小児科学 第3版

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理学療法士、作業療法士養成校で学ぶ学生に向けた小児科学テキスト。基本構成は第2版を踏襲しつつ、感染症法及び予防接種法の改正や国際頭痛分類の改定、免疫機構・アレルギー疾患の新しい病態モデル、ADHD、LD、高機能PDD、うつ病、虐待、超重症児など小児を取り巻く最近のトピックスにも言及し、内容を刷新。第3版より全頁カラーとなり、より親しみやすいテキストとなった。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
シリーズ監修 奈良 勲 / 鎌倉 矩子
編集 冨田 豊
発行 2009年01月判型:B5頁:264
ISBN 978-4-260-00743-6
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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第3版 序

 本書の第2版発行以降には,遺伝子レベルでの遺伝性疾患の分類が試みられ,2008年にはヒト人工多能性幹細胞の発見に続いてその応用がスタートした.小児のリハビリテーションに関連する小児科学の分野でも,いくつかの分野で進展がみられた.早期産児の呼吸障害への濃密な対応は広汎に普及し,幼児・学童期の(軽度)発達障害といわれる,集団に少し収まりにくい子どもたちへの理解が進み,偏頭痛の病態モデルが新しく提案されたことなどはその一端である.
 一方,免疫機構・アレルギー疾患についての新しい病態モデルの提唱とそれに基づく治療法が提案されて,以前の喘息の治療法が刷新された.そして社会的施策の領域では,わが国での予防接種のあり方が大きく変更になった.また残念なことに,何でもお金に換算して考える風潮の影響だろうか,親子をはじめとした人間関係が以前より希薄なものとなり,子どもの虐待が稀な事象とはいえない事態に至っている.
 第2版を改訂するにあたり全体の骨格は変えなかったが,上述した多くの点で小児リハビリテーションにかかわる小児科学分野の進展を書き込んだ.また,前版に引き続き今版でも,臨床遺伝学の第一人者である難波栄二先生や,小児作業療法の草分けともいえる森下孝夫先生にご執筆いただくことができた.それにより本書の内容がしっかりしたものとなり,プロとしての心構えを楽しく学べるものになったのではないかと思う.
 医療とリハビリテーションの分野を担う人たちが,小児をめぐる医療や文化の否定的な変化に押し流されないで,日々の医療活動や学習に邁進されることを期待している.

 2008年12月
 冨田 豊

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序説 PT・OTと小児科学のかかわり
1 小児科学概論
2 診断と治療の概要
3 新生児・未熟児疾患
4 先天異常と遺伝病
5 神経・筋・骨系疾患
6 循環器疾患
7 呼吸器疾患
8 感染症
9 消化器疾患
10 内分泌・代謝疾患
11 血液疾患
12 免疫・アレルギー疾患,膠原病
13 腎・泌尿器系,生殖器疾患
14 腫瘍性疾患
15 心身症・神経症など
16 重症心身障害児
17 眼科・耳鼻科的疾患

セルフアセスメント
索引

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障害のある小児と家族に接する姿勢・態度の習得を意図した書
書評者: 大野 耕策 (鳥取大教授・脳神経小児科学)
 本書は広島県立保健福祉大学保健福祉学部作業療法学科・教授,鳥取大学医学部保健学科・教授を経て,現在京都民医連中央病院検査科・科長を勤める冨田豊先生の編集による理学・作業療法士を目指す学生のためのシリーズテキストの1冊で,2000年に初版が発行され,今回が第3版の発行となる。

 冨田先生は小児神経科専門医として,発達障害児,肢体不自由児,知的障害児,重症心身障害児の医療に長年かかわってこられ,また同時にこれら障害のある子どもにかかわる専門職の方たちへの専門教育を長く担当してこられた。このテキストブックは,冨田先生のご経験をもとに,このような障害のある子どもと接する理学・作業療法士が,小児科学の知識を持つだけでなく,育児・保健指導,教育との連携,就労や生活指導などについても大きな役割を果たすことを期待して編集されている。また,本書は理学・作業療法士に必要な知識を重点的・効率的に習得させるために,医学や看護学における小児科学のテキストブックとは異なった構成となっており,それぞれの章で理学・作業療法との関連事項がまとめられ,小児科学を学ぶモチベーションを高める編集となっている。

 第1章の「小児科学概論」では,小児の成長・発育を記述した後に栄養と摂食についてが,また小児保健の項では小児の予防接種,学校保健についてがそれぞれ重点的に記載されている。第2章の「診断と治療の概要」では心身の発達を視野においたリハビリテーション,教育との連携,就労と生活支援の重要性が強調されるとともに,小児の救急処置が重点的に記載されている。本書ではこれら2つの章で小児の発育と発達,診断と治療に関する基礎的知識を述べ,小児に接する理学・作業療法士の役割が明確に記載されている。

 第3章以降では,小児の脳神経系の障害の原因として頻度の高い「新生児・未熟児疾患」,「先天異常と遺伝病」,「神経・筋・骨系疾患」が記載され,その後に小児科学各論の臓器別の疾患が循環器,呼吸器,消化器などの順序で記載され,第16章の「重症心身障害児」,第17章の「眼科・耳鼻科的疾患」で完結している。

 小児科学は疾患の数が多く,学習は決して楽ではないが,本書の記載は簡潔かつ明瞭で,図表も多く,独学でも勉強しやすく編集されている。また,家族から信頼されるようになること,よき相談相手となること,子どもの健康の異常に早く気付くこと,心身の健全な発達の促進を意識すること,などの重要性とその具体的方法が随所に記載されており,学習意欲が高まるようにも編集されている。

 このように本書は,小児科学のテキストブックとして理学・作業療法士に必要な小児の疾患を重点的,効率的に記載することに成功しているだけでなく,各章の内容と理学・作業療法との関連を記述することで学習のモチベーションを高め,さらに,障害を持つ小児に接する姿勢と態度を育成する意図を随所に溢れさせたユニークな仕上がりとなっている。本書は,このテキストブックで学習して理学・作業療法士になられた方たちと一緒に仕事をしたいと感じさせる,優れた小児科学のテキストブックである。

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