家族計画指導の実際 第2版
少子社会における家族形成への支援

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今日の家族計画指導は、単に計画的な出産や避妊教育に止まらず、広く思春期からの生と性の教育や、少子社会のなかで家族を形成する意味を伝える必要がある。初版発行後の性を取り巻く状況の変化に対応し、大幅に改訂。低用量ピルについては詳細に解説したほか、銅・薬剤付加IUDの紹介、性教育は発達段階に沿った指導案を提示。
木村 好秀 / 齋藤 益子
発行 2007年06月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-00509-8
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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第2版 はじめに
木村好秀 齋藤益子 

 本書は10年前に上梓されたが,当時はカイロ宣言が出されて間もない時期で,わが国ではセクシュアリティの概念がいまだ浸透していなかった。21世紀にはいり価値観はさらに多様化して,女性の高学歴化と社会進出に相俟って晩婚化がすすみ,少子化に拍車がかかっている。子どもを産むことの価値は,拝金主義・合理主義のなかで,ややもすると経済的負担や手間隙がかかるというネガティブなイメージとなり,若い女性達のなかには産むことの選択を躊躇する現状がみられる。一方,IT革命やメディアによる性情報の氾濫,家庭力・地域力の低下は,性行動の低年齢化を促し,性の快楽性が求められ,さらに援助交際の問題など性を取り巻く環境は複雑な様相を呈している。そして10代や未婚者の無防備な性行動による予期しない妊娠や性感染症の増加をもたらし,社会問題にもなっている。
 筆者らは公立の小・中・高校で性教育を行う機会があるが,そこで出会う生徒たちは目の輝きを失って将来に夢がなく,自己中心的で忍耐力が欠如していることが稀ではなく,「このままでは日本がだめになる,何とかしなければ」という強い思いに駆られることがある。
 このような現状から今日の家族計画指導は,単に計画的な出産や避妊教育に止まらず,広く思春期からの生と性の教育や,少子社会のなかで家族を形成することの意味を伝えていくことが必要である。そこで今回,初版後の性を取り巻く様々な変化に対応して稿を補い大幅に改訂した。低用量ピルについては詳細に述べ,銅・薬剤付加IUDを紹介し,家族計画指導案に加えて新たに性教育についても発達段階に添った指導案を提示した。
 本書は,医師や助産師はもとより,リプロダクティブ・ヘルスに関心をもつ医療関係者や学生にとっても活用し易いテキストになるように編集した。また,学校保健に携わる養護教諭や保健担当の教諭,さらには大学の教養課程における教材にも利用できる様に頁をさいている。家族計画指導や性教育,健康教育の際の手引書として広く利用されることを期待している。
 2007年5月1日

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I. 世界の人口爆発と少子社会の到来
II. 性意識と性行動
III. 産む性・産めない性
IV. 産まない性
V. 受胎調節法の実際(各種避妊法)
VI. いのちの伝承としての家族計画
VII. 発達段階に応じた高校生までの性教育
VIII. 青年期からの家族計画
IX. 性教育と家族計画指導の内容
索引

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時代の要請に応える第2版の発行(雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 岡本 喜代子 (日本助産師会副会長)
 本著は10年前の初版から,家族計画指導を人口問題,性意識の変遷,いのちの伝承としての家族計画など,広い概念でとらえ,当時としても斬新な内容であった。

 このたび,10年を経過し,最近のリプロヘルスの動向をふまえた第2版が発行された。10年間の時代の変遷とともに,家族計画指導に求められている内容も大きく変化してきている。今回の改訂により,本著は更にその時代的要請に応えた画期的な内容となっている。

 特に,従前の家族計画指導は成熟期の男女に対する指導内容が中心であったが,このたびは時代が求めている,思春期の若者たち,子どもたちに向けた指導に対応する内容となっている。

 10年の間に,若者や大人を取り巻く社会環境は大きく変化してきた。若者や子どもに限ってみると,性交の低年齢化,若年妊娠・出産,人工妊娠中絶,若者の性感染症の増加,ニートの出現や犯罪の低年齢化・凶悪化が目立ってきている。

