総合外来 初診の心得21か条

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病院や診療所の外来担当医,研修医,高学年医学生に向けて,さまざまな訴えや問題を抱えて訪れる患者に対応する総合外来での初診の心得を21か条にまとめた。初診という時間軸を強調し,面接,診察から初期診療の進め方,さらにコンサルトのしかたまでの要点をプラクティカルに解説。
シリーズ 総合診療ブックス
監修 福井 次矢 / 小泉 俊三 / 伴 信太郎
編集 松村 真司 / 北西 史直 / 川畑 雅照
発行 2002年04月判型:A5頁:320
ISBN 978-4-260-10253-7
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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ベストプラクティス
 総合外来 初診のアプローチ10
総合外来 初診の心得
 第1条 面接法
 第2条 診察方法
 第3条 問題解決法を極めよう
 第4条 こころの問題
 第5条 せき,のど,はな(上気道炎症状)
 第6条 熱が出る
 第7条 かゆい,発疹が出た
 第8条 腰が痛い,肩がこる
 第9条 おなかが痛い,おなかが重い
 第10条 目が回る,ふらつく
 第11条 胸が苦しい,痛い
 第12条 手足がしびれる
 第13条 眠れない
 第14条 体がだるい
 第15条 頭が痛い
 第16条 動悸がする
 第17条 便秘,下痢
 第18条 吐き気,食欲がない,なぜかやせた
 第19条 尿が近い,出にくい,もれる
 第20条 手足がむくむ
 第21条 リンパ節が触れる
Appendix 1
 総合外来の場を把握するための10の質問
 資料:1. 総合診療研究会の設立趣意書
    2. 総合診療の理念
Appendix 2
 総合外来での皮膚所見の診かた

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求められる総合診療マインド育成に最適
書評者: 木村 琢磨 (国立病院東京医療センター・総合診療科)
◆浸透しつつある“総合診療マインド”

 近年,医療を取り巻く状況は複雑かつ多様化し,医療への窓口である総合外来の必要性は,多くの医師に総論的には理解されつつある。そして,総合診療,家庭医療,Generalist,プライマリ・ケアなどそれぞれ名称は違っても,共通した“総合診療マインド”も浸透しつつあると言えよう。
 しかし,いざ総合診療の臨床を実践すると,困難であることも多く,私自身,日々,疑問や不安に思うことも多い。総合診療の役割はいまだ不明確であり,特に総合診療のフィロソフィを十分に持った指導医が少なく,教育が不十分であることと相まって,若い医師が総合診療を志すことへの不安や,総合診療が理解されにくい要因になっているのではなかろうか。
 このたび,医学書院より『総合外来初診の心得21か条』が上梓された。本書は,本邦で総合外来を実践している有数の臨床家により執筆された“総合診療マインド”を持って外来で臨床を実践するための初めてのガイドブックである。

◆期待される総合外来における診療と教育の質向上

 本書では,患者の問題解決に必要な情報収集能力や,感度・特異度を意識した論理的思考のコツが満載されているが,EBM偏重ではなく,患者の解釈モデルや満足度の視点も忘れてはいない。特に,既存の診療科ベースに臓器別教育を受けてきた者にとって戸惑うことが多い横断的マネジメントや,生物医学的アプローチで解決できない健康問題への対応が豊富で,随所で外来診療教育にも触れられ興味深い。
 項目は,わが国の外来で高頻度のプロブレムから選ばれ,鑑別診断に頻度,緊急性,重要性が考慮されているため実践的で,経験の乏しい者が検査前確率を推定して行動を起こすのに有用である。
 もちろん,総合外来の機能は地域の特性,診療の場,医師の臨床能力などで異なる。本書はあくまで心得であり,マニュアルではない。総合診療の発展には質の高い臨床の実践が不可欠であり,主治医として患者のアウトカムに責任を持つために,続編として「再診の心得」,「病棟診療の心得」などもぜひ期待したい。
 本書が,総合外来に携わるすべての臨床医と,外来研修の場における医学生・研修医,指導医の座右の書となり,わが国の総合外来における診療と教育の質が向上し,近い将来,「臨床総合診療医学」ともいうべき学問体系が確立されることを期待したい。

