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クリニカルエビデンス・コンサイス issue16 日本語版

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英国医師会出版部門発行の定評あるエビデンス集の日本語版。日常よく遭遇する全226トピックスにおける様々な臨床上の疑問に対し、現時点での世界最新・最良のエビデンスを提供。簡潔に要約された治療的/予防的介入のエビデンスはわかりやすく6段階にランク付けされ、文献も豊富に収載。日々の診療におけるEBMの実践を支援する、すべての臨床医必携の書!
監訳 葛西 龍樹
発行 2007年08月判型:A5変頁:1432
ISBN 978-4-260-00395-7
定価 12,100円 (本体11,000円+税)
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日本語版序
葛西 龍樹

 クリニカル・エビデンス日本語版をお届けする。クリニカル・エビデンス(Clinical Evidence;CE)は,英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)によるEBM(evidence-based medicine)を支援する画期的医療情報提供プロジェクトであり,1999年のCE第1版の刊行以来,継続して更新・拡充・改善を繰り返し,常に最新最良のエビデンスを臨床現場(point of care)に提供してきている。このCE日本語版は,原書第16版コンサイス版(2006年12月発行)の全訳に参考文献リストを加えたものである。本書を日本のpoint of careにお届けできることは,私たち翻訳・監修チームの大きな喜びである。
 CEは,臨床上の疑問を重視し,そこからスタートする医療情報提供プロジェクトである。そのため,英国の家庭医療を中心に世界中のプライマリ・ケアの現場から臨床各科にわたる臨床上の疑問(その治療的介入,予防的介入,診断的介入にはどのような効果があるのか)を集め,その答えを探すために臨床と疫学のエキスパートでチームを作り,徹底した情報収集と批判的吟味を系統的かつ明示的に行って,現在知りうる最新最良のエビデンスを,その強さや不確実さの程度も含めて簡潔な表現で記載している。原書は紙媒体のコンサイス版として6か月ごとに改訂されて出版されており,さらに詳しい記載を盛り込んだオンライン版は1か月ごとに改訂されて最新の情報を利用することができる。
 実は日本語版CEは,原書第4版,6版,9版の全訳をそれぞれ2001年,2002年,2004年に他社から刊行したことがあるが,その後いままで途絶えていた。「EBMのブームは去ったのではないか」という市場判断があったようだが,その背景としては,日本で日常診療にエビデンスを利用することがいまだ浸透していないことがある。
 しかし,世界では現在100万人を超える臨床医が7言語でCEを利用している。米国では,50万人の医師へUnited Health Foundationを通してコンサイス版CEが配布され,英国では,NHSを通して4万人の医師へコンサイス版CEが配布され,オンラインの無料アクセス権が66万人の医療従事者へ与えられている。英国医師会は年1回,コンサイス版CEを1万人の医学生に配布している。ノルウェーとニュージーランドでは,政府によって,国内の誰もが無料でオンラインのCEにアクセスできる。イタリアでは厚生省とコクラン・センターとを通して30万人の医師にコンサイス版CEのイタリア語版が配布されている。そのほか,スペイン語版がコンサイス版とオンラインで,ロシア語版が全訳版で,ドイツ語,ハンガリー語,ポルトガル語版がそれぞれコンサイス版で作られている。WHOの協力により,発展途上国ではオンライン版が無料で提供されている。
 EBMは一時的なブームではなく,安全で効率的な質の高い医療を利用者の利益のために提供する行動であり,医療者が自ら進んで行うプロフェッショナリズムの一部である。ちなみに,英国の家庭医は,その専門研修中も,そして専門家庭医(MRCGP)の認定試験においても,もはやCEをはじめ主要な臨床研究のエビデンスやガイドラインを駆使せずに良い評価を得ることはできない。日本のpoint of careにおいても,医療者の積極的な行動変容が起こることを切に望むものであり,日本語版CEがその道具として活用されることを期待している。
 最後になったが,出版者としてのプロフェッショナリズムにかけて日本語版CEのリバイバルに協力していただいた医学書院の担当の皆様に深く感謝したい。

