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言語聴覚士のための

言語発達遅滞訓練ガイダンス


編集:佐竹 恒夫/小寺 富子/倉井 成子

  • 判型 A5
  • 頁 336
  • 発行 2004年06月
  • 定価 3,996円 (本体3,700円+税8%)
  • ISBN978-4-260-24430-5
言語聴覚士のための新しい教科書
言語発達遅滞児の学習条件・方法を知るには,現有の臨床知識を活用した丁寧な働きかけ,訓練資料の分析・検討が基礎になる。本書はSTの「臨床の質の向上」-専門職集団として知識を共有して問題解決を図り,未解決問題は次世代へ引き継ぐ-を目指した。アプローチの選択に悩んだとき,予後の見当がつかないとき,必ず役に立つ1冊。
書 評
  • 言語発達遅滞児にかかわる臨床家による臨床家のための本
    書評者:下嶋 哲也(国立障害者リハビリテーションセンター学院・言語聴覚学科)

     言語聴覚士がかかわる対象として,ことばの理解や表現に遅れのある子ども(言語発達遅滞児)は重要な位置を占めている。そして,言語発達遅滞児への言語聴覚士による援助に関する理論と方法論も,これまでにいくつか開発されてきている。

     この本は,言語聴覚士として(編者の先生方が臨床をはじめられた当時はま...
    言語発達遅滞児にかかわる臨床家による臨床家のための本
    書評者:下嶋 哲也(国立障害者リハビリテーションセンター学院・言語聴覚学科)

     言語聴覚士がかかわる対象として,ことばの理解や表現に遅れのある子ども(言語発達遅滞児)は重要な位置を占めている。そして,言語発達遅滞児への言語聴覚士による援助に関する理論と方法論も,これまでにいくつか開発されてきている。

     この本は,言語聴覚士として(編者の先生方が臨床をはじめられた当時はまだ言語聴覚士という公の名はなかったが)長きにわたって継続してきた言語発達遅滞児の臨床の中で,その支援の理論と方法論すなわち〈S―S法〉(正式には,国リハ式〈S―S法〉言語発達遅滞検査法,および訓練法という)を構築してきた編者らと,多くの症例提供をした臨床家による,臨床家のための本である。

     臨床家による臨床家のための本たる所以は,まず紹介されている症例がその多様さを確保しながら,〈S―S法〉の理論的枠組みの中に整理されていることである。その理論的枠組みの包括性は,比較的コンパクトにまとめてある序章を読むことによって理解できる。そして以後紹介される症例について,どのような視点でまとめあげられ,評価,訓練立案,再評価されているかということが理解できる。

     第一章以降は,症例紹介が〈S―S法〉の理論による症候分類にそってまとめられている。たとえば第一章には「幼児期の一時的な発語の遅れ」が取り上げられ,以降第二章では「ことばの理解ができない子どもの訓練」,第三章では「単語レベルは理解できるが発語のない子どもの訓練」といったようにテーマが設けられ,ほとんどの章で複数の症例が挙げられている。また,難聴との重複障害やAAC(補助拡大コミュニケーション)など,近年その重要性がより高まってきた対象にも積極的に取り組んできた臨床家の足跡をみることができる。

     紹介されている各症例は,「その背景となる情報→初期評価→訓練計画の立案→訓練経過→終期評価」という臨床の流れそのものを反映するように段階的にまとめられている。そしてその段階ごとに,「評価のポイント」「訓練のポイント」「解説」などが加筆されている。これらのポイント指摘や解説は,おそらく症例を臨床家どうしで検討する際に議論されたポイントであろう。読んでみると,臨床を実際に行っていく上で欠かせない視点や評価しておくべきポイント,その後の子どもの状態,経験に基づく臨床の基本的な考え方などが明快な形で,しかも初心者にもわかる程度のていねいさで表現されている。自らの経験を重ねて読んでいくうちに,まるで自分が現在かかわっている症例についてのスーパーバイズを自分が受けているような気持ちにすらなっていく。また,28個におよぶ「コラム」では,これまでの知見から得られた貴重な追跡調査の結果や,少々各論的なもの(例えば文字学習など)が読みやすい長さで書かれており,新しいことを知る喜びを与えてくれる。

     最後に,長い臨床歴をもつ臨床家だけが書くことのできる症例が紹介されているのは貴重である。例えば長期経過を追った症例など,1つのグラフを書くのに15年かかるのである。このグラフを見たときに,臨床に必要な知識というにとどまらず,臨床にとって何が大事であるかを学ぶことができたように思う。

     この症例集には,1人ひとりのケースに真摯に向き合ってきた多くの臨床家の技術と,臨床にかける思いがたくさん詰まっている。現在言語聴覚士になろうとしている人には理論的枠組みを含めて,具体的症例を通して臨床を理解する手立てとして役立つであろう。また,現在言語聴覚士として言語発達遅滞児にかかわっている人には,予後データと方法論の共有をはじめとして,自らの臨床の質を高める手立てとしてきっと役立つであろう。
目 次
序章 言語発達遅滞の見方・考え方
第1章 幼児期早期のことば/発語面の一時的な遅れの指導
第2章 ことばの理解ができないA群(音声受信未習得)児の訓練
第3章 単語レベルの受信(理解)が可能だが,発語のないT群
    (音声発信未習得)児の訓練
第4章 受信(理解)面に比べ発信(表現)面が極端に遅れ
    発語がないB群児の訓練
第5章 単語~語連鎖レベルへの訓練
    -生活年齢に比し遅れのあるC群の子どもの訓練(1)
第6章 語連鎖~統語レベルの訓練
    -生活年齢に比し遅れのあるC群の子どもの訓練(2)
第7章 難聴を伴う重複障害児の訓練
第8章 コミュニケーションの訓練
第9章 AAC(補助・代替コミュニケーション)によるアプローチ
第10章 長期的訓練経過
第11章 家族・地域への支援
おわりに
参考文献
症例リスト
索引