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看護実践・教育のための測定用具ファイル 第2版
開発過程から活用の実際まで

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看護実践や看護教育における教育・学習などの評価・自己評価に活用できる25の測定用具について、開発過程から活用までを解説。いずれの測定用具も、著者らが1996年から、質的帰納的研究の成果をもとに開発し完成させたもの。初版より測定用具が7つ増え、ますます活用範囲が広がっている。
監修 舟島 なをみ
発行 2009年09月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-00872-3
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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第2版 序

 「看護実践・教育のための測定用具ファイル-開発過程から活用の実際まで-」は,2006年7月に誕生し,3年を待たずして,2009年に改訂の運びとなった。この間,初版に掲載された尺度の使用許諾申込は後を絶たず,これは,筆者らが,看護職者の看護実践・教育に活用できる自己評価尺度開発の重要性に確信を深めることにつながった。また,新たな測定用具を開発する原動力にもなった。
 第2版に収録した測定用具は,初版に収録した18種類と新たに開発した7種類をあわせ,総数25種類である。また,新たな測定用具収録に伴い,「第4章 看護職の役割遂行状況を測定する」,「第6章 学生の自己評価を支援する」,「第10章 異文化間比較を行う」の全3章を新設した。
 このうち「第4章 看護職の役割遂行状況を測定する」には,『プリセプター役割自己評価尺度』を収録した。新人看護師を指導するプリセプターは,この尺度を活用し,その役割遂行状況を改善できる。それは,新人看護師に対する教育的支援の質向上につながると確信している。
 また,「第6章 学生の自己評価を支援する」には,『学習活動自己評価尺度-看護学実習用-』を収録した。この尺度は,看護学実習に取り組む学生のために開発された。学生は,この尺度を活用し,看護学実習中の自己の学習活動の質を改善し,実習目標の達成度を向上できる。しかし,本書の読者の大多数は就業している看護職者であり,自ら本書を手にしてこの尺度を見つけ出せる学生は少ないことが予測される。学生の自己評価に対する支援として,看護職者の皆様からこの尺度をご紹介いただければ幸いである。
 さらに,「第10章 異文化間比較を行う」には,『看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度(英語版)』を紹介した。第5章に掲載した日本語版を原版とし,英語版を開発していく過程も詳細に示した。英語の質問紙に回答できる諸外国の看護学教員を対象とする研究を計画していたり,翻訳版測定用具の開発過程に関心のある方にお読みいただきたい。
 一方,初版から設けられていた章にも新たな測定用具が追加された。
 「第3章 看護実践の質を測定する」には,『看護実践の卓越性自己評価尺度-病棟看護師用-』が加わった。これは,「臨床経験を重ね看護実践の熟練度を増した看護師が,その看護実践の質をさらに卓越したものに改善することに役立つ自己評価尺度を開発したい」という着想のもと,7年の歳月を要して完成に至った。特に「中堅」と呼ばれる看護師の皆様にご活用いただきたい。
 「第5章 教育活動の質を測定する」には,『教授活動自己評価尺度-グループワーク用-』が加わった。グループワークは,学生の主体的な学習態度や問題解決能力の向上を目指し,ひんぱんに用いられる授業形態である。しかし,教員がどのように教授活動を展開すればよいかを試行錯誤している現状も存在する。学生のグループワークの効果的な支援を目指す教員の皆様にぜひご活用いただきたい。
 「第8章 学習ニードを測定する」,「第9章 教育ニードを測定する」には,各々,『学習ニードアセスメントツール-保健師用-』,『教育ニードアセスメントツール-保健師用-』が加わった。これらの尺度の開発によって,臨床看護師,看護学教員の学習ニード,教育ニードに加え,保健師のそれらもアセスメントできるようになった。これらの尺度が,看護継続教育のさらなる充実に役立つことを期待している。
 第2版作成にあたっては,多くの方々にご支援をいただいた。中村みどり氏と望月美知代氏には,改訂のための執筆者会議運営等にご協力いただいた。また,医学書院の杉之尾成一氏と北原拓也氏は,筆者らの構想を理解し,本書が初版からこの第2版へと成長することにご尽力下さった。これらの皆様に心より感謝申し上げる。
 さらに,本書に収録された測定用具はすべて,自己評価を通した看護職者の職業活動の発展とそれを通した人々の健康への貢献に価値を置く看護教育学の理念に貫かれ,開発されている。杉森みど里先生による看護教育学の構築と学的体系化は,本書誕生と第2版への発展の礎である。
 筆者らは,現在も新たな測定用具開発を継続している。たとえば,病院に就業する看護師のための尺度として,患者安全のための看護実践自己評価尺度,問題解決行動自己評価尺度,研究成果活用能力自己評価尺度,勤務帯リーダー役割自己評価尺度の開発を進めている。また,看護学教員のための尺度として,倫理的行動自己評価尺度の開発を進めている。さらに,学生の自己評価支援に向けて,看護技術演習中の学習活動自己評価尺度,看護学実習中の学習経験自己評価尺度の開発にも取り組んでいる。学習ニードアセスメントツール,教育ニードアセスメントツールに関しては,助産師用,訪問看護師用,養護教諭用,プリセプター用,臨床実習指導者用,看護師長用の開発を継続している。授業過程評価スケールに関しては,看護継続教育版,大学院教育版を開発予定である。
 初版の序に,「自己評価や研究の促進に向け,開発した測定用具を看護実践編,教授活動編,学習活動編などといった測定用具の内容ごとの分冊にしていきたい」という「夢のような構想」を述べた。執筆者のエネルギッシュな研究活動を通して,夢は,少しずつ現実味を帯びてきている。