先輩から後輩医師へ伝授する外来診療のコツを満載
書評者: 松下 明 (奈義ファミリークリニック所長)
◆総合診療をめざす若い医師に必携

 本書は,総合診療をめざす若い医師が,外来に出る際に必携すべき1冊である。外来を担当して間もない研修医やレジデントが,あたかも指導医から外来指導を受けるような内容である。総合診療の領域で活躍している卒後10―15年目医師が中心となって執筆した本書は,先輩医師から後輩医師へ伝授する外来診療のコツが満載されている。
 「総論」として総合外来初診の心得から始まり,「医療面接」,「診察方法」,「問題解決方法」,「こころの問題」とこれまでの類書にない章立てで,総合外来に必要な臨床技能をまとめている。次いで「各論」として,「上気道炎症状」,「発熱」,「発疹」,「腰痛」,「腹痛」,「めまい」,「胸部不快」,「しびれ」,「不眠」,「倦怠感」,「頭痛」,「動悸」,「便秘」,「食欲不振」,「頻尿」,「浮腫」,「リンパ節腫大」と総合診療初診で出会う可能性の高い症状に対するアプローチがその頻度とともに提示される。
 特筆すべきは,総合診療医の思考プロセスとも言える疾患の鑑別を,(1)緊急性の高い疾患,(2)見逃せない疾患,(3)よくある疾患に分けて整理している点である。何を聞くか,何を診るか,何を考えるか,初期診療の進め方,コンサルトのタイミングという流れの中で総合診療に必要とされる枠組みを得られる構成になっている。

◆期待できる自らの診療の見直しと卒前・卒後教育への活用

 私は現在,人口7000人の町で家庭医・プライマリケア医として診療と卒前・卒後教育にかかわっているが,自らの診療の見直しとともに医学生・研修医教育に大いに活用していきたい1冊である。私自身が受けた外来診療の教育は,プレセプターと呼ばれる指導医に相談したり,複数の医師でカルテの内容を確認し指導を受けるというものであったが,症例に出会うたびに本書の「各論」にあたることで,そのような外来教育に近い効果が期待できそうである。
 本書には,「付録」として「総合外来を把握するための10の質問」と題した座談会の記録がある。ここで繰り広げられる会話を通して,日本における総合診療の過去・現在・未来を知ることができる点もおもしろい。
総合診療医をめざす人への羅針盤
書評者: 阿部 正和 (慈恵医大名誉教授・内科学)
 「総合外来」,「総合診療」という言葉は,しばしば聞かれる時代となった。それでも今なお,それを担当する人たちのことを「なんでも屋」とか「振り分け医」とか呼んで,高く評価されていないと思う。私は,これこそ内科医の担当すべき領域と考える。しからば内科医とは,いったいどういう存在なのであろうか。

◆内科医とは

 私が内科診療の第一線を退いてから,かなりの歳月が経過した。しかし,今でも思う。「内科医とはいかなる存在か?」ことに最近のように「専門別の診療体制」ができてからは,なおさら深刻に考えさせられる。内科学が包括する領域は,きわめて広い。そのすべての専門家になることは,もちろん不可能である。しかし,内科医には内科医としてのプリンシプルがあるはずである。東京慈恵会医科大学の建学の精神は,「病気を診ずして病人を診よ」である。内科医こそは,まさにこの精神に則って診療に当たるべきであろう。私たちの前にあるのは病気ではない。病に苦しみ,悩む人がいるのである。
 ここに紹介する本のタイトルは,〈総合診療ブックス〉『総合外来 初診の心得21か条』である。総合外来を担当する医師とは,どういう医師か。また何をめざすべきか。それは,どんな患者が目前に現れても,その人にふさわしい対応ができる基本的な内科的思考を身につけていて,患者のために適正に診療できる人でなければならない。ただし,私個人としては,これに1つの条件がある。なんでもいいから,1つの専門分野を持っていたほうがいい,ということである。その専門分野を土台に据えて,患者全体を診る。肉体的・精神的側面のみならず社会的環境も含めて診ることである。

◆本書の内容

 本書は,以上のような意味で,「総合外来」を担当する医師にとって,まことに優れた書であると言える。この分野の先駆者である,福井次矢,小泉俊三,伴信太郎の3先生監修のもとに,現に総合外来を担当している気鋭の臨床家である,松村真司,北西史直,川畑雅照3先生が編集されている。
 まず「刊行のことば」と「編集のことば」,次いで末尾の「Appendix1」を読むようにお勧めしたい。医療の世界で,「総合外来」あるいは「総合診療」がいかに必要な存在であるかがよくわかる。
 具体的内容は,まず冒頭の「ベストプラクティス 総合外来初診のアプローチ10」から始まるが,この部分を読むだけでも本書の価値は十分にわかる。次いで「総合外来初診の心得21か条」が,それぞれ統一したスタイルで書かれている。たいへんスマートであり,きわめて読みやすい。さらには各章のところどころに,Case,Note,メール・アドバイスなど参考になる一口解説がのっている。編集者の気の利いた智恵袋が気持ちよく発揮されている。
 また,付録(Appendix)がきわめてよい。「総合外来を把握するための10の質問」で18頁にわたって小泉,伴先生が回答されている。しかもその後に福井先生によって「総合診療研究会の設立趣意書,総合診療の理念」が述べられている。まさに一読に値する有意義な部分と言えよう。

