心房細動の治療と管理

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心房細動の総論的事項,洞調律化と再発予防,心拍数コントロール,塞栓症の予防,予後についてQ&A方式で要点を絞ってまとめた。さらにその要点が由来するエビデンスについても詳説。日常診療の種々の場面で遭遇する疑問に答えてくれる。心房細動に携わるすべての医師,必読の書。
井上 博 / 新 博次
発行 2004年03月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-10299-5
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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第I章 総論―心房細動のoverview―
第II章 発作の停止
第III章 再発予防
第IV章 心拍数のコントロール
第V章 合併症(塞栓症,心不全,WPW症候群など)
第VI章 心房細動の予後
付表1 抗不整脈薬一覧
付表2 Sicilian Gambitによる抗不整脈薬一覧
索引

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最も日常的な不整脈である心房細動を,あらゆる角度から解説
書評者: 杉本 恒明 (関東中央病院名誉院長)
 心房細動は日常の診療で最もありふれて,また,頭を悩ますことの多い疾患である。本書によれば,60歳代で0.5%,80歳代で2.5%にみられるというが,これは健康人を含めての一般人の中での頻度である。悩むというのは,心房細動を診た時の検査の手順,細動発作の停止のさせ方,再発防止のための薬の選択,アブレーション治療の適応,主要な合併症である塞栓症の予防,さらにはQOLに対する洞調律維持と心拍数コントロールとの効果の違い,といった事柄である。本書はこうした疑問を6章にまとめ,47項目のQ&Aとこれに付随する解説という形で解答を与えている。

◆エビデンスに基づいた説得力ある診療の解説

 印象に残ったことをいくつか書いておきたい。その1は心房細動発作の扱いである。発作後「24時間以内の場合は心拍数コントロールのみで自然に洞調律化する」ことが多い,とあってわが意を得た。ベータ遮断薬を頓用してお休み願うというのが評者のポリシーであるが,その根拠は経験的なものでしかなかったからである。実は以前にはジギタリスを頓用させたのであるが,昨今,ジギタリスは有効というよりも無効あるいは悪化とされることが多い。もっともここで紹介されているエビデンスはジギタリス使用例も含んでいる。

 その2もジギタリスに関わる。「再発時の心拍数抑制を期待して漫然とジギタリスを使用するのは慎みたい」とある。前述の反省にもかかわらず,ジギタリスを愛好する評者には安易にこれを用いる傾向がある。エビデンスではジギタリスは心房細動発生時の心拍数を抑制しなかった。その昔,心房細動例に運動負荷した時の心拍数増加がベータ遮断薬では抑制されたが,ジギタリスでは抑制されなかったことを思い出した。

 その3は心房筋リモデリング現象の記述についての感想である。心房細動が厄介なのは,著しい頻脈が頻脈誘発性心筋症をもたらすためということがある。心房と心室の違いがあるとしても,共通した機転はないのであろうかと思うのである。血栓形成にしても心房内膜面のリモデリング性変化が関与するともいわれている。

 その4は塞栓症予防に関することである。エビデンスによれば,75歳以上にはワーファリンが望ましい。しかしながら,高齢者ではワーファリン管理の理解が乏しく,説明に難儀することがあり,また,脳塞栓ならぬ脳血栓の併発も少なくない。エビデンスにかかわらず,評者には,若い世代ではワーファリンを,高齢世代では抗血小板薬を用いているという現状がある。

 こうしたエビデンスを伴わない評者のささやかな抵抗はそのうち,消滅するであろう。そのような思いをもって拝読した次第であった。それほどに極めて説得力のある著書である。編書ではなく,おふたりの共著である。随所に拝見するおふたりの深い学識と経験には改めて深い敬意を感じた。書中に51項のサイドメモがある。通読するだけでも面白い。ワーファリンの名の由来も評者はここで初めて知った。

 最も日常的な不整脈である心房細動のすべてを,あらゆる角度から解説する書物である。また,この分野の代表的な専門家としてのおふたりがその学識と経験を傾注して記述された貴重な書物でもある。専門医に限らず,一般臨床医家にとっても日々の診療に大変に役立つ書物であり,ここに広く推奨したいと考える。

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