透析療法事典 第2版

もっと見る

透析療法のスタッフが共有すべきプラクティカルな情報を網羅し、「いま知りたいことがすぐわかる」と大好評を博したハンディな事典を全面改訂。さらに使いやすい工夫を随所に凝らし、病態、合併症、手技、機器のメカニズム、施設管理、薬物使用、食事療法から患者心理まで、厳選された550項目は、医師、看護師、技師、栄養士などスタッフ誰もが日常業務で活用できる“価値ある”1冊。
編集 中本 雅彦 / 佐中 孜 / 秋澤 忠男
発行 2009年06月判型:A5頁:592
ISBN 978-4-260-00845-7
定価 5,720円 (本体5,200円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

推薦の序(藤見 惺)/第2版の序(中本雅彦・佐中 孜・秋澤忠男)

推薦の序
 透析が一般の医療として認知され約40年が経過し,慢性透析患者数も28万人以上に達している.その進歩に伴い,当初は数年の生存しか期待できないとされていたものが40年という長期生存も夢ではない時代になっている一方,高度の合併症をもつ患者にも適応が拡がり,糖尿病腎症や高齢者の透析患者数の増加が目立ってきている.このこと自体は,非常に喜ばしいことであるが,一方で多数の高度障害者を生み,透析療法が初期の社会復帰を目指すものから長期にわたるターミナルケアに類する延命療法へと変貌してきており,医療関係者以外に福祉・介護関係の職種の人たちが関与する機会も多くなってきている.
 透析は,医師以上に看護師,臨床工学士,栄養士,ソーシャルワーカーなどコメディカルや医療事務関係者のかかわる密度が濃い医療である.さらに,腎不全という特殊環境内に順応している透析患者を取り扱う循環器,血液,消化器,内分泌,外科,整形外科,精神科など,それぞれに特化された専門分野も派生している.これに,緩和ケアの福祉・介護関係者や,黎明期から透析医療を支えてきている製薬業界,透析関連機器メーカー,水処理業者など,実に多くの分野の人たちの協力で現代の透析医療は成り立っている.その総合力が透析のレベルを決定し,国力のバロメーターであるともいえよう.
 これら多職種の人たちの協力のもとで良い透析を広く国民に提供するには,透析に関連した事項について共通の言語と知識をもつことが最低の条件である.その意味で,この『透析療法事典』が果たしてきた役割は極めて大きく,いろいろな場で活用され高く評価されている.しかし,これも発刊されて10年が経過した.この間,末期腎不全に対する療法は,血液透析のみならず腹膜灌流や腎臓移植の領域でも進化を続け,また,長期透析患者の慢性合併症の病態の解明や管理にも数々の知見が加わり,これらに関する透析関連学会などからのガイドラインも出されてきた.
 透析療法のように多くの職種がかかわって進歩する分野では,ともすれば情報が氾濫し消化不良に陥る弊害がある.それを整理し標準的知識を身につけるには,確立された論拠,事象に基づいたup to dateで正確・的確な情報の提供が必須で,その役を担っているのが本事典である.初版と同じ中本雅彦先生,佐中孜先生,秋澤忠男先生という現在の透析医療をリードする諸先生の編集による今回の改訂版は,極めて時宜を得たもので裨益するところ大であると考え,多くの分野の方々に利用していただきたく推薦するものである.

 平成21年5月
 福岡腎臓内科クリニック院長
 藤見 惺


第2版の序
 1999年出版の『透析療法事典』は多くの読者に活用されてきましたが,発刊からほぼ10年が経過して,透析療法や血液浄化療法の進歩とともに改訂を要する項目が出てきました.そこでこのたび編者3名が協議し,第2版を発刊することになりました.どんなにインターネットが進歩しても,この事典には高い存在価値があると考えています.第2版を出版するにあたり,項目の半数以上を新しくするなど,関連領域の変化を網羅した内容といたしました.また,昨今は種々の透析関連学会や研究会がガイドラインを提唱しております.巻末にその一部ではありますが概要を収載しました.
 本書は忙しい医師やコメディカルスタッフのために,日常の診療に必要な知識を簡潔にまとめています.本書が透析関係者のみならず,多くの方々に利用していただければ編者としては望外の喜びです.
 とはいえ,初版の『透析療法事典』にも歴史的意義があり,現時点でも十分に通用する項目もあります.初版,第2版を並べてご利用いただければ,このたびの改訂の価値はさらに高まるものと考えております.
 最後になりましたが,ご多忙中にもかかわらずご執筆いただきました諸先生方,また出版に際しまして,膨大な資料の編集に協力いただいた医学書院の大橋尚彦氏に感謝の意を表します.

 2009年5月
 中本雅彦・佐中 孜・秋澤忠男

開く

1 急性腎不全
2 慢性腎不全
3 血液浄化療法
4 血液透析
 4-A 血液透析の導入と維持
 4-B 合併症と併発症
 4-C 社会生活とQOL
 4-D 介護保険と血液透析
 4-E 在宅血液透析
 4-F 透析室の運営と管理
5 腹膜透析
 5-A 腹膜透析の原理と実際
 5-B CAPDの合併症
6 持続血液濾過法
7 特別の配慮が必要な患者
8 透析患者に対する薬の使用法
9 食事療法

