発達過程作業療法学

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乳幼児から青年までを対象とした発達過程における作業療法について、基礎的内容から実際の作業療法の過程、および各疾患の実践事例の紹介に至るまで、図表を豊富に用いてわかりやすく解説。また、子どもが自然に発達していく経過と、発達過程での遅れに対して作業療法を行うことによる経過との両面から作業療法の効果をみていけるよう、「疾患単位」という点に主眼をおいて編集。「子どもの遊び」についてまとめた巻末資料も収載。
シリーズ 標準作業療法学 専門分野
シリーズ監修 矢谷 令子
編集 福田 恵美子
発行 2006年09月判型:B5頁:312
ISBN 978-4-260-00201-1
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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序章 発達過程作業療法学を学ぶ皆さんへ
第1章 発達過程作業療法学の基礎
第2章 発達過程作業療法の実践過程
第3章 発達過程作業療法の実践事例
発達過程作業療法学の発展に向けて

さらに深く学ぶために
【巻末資料】子どもの遊び

索引

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偏りのない実践スタイル 臨床実践プロセスを明示
書評者: 太田 篤志 (姫路獨協大教授・作業療法学)
 本書は,作業療法専門科目を学習するための《標準作業療法学専門分野》シリーズの1冊であり,いわゆる「発達障害作業療法学」の教科書である。編者である福田恵美子先生は,長きにわたり発達障害に対する作業療法の実践および教育に携わっている第一人者である。福田先生の作業療法士として偏りのない実践スタイル,臨床実践プロセスを明確に示す態度は,このテキストにも反映されており,教育に携わる私たちが安心して使用できる教科書に仕上がっている。

 “発達過程作業療法学”という本書のタイトルに戸惑ったのは,評者だけではないであろう。従来,この領域のテキストは,「発達障害作業療法学」と呼ばれているが,本書ではあえて「発達過程作業療法学」としている。編者の「序章」によれば,障害とは機能を果たさないという意味を持ち,子どもの場合,機能を果たしていく要素を目覚めさせていくことが可能との立場から,あえて「発達過程作業療法」という言葉を用いたとのことである。本書は,この福田先生の“子ども観”と,子どもの無限の可能性に挑んでいく作業療法士を育成したいという思いが随所に込められている教科書である。

 本書の第1章「発達過程作業療法学の基礎」,第2章「発達過程作業療法の実践過程」では,概要,子どもの発達段階,発達遅滞の概念,実践プロセスなどについて述べられている。発達過程作業療法において子どもの正常発達を学ぶことは非常に重要である。これまで私たちは,ピアジェ等の研究者によって示されている発達段階を利用し教えることが多かったが,本書では従来の考えを整理しつつ,作業療法実践の視点での独自の発達区分を示している。このような作業療法士による発達段階指標を用いて発達過程作業療法を教えることができるようになってきたことは,本当に喜ばしいことである。また本書では,健常児の発達段階やそれに対応した発達遅滞の症状など,多様な情報が統合・整理された簡潔な図表が多く掲載されており,膨大な知識に圧倒され整理できない学生の学習を助ける工夫がなされている。さらに,巻末資料である遊びの分類,遊びの展開図は臨床家にも有用な資料となっている。

 第3章「発達過程作業療法の実践事例」は,疾患別の作業療法実践モデルについて,長い臨床経験を持つ執筆陣により医学的知識,評価手法,介入方法等が実践的にまとめられている。詳細な事例提示がなされている疾患もあり,学生が最も苦手とする臨床的推論,すなわち教科書的な知識を実際の事例に対してどのように活用・統合するのかという学習を促すことが期待できる。学生は,事例を通して現場の作業療法士がどのような現象を記録し,どのように解釈し,具体的にどのような対応を選択して実施したのかを実践的に学習することができるであろう。

 「作業療法介入は,子どもたちの“命の輝きのために”あらゆる手段を活用して行うことである」と編者は述べている。本書で学ぶ学生がそのようなセンスを持った素敵な作業療法士になることを願っている。

小児科学分野を作業療法の学問体系に統合
書評者: 鷲田 孝保 (目白大教授・作業療法学)
 教科書として他の出版物と比較検討する必要性から何度も出版社に電話をし,本書が発刊されるのを待ち望んでいたので,“ついに出たか!”という印象であった。本書の編集者である福田恵美子先生は,評者が日頃から尊敬している臨床家,教育者で,偏らない豊富な臨床と教育経験を持っており,発達過程の作業療法学の教科書を編集するのにわが国で最もふさわしい作業療法士のひとりである。

 「標準作業療法学 専門分野」全12巻は,シリーズ監修を務めておられる矢谷令子先生の,長い教育経験をもとにした教科書に対する思いが集大成されている。全巻において統一された基本構成で,章立ても統一され,各章ごとにGIO(一般教育目標),SBO(行動目標),修得チェックリストが提示され,学生への教育と,学生自身の学習に大変便利である。監修者と編集者とが綿密に打ち合わせて編集を進めているという印象を受けた。そこで総合的な判断から,本書を教科書として採用する決定をした。

 評者の授業で,学生は常時本シリーズ『作業療法学概論』と標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野の『小児科学』を持参し,必要に応じて参照する方式を取っている。この方法を通して,ばらばらの知識が作業療法という学問体系に統合される。疾患は,小児科学の医学体系と関連づけて学習できる。

 本書の序章で,「なぜ“発達障害”ではなく“発達過程”としたか。なぜ疾患単位での学習が必要か」という点について,国際生活機能分類(ICF)と関連づけて説明している。本シリーズ各巻に設けられた序章は大変よい企画である。

 これまでに発行された教科書は,執筆者の思い込み,思い違い,思い入れなどが強く,個性的で示唆に富む面は多いが,学生の教科書としては内容が不足しているという印象を持っていた。本書はその欠点を十分にカバーしているように思われる。

 出版を急いだためか,誤字,脱字,重複の箇所が見受けられる。逐次,修正加筆されることを期待している。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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