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更年期・老年期外来ベストプラクティス
誰もが知りたい104例の治療指針

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本書は、更年期・老年期外来で対応に迷う頻度の高い諸問題に対して、具体的な指針がほしいという現場からの要望に応えて企画された。Q&A方式で、当該領域の専門家が最新の治療指針を解説している。診療の概要、治療方針、対処や処方の実際、要点などが簡潔明瞭に記載され、診療に即応できる実践的な内容である。
編集 神崎 秀陽
発行 2012年01月判型:B5頁:408
ISBN 978-4-260-01533-2
定価 9,350円 (本体8,500円+税)

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まえがき

 世界でも類のない少子高齢化社会の到来によって,産婦人科診療においても,中高年女性のヘルスケアはますます重要になっている.対象となる患者数が増加するとともに,新たに開発された多種のホルモン製剤,内分泌・循環器関連薬剤,向精神薬などが近年相次いで認可され,治療薬物の選択と投与方法などもかなり変化してきた.また,氾濫するマスコミやインターネット情報によって,中高年女性ではQOL改善への意欲が高まる一方,不正確な情報に翻弄される事態も起こってきている.
 更年期・老年期女性に特有の多様な疾病や愁訴に対応している婦人科外来(女性外来)では,泌尿生殖器疾患への対応とともに,内科,外科,整形外科,精神科などの各種疾患の診断と治療も要求される.オフィス開業の医師はもとより一般病院勤務医においても,産婦人科には全人的に女性のヘルスケアを担う責務があることを認識し,家庭医的な意識を持って生殖器以外の疾患にも柔軟に対応して診療の幅を広げていく必要がある.
 本書では,更年期や老年期女性を取り扱う外来診療で遭遇する頻度が高い病態を網羅して,Q&A形式で,当該領域の専門家の方々に最新の治療指針を解説していただいた.診療の概要,治療方針,対処の実際,さらには処方の実際や要点(ここがポイント)などが簡潔明瞭に記載され,診療上の諸問題に即応できる実践的な内容となっている.受診動機として高頻度の泌尿生殖器関連疾患については,産婦人科専門医としての必須知識の整理に役立つ内容となっており,また更年期障害で治療の主体となるホルモン補充療法関連として細別記載された各項目は,現在処方可能な薬剤それぞれの特徴と問題点を改めて整理・理解する一助にもなる.さらに心身症,神経症,メタボリック・シンドローム,骨粗鬆症などに関連して提示されている各種疾病への治療指針は,対応可能領域を拡大するためにも非常に有用な情報である.更年期・老年期女性のヘルスケアを担当されている方々の明日からの診療に,本書が役立つことを願っている.

 2011年12月
 神崎秀陽

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<目次より抜粋>

I.診療の実際
■注意すべき症状・疾患
1.【キーワード:更年期障害】
のぼせ,めまい,頭痛,肩こりなどの種々の不定愁訴を訴える53歳の患者です.問診のコツ,行うべき検査,治療方針,まず考えるべき治療法の実際などについて教えて下さい.
2.【キーワード:更年期障害】
疲れやすく不眠があり,体重も減少してきたため,更年期障害に違いないと考えて受診した46歳の患者です.月経周期の異常やのぼせなどの症状はありません.治療方針と対処の実際について教えて下さい.

■更年期周辺の症状・疾患
10.【キーワード:頭痛】
頭痛が持続し,消炎鎮痛薬を頻用している48歳の患者です.最近,頭痛の回数が増えてきたといいます.治療方針と対処の実際について教えて下さい.
11.【キーワード:頭痛】
片頭痛の診断でトリプタン製剤を頓用している52歳の患者です.更年期障害に対してHRTを開始したところ,更年期症状は落ち着きましたが,片頭痛が増悪してしまいました.治療方針と対処の実際について教えて下さい.

■婦人科系の症状・疾患
21.【キーワード:帯下】
「おりものが多くなった」と来院した50歳の患者です.注意すべき疾患の鑑別方法を中心に,対処の実際について教えて下さい.
22.【キーワード:不正性器出血】
中間期出血を繰り返すという既婚で未出産の患者です.月経は整順です.非常に神経質で,低用量ピルを服用した際に下肢痛を訴えて中止しています.治療方針と対処の実際について教えて下さい.