 2007年7月
翻訳・監修チームを代表して
BMJ Knowledgeプロジェクト*・アドバイザー
福島県立医科大学地域・家庭医療部教授
葛西 龍樹


*BMJ Knowledgeプロジェクト
BMJ Publishing Groupが提供する総合医療情報サービス・プロジェクトで,「Clinical Evidence」,「Best Treatments」(患者・一般利用者向けCE),「BMJ Learning」(医師・看護師向けオンライン生涯教育プログラム)の3部門から成る。

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日本語版序
原著の編集チームとアドバイザー/謝辞
訳者一覧
BMJクリニカルエビデンス・コンサイス第16版へようこそ
BMJクリニカルエビデンスについて
BMJクリニカルエビデンス・コンサイスの利用法
BMJクリニカルエビデンスの作成法
BMJクリニカルエビデンス用語解説

血液およびリンパ疾患
循環器疾患
小児の疾患
糖尿病
消化器疾患
耳鼻咽喉疾患
内分泌疾患
眼疾患
HIVとAIDS
感染症
腎疾患
男性の疾患
精神疾患
筋骨格系疾患
神経疾患
口腔衛生
周術期のケア
中毒
妊娠と出産
呼吸器疾患(急性)
呼吸器疾患(慢性)
性感染症
皮膚疾患
睡眠障害
女性の疾患
創傷

付録
 付録1 虚血性心疾患の一次予防へのアプローチ
 付録2 心血管リスクと治療の利益の推定
 付録3 治療必要数(NNT):ベースラインリスクの調整

索引

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「おかえりクリエビ。でも変わったね」
書評者: 津谷 喜一郎 (東大大学院教授・医薬政策学)
 “Clinical Evidence”(CE,クリエビ)は英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)が作成している全世界的に定評のあるEBM支援ツールである。以前,他社からフルテキスト版の日本語訳が3回発行されたが,諸事情によりその後発行が途絶えていた。このたび医学書院から,原書第16版の「コンサイス版」が日本語版として発行されたことを,まずは歓迎したい。

 クリエビの原書は,IT技術を駆使して複数のメディアと構成で提供されており,そのことも革新的ではあるのだが,そのなかでの日本語版の本書の位置づけがわかりづらくなっている。ここでは,本書の位置づけを中心に述べよう。

 クリエビは1996年6月から,毎月更新されるオンライン版と,半年毎に改訂される冊子体(フルテキスト版)が発行されてきた。さらに2002年12月発行の第8版からは,エビデンスの要約のみを掲載したコンサイス版の冊子体が発行された。この「3本立てスタイル」は2006年6月発行の第15版まで続く。しかし,年々記載内容が増大し,あまりに厚くなりすぎたため,フルテキスト版の冊子体は2006年12月発行の第16版から廃止された。このため詳細なデータまですべてを掲載した「フルテキスト」はオンライン版のみで参照可能となり,冊子体の発行は簡潔なコンサイス版のみに一元化された。さらにこのコンサイス版は2007年から“BMJ Clinical Evidence Handbook”と名称が変わり,版番号(issue number)もなくなった。

 今回の訳は原書第16版のコンサイス版(すなわち名称としては最後の「コンサイス版」)を基にしている。本書では臨床に携わる医師にとって一番知りたい部分,すなわちエビデンスの要約部分のみを掲載し詳細なデータは省略されている。日々多忙な医師にとっては,知りたいことのみがすぐわかる本書の構成はありがたい。しかし原書コンサイス版では文献が掲載されておらず,“Please refer to clinicalevidence.com for full text and references”とオンライン版の参照を誘導されるのみである。クリエビの日本人読者は,おそらくはエビデンスの基になった文献を知りたいのではないだろうか。そこで,本書ではオンライン版からの文献が掲載されている。さらにフルテキスト版第15版の用語解説(glossary)の訳もつけてある。このようにコンサイス版をそのまま翻訳出版するのではなく,日本語版読者の便宜を考えたつくりであるのがうれしい。

