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リハビリテーション患者の心理とケア


編集:渡辺 俊之/本田 哲三

  • 判型 A5
  • 頁 288
  • 発行 2000年07月
  • 定価 3,024円 (本体2,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-24388-9
リハビリテーション患者に関わる心理社会的問題を詳細に解説
リハビリテーション医療における心理社会的問題は多岐にわたる。本書は、第一線で活躍している多職種のエキスパートが、リハビリ医療と心理、障害受容、疾患・障害別の心理とケア、QOL、治療関係、家族への関わり、各治療場面の心理的問題、技法について、臨場感溢れる文章で解説する。リハビリ医療に携わるすべての方の必読書。
書 評
  • リハビリテーション医療の専門家が患者心理とケアを解説
    書評者:藤田 和弘(筑波大教授・心身障害学系)

    ◆リハ患者の心理社会的問題

     本書は,第 I 章から第 VIII 章で構成され,索引を含めて総頁数260頁からなるリハビリテーション心理学の分野に属する概説書である。目次にそって,本書の内容を簡潔に記すと,以下の通りである。
    第 I 章 リハビリテーション医療と心理
    第 II 章 障害受容...
    リハビリテーション医療の専門家が患者心理とケアを解説
    書評者:藤田 和弘(筑波大教授・心身障害学系)

    ◆リハ患者の心理社会的問題

     本書は,第 I 章から第 VIII 章で構成され,索引を含めて総頁数260頁からなるリハビリテーション心理学の分野に属する概説書である。目次にそって,本書の内容を簡潔に記すと,以下の通りである。
    第 I 章 リハビリテーション医療と心理
    第 II 章 障害受容
    第 III 章 リハビリテーション患者の心理とケア
    第 IV 章 リハビリテーション医療におけるQOL
    第 V 章 リハビリテーション医療における治療関係
    第 VI 章 障害者家族への関わり
    第 VII 章 治療場面における心理的問題
    第 VIII 章 技法
     第 I 章では,リハビリテーション心理学の歴史を紹介し,患者,治療,家族という側面から心理社会的問題の再検討を行なっている。
     第 II 章では,障害受容と適応に関して,日本と欧米の研究の流れをレビューし,それらの概念を整理して,新しい視点を提案している。
     第 III 章は,10種類の疾患・障害別に心理特性とそれをふまえたアプローチについて取り上げている。この中には,身体障害のみならず,精神障害も含まれている。また,具体的な事例が紹介されている。
     第 IV 章では,独自に開発した自己記入式QOL質問表(QUIK)およびその改訂版(QUIK-R)による長年の臨床研究が取り上げられている。
     第 V 章では,リハビリテーション医療における治療関係について,患者の心理的状態,転移と逆転移,良好な治療関係を築く方法に分けて述べられている。また,第 VI 章では,障害者家族の関わりについて,障害者家族の機能,その評価の仕方,家族への具体的な関わり方に分けて論じている。
     第 VII 章では,5種類のリハビリテーション専門職(看護職,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,ソーシャルワーカー)の立場から,各治療場面に特有な心理社会的問題や視点,ケアについて記されている。
     第 VIII 章では(1)リハビリテーションチームワークの運営,(2)うつ状態,せん妄,妄想状態,自殺の診断と対応,(3)中途障害者の心理療法,(4)認知リハビリテーション,(5)リエゾン精神医学やリエゾン・カンファレンスについて取り上げている。

    ◆類書にはない新たな論点を提示

     上述した構成内容から見て取れるように,本書には,次のような特徴がある。
    (1)リハビリテーション医療における心理的問題のみならず,その解決方法,すなわちケアについて記されている
    (2)身体障害のみならず,精神障害も取り上げ,しかも狭義のリハビリテーション医学と精神医学の連携や融合,すなわちリエゾンという新たな視点が導入されている
    (3)最新の理論の紹介にとどまらず,具体的な事例が多数あげられており,リハビリテーション専門職のみならずボランティアや家族などの実践的な取り組みにさまざまな示唆を与える
    (4)本書は,医師,看護職,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,心理専門職,ソーシャルワーカーなど多様な背景と豊富な臨床経験を有する専門家によって執筆されている
     以下のように,リハビリテーション心理学の分野に,類書には見られない新たな論点が提示されている。リハビリテーション関係者に一読を勧めたい。
  • リハ患者の心理的・情緒的ケアを記載した画期的な書
    書評者:丸田 俊彦(メイヨー・クリニック・精神科教授/慶大客員教授)

