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メディカル クオリティ・アシュアランス 第2版
判例にみる医療水準

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患者意識の変化を背景に、医師・医療機関に求められる法的医療水準は近年厳格化する傾向にある。本書では、外科医であり弁護士でもある著者が膨大な医療訴訟の事案を詳細に検討し、現在の医療水準を明らかにする。判例から読み取れるエッセンスを抽出した解説は、臨床の実践的な指針となる。他に類を見ない、すべての医療関係者必読の書。
古川 俊治
発行 2005年05月判型:B5頁:536
ISBN 978-4-260-12734-9
定価 6,160円 (本体5,600円+税)

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  • 目次
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1章 医事訴訟の概要
2章 説明義務
3章 薬剤
4章 救急医療
5章 麻酔
6章 臨床一般
7章 脳神経系疾患
8章 呼吸器疾患
9章 循環器疾患
10章 消化器疾患
11章 腎・泌尿器疾患
12章 その他の内科疾患
13章 皮膚科疾患
14章 一般外科
15章 整形外科疾患
16章 形成外科
17章 新生児疾患
18章 産科疾患
19章 婦人科疾患
20章 小児科疾患
21章 精神科疾患
22章 眼科疾患
23章 耳鼻咽喉科疾患
24章 放射線治療・診断
資料1
資料2
判例索引
索引

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医療における重要判例を学生にもわかりやすく解説
書評者: 寺野 彰 (獨協医大学長/獨協大法科大学院教授)
 待望の古川俊治氏著『メディカル クオリティ・アシュアランス―判例にみる医療水準(第2版)』が出版された。5年前に刊行された同書初版についても高い評価を獲得し,筆者も大変勉強させていただいたものであるが,今回の改訂版は内容もレベルも大きな変化をみせている。確かに2000年から2005年に至るこの5年間,医療事故,医療安全をめぐる情勢は一変した。横浜市立大事件,東京女子医大事件,さらに慈恵医大青戸病院事件など社会的にみても大きな衝撃を与えた医療事故が相次ぎ,メディアも厚労省当局も,病院の医療安全体制に対してはきわめて厳しい姿勢をとるようになった。当然患者の意識も大きく変化し,医療不信は現在でも増加している。本書はこのような変化を敏感に捉え,今後の医療安全,医療事故防止への基本的な方向を示すきわめて重要な内容を有している。

 古川氏は,すでに広く知られているように慶應大学の現役外科医であると同時に,弁護士としても活躍中の俊才である。現在は英国オックスフォード大学に留学中であるが,間もなく帰国されて,さらなる活躍が期待されている。

 本書を通読したところ(内容が膨大なので精読していたら書評の期限に間に合わない),第一の特徴は最近の判例に至るまできわめて多数の重要判例をほぼ余すことなく「事案」,「裁判所の判断」として見事にまとめ上げていることである。筆者にも経験があるが,長文の判例をまとめ上げることは大変なエネルギーを要するものであり,よくもこれだけの判例を整理されたと敬服する次第である。

 1―2章は「医療訴訟の概要」,「説明義務」という形でわかりやすく解説しており,医師,法律家のみならず医学生,看護学生さらに一般人にも必要な医事法学の基礎知識が容易に得られるよう工夫してある。続いて3―6章では「薬剤」,「救急医療」,「麻酔」など医療事故の最も生じやすい場面について解説する。7章以降は内科,外科領域はもちろんのこと,産婦人科,小児科,精神科などすべての専門科について判例を中心に,氏の見解を交えながら詳述する。そして,本書を一貫しているコンセプトは,タイトルにもあるように,判例から導かれる医療水準の解釈であろう。医療水準については,未熟児網膜症をめぐる裁判以来,その解釈をめぐって多くの判例,学説が登場したが,医療,医学が今日のごとく急激な進歩,発展をみる時代にあっては,その内容も大きく変化するのは当然である。しかし,この医療水準という概念は判例によって決められるものではなく,医療側が決めるべきものであり,そのためにも,医療者は多くの判例を通じてその考え方をしっかりと打ち立てる必要がある。そのためにこそ本書のような解説書が必須であり,古川氏からの重要なメッセージが込められていると考えられる。