 本書では日常よく遭遇する全26領域226疾患について,その臨床上の疑問に答えるかたちですべての治療的・予防的介入の効果が「有益である」「有益である可能性が高い」「有益性と有害性のトレードオフ」「有益性に乏しい」「無効ないし有害である」「有益性不明」の6つのカテゴリーに分類されている。「有益性不明」が多いが,むしろそれが分かることが有用である。介入効果が不明なのは,自分の知識の不足ではなく,エビデンスの不足によるものだと知ることができるからである。

 EBMの実践とはいっても,時間もなく,文献検索や批判的吟味(critical appraisal)などなかなか行えないのが普通である。本書はsystematic searchとpre―appraisalによって臨床の場の意思決定を支援するツールである。読者は本書に示されたエビデンスを基に個々の患者への適用性を判断すればよい。一人でも多くの読者が本書を利用することで,よりよい医療を提供する助けとされることを望みたい。
質の高い診療を保証する簡明直截な情報
書評者: 福井 次矢 (聖路加国際病院・病院長)
 本書は,英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)が世界中の医師に「根拠に基づいた医療(EBM:Evidence―based Medicine)」を実践してもらうために作成・出版している『BMJ Clinical Evidence Concise』(第16版)の日本語訳である。

 内容は,日常よく遭遇する226疾患の治療法や予防的介入の一つひとつについて,有効性や有害性を示す根拠(エビデンス)を体系的(システマティック)に検索・評価し,次のような6つに分類したものである。

・有益である:複数のランダム化比較試験もしくはそれに代用可能な最高の情報源からの明確なエビデンスにより有効性が示されており,予測される害が利益に比べて小さい
・有益である可能性が高い:“有益である”に分類された項目に比べて,有効性が十分には確立されていない

・有益性と有害性のトレードオフ:臨床医や患者が,個々の状況や優先順位にしたがって利益と害を比較評価すべき

・有益性不明:現時点でのデータが不十分か,あるいはデータの質が不適切

・有益性に乏しい:“無効ないし有害である”に分類された項目に比べると有効性の欠如がそれほど明確にされていない

・無効ないし有害である:無効性または有害性が明確なエビデンスによって示されている

 たとえば,急性虫垂炎の治療については,「有益である」に手術+抗菌薬投与,「有益である可能性が高い」に腹腔鏡手術と開腹手術との比較(小児),「有益性と有害性のトレードオフ」に抗菌薬と手術との比較,腹腔鏡手術と開腹手術との比較(成人),「有益性不明」に抗菌薬(無治療/プラセボとの比較),手術(無治療との比較),「無効ないし有害である」に開腹手術における断端埋没と単純結紮との比較,などが挙げられ,それぞれに10行以内の説明が付されている。まさに,診療の現場(point of care)で必要なエビデンスを,必要最小限の情報量にまとめたものである。

 世界中の医療現場でEBMが実践されさえすれば,患者アウトカム(重篤な症状,QOL,生存率,障害,歩行距離,出生率など)が著しく改善することは確かであろう。問題は,どうすれば実現できるか,である。一人ひとりの医師が,眼前の患者で湧き上がった疑問点について,丹念にEBMの手順に則ってエビデンスを探し出し,信頼できるものかどうか評価し,エビデンスを患者に適用するかどうかを判断すればよいのであるが,実際上のさまざまな理由から,そのようなEBMの手順を踏むことのできる医師はごくわずかである。そこで,頻度の高い臨床問題については,専門家があらかじめエビデンスを検索・評価し,実践現場で使いやすいかたちで提供するための試み(診療ガイドライン,クリニカルパス,電子カルテの診療支援ソフト,リマインダー等々)が多くの国々で行われつつある。