    ◆学際的な内容
     この本はいくつかの意味で画期的な本である。
     第1に,本書は,リハビリテーション(リハ)患者の心理だけでなく,そのケアの実際についてかなりの頁を割き,臨床に即した具体的な方針を示している。
     第2に,精神科医とリハ医により編集された本書は,臨床心理,看護,理学療法,作業療法,...
    リハ患者の心理的・情緒的ケアを記載した画期的な書
    書評者:丸田 俊彦(メイヨー・クリニック・精神科教授/慶大客員教授)

    ◆学際的な内容
     この本はいくつかの意味で画期的な本である。
     第1に,本書は,リハビリテーション(リハ)患者の心理だけでなく,そのケアの実際についてかなりの頁を割き,臨床に即した具体的な方針を示している。
     第2に,精神科医とリハ医により編集された本書は,臨床心理,看護,理学療法,作業療法,ソーシャルワークなどの分野からも執筆者を得て,文字どおり学際的な内容となっている。もっと言えば本書は,精神医学の側から見ると,リエゾン精神医学の見事な実践(と展開)の記録であり,リハ医学の側から見れば,かなり高度な『リハビリテーション患者の心理とケア』のガイドブックである。
     第3に,本書の執筆者のほとんどが第一線の臨床家であり,その執筆内容は,「リハ患者に向けられた優しいまなざし」を随所に感じさせる。
     第4に,本書の編集者と執筆者の多くが(東海大精神科教室の力動的精神医学の伝統の下で)非常に力動的な臨床的感性を持っており,それが,患者へのアプローチにはっきりと生かされている。

    ◆解決策を模索していく際のハンドブック

     本書は,8章に分かれている。「リハビリテーション医療の歴史と問題」,「障害受容」に続き,脳卒中,脊髄損傷,切断,頭部外傷,慢性疼痛,ヒステリー,痴呆,小児疾患など,「リハビリテーション患者の心理とケア」が具体的な症例とともに論じられ(第3章),「QOL」,「治療関係」,「家族への関わり」へと続いている。第7章では,看護,理学療法,作業療法,言語治療などの「治療場面における心理的問題」が臨場感をもって語られ,最終章「技法」では,チームワーク,精神症状への対処,心理療法,認知リハに加え,「リエゾン精神医学活用(法)」という,これまたユニークで実践的な項目が加えられている。
     介護保険制度の運用が始まり,障害者介護に向けて物理的環境が急速に充実し始めた今,臨床的実践としての「リハビリテーション患者の心理的・情緒的ケア」も,すぐそこまで迫っている。その課題に取り組む過程で,学際的な同僚・有志が問題を共有し,カンファレンスを開き,話合い,解決策を模索していく際のハンドブックとして,本書はその真価を発揮するに違いない。
  • リハ関係者が待っていた1冊
    書評者:落合 芙美子(日本リハビリテーション看護学会長)

     格別に暑かった2000年の夏に,熱い想いの本が届いた。『リハビリテーション患者の心理とケア』は,渡辺俊之,本田哲三両先生の編集による重厚な内容の本である(260頁)。
     リハビリテーション患者は,生活の場である病棟で,さまざまな心理的,精神的な面からの反応を表現している。感性豊かに反応に気づき心...
    リハ関係者が待っていた1冊
    書評者:落合 芙美子(日本リハビリテーション看護学会長)

     格別に暑かった2000年の夏に,熱い想いの本が届いた。『リハビリテーション患者の心理とケア』は,渡辺俊之,本田哲三両先生の編集による重厚な内容の本である(260頁)。
     リハビリテーション患者は,生活の場である病棟で,さまざまな心理的,精神的な面からの反応を表現している。感性豊かに反応に気づき心の交流を通して問題点や悩みやニーズに対応できれば,望ましいケアの展開とも言えるが,何も気づかなければケアの進展はなく問題や悩みやニーズに対しての問題解決は期待できないものとなる。

