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腎機能障害患者の循環器病マネジメント

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高齢化社会の本格化とともに腎機能障害患者は増加の一方であり,透析患者においても透析導入前から重篤な心血管系病変を有していることが臨床的にも大きな問題になってきている。本書は,これらの扱いが困難な病態のメカニズムとそのマネジメントについて,日常診療の第一線で活躍する執筆陣がきわめて明確に示している。
編集 島本 和明
編集協力 浦 信行 / 土橋 和文
発行 2003年12月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-10292-6
定価 5,720円 (本体5,200円+税)
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  • 目次
  • 書評

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I. 病態生理をふまえた患者マネジメント
 1 心不全・心筋障害
 2 動脈硬化
 3 血圧異常
 4 体液・電解質異常
 5 腎機能障害例での循環器薬の薬理
 6 糖尿病と腎臓・心臓血管障害
 7 腎機能障害に特徴的な心血管疾患
II. 臨床における患者マネジメントの実際
 1 腎機能障害における冠動脈疾患
 2 腎機能障害における大血管・末梢血管疾患
 3 腎機能障害における心弁膜症
 4 高血圧と腎血管疾患
 5 腎機能障害における不整脈
 6 心血管系疾患と透析療法の選択
III. Key note
付録
索引

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腎疾患に関連する合併症の総合的な理解から生まれた実践書
書評者: 伊藤 貞嘉 (東北大教授・分子血管病態学)
 最近,医学書院から出版された『腎機能障害患者の循環器病マネジメント』は,札幌医科大学第二内科教授・島本和明先生のチームが執筆されたユニークな著書である。島本教授の教室は,循環器疾患,腎臓疾患および糖尿病を含む代謝疾患の臨床と研究に優れた業績を上げている。

◆増加する腎疾患と循環器疾患の合併症例

 「序」にも述べられているが,人口の高齢化や糖尿病患者の増加により循環器疾患と腎不全を合併する症例は増加の一途をたどっている。循環器と腎臓の病態生理にはお互いに密接な関連があるので,実際の臨床においては,循環器病または腎臓疾患単独の理解では不十分であり,両者の関連を理解したうえでの総合的なアプローチが必要となる。本書はこのような観点から書かれた数少ない著書の1つである。循環器病,腎臓病および糖尿病のすべてを扱っている教室だからこそ,このような特徴のある著書が完成され,かつ,その内容がかなり実際的になったと考えられる。

◆臨床現場ですぐに役立つ本編と工夫された特徴ある付録

 第I章は「病態生理をふまえた患者マネジメント」と題して,腎機能障害患者における,循環器疾患の病態生理と治療を簡潔に解説している。平易な表現で無駄がない。第II章は「臨床における患者マネジメントの実際」と題して,症例を提示している。各症例において,実際の臨床的判断やそれに至る根拠が述べられている。腎不全患者における冠動脈疾患,弁疾患や不整脈の特徴,治療の注意点が実際的に記述されている。すぐに実際の臨床に役立つ内容である。第III章は「Key Note」としてトピックスがまとめられている。造影剤や外科治療,周術期管理の問題などが簡潔にまとめられており,どれも臨床に直接有用なものである。

 付録も素晴らしい。循環器ならびに関連薬剤の代謝,透析性や腎不全患者での使用上の留意点などが一覧表にまとめられていて,わかりやすい。さらに,輸液製剤の組成や,循環器病薬の静脈投与のマニュアルから,関連学会や製薬企業のホームページアドレスまで掲載されている。

 本書の構成はそれぞれ関連しているけれども独立した内容の章から成り,どこから読んでも理解できる。写真や図表もふんだんに使用されており,非常に工夫されているのがよくわかる。

 以上,本書は今後ますます増加する疾患,すなわち,腎機能障害患者の循環器疾患に焦点を当てたユニークな著書である。循環器や腎臓専門医はもとより,それらをめざす内科研修医や実地医家にご一読することをお勧めする。
心・血管系合併症を持つ腎機能障害患者の診療に
書評者: 富野 康日己 (順天堂大教授・腎臓内科)
◆23万人を超える慢性維持透析受療患者

 急性腎不全は,急激な腎機能の低下により生ずるが,適切な緊急透析療法等により可逆性であることが多い。しかし,慢性腎不全では密かに進行することが多く,ついには透析療法が導入される。慢性腎不全にはいろいろな分類があるが,Seldinの分類が一般的である。ほとんど無症状で腎予備能の低下を示すI期から,夜間尿,軽度の高窒素血症・高血圧を示す腎機能不全期(II期),多尿,貧血,中等度の高窒素血症・高血圧,代謝性アシドーシス,高P・低Ca血症を示す腎不全期(III期)へと進行し,尿毒症症状,重症高血圧,浮腫,肺水腫を示す尿毒症期(IV期)に至る。

 現在,慢性維持透析療法を受けている患者は,23万人を超えたと報じられている。このような経過の中で腎機能障害の進行を抑制し,不整脈や心不全,心筋梗塞など多くの合併症を予防・治療することは重要な課題である。

◆専門医にも役立つ実践書

 最近,札幌医科大学第2内科島本和明教授の編集のもと関連病院の先生方が『腎機能障害患者の循環器病マネジメント』を刊行された。島本和明教授は,優れた研究者であると同時に優れた臨床医であり,日頃ご尊敬申し上げている先輩の1人である。夜に開催される研究会でもいつも「お晩でございます」と北海道弁でご挨拶され,道産子の小生はいつも懐かしく伺っている。

 さて,本書は3部から構成されている。1部では,「病態生理をふまえた患者マネジメント」が述べられているが,なかでも腎機能障害例での循環器薬の薬理がコンパクトにまとめられている。他書でもよく述べられるジギタリスや抗不整脈薬の他に最近よく用いられるACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬などについても排泄経路や透析性がまとめられている。

 2部では,「臨床における患者マネジメントの実際」が透析療法を含め述べられている。著者らが実際に経験された症例をもとに疫学,病態,診断,治療へと展開されていくのは大変興味深く読み進めることができる。欲を言えば,薬剤の商品名をもう少し加え,どういった場合に原則としてどのくらいの量を投与すべきか,それでも効果がみられない場合にはどう対処すべきかが述べられていれば,より一層実践的ではないかと感じられた。

 3部では,腎機能障害時の検査での注意点や外科的治療,透析患者での心血管系合併症の重要性とその治療などがKey noteとしてまとめられている。特に,腎性貧血をエリスロポエチンなどを用いて改善することが,いかに虚血性疾患イベントの発症を抑えるかという現在最もホットな話題にも触れられている。さらに,本書の特筆すべき点は,付録にある。腎機能不全・透析療法における循環器疾患に対する薬剤の使用量・留意点・副作用とともに,関連団体や企業のホームページ,主たる略語まで述べられているのは,心憎いばかりである。

 以上の特長から本書は,腎臓病専門医が心・血管系合併症を有する腎障害患者を診療する際にも大変役に立つ実践書と思われる。

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