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脳腫瘍臨床病理カラーアトラス 第3版

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脳腫瘍の臨床像と病理所見を、大判かつ美麗な写真と簡潔な文章により見開きでコンパクトにまとめた、定評あるアトラスの改訂第3版。今版では2007年の新WHO分類に基づき全面改訂。項目を再編し、新腫瘍型もすべて取り入れ、分子生物学をはじめとした最新の知見を盛り込んだ。また、付録として各腫瘍型の遺伝子/染色体異常と免疫組織化学の一覧表も収載。専門医を目指す若手からベテランまで、脳腫瘍に携わるすべての医師必携の書。
編集 日本脳腫瘍病理学会
編集委員 河本 圭司 / 吉田 純 / 中里 洋一
発行 2009年05月判型:A4頁:216
ISBN 978-4-260-00792-4
定価 20,900円 (本体19,000円+税)
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第3版 序

 日本脳腫瘍病理学会は,1983(昭和58)年日本神経病理学会のサテライト研究会として“日本脳腫瘍病理研究会”の名称で発足し,その後年々発展を遂げ,1996年“日本脳腫瘍病理学会”に昇格しました.この学会は脳神経外科医と病理医が一体となり,脳腫瘍の臨床と病理を研究する会として,大きな学問的成果をあげております.特に最近は,多数の受講者が集まる教育セミナー,激論が続く臨床病理検討会も定着しました.
 1988年に発刊された日本脳腫瘍病理研究会編『脳腫瘍臨床病理カラーアトラス』は学会昇格を機に,その改訂が検討され,1999年に第2版の発刊となりました.各脳腫瘍型を美麗な写真と簡潔な文章で解説した本書は,この分野では類書をみないこともあり,初版以来のこの20年間,好評で,定着した支持が得られました.特に若手の脳神経外科医,病理医にとって必須の本とまで言われ,執筆者一同大変喜んでおります.また,第2版は中国語に翻訳され,中国の脳神経外科医,病理医にも好評をもって受け入れられております.
 しかし,癌関連遺伝子,アポトーシス,増殖因子,成長因子をはじめとした分子生物学・遺伝子学分野の研究の発展はめざましく,次々と新知見が発見されております.さらに,2007年にWHO分類が改訂され,新しい腫瘍型も追加されました.このような背景から,本書も第3版として新しく改訂することが企画されました.

 第3版の刊行に際しては,基本方針を以下の点におき,全面改訂を行いました.
 1)世界トップレベルの質の高い内容をめざしました.
 2)2007年の新WHO分類に準拠し,新しく加えられた脳腫瘍の項目をすべて取り入れました.
 3)第2版(1999年)の執筆者を大幅に入れ替え,新進気鋭の脳神経外科医,病理医を選び,分子生物学的・遺伝子学的知見もすべて最新のものに改訂しました.
 4)病理組織の写真は本書にとって最も大切であり,日本におけるスタンダードとみなされるほど定着しています.そこで,執筆者には高画質の写真をご提供いただき,また場合によっては前回の写真を継承,あるいは編集者による追加をすることにより,すべて最高レベルの写真としました.また臨床画像につきましても,最新技術で撮影された高画質の画像を依頼し,選択しました.
 5)最新の腫瘍型も含めてアップデートな内容を盛り込み,しかもコンパクトで見やすい本に仕上げることを編集の主眼としました.そこで,1つの腫瘍型を見開きでみられるように,頁単位での編集を行いました.

 以上の基本方針のもと,日本脳腫瘍病理学会の刊行本としての品質を重視し,1冊の本としてのスタイルの一貫性を保つため,加筆・訂正・削除を随所に行いました.このため執筆者には大変なご無理を強いたことを深くお詫び申し上げます.せっかく熱のこもった長文の原稿をくださったにもかかわらず,計画頁に収めるため大幅な削除をしていただいたこともありました.本書の編集方針をご了解いただき,快くご協力くださった執筆者の先生方に,この場を借りてあらためてお礼申し上げます.編集上の不備,ご不満については,すべて編集者に責任があります.
 最後に,この本を出版するにあたってお世話になりました,医学書院編集部の飯村祐二氏,制作部の岡田幸子氏に厚く感謝の意を表します.

 2009年4月
 河本圭司
 吉田 純
 中里洋一

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総論
 1.脳腫瘍病理の歴史
 2.脳腫瘍の組織分類
 3.脳腫瘍発生の分子メカニズム
 4.Astrocytoma, oligodendrogliomaの分子遺伝学