 昨年発足した法科大学院においても,医事法は重要な科目として各校とも重視しているようである。医師の資格を有する者も多数入学していると聞く。筆者も獨協大学法科大学院で「医療と法」を担当しているが,古川氏も慶應大学において医事法を担当しておられる。本書は,法科大学院の教員ならびに学生諸君にとってもきわめて有用なテキストブックになるであろう。

 本書を,これら専門家のみでなく,第一線で活躍中の医師,弁護士など法曹関係者,医学生,看護学生,法学部学生さらに広く医療に関心を持たれている一般の方々におすすめする次第である。

さまざまな医療過誤を実際の判例に基づいて解説
書評者: 武藤 徹一郎 (癌研有明病院・病院長)
 相変わらず医療事故がなくならない。報道される数が減らないのだから,真の実態は推して知るべしである。医療安全管理委員会を設立し,マニュアルを作成し,“指差し確認”を頂点とする標語を作って各部署に貼ってみても,小さなミスは絶えることがない。To err is human(人は誰でも間違える)とは真実であり,間違え方によっては患者さんおよび医療関係者に重大な影響が及ぶことを覚悟しておかなければならないと実感せざるをえない。

 このような時期に『メディカル クオリティ・アシュアランス―判例にみる医療水準(第2版)』という,まことに時宜に合った本が出版された。本書では医療過誤が起こった場合,その関係者がどのような責任を問われるかが,実例に基づいて詳細に述べられており,医療レベルが低いことの結末から,逆にメディカル クオリティ・アシュアランスの必要性がよく理解できる仕組みになっている。

 本書は24章から構成されており,説明義務違反などの一般的な事例に続いて,臓器別に医療訴訟の実例に基づいた解説によって,個々の医療過誤のどこに問題があるかが示されている。すなわち,各章ごとに判例としての事案と裁判所の判断が示され,その後にコメント,あるいは補足的な解説が追加されている。トピックス欄にさまざまなトピックスを取り上げて概説してあるのも大変有用である。交通事故後の所見の見逃し責任や,その時の「何か変わったことがあれば病院へ来なさい」というだけでは説明が不十分で責任を問われる,という話など,日常診療現場で起こっている事例がふんだんに出てきて,正直なところ常に正しく対処できる自信を失いそうになる。紹介されている事案は計570件,判例の出典も全部明記されており,その総数は1071に及ぶ。個々の医療過誤が裁判官的手法によって詳細・簡潔にまとめられており,どの事案を見ても大変参考になる。登場するのはいずれも新聞沙汰になるような大きな過誤であるが,それは日々起こる小さなインシデント,アクシデントの積み重ねの最終結果であり,クオリティ・アシュアランスのための日常の努力を怠ってはならないことを思い知らされる。

 本書の著者,この世界では有名な古川俊治氏は,現役の外科医にして医学博士,慶應義塾大学法科大学院助教授であるとともに,弁護士としても社会的に活躍しているという誠に多才な能力の持ち主である。本書は正に医学と法律を熟知した著者にしか書くことのできない名著であり,すべての医師にとって,総論および自らの専門とする領域の項を熟読するだけで大変役に立つに違いない。筆者は著者とは外科医として接点があり,いつもシャープで優しい人柄に魅了されているが,医療事故関係の話は生徒として拝聴し,わかりやすい解説と話術の巧みさに感心している。このような多芸多才はどうして生まれてくるのだろうか。歴史上ではレオナルド・ダ・ヴィンチが有名であるが,ちなみに著者の外科における専門はロボット手術で,その機械名をダ・ヴィンチという。

 本書を医療関係者,とくに院長,医療安全管理委員長などの病院管理者の必携書として広くお勧めしたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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