免疫検査学

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高度な理論と技術の知識を必要とし、学生が苦手意識を持ちがちな「免疫検査学」を平易に解説。発光免疫測定法、自然免疫の知識、免疫機構と疾患との関係、さらに移植・免疫検査も充実させた。現在は、全自動化により検査手技は簡易化しているが、その基盤となるのは昔と変わらぬ基礎理論であり、そして臨床検査技師に要求される「得られた結果を正確に判定する力」は、基礎理論の把握と実践的技術の習得により養われる。本書は免疫検査学の両輪を作り上げるための教科書。

*「標準臨床検査学」は株式会社医学書院の登録商標です。
医学書院の“青本”シリーズ≪標準臨床検査学≫が完全リニューアル! 臨床検査技師を志す学生向けの新しい教科書シリーズです。 ●シリーズの特徴 ・標準的なカリキュラムに対応し、使い勝手のよい編成 ・臨床検査技師国家試験出題基準に完全対応、必要にして十分な記述内容 ・医師と臨床検査技師のコラボで生まれた教科書 ●ラインナップ ≫全12巻の一覧はこちら
シリーズ 標準臨床検査学
シリーズ監修 矢冨 裕 / 横田 浩充
編集 折笠 道昭
発行 2013年02月判型:B5頁:456
ISBN 978-4-260-01648-3
定価 6,160円 (本体5,600円+税)

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刊行のことば(矢冨 裕・横田浩充)/(折笠道昭)

刊行のことば
 「標準臨床検査学」シリーズは,「臨床検査技師講座」(1972年発刊),「新臨床検査技師講座」(1983年発刊),さらには「臨床検査技術学」(1997年発刊)という医学書院の臨床検査技師のための教科書の歴史を踏まえ,新しい時代に即した形で刷新したものである.
 臨床検査は患者の診断,治療効果の判定になくてはならないものであり,医療の根幹をなす.この臨床検査は20世紀の後半以降,医学研究,生命科学研究の爆発的進歩と歩調を合わせる形で,大きく進歩した.そして臨床検査の項目・件数が大きく増加し,内容も高度かつ専門的になるにつれ,病院には,臨床検査の専門部署である検査部門が誕生し,臨床検査技師が誕生した.臨床検査の中央化と真の専門家による実践というこの体制が,わが国の医療の発展に大きく貢献したこと,そして,今後も同じであることは明らかである.
 このような発展めざましい臨床検査の担い手となることを目指す方々のための教科書となることを目指し,新たなシリーズを企画した.発刊にあたっては,(1)臨床検査の実践において必要な概念,理論,技術を俯瞰できる,(2)今後の臨床検査技師に必要とされる知識,検査技術の基礎となる医学知識などを過不足なく盛り込む,(3)最新の国家試験出題基準の内容をすべて網羅することを念頭に置いた.しかしながら国家試験合格のみを最終目的とはせず,実際の臨床現場において医療チームの重要な一員として活躍できるような臨床検査技師,研究マインドが持てるような臨床検査技師になっていただけることを願って,より体系だった深い内容となることも目指している.また,若い方々が興味を持って学習を継続できるように,レイアウトや記載方法も工夫した.
 本書で学んだ臨床検査技師が,臨床検査の現場で活躍されることを願うものである.

 2012年春
 矢冨 裕
 横田浩充



 臨床検査技術学シリーズの「免疫検査学 第3版」が出版されてから10年の歳月が経過した.この間,免疫学は日進月歩の発展を遂げ,免疫検査学の分野も高度な理論と技術が展開されてきた.今回,標準臨床検査学シリーズで新たに「免疫検査学」として発刊するにあたり,平成23年度の臨床検査技師国家試験出題基準に準拠し,新たな理論と検査技術の解説を加えた.
 総論では免疫応答などの前シリーズの内容の充実を図るとともに全自動化が進む発光免疫測定法などの解説を加えた.各論では近年急速に発展してきた自然免疫の理論を多く盛り込み,自然免疫と獲得免疫のもつ意味が理解できるようにした.また,各論の他章でも免疫機構と疾患の関係および病態把握に応用される免疫検査についてできるだけ詳細に解説した.輸血と移植検査では新たな執筆者に担当していただき内容の一層の充実を図るとともに,多くの口絵を掲載して理解しやすくした.実習では実際に検査業務を行ううえで必要な消毒・滅菌法・検体の取り扱いなどを詳細に記載し,臨床検査技師の実践的なマニュアル書として利用できる内容を加えた.また,モノクローナル抗体作製法などの技術の実際を解説することでより専門性も深めた.一方,抗原抗体反応の基本的理論や注意点などが理解できるようにCF試験・HI試験などはあえて残した.
 現在,抗体を用いた免疫検査は全自動化が進み,pgレベルの物質を検出することができるようになった.しかしながら,全自動化も抗原抗体反応の基礎理論を基盤に行われるものであり,検査の注意点は古典的方法と基本的に同じである.例えば,検体の多くを占める血清には抗原抗体反応に影響を及ぼす物質が多く存在し,非特異的反応の結果を生み出すことがある.免疫検査の強みは“特異性”であり,特異性が否定されると免疫検査は意味をもたない.臨床検査技師には得られた結果を正確に判定する力が要求される.その力は基礎理論の把握と実践的技術の修得により養われるであろう.本書はそれが達成できるような内容を掲載したものと自負する.学生諸君が本書を活用することで免疫検査学の基本理論と実践的検査技術を修得されることを期待したい.