各論
 1.Pilocytic astrocytoma 毛様細胞性星細胞腫
 2.Subependymal giant cell astrocytoma 脳室上衣下巨細胞性星細胞腫
 3.Pleomorphic xanthoastrocytoma 多形黄色星細胞腫
 4.Diffuse astrocytoma びまん性星細胞腫
 5.Anaplastic astrocytoma 退形成性星細胞腫
 6.Gliomatosis cerebri 大脳膠腫症
 7.Astrocytoma, grade IV
  a.Glioblastoma 膠芽腫
  b.Giant cell glioblastoma 巨細胞膠芽腫
  c.Gliosarcoma 膠肉腫
 8.Oligodendroglioma 乏突起膠腫
 9.Anaplastic oligodendroglioma 退形成性乏突起膠腫
 10.Oligoastrocytoma 乏突起膠星細胞腫
 11.Subependymoma 上衣下腫
 12.Myxopapillary ependymoma 粘液乳頭状上衣腫
 13.Ependymoma 上衣腫
 14.Anaplastic ependymoma 退形成性上衣腫
 15.Choroid plexus tumors 脈絡叢腫瘍
 16.Astroblastoma 星芽腫
 17.Chordoid glioma of the third ventricle 第3脳室脊索腫様膠腫
 18.Angiocentric glioma 血管中心性膠腫
 19.Dysplastic gangliocytoma of cerebellum(Lhermitte-Duclos disease)
  小脳異形成性神経節細胞腫(レーミッテ・ダクロス病)
 20.Desmoplastic infantile astrocytoma/ganglioglioma
  線維形成性乳児星細胞腫・神経節膠腫
 21.Dysembryoplastic neuroepithelial tumor 胚芽異形成性神経上皮腫瘍
 22.Ganglioglioma, gangliocytoma 神経節膠腫,神経節細胞腫
 23.Central neurocytoma 中枢性神経細胞腫
 24.Papillary glioneuronal tumor 乳頭状グリア神経細胞性腫瘍
 25.Rosette-forming glioneuronal tumor of the fourth ventricle
   第4脳室ロゼット形成性グリア神経細胞性腫瘍
 26.Pineocytoma 松果体細胞腫
 27.Pineal parenchymal tumor of intermediate differentiation
  中間型松果体実質腫瘍
 28.Pineoblastoma 松果体芽腫
 29.Papillary tumor of the pineal region 松果体部乳頭状腫瘍
 30.Medulloblastoma 髄芽腫
 31.Central nervous system primitive neuroectodermal tumor
  中枢神経系原始神経外胚葉性腫瘍
 32.Medulloepithelioma 髄上皮腫
 33.Ependymoblastoma 上衣芽腫
 34.Atypical teratoid/rhabdoid tumor 非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍
 35.Schwannoma シュワン細胞腫
 36.Perineurioma 神経周膜腫
 37.Malignant peripheral nerve sheath tumor 悪性末梢神経鞘腫瘍
 38.Meningioma, grade I
  a.Meningothelial, fibrous, transitional meningioma
   髄膜皮性,線維性,移行性髄膜腫
  b.Psammomatous meningioma 砂粒腫性髄膜腫
  c.Angiomatous meningioma 血管腫性髄膜腫
  d.Microcystic meningioma 微小嚢胞型髄膜腫
  e.Secretory meningioma 分泌性髄膜腫
  f .Lymphoplasmacyte-rich meningioma リンパ球・形質細胞に富む髄膜腫
  g.Metaplastic meningioma 化生型髄膜腫
 39.Meningioma, grade II
  Atypical, chordoid, clear cell meningioma 異型性,脊索腫様,明細胞髄膜腫
 40.Meningioma, grade III
  Anaplastic, papillary, rhabdoid meningioma 退形成性,乳頭状,ラブドイド髄膜腫
 41.Benign mesenchymal tumors 良性間葉系腫瘍
 42.Malignant mesenchymal tumors 悪性間葉系腫瘍
 43.Solitary fibrous tumor 孤立性線維性腫瘍
 44.Hemangiopericytoma, anaplastic hemangiopericytoma
  血管周皮腫,退形成性血管周皮腫
 45.Vascular tumors 血管性腫瘍
 46.Hemangioblastoma 血管芽腫
 47.Melanocytic tumors メラニン細胞性腫瘍
 48.Malignant lymphoma 悪性リンパ腫
 49.Plasmacytoma 形質細胞腫
 50.Granulocytic sarcoma 顆粒球性肉腫
 51.Langerhans cell histiocytosis ランゲルハンス細胞組織球症
 52.Paraganglioma 傍神経節腫
 53.Germ cell tumors 胚細胞性腫瘍
 54.Pituitary adenoma 下垂体腺腫
 55.Craniopharyngioma 頭蓋咽頭腫
 56.Granular cell tumor of the neurohypophysis 下垂体後葉顆粒細胞腫
 57.Pituicytoma 下垂体細胞腫
 58.Spindle cell oncocytoma of the adenohypophysis 腺下垂体の紡錘形膨大細胞腫
 59.Metastatic tumors 転移性腫瘍
 60.Cysts
  a.Dermoid cyst, epidermoid cyst 類皮嚢胞,類表皮嚢胞
  b.Rathke cleft cyst ラトケ嚢胞
  c.Colloid cyst of the third ventricle 第3脳室コロイド嚢胞
  d.Enterogenous cyst 腸原性嚢胞
  e.Neuroglial cyst 神経膠嚢胞
 61.Hypothalamic neuronal hamartoma 視床下部神経細胞過誤腫
 62.Nasal glial heterotopia 鼻腔内異所性グリア組織
 63.Neurofibromatosis 1 神経線維腫症1型
 64.Neurofibromatosis 2 神経線維腫症2型
 65.von Hippel-Lindau disease フォン・ヒッペル・リンドー病
 66.Tuberous sclerosis 結節性硬化症

