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ダーモスコピーの診かた・考えかた

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読んで、見て、解いて、理解--。雑誌『臨床皮膚科』の人気連載「Dermoscopy Specialistへの道」を加筆・再構成して単行本化。総論ではその原理、診断手順、部位別の診断について丁寧に解説。各論では典型的な症例32例を初級・中級・上級の難易度別に分け、確認すべきチェックポイントを示して出題。ダーモスコピーの診断能力を高めるために、最初に手にとってほしい1冊。
斎田 俊明
発行 2007年04月判型:B5頁:200
ISBN 978-4-260-00440-4
定価 7,920円 (本体7,200円+税)

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序文

執筆者/斎田 俊明



 近年,皮膚科診療に取り入れられたダーモスコピーは,本邦において2006年に保険診療に採用され,多くの皮膚科医が関心を寄せている.ダーモスコピー用の機器を備えて,診療にあたっている皮膚科医も増えている.ダーモスコピーを用いると,肉眼的には認識できない様々な所見が明瞭に認められることは,この診断法を使用した誰もが同意することである.しかし,多くの皮膚科医は,ダーモスコピーの複雑な診断手順と所見を表す多数の用語に戸惑っているのではないだろうか.本書は,ダーモスコピーに不慣れな皮膚科医が,ダーモスコピー診断の要諦を理解し,この優れた診断手法を存分に使いこなせるようになってほしい,という願いを込めて刊行するものである.

 本書では,まず総論において,ダーモスコピーの代表的な診断手順のエッセンスを紹介した後に,主要疾患のダーモスコピー所見を箇条書き的にまとめて記載した.この部分を通読していただければ,ダーモスコピー診断のオリエンテーションが十分に身に付くはずである.なお巻末には,「ダーモスコピー用語解説」を辞典的な体裁で掲載し,各所見の定義と診断上の意義を容易に理解できるように配慮した.総論部分などを通読中に,少しでも用語の意味に疑問を感じたら,この「用語解説」で確認するようにしてほしい.総論の後には,ダーモスコピー診断演習として32問の「練習問題」を用意した.各問4頁の構成で,1頁目にダーモスコピー所見と簡単な病歴,臨床写真を掲示するとともに,「チェックポイント」の項を設けてダーモスコピー診断の手掛かりとなる事項を箇条書きで示した.これにしたがって,ダーモスコピー所見を評価し,診断を考えていただきたい.2頁目以降には,所見の詳細な解説や診断の考え方を,病理組織所見との対応関係も含めて詳しく記述し,理解を深められるようになっている.これらの演習問題は難易度別に,初級編,中級編,上級編の3段階に分けて掲載してあるので,順次検討していただければ,ダーモスコピー診断の腕前が確実に向上するはずである.

 なお,本書の「練習問題」は,「臨床皮膚科」誌に連載した「Dermoscopy Specialistへの道:Q & A」に手を加えたものである.雑誌連載にあたって種々お世話になった同誌編集室の伊藤香織,川村信子,天野徳久の各氏,ならびに単行本の編集,刊行につきご尽力いただいた医学書院の西村僚一,上舘良継の両氏らに深謝したい.また,貴重なダーモスコピー画像を貸与して下さった大原國章先生(虎の門病院),土田哲也先生(埼玉医大)ならびに田中 勝先生(東京女子医大)に御礼申し上げるとともに,執筆にあたって資料の整理等を担当してくれた古賀弘志,高沢裕子,宮嵜 敦をはじめとする信州大学皮膚科の教室員諸君に謝意を表する.

 皮膚科診断学の基本は,皮疹の特徴を正確に把握することである.とくに個疹の性状の詳細な観察がその要諦であるといえる.ダーモスコピーは,この個疹の性状の把握という点でまったく新しい次元を切り開いた診断法であり,皮膚科診断学の歴史において画期的に重要な意義を有するものである.とくに色素性皮膚病変の診断には,必須の補助診断法となっている.本書が,この優れた診断法に通暁する上で,皮膚科医の先生方に少しでもお役に立つことができれば,と願っている.

