必携 造血細胞移植
わが国のエビデンスを中心に

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造血幹細胞移植は近年目覚しい拡大・多様化を遂げ,本邦でも年間実施症例数は2,000例を超えた。これは世界でも有数の規模である。本書は骨髄移植,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植,輸血といった治療の背景,実際,成績,治療選択のフローチャートに至るまでを最前線の臨床医がまとめた,待望のテキストブック。
編集 小寺 良尚 / 加藤 俊一
発行 2004年03月判型:B5頁:420
ISBN 978-4-260-10297-1
定価 9,020円 (本体8,200円+税)
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I章 造血細胞移植に関わる共通の事柄
II章 疾患別移植の実際,成績,治療選択のフローチャート
将来展望
索引

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日本の移植医にとって重要な文献として推薦
書評者: 原田 実根 (九州大教授・病態修復内科)
◆日本での成績を中心に解説

 わが国における造血幹細胞移植は,同種骨髄移植の本格的な臨床応用以来すでに30年以上経過しているが,造血幹細胞源(骨髄,末梢血,臍帯血)およびドナー(同系,同種血縁,同種非血縁,自己)の違いによって多様化し,少なくとも9種類以上に区別される。したがって,臨床的適応としてどの移植法を選択すべきか,その決定はそれほど容易でない場合も少なくなく,それだけに選択の根拠がきわめて重要である。

 本書は,わが国で得られた成績を中心に造血幹細胞移植の基本的事項および臨床的事項を体系的かつ詳細に解説したものであり,大変時宜を得たものといえる。しかも,執筆者はいずれも現在第一線で活躍している移植医であり,参考とすべき情報が数多く記載されており,移植の現場で役立つ1冊といえる。特に,これから造血幹細胞移植に携わる医師は,造血幹細胞移植の治療原理の理解や現状把握にきわめて有用と思われる。

◆日本人で得られたデータからなるエビデンスが重要

 近年,Evidence Based Medicine(EBM)の重要性が喧伝されているが,わが国で得られたエビデンスは意外と少なく,日常臨床の現場では欧米で得られたデータを利用せざるを得ない場合が多い。しかしながら,同種造血幹細胞移植においては同種免疫反応が病態,たとえばgraft―vs―host disease(GVHD)に大きく影響し,移植成績を左右しうる。特にGVHDは人種によって発現頻度や重症度が異なるので,日本人で得られたデータをエビデンスとすべきである。わが国では,日本造血細胞移植学会が全国集計データを詳しく解析して毎年公表しており,重要なデータブックと位置づけられている。また,日本骨髄バンクや日本臍帯血バンクネットワークも成績を定期的に報告している。これらのデータはいずれも日本人で得られたエビデンスとして造血幹細胞移植の臨床で不可欠なものとなっている。

 本書でもわが国のエビデンスを中心に「疾患別移植の実際,成績,治療選択のフローチャート(第II章)」が詳しく述べられている。わが国の移植医にとって重要な参考文献として本書をぜひ推薦したい。同時に,本書に記載されたデータにはエビデンスとしてはまだ根拠の弱いものも含まれており,近い将来読者によって信頼度の高いエビデンスが創出されることを心より念願している。

造血細胞移植の過去と現在を的確に示す
書評者: 正岡 徹 (大阪府立成人病センター顧問)
◆日本における移植成績が示される

 読みはじめると止められなくなり,一気に読みきりました。われわれが骨髄移植をはじめた頃からの進歩の歴史と最近の移植細胞,移植手技の多様化とその適応範囲の拡大は目を見張るばかりで,よくここまできたなという感慨があります。

 今回は副題に示されているように,各病型の移植成績など日本における成績が示され,その成績が海外の成績に比べてけっして劣らず,むしろ優れていることも大きな喜びでした。271ページにアメリカの骨髄バンクと日本の骨髄バンクの非血縁骨髄移植の成績が比較され,HLA適合例,不適合例など,子供,成人,またすべての病期において日本の成績が優れていることが誇らしげに書かれています。学問的にも,これまでGVHDという1つの病気と考えて疑わなかったものに,血栓性微小血管障害(TMA)という機序も治療法もまったく異なる合併症のあることが示され,また組織適合性抗原でもマイナー抗原や母子免疫寛容など新しい発見とpromisingな研究分野が示されています。

◆医学の進歩,医療を取り巻く状況の変化を見据えて語られる未来

 移植の対象症例もこれまでの血液疾患以外に,乳がん,生殖器疾患,先天性の代謝疾患,小児の固形腫瘍などの移植が簡潔に述べられています。骨髄移植から,末梢血幹細胞移植,臍帯血移植と進んできてミニ移植などあらたに検討を要する分野もどんどん広がってきました。このような医学的な進歩とともに実際の診療上も医療費の考慮や骨髄バンク,臍帯血バンクの利用方法などの実際的な説明も入っています。医療を開始する際の患者への説明同意にも変化が見られています。慢性骨髄性白血病の治療方針で302ページには短期決戦型の骨髄移植と長期戦型の薬剤治療の双方が示され,患者は自身の生き方から治療法を選択すればよい,と治療法は患者が決めることが明らかに述べられています。

 以上,本書は造血細胞移植の過去と現在を的確に示し,最後に未来への展望が語られています。ES細胞などの研究によって,これから必要な細胞・臓器をつくりだし,難病を克服しようとする試みも夢ではなくなってきました。

 本書は移植を学問として研究する人も,移植を臨床診療として担当実施する人にも,医師,看護師,検査技師,移植を受ける患者とその家族,移植をサポートするボランティアの方々にもお勧めできる本だと思います。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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