 本書の発行にあたり,終始適切な助言と批判を下された臨床検査技術学シリーズ「免疫検査学」編集者の小島健一先生(新潟大学医療技術短期大学部名誉教授)ならびに通読のうえ,適切な批判と校正をいただいた天谷信忠先生(新潟大学医学部保健学科非常勤講師)に心から深謝します.

 2013年2月
 折笠道昭

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カラー図譜

I 総論
 第1章 免疫の概念と歴史
 第2章 抗原および抗原抗体反応
 第3章 抗体-免疫グロブリン
 第4章 補体
 第5章 試験管内抗原抗体反応
 第6章 T細胞の抗原認識と主要組織適合遺伝子複合体
 第7章 免疫関与細胞-免疫の細胞的基礎
 第8章 サイトカイン
 第9章 免疫応答とその調節(細胞間相互作用)
 第10章 免疫寛容

II 各論
 第11章 アレルギー
 第12章 感染免疫
 第13章 免疫不全症
 第14章 自己免疫疾患
 第15章 免疫グロブリン異常症
 第16章 加齢と免疫機構
 第17章 腫瘍免疫

III 輸血と移植免疫
 第18章 輸血の概要
 第19章 赤血球血液型と抗体
 第20章 白血球と血小板の血液型
 第21章 輸血の副作用
 第22章 移植の概要
 第23章 臓器移植
 第24章 造血幹細胞移植

IV 実習編
 第25章 免疫検査学実習の基礎知識と技術
 第26章 沈降反応
 第27章 凝集反応および凝集抑制反応
 第28章 溶解反応による検査法
 第29章 中和反応
 第30章 標識抗体法
 第31章 免疫担当細胞の機能検査
 第32章 輸血・免疫血液学的検査
 第33章 移植の検査

用語解説
主な略語一覧
参考図書
索引

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免疫学の初心者にも苦手な人にもお薦めの一冊
書評者: 石井 規子 (昭和大学横浜北部病院臨床病理検査部技師長)
 免疫はおもしろい。

 ジェンナーの種痘の話やパスツールによる病原微生物の発見などはノンフィクション小説のようである。免疫反応理論を読むと生命の神秘を感じずにはいられない。例えばアミノ酸1個の置換で血液型が異なることもあり,一方で多少の遺伝子の変異や欠損があっても生命は維持できる。HLA型の頻度からは人類の起源と祖先の地球規模の大移動も見えてくる。また生体防御機構はウイルスや細菌と人類との攻防そのものである。

 分子生物学の進歩によって現在でも免疫に関する新たな発見が続いており,自分が学生のころの「免疫学」とは大きく異なっている(もっともそのころは「血清学」だったが)。

 種の維持には遺伝子の多様性を欠くことはできない。それと同じように「多様性」は免疫のキーワードであり,おもしろさの元でもある。しかし一方で初めて免疫を学ぶ人にとってはこの多様性が難関でもあり,「この反応はこの原理によることもあるが,そうではなくてこの原理によっても起こることもある……」というような無数のケースバイケースの前で立ち往生してしまう。免疫学や輸血学が苦手だという人に聞くと,抗原と抗体の区別が良くわからないという答えが返ってくることがしばしばある。たしかに「ある抗体が抗原となってその抗体に対する抗体が産生される」こともあるのだから混乱するわけである。またさまざまな免疫反応を利用した検査の原理は理解できないままに丸暗記をするには数が多すぎて苦痛である。

 本書,『≪標準臨床検査学≫ 免疫検査学』は,免疫学の初心者にも,また苦手意識を持ってしまった人にも取り組みやすいよう,さまざまな工夫がされている。まず各章の冒頭を見てみよう。「学習のポイント」という囲み文章があり,短い文章でその章の内容がまとめてある。章全体の主題が把握できるようになっているのである。次に「本章を理解するためのキーワード」がカラー印刷を駆使して記載されている。重要な語句とその意味が一目でわかるため,試験勉強のきっかけとしても,内容の理解度を確認するためにも有効だと思われる。簡潔な本文と表があり,わかりやすいイラストや反応式なども多用されている。全部を通して読み,理解することも,必要な情報を探してその部分だけを読むこともできる構成である。

 輸血を例にとると,血液型抗原とそれに対する抗体は基礎的な内容であるが,赤血球型抗原の構造や白血球・血小板の血液型まで最新の情報が含まれる。さらに検査に関してだけでなく輸血の臨床や移植に関する項目もあり,教育機関だけでなく検査の現場でちょっとした知識の確認をするためにも十分に利用することができる。

 この本を読むことで免疫に拒絶反応を起こす人が一人でも少なくなれば幸いである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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