■脳機能系の症状・疾患
45.【キーワード:物忘れ,記憶力低下】
HRTは,物忘れ,記憶力低下に効果があると指摘されていますが,本当でしょうか.最近の考え方について,わかりやすく教えて下さい.
46.【キーワード:アルツハイマー病】
HRTはアルツハイマー病の発症を減少させると指摘されていますが,本当でしょうか.最近の考え方をわかりやすく教えて下さい.

■精神神経系の症状・疾患
47.【キーワード:うつ】
うつ症状,不安,不眠などの神経症状を訴える53歳の患者です.患者は更年期障害だと思って来院しました.精神疾患と更年期障害を鑑別するポイントについて,わかりやすく教えて下さい.
48.【キーワード:うつ】
更年期障害を主訴に来院した52歳の患者です.パニック障害や過換気症候群,うつなどがみられ,生活環境や心理的要素などの因子も大きいと考えられます.治療方針と対処の実際について教えて下さい.

II.検査の実際
56.【キーワード:がん検診】
HRTを行っている53歳の更年期の患者です.どのような間隔で子宮癌と乳癌の検診を行うべきでしょうか.対処の実際について教えて下さい.
57.【キーワード:がん検診】
HRTを5年間行い,治療を中止した更年期の患者です.いつまで子宮内膜検査を行うべきでしょうか.対処の実際について教えて下さい.

III.薬物療法の実際
65.【キーワード:HRTの適応・作用・効用】
美容目的にHRTを行ってほしいという60歳の患者です.本当にエストロゲンには美肌効果があるのでしょうか.また,美容目的にHRTを行っても問題ありませんか.治療方針と対処の実際について教えて下さい.
66.【キーワード:HRTの適応・作用・効用】
ピルを使用してきた49歳の患者です.閉経も近いので,HRTに切り替えてほしいといいます.そのタイミング,目安は何でしょうか.治療方針と対処の実際について教えて下さい.

IV.その他の治療法
100.【キーワード:カウンセリング】
更年期障害の患者には,カウンセリングが重要だといわれています.そのポイントについて教えて下さい.カウンセリングには,薬物療法の限界を補う効果があると考えてよいのでしょうか.
101.【キーワード:心理療法】
更年期障害の患者に対する心理指導について,具体的に教えて下さい.心理指導は本当に効果があるといえるのでしょうか.

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女性の一生のゲートキーパー宣言
書評者: 木村 正 (阪大大学院教授・産科学婦人科学)
 医学や医療の高度化に伴い専門化が進み,体のパーツにはやたら詳しくならねばならないが,全人的な見地で物事を見ることが難しい時代になってきた。もともと産婦人科医は,妊婦健診という場で妊娠女性の健康問題のすべてに対して,たとえ専門的治療はできなくとも診断を行い,それぞれの専門家につなぎ,適切な治療・管理を行うという妊婦の健康のゲートキーパー(門番)の役割を担ってきた。妊娠中であっても感冒や膀胱炎といった一般疾患,高血圧,糖尿病などの生活習慣病,うつ状態などの精神的問題,頭蓋内出血や心不全,甲状腺クリーゼなどの生命にかかわる重篤な疾患までが一定の頻度で発生し,健診を行っている産婦人科医が初期対応を行わなければならない。妊婦健診では「○○の臓器しか診ません」という態度・知識では務まらないのである。

 このような知識・経験がある産婦人科医がこれからの超高齢化社会に向かって更年期・老年期女性に対しても当然ゲートキーパーとして貢献するべきである。その際に妊婦とは異なる疾患の頻度や,年齢からくるさまざまな問題に向き合わなければならない。また,患者さんたちの意識が高まり,さまざまな診断や治療,あるいは生活指導に至るまで,私たちの行為すべてに根拠を求められることが多くなった。

 本書はそのような時代の要請にぴったりと沿った内容である。Q&A形式で実際に患者さんが目の前にいるような臨場感で読むことができる。この年代の女性の訴えは時に複合的,時に相矛盾し一筋縄にはいかないが,その状況をよくとらえて各質問が構成されており,またキーワードが付けられて全体の理解を助けている。