    ◆ケアは心の補装具になり得るか

     身体的な機能障害を有する障害者には,種々の評価の結果,片麻痺等では下肢装具を,あるいは脊損の方の車いす,聴覚障害者の方の補聴器,視覚障害者の方の眼鏡等いろいろな補装具が考えられている。しかし,心理,精神面の障害がある場合の心の補装具は装着できないのである。そのため看護婦はもちろんのこと医療従事者は,障害を受けてから障害受容そして社会復帰までの障害過程における心理的な変化,悩み,苦しみを十分理解しておかなければならない。本書は,系統的に各障害についてのリハビリテーション患者の心理とそのケアについて親切に解説してくれる。リハビリテーション医療に関与する者にとって待っていた1冊と言える。
     本書は,5章で構成されている。タイトル通り各障害別に心理の特徴を出し,各単元ごとに,ポイントの枠を作りまとめている点も理解しやすい。
     第 I 章の「リハビリテーション医療と心理」では,患者・治療・家族の側面から心理・社会的問題を提起している。さらに,リハビリテーション心理学の歴史も興味深いものがある。
     第 II 章は,障害者の心理的プロセスを理解する上で重要な「障害受容」である。
     第 III 章は,疾患,障害別に心理の特徴を記し,ケアとアプローチの事例を提示していて理解しやすい。
     第 IV 章は,QOLについて臨床研究を中心に述べられている。
     第 V 章,第 VI 章は,リハビリテーション医療現場での治療関係と障害者家族への関わりでの心理的な問題とケアについて説明している。
     第 VII 章では,治療場面での各専門職の立場から各々の心理社会的問題とそのケアについて書かれ参考になることが多い。
     第 VIII 章は,リハビリテーションの特徴であるチーム医療であるが,各専門職の力を最大限に発揮するためにチームワークが大切であることを強調している。
     リハビリテーション患者の心理に迫っていくことは大変困難なことが多く,そのケアも同様である。心の補装具になり得るか否かは,十分な知識の獲得と感性の豊かさと行動が求められる。本書は,医療者が本書に向き合えばその期待を裏切らない十分かつ重厚な内容である。高齢者,障害者の増加に圧倒される前にこのような本から栄養素をとっておきたい。
  • リハ患者の抱える心理的苦悩の全容が体感できる
    書評者:角山 富雄(神奈川県立足柄上病院・臨床心理士)

    ◆「本書は,どの章から読んでも理解できるように構成されている」
     編者が冒頭(『序にかえて』)に記されたこの言葉は,本書を読む時の重要なキーワードです。読者は,仮にどの章から読み進めても,また,任意の1章だけを読まれたとしても,そこに,本書の全体に匹敵する内容が盛られているのを実感できるからです。...
    リハ患者の抱える心理的苦悩の全容が体感できる
    書評者:角山 富雄(神奈川県立足柄上病院・臨床心理士)

    ◆「本書は,どの章から読んでも理解できるように構成されている」
     編者が冒頭(『序にかえて』)に記されたこの言葉は,本書を読む時の重要なキーワードです。読者は,仮にどの章から読み進めても,また,任意の1章だけを読まれたとしても,そこに,本書の全体に匹敵する内容が盛られているのを実感できるからです。その意味で,本書の構成は「事典」のそれに似ていると言ってもよいでしょう。読者は好きな部分を拾い読みすればよいのです。全体構成など気にせず,各章ごとに埋め込まれた小宇宙を味わうことで,本書の宇宙,つまり,リハビリテーション患者が抱える心理的苦悩の全容が体感できるわけです。
     本書の構成は,部分の中に全体が埋め込まれた「フラクタル構造」に似ているのですが,それは,本書の主題,つまり,リハビリテーション患者が抱える心の問題のありようと関係があるのだと思われます。大病の後遺症や心身の障害に苦しむ人々には,日常些事の1つひとつの襞の中にまで,その人の人生を襲った苦悩というかルサンチマンがこびりついているからです。本書でリエゾン精神医学の重要性が力説されているのも,こういった事情に由来してのことだと思います。

    ◆「対象喪失」が重要なキー

    本書では,「対象喪失」という精神分析学由来の言葉が,患者の心を了解しケアするための重要なキーとして使われています。患者にとっては,失われた機能や生活の代償回復をめざしたリハビリ治療や訓練とともに,失われた機能,生活,人生を悼み哀しむ「心のケア」が不可欠だからでしょう。ただ,注意を要するのは,「対象喪失」という言葉が,外的対象(身体や機能)の喪失と,対象イメージの喪失を区別せずに使われる傾向が強いことです。それはともかく,人生の終点に向けて,日々少しずつ「小さな死」を積み上げて生きるのが,われわれ人間の宿命だとすれば,失われたもの(時間)を悼み哀しむ「心のケア」は,リハビリ患者に限ったテーマではないのかもしれません。
     人間誰しも,明日に向けて生産的な一歩を踏み出すためには,失ったものから目を背けず,それを直視して,しっかり嘆けたほうがよいのです。けれども,それには時間もかかるし,それ相当の気力もいる。だからこそ,このメタフォリックな「服喪」の作業には,「同行二人」の道連れが必要なのです。悲しめずにいる患者には,「悲しんでよいのだ」と言い,悲しみの深い患者には,その悲しみに共振れすることなく,黙って時間を共にする心の道連れが必要なのです。
     「心のケア」に携わろうとする時,医療スタッフはこの「道連れマインド」を忘れてはいけない。多分,これが本書の底を流れる結論なのだと思います。そして,読者はこの結論のほんの少し先に,対象喪失感をマニックに隠蔽することで成り立ってきた現代医療への警鐘を聞き分けることも,また,日々の生活から「死の影」を取り除こうと脅迫的になっている現代人への労りの声を聞くこともできなくはないのです。