◆希望と推薦

 一言希望を言わせてもらえば,「総合外来」,「総合診療」という呼称について,将来もっとよく吟味していただきたいということである。これからの医療を背負って立つ若い臨床医の方々が,「よし,これならひとつ取り組んでみよう」という思いを抱かせるような魅力ある名称を考えていただきたい。私自身は,もう一度原点に戻って,単に「内科」,あるいは「一般内科」という名称はいかがなものかと,ひとりひそかに思っている。
 自分は内科医であると称している方々,また近い将来内科医になろうと志望する方々,さらにもっと幅広く看護師の方々もぜひ本書を読んで,「総合外来」,「総合診療」の有する理念を正しく把握していただきたいと希望してやまない。
総合外来における熟達の初診の心得を集約
書評者: 日野原 重明 (聖路加国際病院名誉院長)
 今般,医学書院から『総合外来 初診の心得21か条』と題したA5判304頁で,〈総合診療ブックス〉の中で14冊目の本が出版された。
 本書は,日本の医学校において総合診療部門をいち早くスタートすることに貢献された京都大学の福井次矢教授,佐賀医科大学の小泉俊三教授,名古屋大学の伴信太郎教授の3人の監修のもとに発行されている。開業医として,また病院の外来部門で遭遇することの多い一般内科および皮膚科,整形外科,耳鼻科,泌尿器科なども含めた内科的疾患を中心に,患者の問題をていねいな問診により正確に見出して,診断に効率的な検査をどう選び,緊急度の高い,頻度の高い,また見逃せない疾患および病態を,病歴とルーチンのテストによりどう見抜き,タイミングよい治療に入るか,そのコツがきわめて平易に書かれている。
 成人を対象として,内科領域をみる臨床経験のある医師には,自信を持って要領のよい患者中心の医療ができるように導き,または自信を持って確認できる知識と技能を与えるポケットブックと言えよう。

◆自信を持って患者中心の医療を先導するための心得を集約

 本書は,臨床の第一線で働いてきたプライマリ・ケアを掌握した医師が,今までの経験した症例をまとめ,POSのシステムにしたがってSOAP順に執筆されている。すなわち,
・教育的症例がまず示され,
・何を患者から聞くか(患者やその周辺からの情報の取り込みsubjective,objective)
・何に注意して診るか(objectiveな情報)
・何を考えるか(SOAPのassessmentにあたる)
 の順で初期治療が進められ,専門医のコンサルタントの立会い診療のタイミングの重要性も指摘されている。これにはEvidenced-based Medicineを体得されている総合診療医の松村真司医師,北西史直医師,川畑雅照医師ほか17名が執筆している。
 「総合外来初診の心得」は,21か条に分けられて書かれている。すなわち,「1.面接法」,「2.診察方法」,「3.問題解決法」,「4.こころの問題」,「5.上気道の症状」,「6.発熱」,「7.かゆみ,発疹」,「8.腰痛と肩こり」,「9.腹痛」,「10.めまいとふらつき」,「11.胸痛」,「12.手足のしびれ」,「13.不眠」,「14.体のだるさ」,「15.頭痛」,「16.動悸」,「17.便秘と下痢」,「18.吐き気と無食欲,やせ」,「19.頻尿,尿失禁」,「20.手足のむくみ」,「21.リンパ節の触れ」など。

◆過去14年間の日本総合診療医学会の成果

 症例に即しての教育的事項が,メール・アドバイスとして書かれ,それに文献が付されている。最後に,日本総合診療医学会の歴史が京都大学の福井教授により述べられている。ここには総合診療の理念が表示されている。
 本書は,過去14年間の日本総合診療医学会の成果として,プライマリ・ケア医学の先覚者,教育者によって書かれた実のあるガイドブックとして高く評価されるべき著書と思い,推奨したい。

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