきた膨大な情報に流されてしまうことがしばしば見受けられる。とりあえずあれもこれも撮像するのではなく,必要性を吟味しながら画像を得ることによって,読影レベルは格段に上がってくる。本書は,CTについては一般的なプロトコールを提示した上で,目的,特徴,基本画像,3次元像等のための追加作成画像へと進められている。MRIについては,一般的なプロトコールをまず提示し,個別に対応するために,目的,撮像法の特徴,撮像時間,追加検査と続いている。撮像の特徴を知った上で,20分前後の検査時間を目安に,どういった場合にどの検査を省くか,どの検査を追加するかなどが,豊富な知識と経験を基に述べられている。

 鎮痙剤の使い方や造影のタイミングや疾患ごとの注意点など,コンパクトにまとめられている中に,重要なさじ加減が散りばめられている。このように,本書は撮影現場のみならず,救急,あるいは外来でCTやMRIをオーダーするときに,優れた画像を得て正しい診断に至りたいという目的を満たすことのできる,必須の書であると考え推薦する。このような書を世に出すきっかけとなった齋田先生の教育に対する情熱,それを受け止めて優れた内容にまとめ上げた石山医師を始め,関係者のご努力に感謝する。
これまでの解説書とは異なる新しいタイプの実践書
書評者: 渡邊 祐司 (倉敷中央病院放射線科主任部長)
 この書は,これまでのCT,MRIの解説書とは異なる全く新しいタイプの実践書である。最大の特徴は,主眼を“目的疾患ごとに最適な画像所見を引き出すための検査プロトコール”を組み立てることに置いていることである。放射線科医はもちろん検査をオーダーする他科の医師,検査オーダーを受ける診療放射線技師にとっても重宝する1冊である。

 MRIやCTの機器の進歩に伴い検査内容が多彩となり,どのような検査プロトコールにすれば最も効率よく診断に適する画像を提供できるのか,困惑することがしばしばである。臨床現場では追加スキャンなどについて検査依頼医師や担当放射線技師は放射線科専門医のアドバイスを待っている時間的余裕もない。また,放射線科専門医が不足している昨今,検査時にそもそも放射線科医が不在の状況も多々あると思われる。そのような状況を打開してくれるのがこの書である。あらかじめ,症状や疾患ごとに理想的な検査プロトコールを決めておけば,診断に最適な画像情報を迷うことなく手にすることができる。

 本書は,“はじめに”“CT編”“MRI編”の3部から構成されている。“はじめに”は基礎編で,初学者にもCT,MRIの原理が学べるように,わかりやすく解説している。MRI検査プロトコールの組み立て方を習得し,造影剤の使い方と腎機能障害における基本的考え方を学ぶことができる。“CT編”“MRI編”では検査部位ごとに「検査プロトコール」「目的・特徴」「基本画像」「追加作成画像」に分けて説明されている。CT編では,頭頸部,胸部,腹部・骨盤,血管系,骨格系に分類し,MRI編では,脳,眼窩,頸部,脊椎・脊髄,胸部,上腹部,骨盤部,骨・関節に分類し,その中で症状や疾患別に最適な検査プロトコールを提案している。「目的・特徴」の項目では検査を実施する上での基本となる考え方が書かれている。造影検査が必要な場合と不要な場合と,撮像時間が明確に示されている。さらに「追加検査」の項目では,通常のプロトコールでは不十分なときに追加すべきスキャンをどうすればよいかが書かれている。まさに“CT・MRI実践の達人”になれる書である。またCT,MRI,場合によってはUSの比較がされているので,特定の症状や疾患で適切に検査法を選択するのに役立つ。

 この書は最新の検査知識を集約している上に,このような特徴をそなえているので,検査室に1冊常備しておくとよいと思われる。そしてレジデントだけでなく中堅,ベテランの医師でさえ一読するとよい1冊である。また検査オーダーを受ける放射線技師にとっても,臨床に必要な画像を得るためのプロトコール選択についての考え方を学ぶために大いに役立つと思われる。この本を読んで明日からあなたも検査の“実践の達人”になりましょう!

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