肝疾患レジデントマニュアル

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肝疾患診療に携わる研修医,若手臨床医のための実践的マニュアル。放射線診断,超音波診断,病理診断,IVRに関して,必要かつ十分な頁をさく一方,まれな疾患,超専門的知識は極力カット。今日の肝疾患診療の全体像が把握できる専門医を目指す人にもお薦めの1冊。好評の「これからの肝疾患診療マニュアル」の改訂版。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 柴田 実 / 関山 和彦 / 山田 春木
発行 2004年06月判型:B6変頁:388
ISBN 978-4-260-12469-0
定価 4,950円 (本体4,500円+税)
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  • 目次
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A 問診と身体所見のとりかた
B 救急症候の初期診療
C 輸液管理の考えかた(肝硬変)
D 検査およびIVR
E 肝疾患各論
F 肝移植
付録
 役に立つサイトの紹介
 主要計算式
 感染症対策
 意識障害の程度
 Number Connection Test
索引

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肝疾患を診る機会のあるすべての医師に
書評者: 上野 文昭 (大船中央病院・特別顧問)
◆臨床現場での疑問に即答

 このたび上梓された「肝疾患レジデントマニュアル」は,実質的に5年前に刊行された「これからの肝疾患診療マニュアル」の改訂新版である。当時第一線で活躍中の比較的若手の臨床医によって執筆された肝疾患診療マニュアルは,実践的でユニークな内容により高い評価を得た,文字通り「これからの」マニュアルであった。改訂にあたって多くの執筆者が残り,新たに加わった執筆者も同年代の気鋭の肝臓臨床医である。5年の歳月を経て,自分で行うだけでなく教えることの責務が重くなったためであろうか,臨床現場での疑問に即答してくれるわかりやすく懇切丁寧なマニュアルに変貌を遂げている。

 ベッドサイドの診断学から検査に飛ぶ前に,救急診療の項が新設されたのは健全な構成であり,救急診療に携わる機会の多い研修医にとって福音であろう。それに続く検査・IVR,疾患各論も5年間の進歩を盛り込みながらUpdateされている。冗長な文章を極力避け箇条書きに近いような文面も,図表の多さとともに見やすさをさらに倍化させている。また,画像写真の鮮明さは特筆ものであろう。元々画像アトラスとして作成されたものならいざ知らず,このサイズの普通紙でもこれだけの画質が得られることは驚嘆に値する。また随所に挿入された囲み記事が興味深い。本書に無機的な実用書としてだけではなく知的好奇心を満足させる書籍としての価値を付加している。

◆悩み考え学ぶ姿勢も忘れずに

 さて批判すべき点を探すのが難しい。本書の明快さと親切さは,若手医師が困ったときにすぐに解答を得ることができるという点で,もちろん美点であろう。しかし逆説的に言うならば,研修医の教育という観点からはこれが欠点かもしれない。優れたエキスパートが即座に教えてくれるという上意下達型の問題解決により,悩み考え学習するという姿勢がスポイルされる危惧もあろう。しかし本書の目的から考えればそこまで配慮する必要性がないのは当然のことである。

 総じて言えば,本書は十分に新しくそして必要な知識が網羅されている魅力的な肝疾患診療マニュアルである。本書をお奨めしたい対象は,研修医はもちろんのこと,肝疾患を診る機会のある実地医家,病院勤務医などが中心であろう。白衣のポケットに簡単に入るコンパクトなサイズでありながら,これだけ充実したマニュアルを完成した執筆者そして特に編集者の熱意と努力に最大級の賛辞を送りたい。

この1冊をマスターすれば肝疾患の診療の及第点がとれる
書評者: 銭谷 幹男 (慈恵医大助教授/消化器・肝臓内科)
◆肝疾患にこれから携わろうとする若手医師のために

 この度,柴田 実,関山和彦,山田春木3博士編集による『肝疾患レジデントマニュアル』が,医学書院から1999年発刊『これからの肝疾患診療マニュアル』の改訂版として上梓された。前版である『これからの肝疾患診療マニュアル』と同様に,最新の情報を網羅し,肝疾患にこれから携わろうとする若手医師が必要でかつ知りたい内容がみごとにコンパクトにまとまっており,これ1冊をとりあえずマスターすれば,肝疾患の診療の及第点がとれることは間違いないであろう。