 2007年早春

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第1部 総論
 第1章 ダーモスコピーの原理と機器
  1. 原理と意義
  2. 機器と検査法の実際
 第2章 ダーモスコピーの診断手順
  1. 二段階診断法
  2. 3-point checklist
  3. CASH法
  4. ABCD rule
  5. Menzies法
  6. 7-point checklist
第3章 各疾患のダーモスコピー所見(解剖学的部位別)
  1. 生毛部の病変(顔面を除く)
  2. 顔面の病変
  3. 掌蹠の病変
  4. 爪甲の病変
第2部 診断演習
 初級編
  1 左側胸部にみられた黒褐色斑
  2 鼻部に生じた黒色小結節
  3 右前腕にみられた黒褐色斑
  4 右足内踝部にみられた黒色結節
  5 右肩に生じた黒色局面状皮疹
  6 右足底前方部にみられた褐色斑
  7 右足底に生じた褐色斑
  8 左足底にみられた黒褐色斑
  9 左足底に生じた黒褐色斑
  10 左足底にみられた黒褐色斑
  11 右足の踵に生じた褐色斑
  12 左側頸部にみられた黒色皮疹
 中級編
  1 背中に生じた灰黒色結節
  2 頬部に多発する褐色斑
  3 左側胸部にみられた赤黒色結節
  4 右前腕にみられた青灰色小結節
  5 左上腕側部にみられた黒褐色斑状病変
  6 右前腕にみられた淡紅褐色小結節
  7 右足背にみられた黒色小結節
  8 右下腿に生じた淡褐色結節
  9 左前腕外側部に生じた黒褐色皮疹
  10 前額部に生じた淡黄白色小結節
  11 左第5趾爪甲にみられた褐色色素線条
  12 右第5指爪甲に生じた黒褐色の縦線条
 上級編
  1 右足外側に生じた紅色小結節
  2 左手掌に生じた易出血性の紅色結節
  3 鼻背部の潰瘍化した紅色結節
  4 切除後に再発した外陰部の紅色結節
  5 右部に生じた黒褐色病変
  6 左側腹部に生じた黒色結節
  7 左部に生じた黒褐色の局面状病変
  8 左足首後面に生じた淡紅色の局面状皮疹
付録
 1. ダーモスコピー:症例の記載法
 2. ダーモスコピーで認められる血管所見の模式図
 3. ダーモスコピー用語解説
文献
和文索引
欧文索引
「診断演習」所載症例の診断名目次と索引

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ダーモスコピー診断技術のレベルアップを図る
書評者: 大原 國章 (虎の門病院副院長)
 本書はダーモスコピーについて日本語で書かれた3冊目の本である。著者はこの方面での世界的な第一人者の斎田俊明教授で,雑誌・『臨床皮膚科』に「Dermoscopy Specialistへの道:Q & A」として2004年4月から2006年12月まで連載されたものに補筆し,さらに総論と用語解説・文献,所見の記載法,血管所見の一覧模式図を加えてある。索引も含めて190頁の,比較的ハンディーな体裁となっている。

 既刊2冊も加えてこれら3冊の性格づけを大学受験になぞらえてみると,1冊目(金原出版)は教科書,2冊目(秀潤社)は参考書・副読本,3冊目の本書はレベルアップ・自習用の問題集に相当する。

 本書は初級・中級・上級に色分けされた32問の診断演習が骨格をなしているが,特徴はよく工夫されたその構成にある。右側の1頁に臨床写真,ダーモスコピー写真,臨床情報がまとめて提示され,さらにチェックポイントも指示されている。その頁をめくると解説編となり,ダーモスコピー所見のとり方,個々の所見の定義・見え方,ダーモスコピーと病理との対応,類似症例や鑑別疾患が順々に系統的に述べられている。ダーモスコピー写真が再掲されているので頁を戻す必要がないし,矢印などを多用して所見と解説の対応がわかりやすくなっている。3冊目の本という利点を生かし,既出の2冊の構成から学んでいるように思える。

