精神医学 第2版

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PT・OT学生の教科書。国試出題基準に「精神科リハビリテーション」項目が加わり,また国際障害分類改訂により障害の概念が大きく変わる今,第2版では,精神医学におけるリハビリテーションの記載を特に充実させた。また多彩な図表を数多く収載し,学びやすい本を目指した。用語は日本精神神経学会に準拠。
シリーズ 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野
シリーズ監修 奈良 勲 / 鎌倉 矩子
編集 上野 武治
発行 2004年11月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-26630-7
定価 4,840円 (本体4,400円+税)
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  • 目次
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序説 PT・OTと精神医学のかかわり
第1章 精神医学とは
第2章 精神障害の成因と分類
第3章 精神機能の障害と精神症状
第4章 精神障害の診断と評価
第5章 脳器質性精神障害
第6章 症状性精神障害
第7章 精神作用物質による精神および行動の障害
第8章 てんかん
第9章 統合失調症およびその関連障害
第10章 気分(感情)障害
第11章 神経症性障害
第12章 生理的障害および身体的要因に関連した障害
第13章 成人の人格・行動・性の障害
第14章 精神遅滞
第15章 心理的発達の障害
第16章 リエゾン精神医学
第17章 心身医学
第18章 ライフサイクルにおける精神医学
第19章 精神障害の治療とリハビリテーション
第20章 精神科保健医療と福祉,職業リハビリテーション
第21章 社会・文化とメンタルヘルス

資料1 ICD-10精神および行動の障害(カテゴリー・リスト抜粋)
資料2 DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引(新訂版)(診断カテゴリー抜粋)
資料3 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)・抜粋
資料4 精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための原則(国連)
資料5 理学療法士・作業療法士国家試験出題基準
   (専門基礎分野における精神医学および精神医学の関連項目)
資料6 参考文献一覧
資料7 セルフアセスメント

索引

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精神科リハビリテーションをとりまく環境の変化に適切に対応
書評者: 山内 俊雄 (埼玉医大学長)
 理学療法や作業療法を行う際に,病者の心のありようを適切に把握して治療を行うことが,治療効果をあげる上で重要であることは,周知の事実である。そしてまた,これらの治療法を受ける病者のおかれた精神的・身体的病態を正しく判断することが必要なこともまた,言をまたないことである。

 このような精神医学的配慮が誤りなく行われるためには,精神医学的素養を身につけることが不可欠である。例えば,精神的な不調がどのような理由で生ずるのか,対応はどうすべきかなどについて,大まかなあたりをつけることができることが重要である。

 理学療法や作業療法にたずさわる者にとって必要とされる精神医学的知識をまんべんなく,しかもわかりやすく提供しているのが本書である。精神の病がどのようにして生ずるかを成因の上から大きく3つに分け,それぞれの疾患についてICD―10に従って説明しているが,それは網羅的ではなく,どのようにして理解するかといった,学ぶ者の視点に立って,図表を多用しながら,重要なポイントをおさえて,説明している。しかも,当然のことながら,リハビリテーションの視点から治療や援助,福祉が述べられ,職業リハビリテーションが語られている。

 実は,本書は初版から3年半を経ての本格改訂としての,第2版である。初版で不十分であったところをていねいに補っただけでなく,初版以降に,精神科リハビリテーションの位置づけが明確化されたり,国際障害分類が改訂され,障害の概念が変化するなど,精神科リハビリテーションをとりまく環境の変化が生じたことに適切に対応して,本書の改訂となったものである。

 例えば,国際生活機能分類(ICF)にそった改訂や,初版で不十分と思われた予防,治療の面を補強したり,多くの資料,写真,図を新たに加え,読者の理解を促す工夫を凝らし,また,医療の現場で求められている,小児,青年期,初老期,老年期など,年齢的視点からの精神医学にも言及しており,この1冊で精神医学の広範な領域を知ることができるだけでなく,自然に,リハビリテーションと精神医学の結びつきを理解できるような工夫が諸処に感じられる。