 2009年2月28日
 舟島なをみ

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第1章 看護教育学における測定用具開発の理念と特徴
第2章 測定用具の活用可能性と活用上の留意点
第3章 看護実践の質を測定する
第4章 看護職の役割遂行状況を測定する
第5章 教育活動の質を測定する
 授業過程を測定する
 教授活動の質を測定する
 看護学教育組織運営を測定する
第6章 学生の自己評価を支援する
第7章 職業活動に伴う多様な状況を測定する
第8章 学習ニードを測定する
第9章 教育ニードを測定する
第10章 異文化間比較を行う

付録
 1. 使用許諾の手続き
 2. 研究のための尺度翻訳に関する契約書

索引

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実践や教育の効果性評価のための尺度開発のパートナー (雑誌『看護教育』より)
書評者: 川口 孝泰 (筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)
 看護実践および看護教育においては,その効果性を評価するための可視化は,重要な課題である。そのための研究的な取組の1つとして,尺度開発研究(方法論的研究)が挙げられる。書店で本書のタイトルを目にしたとき,やっと日本でもこのような書籍が出版されたか……と,非常に嬉しかったことを覚えている。

◆新たな尺度と留意点の追加

 2006年の初版に続き,今回第2版が出版された。この3年間で巻頭の序にも記されているように,新たな7尺度が追記されてさらなる充実がなされている。第1章と第2章においては,看護のアセスメントツールとして使用する際の測定用具の活用上の留意点が記されている。この内容は,尺度開発研究をこれから行おうとする研究者には必見である。つまり,使用する尺度で解決すべき看護問題のすべてが判断できるというものではないこと,適切な測定尺度を使用しないと,誤った判断に繋がることなどがわかりやすく記されている。

 第3章以降では,これまでに著者らが取り組んだ測定尺度の開発過程が,重要なポイントを絞りながらわかりやすく紹介されている。尺度開発研究の開発過程でキーワードとなるのが統計的な手続きと,尺度化しようとする事項などの信頼性と妥当性の検証である。尺度の精度を上げるためには,これらの緻密な作業手続きが重要である。本書では,繰り返しその重要性が対象となる尺度に合わせて解説されている。このような内容を満たす書籍は,日本においてはこれまでになかったものである。その意味では研究を学ぶ初学者においても手本となる内容である。

 この書籍のマイナス点を敢えて挙げるならば,統計的なサンプル数を十分には満たせなかったことであろうか。しかしその点を十分にわかったうえで,著者たちはさらなる尺度の信頼性や妥当性を上げる努力を今後も続けていく意気込みは十分に感じ取れる。

◆重要な使用許諾の手続き

 尺度開発研究を進めるなかでは,日本では,とかく疎かになっていた使用許諾の手続きについても,本書ではわかりやすく言及している。このような形で開発者のオリジナリティは今後保証されるべきであろう。多くの心理学分野から生まれた尺度が特許申請され,保護されていることを考えると,看護学における尺度開発も,このような認識を十分にもつべきなのであろう。

 以上,本書は,看護系大学院で学んでほしい内容を十分満たしている教科書として,ぜひとも手元に置いておきたい一冊である。

(『看護教育』2010年2月号掲載)
有用な測定用具25種,その開発理念から活用上の留意点まで
書評者: 井上 智子 (東京医科歯科大大学院教授)
 質的研究が隆盛の昨今であるが,看護の臨床・教育現場において良質な測定用具を求める声はいつの時代も変わりはない。千葉大学の舟島なをみ先生と研究室員の方々の研究成果である『看護実践・教育のための測定用具ファイル』の初版が出版されたのは,2006年7月であった。それからわずか3年あまりで第2版となった本書では,新たに7種類が加わり25種類の測定用具が網羅されている。

 測定用具の一端を紹介すると,臨床実践では「看護実践の卓越性自己評価尺度」「プリセプター役割自己評価尺度(第2版)」など,看護学教育では「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度(第2版)」「授業過程評価スケール―看護学実習用―」,学生の自己評価では「学習活動自己評価尺度―看護学実習用―」など,すぐさまページを繰って質問項目を確認してみたくなるツールがいくつも並んでいる。

 開発された用具の有用性,実用性もさることながら,本書のもう一つの魅力は,第1章,第2章に簡潔かつわかりやすく記述されている,看護教育学における測定用具開発の理念と特徴,測定用具の活用可能性と活用上の留意点にある,と感じている。

 そこには用具開発の理念,測定用具開発を意図した質的帰納的研究成果の活用方法,そして質問項目の作成,尺度化,信頼性・妥当性の検証と,一連の用具開発の過程,中でも質的研究成果を測定用具開発にどのように組み込んでいくのかが段階的にわかりやすく記されている。

 従来の測定用具開発に関する成書は量的研究者によるものが大半で,質的研究の位置づけはアイテムプール充足に活用するだけの,あたかも前座的扱いをしているものが多かった。しかし本書では,既にある質的研究成果の活用も含めた質的帰納的研究の位置づけ,あり方,データの有用性の確認など,看護研究に取り組む人々には特に腑に落ちる内容としてまとめられている。それは 『質的研究への挑戦』 (医学書院,2007年)など,質的研究にも造詣の深い舟島先生ならではの切り口とまとめ方の産物といえよう。

 それにしても25種にもわたる用具開発は圧巻である。そしてなお発展を続ける研究パワーはとどまることを知らない。読み終えると,寡黙ながら手綱を緩めない研究者集団の姿が本書の向こうにほの見えてくる。多忙な毎日の中で,途絶えがちになりそうな研究への推進力とともに,研究の魅力を改めて思い起こさせてくれるのが,本書の最大の魅力であることに気がついた。

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