 従来の内科系マニュアルでは記載が少なかった,画像診断や組織学的診断,さらに検査手技についても実地医家に必要な情報が的確に記載されており,日常診療での有用性は高く,また,肝移植についても,施設連絡先を含めた実施への実際が記載されており,その利便性も高い。『レジデントマニュアル』と名称を変えたものの,略語一覧,巻末の付録なども実に便利であり,肝臓専門医にとっても備忘録的虎の巻として白衣のポケットに忍ばせれば,大いに役立つものと思う。

◆常にUptodateな標準マニュアルとして確立されてほしい

 マニュアルとしては,『ワシントンマニュアル』が有名だが,この本の大きな特長として適宜,改訂を加えている点がある。肝疾患診療現場は,薬物や,機器の開発,さらに検査手技の発達による進歩が大きいことを勘案すると,今後適宜改訂されていくことが期待される。ことにわが国で飛躍的にその施行件数が増加している生体肝移植に関する記載や,ウイルス定量法の変革,新たな抗ウイルス薬などについては早急に加筆を計画し,常にUp-to-dateな標準マニュアルとしての確立を,版を重ねることにより成就されることを切に希望したい。

 また,今後の希望としては,日常診療ではしばしば遭遇する他疾患との合併時の対応,肝疾患時の薬物投与の注意などにも項目を割いていただければ,本書の価値はさらに高まること請け合いである。

肝疾患の実地診療における座右の書
書評者: 戸田 剛太郎 (せんぽ東京高輪病院院長)
 本書は肝疾患診療に直接携わる医師のために書かれた実践の書である。編者はレジデントなど医師としての一歩を踏み出した若手医師を対象にして編纂したとしているが,肝疾患を専門としないベテラン医師にも十分に役に立つマニュアルである。11×18.2×1.5cmと白衣のポケットに入る程度のサイズである。小さいながらも肝疾患診療に必要な事項は十分に盛り込まれている。

◆肝疾患診療の進歩をわかりやすく

 肝疾患の診療は近年目覚ましい進歩を遂げた。特に画像検査の進歩は著しい。レジデントあるいは肝疾患を専門としない医師は自分で超音波検査を行うことは少ないと思われる。また,肝組織診断は病理医の領域である。CT,MRI,血管造影は多くの施設では放射線科の医師の守備範囲である。したがって,CT,MRI,血管造影の所見は放射線科の医師の所見を参考にすることが多いのではないかと思う。しかし,患者に説明するのは主治医の役割である。本書では約1/3が肝組織所見を含めた画像検査(方法,所見の読み方など)に割かれており,画像検査専門医の読んだ所見を理解し,自分のものとして自信を持って患者に説明するのに大いに役立つものと思う。肝病理学の用語についても懇切丁寧な説明がある。肝細胞濃縮など肝臓病理学の用語についてもわかりやすい説明がある。

◆「肝機能検査」という用語は使われていない

 いわゆる肝機能検査所見の読み方についても同様である。私はAST,ALTなどの肝細胞障害のマーカーまで肝機能検査に含めてしまうのに常々抵抗を感じているが,本書では肝機能検査という用語は使われていない。これは編者,著者も肝臓病学に関する理解が深い証左である。血液生化学,血液凝固検査などは肝の病態をリアルタイムでフォローするには欠くことのできない検査である。肝生検を除く形態学的な変化の把握は確実な診断法ではあるが,び漫性の肝疾患では肝細胞障害,肝機能障害を反映する検査に比較すると肝病態の把握という点では感度も低く,時間的には遅れることがある。このような意味ではもう少し血液生化学,血液凝固検査に注目すべきであると思っている。付録にFENaなどの肝疾患診療に必要な計算式,またより詳しい情報,最新の情報を得るためのサイトの説明があるのも親切である。

 本書の編者はいずれも市中病院で肝疾患の診療にあたっている若手の医師であり,着眼点もよく,肝疾患の診断と治療に必要な知識,現時点での到達点が要領よくまとめられている。肝疾患の実地診療における座右の書としてぜひともお薦めしたい書である。

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