 ダーモスコピーは臨床現場に導入されてからまだ歴史が浅いので,所見のとり方や解釈の仕方に通暁した指導的医師の数が少ない。系統的な教育システムも未完成で,教育講習会の開催も散発的にとどまっている。そのために,現場の皮膚科医の多くは,機器を手にして覗いてみてもその所見が解釈できずじまいかもしれない。
 その問題を解決する意味では,演習形式で自学自習できる本書の果たす役割は大きいものがある。今後も,このような“問題集”が多数出版されて,ダーモスコピーの理解度が向上することを期待したい。

 本書を通読すると,大学のゼミナール室で斎田教授の個人レッスンを受けているような感覚に陥る。所見のとり方の細心さ,その意味付けの緻密な論理,診断に至る明快さ,どれをとっても私にはとても真似ができない。ただし,“授業内容”がかなり高度な部分もあり,初学者がいきなり“教室”に入ってきても雰囲気に圧倒される懸念もなきにしもあらずで,多少の経験がある人が知識の整理・基礎の再確認をするのに向いているかもしれない。

 惜しむらくは一部の画像があまり鮮明でなく,色も自然でない点である。そのために,筆者には見えている所見が,読者には見つけにくい可能性がある。これは今後の改訂に待ちたい。
診療上の問題を浮き彫りにし実践に備える
書評者: 土田 哲也 (埼玉医大教授・皮膚科)
 言うまでもないことだが,著者の斎田俊明先生は本邦におけるダーモスコピーのパイオニアであり第一人者である。ダーモスコピーがあまり注目を集めなかった時代からすでに世界に向けて多くの研究成果を発信するとともに,この革新的な皮膚科診断手法をわが国で普及させるために心を砕かれてきた。その普及への着実な努力の過程で,節目となる2つの出来事があった。1つは,斎田先生が中心に編集された『カラーアトラスダーモスコピー』(金原出版)の出版であり,これにより,われわれは本邦において共通の言語と所見認識をもつことができるようになった。そしてもう1つは,その有用性が認められ,少額ながらも保険適応が認められたことである。

 こういった背景のもとに,現在では多くの皮膚科医がダーモスコピーを日常診療に取り入れるようになり,診断精度の向上,ひいては皮膚科診療の専門性の向上に大いに貢献することが期待されている。

 しかし,ここで大きな問題がある。ダーモスコピーが皮膚科診断の精度を高めることは証明されているが,それは訓練された医師が診察した場合という前提がある。ではどのようにして訓練するのか。診療の場における熟練者の直接指導が期待できない場合,各地で開催されるダーモスコピー講習会での学習が第一に考えられる。しかし,時間的な制約,細部の学習の不完全さといった問題もある。また,既存の教科書での学習も,煩雑さが先にたち,全体概念の把握,そして実践的な読み取りの訓練までにはどうしても至らないことが多い。

 本著においては,そういった問題点に対する配慮が見事になされている。最初の総論はダーモスコピー診断のエッセンスが簡潔にわかりやすく記載され,初めてダーモスコピーの勉強をしようとする皮膚科医も無理なく全体概念が把握できるような仕組みになっている。そして,その基礎知識をもとに診断演習を行うことで,実際の診療上問題になる点を浮き彫りにして,実践に備えるとともに知識の定着を図る配慮がなされている。

 肉眼診断と病理診断の両者の関係を常に考えながら診断を考えてきた皮膚科医にとって,まさしくその橋渡しとなるダーモスコピーは,本来なじみやすい診断手法のはずである。そういった著者の信念のもとに作られた本著では,臨床写真,病理写真との対比でダーモスコピー所見を読み取っていく楽しみも読者に与えてくれる。そして,何よりも,所見・用語の解釈に強い説得力があるのは,欧米の教科書の単なる受け売りではなく,著者自身が多くの症例を実際に診てそこから発見してきたことを基盤に述べているからに他ならない。

 これからダーモスコピーを勉強しようとする方はもちろんのこと,ダーモスコピーに習熟した医師にとっても,本著は知識の整理,思い込みの是正,より実践的な診かたの体得といった面できわめて有益であり,手にとって今一度勉強し直してみることをぜひお薦めしたい。

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