 また,成人においてもバブル崩壊後の不安定な経済を背景に,晩婚化,離婚家庭の増加,DV,子ども虐待の増加など,大きな問題を抱えている。大人も子どもも何か満たされない苛立ちのなかでの生活を余儀なくされている現代である。こういう時代だからこそ,本著で,人と人が出会い,愛することの意味をどの世代の人にも知って欲しいと願う。

 今回の改訂では,思春期教育をはじめ,発達段階に応じた指導内容が盛り込まれている。資料編には,小学・中学・高校,更には結婚前,産後,更年期と各年代別に対象者への指導が展開されている。また,主題・ねらい・評価・配慮事項をふまえ,学習内容,指導上の留意点,使用教材など具体的な指導方法が明示されている。

 避妊に関しては,この10年で,わが国においては,経口避妊薬(低用量ピル),銅付加IUD,女性用コンドームの認可などの大きな変化があった。それらに関して,また,現実的に緊急に必要性が発生する緊急避妊用ピルについても本書では取り上げている。

 助産師学生・助産師をはじめ,学校関係者,助産師以外の看護職,産婦人科・泌尿器科医師などリプロヘルスに関心のある方々に,本書をご利用いただきたいと願っている。これから指導を開始する方には,実践に際しての手引書として最適であるし,既に実践している方には,自己評価とレベルアップのための指標として活用していただけるだろう。

 著者らは,より広い性の概念に基づく,性教育をも包含した家族計画指導を普及し,幸せな家族が増え,自他を大切にする生き方のできる若者や大人が増えることを心から願っている。その結果,少子化が緩和されることを願っている。そんな熱い想いが伝わってくる。
女性のQOLの向上に
書評者: 北村 邦夫 ((社)日本家族計画協会常務理事・クリニック所長)
 同名の第1版が発行されたのが1998年1月のことだった。副題には「豊かなセクシュアリティを求めて」と書かれていた。あれから10年。他の先進諸国と比較して立ち遅れていたわが国においても,避妊法選択に大きな変化が起こっている。米国に遅れること40年。1999年には悲願であった低用量経口避妊薬(ピル)が遂に発売された。2000年に女性用コンドームと銅付加子宮内避妊具が,2007年にはプロゲストーゲン付加子宮内避妊システム(IUS)が登場した。

 そんな矢先,著者である木村好秀・齋藤益子両先生から本書が送られてきた。低用量ピルの承認にこだわり続けてきた筆者としては,真っ先にこの項に目をやって驚かされた。ピル開発に至るまでの歴史はさることながら,2006年2月に日本産科婦人科学会編で発行された『低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン』(改訂版)までもが,詳細に紹介されていたことだ。緊急避妊法の記述といい,最新情報をここまで収集しまとめられていることに驚かされるとともに敬意を表したい気持ちでいっぱいになった。

 第2版の特徴は,副題にあるように,近年わが国が抱えている少子化について言及している点ではないだろうか。筆者の所属する(社)日本家族計画協会も,「家族計画」の冠が付されたわが国唯一の団体として,矢面に立たされることが少なくない。少子高齢化が進行する今日,家族計画指導など時代に逆行しているとの批判があるのだ。本書は,この批判をやんわりとかわしながら,家族計画指導の今日的意義について,単に計画的な出産や避妊教育にとどまらず,広く思春期からの生と性の教育や,少子社会の中で家族を形成することの大切さにあると,小気味よい程に明快なメッセージを発信している。

 それが証拠に,章立てにも細かい配慮と工夫が見て取れるし,「VI.いのちの伝承としての家族計画」は読み応えのある内容となっている。また,著者らが日頃から取り組んでいる性教育実践をまとめた「VII.発達段階に応じた高校生までの性教育」「IX.性教育と家族計画指導の内容」を学ぶならば,性教育に経験のない医師・コメディカルが明日からすぐにも壇上に立てるかのような錯覚に陥るほどによくまとめられている。

 医師,助産師だけでなく保健師,看護師,養護教諭,学生など家族計画指導に関心のある指導者がこれを座右の書とするならば,わが国女性のQOLの向上が図られるものと確信している。

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