神経心理学事典

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世界初の神経心理学事典の日本語版。8,000語におよぶ神経学と心理学に関するワードを収録。神経心理学の用語集を兼ねる内容となっている。著者は各専門のエキスパートで疾患と症候の概念研究の発展史、現在の総説を詳細に記述し、既刊の『臨床神経学辞典』とほぼ同規模の姉妹版として活用可能。言語聴覚士などの関係者にも有益。
編集 J. Graham Beaumont / Pamela M. Kenealy / Marcus J. C. Rogers
監訳 岩田 誠 / 河内 十郎 / 河村 満
発行 2007年05月判型:A5頁:744
ISBN 978-4-260-00019-2
定価 20,900円 (本体19,000円+税)

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監訳者序
監訳者

 この事典は,1996年にBlackwell社から出版された,J.G. Beaumont, P.M. Kenealy, M.J.C. Rogersの3名の編集による,“The Blackwell Dictionary of Neuropsychology”の全訳である。
 編者の序文にもあるように,神経心理学の全領域を網羅する初めての事典であり,原著は800頁に及ぶ大部となっている。3名の編者を含む執筆者は126名に及び,いずれもそうそうたるメンバーで,現在神経心理学の各分野で第一線に立っている研究者がそれぞれ専門の項目を執筆している。一般のテキストや著作では執筆者が限られるために不得手な部分も執筆しなければならない場合が多いことを考えれば,まさに「事典」としての長所が最大限に発揮されている。
 また,現在の神経心理学の世界では大家と目されているAntonio Damasio, Ennio De Renzi, Kenneth Heilman, Eran Zaidelの4名が編集協力者として企画に参加していることも,この事典の価値を大いに高めている(De RenziとZaidelは執筆者にも加わっている)。
 本書の内容は,神経心理学プロパーの領域から周辺の心理学や神経科学まで広く及び,記述も数行で終わる小項目から10頁を超える大項目までさまざまで,末尾に参考文献が記されている大項目は,神経心理学の標準的なテキストの1つの章に相当するものとなっている。
 監訳者は,原著が出版された当初からその価値を認め,医学書院の編集部と協力して翻訳に取りかかったが,原著が大部なことと翻訳者が34名に及んだことなどにより出版までに長い年月がかかってしまった。しかしその責任のすべてが監訳者にあることを明記しておきたい。監訳者の非力のために,広範囲に及ぶ内容の訳文を検討し,さまざまな文体を統一するのに時間がかかってしまったからである。
 本書の校正,その他医学用語・語義など細部の点検について,富坂診療所の岡本保先生の編集協力をいただき,内容の正確を期すことができたことを深く感謝する。
 本書が多くの方々に活用され,わが国の神経心理学の発展に役立つことを願っている。
 最後に,本書の出版にあたり,医学書院編集部の樋口覚氏と制作部の筒井進氏に多々お世話になった。遅々として進まない監訳作業に忍耐強く対応してくれた両氏に心から感謝する。
 2007年3月10日

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監訳者序
原著者序
本書の使いかた
凡例
見出し語索引
略語

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索引
 和文索引
 欧文索引
 人名索引

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関連項目を拾うことにより教科書としても使える一冊
書評者: 山鳥 重 (神戸学院大教授・人文学部人間心理学科)
 神経心理学に関心を持つ人間にとっては,願ってもない書物が翻訳出版された。神経心理学は,脳損傷と心理障害,あるいは脳機能と心理現象の相関を追及しているが,問題が問題だけに,初心者にぴったりの,手元で使える参考書というのがなかなかない。記述が心理的側面だけに集中しているのも困るが,機能的側面だけに集中しているのもやっぱり困る。本書はこのバランスが絶妙である。神経解剖学も,神経生理学も,神経学(神経内科・脳外科・精神科を含めて)も,実験心理学も,認知心理学も,リハビリテーション諸科学も,とにかく神経心理学に重なる項目はすべて本書に収められている。この程度のサイズ(711ページ)にしては,その手落ちのなさは憎らしいほどである。

 本書の魅力は編集方針にある。詳細な説明が必要な項目には十分な紙面が割り当てられ,簡単な説明で事が足りる項目は数行で済まされている。このめりはりがすばらしい。例えばAの項目を例にとると,重点項目に選ばれているのはacalculia失計算,aging加齢,agnosia失認,agraphia失書,alcoholismアルコール中毒症,alexia失読,amnesic syndrome健忘症候群,amusia失音楽,anomia失名辞,anosmia嗅覚消失,anosognosia病態失認,aphasia失語,apraxia失行,assessment評価,ataxia運動失調,attention注意,auditory perceptual disorders聴知覚障害,autism自閉症,autotopagnosia自己身体部位失認の19項目で,これらについては総説に近い詳細な解説がなされている。嗅覚消失,評価,注意,それにアルコール中毒が同じ重要性を持つものとして,失認などと肩を並べている点がきわめてユニークで,確かにこれぞ神経心理学である。

 さらに,これらの項目を執筆しているのは,失計算がXavier Seron,失認がGlyn W. Humphrey,失読がFrank Benson,健忘がAlan J. Parkin,健忘症候群がAndrew R. Mayes,失音楽がHarold W. Gordon,失名辞がGabriele Miceli,病態失認がGeorge P. Prigatano,失語がHarold Goodglass,評価がJ.R. Crawford,運動失調がJ. Graham Beaumont(本書編集者の一人),注意がMichael I. Posner,聴知覚障害がLuigi A. Vignolo,自己身体部位失認がGianfranco Denesと,それぞれの領域で求め得られる最高の人たちである。内容が充実しているのも,執筆者を見れば,なるほどさもありなんと納得させられる。
 編集方針でもう一つ見逃せない卓抜なアイデアがある。それは解剖学の項目で,脳,脳幹,小脳,脳神経,辺縁系,前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉,感覚運動皮質,皮質有線野,視床,錐体路など,非医学系の専門家にとってややなじみにくい知識が大きな項目として拾い出され,それぞれが大局的な立場からうまくまとめられている。非医学系学習者への配慮が行き届いた編集である。

 本書は事典だが,教科書としても使える。むしろ教科書としての価値の方が高いかもしれない。ページを飛ばしながら,関連項目を拾ってゆくと,時間を忘れてしまう。通常の教科書より遥かに入りやすく,読みやすい。

 本書は翻訳書なので,項目が原語(英語)配列になっているが,項目検索はそんなに苦にならない。各ページの肩には英語表記が出ているし,最後には英語索引もある。日本語からの検索も,巻末の索引と巻頭の日本語用の見出し語索引を併用すれば,こちらもそれほど厄介ではない。この辺りは使用の便を考え,周到に編集されている。

 最後になったが,本事典には監訳者の一人岩田誠教授の漢字失読の業績が,彼の有名な大脳地図と共に引用されている。彼の他にも,数えてみると,14人ほどの日本人学者の業績が収録されている。この数は,わが国の神経心理学にとって,喜ぶべき数なのか悲しむべき数なのか,評者にはちょっと判断がつかない。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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