付録:透析療法に関する診療ガイドライン(概要)
略語一覧
和文索引
欧文索引

開く

専門技術と総合的解説を兼ね備えた内容
書評者: 酒井 糾 (北里大名誉教授)
 透析療法が腎不全の治療として認知され,40年以上が過ぎようとしている。その間積み上げられた知識と技術が今では治療医学の一角を占めるほどに進化した。オックスフォードの医学辞典によると,20世紀の治療医学で目覚ましい発展を遂げた領域の一つであると評価されていると聞く。

 わが国の慢性透析患者数も年々増加の一途をたどり,2008年末には28万人を超えた。透析医療に携わる医療従事者の職種も広がりを見せ,最近では福祉・介護関係の人たちも関与する機会が増えている。治療医学の面からすると,医師のみならず,理工学者の参加,社会学者の参加すらも必要とされる分野として発展を続けている透析療法である。また医療のシステム化,社会化といった流れからすると,それこそ一般業界,行政機関,政府関係者の間にあっても透析医療の意味と価値を知ってもらうことが不可避となりつつある。このように医療界のみならず社会とのつながりの中で展開,発展している領域になっている。

 こうした医療環境の中で必要とされるのが正しい知識と技術,その意味と価値を知らしめる情報提供手段ということになる。専門技術として,また総合的解説の両者を兼ね備えた内容として書かれた『透析療法事典(第2版)』はまさしく時宜を得たものである。

 わが国の透析医療を含む腎臓学の先頭に立って引っ張っておられる執筆者陣で書かれている本書は見事なまでに内容を充実させている。編集にあたられた中本雅彦先生,佐中孜先生,秋澤忠男先生の構想力に敬意を表すとともに,素晴らしい書を世の中に送り出していただいたことに感謝したい。

 21世紀に入ってこの方,医療界は持続可能な成長を期待するにはあまりにも社会環境,経済環境が悪すぎると言わざるを得ない。透析療法もこうした影響下にあることは間違いない。それでも“経験と意欲が創造を生み出す”と言われているように,日々の業務に必要とされる技術と知識を身近で支えてくれる本書の果たす役割は極めて大きい。理論武装だけにとどまらず,意味と価値,特に新たな知見を識り,標準的知識と技術を身に付ける,こうした医療プロフェッショナルに不可避とされるアイテムについてわかりやすく記述してある。私が本書に対して大きな感動を覚えたゆえんである。

 世の習わしとして世代継承は大切であるが,医療,特に透析医療にあっては眼下に迫った現象にも見える。なぜなら患者数の増加はまだ止まっていない。今後増加率は減少に入るかもしれないが,献身で成り立つ医療を支えるプロフェッショナルの意欲と創造力を持続できるかが心配である。そうした世代継承,時代継承にも本書が役立つものと確信している。

 極めて時宜を得たもので,本書の持つ意味と価値には絶大なものを感じている。本書から得られる知識と技術が透析療法の広がりと進化に大きく寄与すると確信するとともに,本書が広く活用されることを祈念してやまない。ぜひ座右の書として手元に置いていただけることを期待したい。
透析者の健康管理に必要な知識が集約された一冊
書評者: 岸本 武利 (大阪市立大名誉教授・泌尿器科学)
 医学書院より出版された『透析療法事典(第2版)』は初版から10年を経て,内容を一新進化させ編纂されている。エビデンスに基づいた腎不全に対する透析療法とその関連領域を網羅し,優れた編集により検索しやすい。また透析医学・医療のテキストブックにもなり得,透析医療に関わるすべての人の必携すべき書の一つである。

 透析医学・医療は従来の身体系統的医学分類には入れることのできない学際領域であり,わが国では約半世紀前から腹膜透析,血液透析の血液浄化法が腎不全の救命手段として臨床に導入され,成果を挙げてきた。当初は安全で副作用の少ない治療法の開発が急務で,腎機能が廃絶し長期に渡るこの腎補助療法が人体にどのような影響を与えるか未知であった。また学際領域であるが故にそれぞれ異なった分野の医師が携わっていたため,皆が知恵を持ち寄り問題解決の努力を重ね発展させてきた。すなわち透析医療従事者は各系統的疾患の専門家のアドバイスを得ながら,透析者の身体全体を管理し生活指導を行ってきた。その成果を人工透析研究会(現日本透析医学会)を主に持ち寄り意見交換を通じ自己研鑽し,透析医学・医療の発展に貢献し透析医学を確立させ専門医制度を導入してきた歴史がある。その努力の積み重ねと経済発展に伴う医療費補助制度の充実とが相まってわが国の透析医療の普及を促し,世界に誇る治療成績を挙げるに至った。その成果を本書に垣間見ることができる。

 本書の内容はAKI(急性腎障害),CKD(慢性腎臓病)から腎不全,透析,腎移植と腎不全医療とその周辺に関する事項,さらに食事療法,患者福祉までと総括的に取り上げられ,透析者の健康管理に必要な知識がこの一冊に集約されている。編集者を含めた執筆者は200名で,医師のみならず化学工学者,コメディカルと異なったバックグラウンドを持ったエキスパートで,それぞれの専門性を生かし長期にわたり透析医学・医療に真摯に取り組んで来られた実務家が中心である。各項目は豊富な臨床経験とエビデンスに基づいた見解が重要引用論文を添え,限られた字数の中でまとめられており理解を助けている。本書は臨床家にとって心強い味方になり,診療の質の向上に資すると期待する。

 たゆまぬ改善と提言で透析医療をより充実させることにより透析者のQOLがより向上し社会復帰が促進され社会に貢献することを願うと共に,腎移植の普及を図り腎不全対策がより充実することを願う。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。