 また,資料として,ICD―10,DSM―IV―Rや精神保健福祉法の要点などが掲載されており,大変親切にしてかつ,時代の先端に対応したテキストブックといえよう。

 その意味でも,本書は,学生のみならず,理学療法・作業療法に関係する人たちの,まさに標準となる,完成度の高い教科書である。

必要な知識の整理・確認にとどまらず,精神医学の進歩がOT・PTに及ぼす影響を俯瞰できる
書評者: 冨岡 詔子 (信州大教授・保健学科作業療法学)
 3年半前の初版本にも書評を書かせてもらった。「教科書としての標準的・中立的な立場を保持した過不足のない網羅的な内容」と「OTやPTに必要な項目の詳述とのバランスがとれた利用しやすい実用的な参考書」の2点を優れた特徴としてあげ,「治療とリハビリテーション関連事項の補強」を今後の改善への希望点としてあげた。今回の改訂では,こうした希望がかなえられ,初版本のもつ長所を生かしつつ,治療・ケア・援助・リハビリテーションに関連した記述が随所で補強された。特に,第19章は章タイトル自体が「精神障害の治療」から「精神障害の治療とリハビリテーション」に変更され,インフォームドコンセントや心理教育などの新たな項目を加えて,章全体が大幅に書きあらためられ,治療とリハビリテーションの全体像がより理解しやすくなった。

 改訂版のきっかけとなる最新の動向や新知見の言及もタイムリーである。例えば国際生活機能分類(ICF)への言及(総論第1章),精神分裂病から「統合失調症」への呼称変更にあわせた関連用語の改定と項目内容の大幅な変更,および最新の生物学的成因論の記述(第9章「統合失調症およびその関連障害」),さらに老年期を「初老期」と「老年期」に区分した詳述(第18章の「ライフサイクルにおける精神医学」)など,現場のセラピストにとっても役に立つ内容が補充されている。

 基礎教育のテキストには,伝統的・標準的な知見や定説といった過去から現在までの学問的蓄積をいかに分かりやすく伝えていくかという「保守的な側面」と,新たな仮説や知見をどのように伝えていくかという「進歩的な側面」の両面をもつことが常に要求されている。この両面のバランスの良さが本書の長所であり,作業療法の専門科目を教える教員にとっても,本書に対する「安心感と信頼感」の源泉になっている。

 例えば,本書では,私自身が学生時代に教わったヤスパースの自我意識の概念やクレペリンやブロイラーの伝統的な分類概念から,最近の脆弱性―ストレスモデルや脳SPECTの知見までが含まれている。経験あるセラピストにとっても,本書の一読は必要な知識の整理や確認に役立つというだけでなく,学問(精神医学)の進歩がOT・PTにどのような影響を及ぼすかを俯瞰する機会になり,そうした視点で自分の実践(教育や臨床活動)を見直す道筋を提供してくれるのではないだろうか。その点,各章の最後にある「PT・OTとの関連事項」は,いずれ精神医学に関心のあるPT・OTの共同執筆者を求めることで,より明確なメッセージが伝達できるのではないかと期待している。

 精神医学の教科書というと,「文字が多くてとっつきにくい」のが定番であったが,初版以来の基本方針である「百聞は一見にしかず」をより徹底し,図表・写真を多用し,レイアウトがさらにみやすくなった。また,重要な関連事項や用語を,NOTE・Advanced Studiesとして別個に記述して挿入する方法は,複雑な概念を整理しながら,自己学習を深めていく上で,きわめて有用である。

 本書の改訂にあたっては,「温故知新」を重視したとある。初版以来貫いている編集責任者の上野氏の方針は,テキスト出版の王道であり,厳しく骨の折れる仕事でもある。より使いやすくなった改訂版の出版に心から敬意を表したい。

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