付録
 表1.脳腫瘍の遺伝子/染色体異常
 表2.脳腫瘍の免疫組織化学

文献
索引

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脳腫瘍を疾患単位で簡潔明瞭に理解できる良書
書評者: 嘉山 孝正 (山形大教授・脳神経外科学)
 1988年に初版が発刊されて以来,脳腫瘍病理の解説書として瞬く間に若手の脳神経外科医,神経病理医の必携書になった『脳腫瘍臨床病理カラーアトラス』の第3版が,第2版以来10年ぶりに改訂された。本書は,神経病理,脳神経外科はもとより神経学,病理学に携わる多くの方から好評を得ているのは周知の通りである。その理由は,初版が発刊された目的にあるように,単に病理診断(組織学的特徴)のみならず,一つ一つの疾患におけるその組織学的特徴が,どのような病態,予後をたどるのかを体系立てて明らかとし,実際の治療に役立てんとすることに主眼を置いている,という他に類書がないためである。

 どんな疾患を治療するにあたっても,「相手を知る」ということが最も重要である。本書は,それぞれの脳腫瘍において,その組織学的分類から,それぞれの腫瘍の本質,病因または病態生理と言い換えてもよいかもしれないが,これを明らかにしようとする意欲,つまるところ治療方針を決定することに役立つように考えられている。本書では,画像所見,組織所見(光学顕微鏡所見,電子顕微鏡所見),予後などに加え,最近の分子生物学,遺伝子学分野の知見も網羅されており,疾患単位で,現時点でわかっているその生物学的特性を簡潔明瞭に理解することができる良書である。

 また,組織所見の写真が非常に美しく,それぞれの組織型のまさしくスタンダードといえる所見がわかりやすく理解できることも,本書の特筆すべき点である。さまざまな診断技術が向上している現在においても,組織診断がその治療方針の決定にあたり,最重要であることは以前から全く変わりようがない事実である。免疫染色,電子顕微鏡所見と合わせ,診断基準が明確にされており,これから学ぼうとする若手医師はもとより,実際の治療を担当する医師すべてに必要な所見を学ぶことができる。さらに,エッセンスのごとき最新知見がちりばめられており,学問への興味をあらためてかき立てられるよう配慮されている。

 初版の40項目から,第2版の78項目へ大幅に改訂され,この第3版では,2007年のWHO分類の改訂にあわせ,新しく加えられた項目をすべて網羅している。本書は,組織所見つまり組織学的分類から見たおのおのの疾患の理解を深め,臨床に役立ち,学問への探究心をくすぐる。神経疾患にかかわるすべての方に購読をお勧めしたい。
脳腫瘍診療に携わるすべての医療従事者に有用な書籍
書評者: 長村 義之 (東海大教授・病理診断学)
 この本を開いてみて,まず感銘をうけるのは,(1)多くの脳腫瘍を網羅しながらの理路整然とした組み立て,(2)規則正しく簡潔かつ十二分な各腫瘍についての記述,(3)タイトルにふさわしい美麗かつ的確なカラー図である。本書には,一貫して編集者の哲学が感じられるのが素晴らしい。本書の内容は,総論と各論により構成されている。

 総論は,①歴史,②組織分類,③発生の分子メカニズム,④分子遺伝学と,脳腫瘍の“温故知新”が簡潔にまとめられており,興味深くまた大いに参考になる。特に「脳腫瘍の組織分類」ではWHO分類2007の表にはすべての腫瘍名が網羅されており,中枢神経系腫瘍のWHO gradeでも,表が見やすくgradingが可能となるように配慮されている。「脳腫瘍発生の分子メカニズム」「Astrocytoma,oligodendrogliomaの分子遺伝学」ではこの領域でのアップデートされた最新情報が記載されている。

 各論では,WHO分類2007に準拠して記載されており,グローバルスタンダードにのっとってアップデートした脳腫瘍診断を行うことができる。ここに“誰でも”と付記したくなるくらいに,すべてが明快である。各論では代表的な66疾患が取り上げられているが,記載の簡潔さはもとより,カラー図も,H&E染色,免疫染色,電子顕微鏡など各腫瘍の診断に不可欠の特徴が網羅されている。かつ,われわれ病理医にとっても,極めて有用な画像診断イメージが必ず図示されている。CT,MRI画像などわかりやすく大いに参考になるものと思われる。

 さらに,遺伝性疾患であるNeurofibromatosis1/2,von Hippel-Lindau病,Tuberous sclerosisなどの場合では,遺伝子の突然変異も図示されている。最後に付録として,「表1.脳腫瘍の遺伝子/染色体異常」「表2.脳腫瘍の免疫組織化学」,そして文献が掲載されており有用である。

 本書は,病理医としては,脳腫瘍の病理診断の際に極めて有用であると同時に,脳腫瘍の診療に携わる臨床医にも多くの情報をもたらすものと思う。本書を,研修医,病理医,臨床医および脳腫瘍に関わるすべての医療従事者に極めて有用な書籍として推薦する。

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