 本書を通読して一貫して感じるのは編者・神崎秀陽教授の,この年代の女性に対する限りないやさしさをベースにした構成と,閉経周囲の女性に特有の大きな内分泌学的変化に対する深い洞察である。特にホルモン補充療法に関しては,実際の診療現場で説明に窮するような質問が数多く作られており,それらに対して根拠(エビデンス)に基づいた解決法が記されている。それ以外にも血圧,高脂血症,骨粗鬆症,うつ,不眠,記憶力障害などに関する幅広い訴えが提示されている。婦人科がん検診に加えて,排尿障害,外陰の疼痛,性交渉の問題など,産婦人科医こそが対応できるが,なかなか日本の教科書や論文には出てこない項目も多く記載されている。一部に従来の習慣,感覚に基づいた記述がみられるが,これらは改訂版の際にさらに良いものへと磨かれてゆくであろう。

 産婦人科医は,生殖医療に始まり胎児,新生児,小児から更年期・老年期に至る女性の一生のパートナーであり,ゲートキーパーであることがその存在の基本である。その上でさらに腫瘍や周産期,生殖などの専門性を持つべきである。基本を再構築するために,すべての産婦人科医に一読をお薦めする。
最新の治療方針と,適切かつ具体的な対処法を掲載
書評者: 堂地 勉 (鹿児島大教授・産科婦人科学)
 最近の医学・医療の進歩は,更年期を契機として,あるいは更年期周辺でさまざまな身体の急激な変化や疾患が発生することを明らかにしている。しかも,その機能的な,あるいは器質的な変化は,加齢よりもエストロゲンの減少が大きな要因になっていることをも明確にした。一方,女性が社会に進出し,それが当然のことになった現在では,更年期や更年期周辺に発生するさまざまな身体の変化・変調にどのように対応するかが,重要な課題としてクローズアップされている。このような状況の中で,健康であるということは,個人それぞれのQOLを追及することのみならず,社会的にも非常に重要な意味を持っているといえよう。

 また,更年期は更年期障害のみならず,特に閉経以降は高血圧,糖尿病,脂質異常症,骨粗鬆症,脳血管障害,痴呆などの発生率が上昇してくることが明らかになっており,婦人科疾患のみならず,内科疾患,整形外科疾患,精神科疾患などもある程度念頭に置いた治療戦略が必要になってくる。しかし,多忙を極める産婦人科医にとって,他科疾患をじっくり勉強する時間がないことも事実である。また,婦人科疾患であっても,日進月歩する薬剤や治療に関しては,自分の専門分野でなければ常に最新の知識を持っておくことは困難である。さらに,当世の情報化社会にあって健康に関する情報ははんらんしており,一般人のみならず医療関係者においても混乱しかねない状況にある。

 本書はこれらの点を踏まえ,更年期および老年期女性の診療の際に,迷ってしまうであろう,あるいは,ためらってしまうであろう治療法や対処法について,それぞれの分野におけるエキスパートによる最新の治療方針と適切かつ具体的な対処法が記載されている。

 網羅されている内容は,婦人科疾患から泌尿器科疾患,内科疾患,精神科疾患および整形外科疾患など多岐にわたり,焦点を絞ったQ&A方式になっている。また,設問にキーワードを付したり,「ここがポイント」という項目をつくるなど,読者の理解を助けるように工夫が凝らされている。忙しい読者であれば,「ここがポイント」を読むだけでもその項目の重要点が理解でき,かつ最新の知見や治療法が入手できるようになっている。

 特に多くの読者が知りたいと思われるホルモン補充療法に関しては,最新の知見に基づくアドバイスが項目別に数多く記載されており,診療の際に大いに役立つものと考えられる。また,その情報は,そのまま患者さんへの適切なアドバイスにもなり,患者との信頼関係が深まることで治療成績が向上することが期待できる。さらに,他科疾患に関しても,最新の情報のみならず,産婦人科医として必要最低限必要な情報が項目ごとにコンパクトにまとめられており,日常診療の助けとなることは間違いないであろう。

 このような実践的で,最新情報を満載した書はあまり見たことがなく,読了後,この上ない良書であると実感した次第である。更年期および老年期外来担当医,女性外来担当医やオフィス開業医,また中高年以降の疾患に興味のある医師にとっては,ぜひとも手元に置きたい書(バイブル)であると確信する。

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