尿路結石症のすべて

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尿路結石症の診断・治療法をはじめとして成因、形成機序、モデル動物、基礎研究手法など必要な最新情報を網羅し、項目ごとに1~2頁で要約解説した。現在話題になっているメタボリックシンドロームの一疾患と位置づけられ、従来の疾患概念を覆す分子メカニズムが解明されつつあり、結晶から遺伝子を扱う幅広い研究分野、学問の突破口を拓く。
編集 日本尿路結石症学会 / 日本尿路結石症学会
販売 医学書院
発行 2008年08月判型:B5頁:228
ISBN 978-4-260-70061-0
定価 6,600円 (本体6,000円+税)
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  • 目次
  • 書評

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I.総説
II.診断
III.治療
IV.尿路結石の成因
V.尿路結石の形成機序
VI.尿路結石モデル動物
VII.尿路結石における基礎研究手法
索引

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新しい知見に満ちた尿路結石症診療の書
書評者: 伊藤 晴夫 (千葉大名誉教授・泌尿器科学)
 日本尿路結石症学会理事長の郡健二郎教授が編集された『尿路結石症のすべて』を読んだ感想を述べる。

 まず,郡健二郎教授の序文に感銘を受けた。尿路結石に関する3つのエポックメイキングな出来事を述べておられるが,その通りだと思う。また,病態の研究については,先生の主導される分子メカニズムが解明されようとしていることは刺激的なことである。

 本書は,総説,診断,治療,尿路結石の成因,尿路結石の形成機序,尿路結石モデル動物,尿路結石における基礎研究手法,という7章および13編よりなるCoffee break欄より構成される。また,執筆者は総計79名と驚くべき数であり,それぞれの方が専門分野を分担している。

 以上の7つの章は,みな新しい知見に満ちていて参考になる。治療の章で感じるのは結石の除去法が,以前とまったく異なってきたことである。郡健二郎教授が挙げた3つ目のエポックメイキングな出来事はESWL(体外衝撃波結石破砕術)である。これは,まさに結石の治療法を変えたということで革命的なことであった。私たちが若いころは結石の開腹手術が泌尿器科手術の中で最も多い手術だった。今日では内視鏡治療とESWLが取って代わったが,内視鏡手術は結石治療を契機に進歩したことを心に留めたい。また,尿路結石が生活習慣病の一種だということは,日本では井口正典院長をはじめ多くの研究者に言われていたことだが,はっきりとその因果関係が明らかになりつつあることは素晴らしいことだと思う。

 この本の特徴は,尿路結石の成因,尿路結石の形成機序,尿路結石モデル動物,尿路結石における基礎研究手法,という章立てからもわかるように研究に関して特に力を入れていることである。特に,尿路結石モデル動物,基礎的研究手法はこれから結石の研究をはじめる人にとっては極めて有用であると考える。これは,尿路結石学会が中心となって作製されたことから当然といえば当然だが,郡健二郎教授を始め尿路結石学会の執行部の皆様の強い希望が反映しているのだと思う。最近は泌尿器科領域では,前立腺がんなどの悪性腫瘍や排尿機能に研究が集中しているが,尿路結石についてもさらに研究が深まってゆくことを期待したい。この本がその引き金になってくれればありがたい。

 また,最後のCoffee break欄も興味深く読ませていただいた。小生にとり特に懐かしく思ったのは,小出卓生先生の「尿の保存法」であった。先生は尿の保存のために種々な防腐剤のうちで,sodium azideを使用されていたとのことである。小生がシカゴ大学のF. L. Coe教授の研究室で実験したときにも同じものを使っていた。小出先生とCoe先生という日米の傑出した研究者が同じ結論に達していたのは感慨深い気がする。

 この単行書が日本の尿路結石診療に役立ち,さらには結石研究を盛んにする契機となることを期待する。
尿路結石症の診断から治療までを網羅
書評者: 村井 勝 (国際親善総合病院病院長/慶大名誉教授・泌尿器科学)
 このたび日本尿路結石症学会(理事長=郡健二郎・名古屋市立大学大学院教授)の編集による「尿路結石症のすべて」が出版された。

 皆様ご存じのように,尿路結石症の歴史はエジプト時代(7000年前)のミイラに観察された腎盂結石と膀胱結石に遡るといえ,ヒポクラテス時代には砕石術が試みられていた。さらには近代外科学の父といわれるアンブロワーズ・パレによる教科書(1564年版)にも尿路結石が尿道炎や尿閉とともに取り上げられている。また中世にはリソトミスト(砕石師?)と呼ばれる外科医が砕石術を盛んに行っていたようである。これらの歴史が示すまでもなく,尿路結石症は頻度も高く,再発率も高く泌尿器科診療の中で最も重要な,そして基本となる疾患の一つといえる。しかし尿路結石症に関して正しい知識,特に最新の知見を有する泌尿器科医が多いとは決していえない。本症の診断から治療までを網羅したアップデートな著書の出版が望まれたゆえんである。

 わが国では1990年代の後半に日本尿路結石症学会により尿路結石症の再発予防ガイドライン作成が提唱された。一方治療に関しては日本Endourology・ESWL学会が検討を開始しつつあった。著者が日本泌尿器科学会理事長を務めていた2000年に,前述の二学会に日本泌尿器科学会も加え三学会合同のガイドライン作成作業を進める事が理事会で了承された。その結果,2002年12月に尿路結石症診療ガイドラインが発行された。その後,このガイドラインは文献や治療成績の追加とともに加筆・修正が行われ,尿路結石症診療ガイドライン改訂版(2005年)としてWEB上で公開されている。また,2005年には日本尿路結石症学会が中心になり全国疫学調査(第6次)を行い,その集計結果が報告されている。このように尿路結石研究会から発展した日本尿路結石症学会は文字通り尿路結石症の臨床,研究にリーダーシップを発揮しすばらしい成果を挙げている。

 尿路結石症は1980年代に導入されたESWLやその後のエンドウロロジーの発展など,その治療の面で大いに進歩がある。また近年,病態についても従来の考えを変えるような分子メカニズムも解明されつつあり,メタボリックシンドロームの一疾患という考えまで生まれるに至っている。本書は近年さまざまな領域で確立されつつある臨床意志決定の支援ツールとされる診療ガイドラインの域を越えて,真に「尿路結石症のすべて」がわかる本としてまとめられた。郡健二郎理事長以下尿路結石症学会の気鋭の先生方70余名が,74項目にわたり診断から治療まで,さらに結石の成因,形成機序などを含む最新の基礎研究をも網羅している。

 B5版の本文210頁であるが,写真・図表も豊富に掲載され,かつ,各項目に新しい文献が引用されている。またページをめくっていくと「Coffee Break」というタイトルで大御所の先生方によるエッセイ風の文章も諸処に組み込まれ,楽しく読むことができるよう工夫されている。

 郡先生が序文でも述べておられるが,真に待ちに待った著書の完成である。本書が泌尿器科医のみならず,救急医・内科医など尿路結石症患者を扱う先生方の診療に役立つだけでなく,さらには多くの方々の基礎的研究の関心を高め,尿路結石症学の進歩に大きく貢献すると確信する。

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