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がん患者と家族のためのサポートグループ

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がんを告知された患者が生きることをあきらめずに治療や生活に前向きになれるために,医療者は何ができるのか? 本書は,患者の心をサポートするグループの効果を科学的根拠とともに示し,グループの作り方や医療者の関わり方を詳述。がん患者のケアにあたる医療者なら,ぜひ読んでおきたい1冊。
デイヴィッド・スピーゲル / キャサリン・クラッセン
監訳 朝倉 隆司 / 田中 祥子
発行 2003年11月判型:A5頁:344
ISBN 978-4-260-33306-1
定価 3,740円 (本体3,400円+税)
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  • 目次
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 序章
第1部 がん患者にグループサポートを提供する理論的根拠
 1. がん患者の体験
 2. グループによるサポートの目的と効果
第2部 重篤な病気に対処する患者のためのサポートグループの作り方
 3. グループ作りと維持のためのガイドライン
 4. グループへの介入の方法と選択肢
 5. グループによるサポートの構築
 6. 治療としての経験の意味の追求と感情表出
第3部 患者が実存的な不安を乗り越えるための援助
 7. 近づく死への対処
 8. 孤独,生きる意味,自由との取り組み
第4部 サポートグループの問題や特殊な状況への対処
 9. 家族や特殊なグループの運営
 10. グループに起こる問題への対処法
あとがき
文献
索引
著者略歴

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がん患者への心理・社会的介入の実践・研究が示される
書評者: 野島 一彦 (九州大教授・心理臨床学)
 本書は,米国におけるがん患者と家族のための心理・社会的介入を行なっている著者らの20年余にわたる〈支持・感情表出型グループ療法〉の体験を中心に,他のグループ実践・研究も数多く引用しながら,グループの有効性,グループ運営などについて,わかりやすく述べたものである。

 がん患者に対する生物医学的介入をめぐる実践・研究はおびただしく行なわれているのに対し,心理・社会的介入のそれは量的・質的に遅れているが,本書を読むと,この方面の現時点での概況がわかるとともに,グループの潜在力の大きさをひしひしと感じることができる。

◆治すことよりも十分に生きること

 著者らの〈支持・感情表出型グループ療法〉は,グループによる支持(サポート)の構築と,グループにおける感情表出の促進を特徴とするサポートグループである。これに参加した転移性乳がん患者86名の無作為化比較試験では,10年間の追跡調査の結果,平均18か月間,統計的に有意に長く生存した。さらに研究を開始して48か月後に対照群の患者は全員死亡したのに対し,グループ参加者群の3分の1は生存していた。しかし著者らは,このグループが人々の生命を引き延ばすか否かにかかわらず,患者のQOLをより良くするということを強調する。そしてこのグループは,「治すことよりもケア,つまり深刻な病気を避けたりおさえるのではなく,十分に生きることに焦点をおいている。」と述べている。

 本書の特色の1つは,著者ら自身のリサーチ・データの提示,他研究者のリサーチ文献の丁寧なレビューをもとに,つまりエビデンスに基づいて効果を論じている点にあり,非常に説得力がある。

 もう1つの特色は,このようなグループをやってみたいと思う医療,看護,心理,ソーシャルワーク,その他の関連分野に従事する医療専門家に役に立つように,懇切丁寧に,痒いところに手が届くような形で書かれている点である。そして,随所に実際のグループのエピソードがちりばめられており,とても理解しやすい。

 このグループは,がん患者以外にも,HIV感染患者,多発性硬化症患者,エリテマトーデス(自己免疫性疾患)患者にも応用が行われていることが紹介されており,適用範囲はさらに広まっていきそうである。

 わが国におけるがん患者に対する心理・社会的介入の実践・研究はかなり立ち後れているだけに,本書が出版されたことは本当にタイムリーである。本書に刺激されて,がん患者と家族のためのサポートグループの実践・研究が盛んになることを心から願いたい。

グループ療法で行なうがん患者へのサポート
書評者: 中村 めぐみ (聖路加国際病院)
◆グループ療法の効果

 がん治療の進歩によりがん=ターミナルではなくなり,がんと共に生きるためにがん患者やその家族をいかにサポートするかが重要視されつつあり,その方法のひとつとしてグループ療法への関心が高まっている。

 本書の著者スピーゲルは心身相関に関する医学的研究のパイオニアであり,原著には「A Research―based Handbook of Psychosocial Care」いう副題がついているとおり,膨大な文献を参考に研究結果に基づいた記述がなされている。もう1人の著者クラッセンは訳者らの研究グループの招聘で昨年来日し,米国におけるがん患者のためのグループ療法について講演している。

 がんは悪性疾患であり,そのプロセスにおいてさまざまな苦痛・苦悩を体験するがゆえに,診断名や病気の詳細について十分語られていないことが少なくない。しかし著者らは「患者がいかなる悩みでも話し合え,そして受け入れられ理解されていると感じられる雰囲気の中で,定期的に集まる機会を提供することが有効」とし,グループでサポートを行なうアプローチを「支持・感情表出型グループ療法」と呼び,ソーシャルサポートと感情表出の両方が重要であることを強調している。

◆がん患者にかかわるすべての人への手引き書

 本書の目的は,「治癒の可能性にかかわらず,ケアに焦点をあて,患者が医療者や患者同士から学ぶこと,病気による孤独感が強いときに多くのサポートが受けられると感じること,今まで経験したことのない感情を表現しそれに対処できること」であり,目標は「これから先起こる事態にしっかりとした気持ちで建設的に向き合い,病気やその治療,死の脅威が患者の生活に与えるダメージを最小限にとどめられるようになることである」と明記されている。

 そしてその方法論が研究結果や実例に基づき具体的に提示されているため,サポートグループを実践しようとしている人はもちろん,日頃がん患者や家族と接する機会の多い医療従事者にとっても非常に有益であり,強力な手引きとなることは間違いない。

 第1章はがんの診断に伴うストレスと抑うつの問題を取り上げ,ソーシャルサポートの重要性を,第2章はサポートグループが必要な理由について,第3章はグループリーダーがグループを運営する際のガイドラインを,第4章ではグループへの介入方法について,第5章ではメンバーがお互いにサポートしながら会話するように促す方法を提示している。第6章はセラピストの基本課題である患者たちの間での率直な感情表現を促すための方法を,第7章では死と死の過程に関する話し合いの課題を,第8章では生命にかかわる疾患から生じる深い孤独感に悩む患者を支援する取り組み,第9章では家族と特殊なグループの運営方法,第10章ではグループに共通する問題への対処法について記している。

 がん患者のためのサポートグループを手がけている者にとっては,ようやく手にすることができたと感じられる優れた書である。

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