口蓋裂の言語臨床 第2版

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口唇裂・口蓋裂を取り巻く言語臨床領域では,臨床に基づく研究が多く発表されるとともに,共通言語として使用できる口蓋裂言語の評価を作成する活動が始まりつつある。本書では今日の動向を踏まえ,最新の資料や研究,具体的な検査,評価,訓練法を紹介し臨床で応用できるよう心がけた。口蓋裂に重複した障害の症例も多数紹介。
編集 岡崎 恵子 / 加藤 正子
発行 2005年03月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-24438-1
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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1章 口蓋裂治療における言語臨床家の役割
 1. チームアプローチによる口蓋裂の治療
 2. 口蓋裂治療における言語臨床家の役割
2章 口蓋裂の言語臨床に必要な基礎知識
 1. 発声発語器管の概略
 2. 発生
 3. 口唇裂口蓋裂のタイプ
 4. 口唇裂口蓋裂の発生頻度
 5. 合併症
 6. 鼻咽腔閉鎖機能
 7. 手術
 8. 耳鼻科領域の問題
 9. 歯科領域の問題
 10. 心理・社会的問題
 11. 社会資源の活用
3章 口蓋裂言語
 1. 口蓋裂言語とは
 2. 言語発達
 3. 構音発達
 4. 声の問題
 5. 構音障害
4章 口蓋裂の言語臨床における評価
 1. 裂型の判定
 2. 口腔・顔面の形態と機能の評価
 3. 鼻咽腔閉鎖機能の評価
 4. 言語の評価
 5. 耳鼻科領域に関する評価
 6. 社会心理面の評価
5章 口蓋裂の言語臨床における治療
 1. 外科治療
 2. 補綴治療
 3. 言語治療
6章 乳児期の言語臨床
 1. 評価
 2. 治療
7章 乳児期の言語臨床
 1. 評価
 2. 治療
8章 学童期の言語臨床
 1. 評価
 2. 治療
 3. 歯科矯正と顎裂部骨移植
 4. 鼻咽腔閉鎖機能
 5. 心理的問題
9章 思春期(中学生・高校生)・成人期の言語臨床
 1. 評価
 2. 治療
10章 特別な問題を持った症例
 1. 精神遅滞を伴う症例
 2. 難聴を伴う症例
 3. ロバン・シークエンス
 4. 第一第二鰓弓症候群
 5. トリーチャー・コリンズ症候群
 6. 22q11.2欠失症候群
 7. プラダー-ウィリー症候群
 8. カブキ・メーキャップ症候群
 9. 発達性読み書き障害を伴う症例
11章 口蓋裂の言語臨床における今後の課題
 1. チーム治療
 2. 口蓋裂言語の評価
 3. 口蓋裂の言語治療
 4. 心理的な援助
 5. 最後に-臨床の質
文献
付1=日本語の音
付2=口蓋裂に関する参考文献
索引

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言語臨床の発展のための出発点となる本
書評者: 澤島 政行 (東京大学名誉教授/横浜船員保険病院名誉院長)
 本書は,1997年に出版された第1版の改訂版である。第1版は口蓋裂の言語臨床家として実績を積み上げた著者たちが口蓋裂言語に関する諸問題を包括整理し,臨床経験と併せて世に出したものである。その後8年の時を経て著者等の実績にも,臨床に加えて若い臨床家や学生の指導教育活動が増えてきている。

 第2版では最近8年の新しい知見を加えると共に,後進の育成という意味を含めて新しい著者数名が加わっている。第2版の構成も初版と同じ11章から成る。すなわち「1章.口蓋裂治療における言語臨床家の役割」,「2章.口蓋裂の言語治療に必要な基礎知識」,「3章.口蓋裂言語」,「4章.口蓋裂の言語臨床における評価」,「5章.口蓋裂の言語臨床における治療」,「6章.乳児期の言語臨床」,「7章.幼児期の言語臨床」,「8章.学童期の言語臨床」,「9章.思春期・成人期の言語臨床」,「10章.特別な問題を持った症例」,「11章.口蓋裂の言語臨床における今後の課題」,である。

 第2版の目次では細かい小見出しが付けられ,その章の内容が一目瞭然となっている。内容の記述も新しい知見の追加と共に,かなり細かく書き直され,正確な知識と具体的な臨床実践の手掛かりが得られるように配慮してある。評者は第1版の記述について,初心者には多少取り付きにくいのではないかという懸念を持っていたが,第2版ではその点も改善されている。

 第1章では,チームアプローチを前面に掲げ,またチームのコーディネーターとしての言語臨床家の役割を挙げている。これはSTの資格制度が施行され,口蓋裂を含む言語障害の分野でSTの存在が定着し,障害対策が成熟してきたことを示すものである。第8章,学童期の言語臨床では項目の立て方から大幅に書き換えられている。これには新しく加わった著者の視点と最近の学童生活の実体が反映しているのであろう。第10章の重複症例では数名が分担執筆し,最近の知見も加えて内容の充実がはかられている。第11章,今後の課題では,初版は“○○をどうするか?”という問題提起の形式をとっていたが,第2版では課題としての項目を明記して,それに対する指針を示しているのが注目される。また言語評価の国際的標準化にも触れている。

 さて,本書初版の前身が1983年医学書院出版の『口蓋裂の言語治療』であることをご存知の読者も少なくないであろう。この本の著者たちは日本における口蓋裂言語治療の草分けとしてこの領域の開拓,発展を推進して来たSTの先達である。それから14年後,その著者等が内容を一新して出版したのが本書の初版である。第2版が出版された現在は,この領域の開拓,発展が一段落した時代と考えてもよいであろう。第2版はそのような時代の変化を見据えて今までの成果を総括し,今後の新しい発展への引継ぎの意味を込めて書かれていると思われる。本書が新しい言語臨床の出発点となることを期待したい。

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