 過去約20年間にわたって,EBMの普及に関して英国医師会出版部が行ってきたさまざまな取り組みは,まさに世界の医療界を常に先導するものであった。診療現場で役立つかたちでエビデンスを提供する本書がその典型であり,わが国においても,多くの医療者が座右において活用されることを心から願うものである。
EBMを実施する医師の座右の書
書評者: 山口 直人 (東京女子医科大学教授・衛生学公衆衛生学(二))
 このたび『クリニカルエビデンス・コンサイスissue16 日本語版』が医学書院から出版されたことは,わが国で医療に携わる全員にとって大きな喜びである。まずは,ご苦労なさった葛西龍樹教授はじめ翻訳に携わった皆様,出版社のみなさんに謝意を表したい。Clinical Evidenceは英国医師会出版部(BMJ Publishing Group)が総力を挙げて作り出したEBMバイブルの1つである。その日本語版は葛西教授が中心となっての献身的な努力で2001年に原書第4版の日本語訳が出版され,2002年に第6版,2004年には第9版が出版されたことは周知のとおりだが,その後,諸般の事情で出版が途絶えていたものである。今回,第16版の日本語版が装いも新たに出版されたことは,わが国の医療界にとって大きな福音であると言っても過言ではないであろう。

 Clinical Evidenceを利用する医師数は世界で100万人を超えていると言われ,現在,7か国語への翻訳が実施されている。多くの国では医師会員や医学生に無償配付するなどの措置が執られており,さらに,世界保健機関の協力によって発展途上国ではオンライン版が無償提供されていると聞く。このように,Clinical Evidenceは世界中の医療にとって,質向上のドライビングフォースとなっていることは明らかであり,わが国の医師・医療者が日本語で利用できることの意義は計り知れず大きいと言える。

 さて,第16版では26領域226疾患における臨床上の疑問が取り上げられている。しかも,専門医にとっても有益な最新の治療に関するものから,肥満症に対する薬物療法の効果,大腸癌スクリーニング,さらに,成人の便秘に対する生活習慣介入の効果まで,プライマリーケアを担当する医師が日常診療で出会う重要な問題を選りすぐって解説を提供している点が大きな特徴である。

 情報は臨床上の疑問ごとに提供されており,疑問への回答は有益性の分類として,「有益である」,「有益である可能性が高い」,「有益性と有害性のトレードオフ」,「有益性に乏しい」,「無効ないし有害である」,「有益性不明」のいずれかが示されている。本書の解説によれば,取り上げた疑問の回答の中で,「有益である」は14%であるのに対して,47%は「有益性不明」に分類されているとのことである。すなわち,有益性の判断が明確なもののみを取り上げるのではなく,有益性が不明でも,臨床上,重要な疑問であれば,それを積極的に取り上げている点も特徴である。不明となっている事項については英国National Health Service(NHS)のHealth Technology Assessment Program(HTA)にフィードバックすることで評価検討の推進にも一役買っている。

 また,各事項の最後には参考文献がリストされており,必要に応じて読者自身が原典に立ち返って,評価検討ができるように配慮されている。数年前になるが,私たち自身が行っている医療情報サービスの開始に当たり,日本医師会会員と病院勤務医に望ましい情報提供についてアンケート調査を行ったことがあるが,予想を遙かに超える多くの医師が,推奨のみでなく,必要に応じて原典に立ち返れるように根拠となった論文の情報提供を求めていることが明らかとなった。この点からも本書の構成はEBMを実施する医師にとって座右に置きたい書であると言える。

 最後に,本書の刊行が再開したことで,クリニカルエビデンス・コンサイス日本語版が,原書のほうのバージョンアップにあわせて,引き続きタイムリーに刊行されることを多くの医師・医療者が願っていることを申し添えて,書評を終わりたい。

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