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レジデントのための呼吸器診療マニュアル

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“ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく 病める人のものである”と宣言した近代医学教育の父ポンペの来日から150年。現代の医療現場で真に求められる医師の知識とは何かを追求した、新しい呼吸器内科学の臨床教科書。21世紀の呼吸器感染症領域の診療でスタンダードに求められる実践的な項目分けに基づいてチャート式で構成。あくまで実際的な本書は、研修医の良き友になるだろう。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 河野 茂 / 早田 宏
発行 2008年04月判型:A5頁:400
ISBN 978-4-260-00563-0
定価 5,170円 (本体4,700円+税)
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はじめに-医学は再び長崎から

 医学部教育改革,初期臨床研修必修化などにもみられるように,現在,医学・医療は変革期を迎えている.このような新しい時代を担う医師の育成が,私どもの大きな使命である.特にベッドサイドでの実地診療の教育を重要視して,私どもの教室では学生・研修医を対象として日常診療に役立つ内容を“モーニング・レクチャー”として毎日,早朝に病棟で継続して行ってきた.このレクチャーが契機となり,従来のような疾患単位の体系的な教科書ではなく,新人医師が現場で患者を診た場合に診療をどう組み立てればよいのか,より実践的な新しい教科書が創り出せないかと考えた.
 実際に外来に来る患者は診断がいまだついていないため,本書はあえて疾患別の構成にすることは避けた.その代わりに,代表的な症候,検査,治療法を中心に解説を行った.従来あった既成の治療マニュアルや診療ハンドブックのような形式ではなく,基本的なものの考え方や臨床能力の重要性に力点をおいたつもりである.

 本書は,ボリュームを絞った構成としたため,紙面の制限もあり呼吸器診療の概略を理解する導入として利用していただき,詳細は文献にあげた体系的教科書等,そして臨床の経験の中でさらに自己学習していただきたいと思っている.臨床現場により近い内容を記載したかったため,evidenceが不十分なものについては,私どもの経験に基づいた本音に近い表現も少なくないが,この点については多くの方々の批判を受けながら,本書をより良いものにできればと望んでいる.
 呼吸器疾患は,感染症,アレルギー・免疫性疾患,腫瘍,肺循環などのさまざまな要因の病気を含んでいる.それぞれの分野の進歩は著しいものがあり,多数の医師による分担執筆という形をとらざるを得なかったが,編集の段階で加筆修正を行い,本書の理念の統一を図った.編集作業では医学書院の青木大祐氏に多大の尽力をいただいたことに深謝したい.

 わが国の近代西洋医学教育は,1857年にオランダ海軍軍医ポンペ・ファン・メールデルフォールトが長崎医学伝習所(長崎大学医学部の前身)で患者中心の医学教育を行ったときに端を発する.同じ長崎から発信する本書が,学生・研修医の方々にとって魅力ある呼吸器診療の手引きとなり,新しい時代を担う医師の育成に少しでも貢献できれば喜ばしい限りである.
 平成20年3月
 長崎大学医学部長 河野 茂

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第1章 A 疾患・症状のマネジメント
 A1 市中肺炎に出あったとき
 A2 院内肺炎に出あったとき
 A3 慢性気道感染症に出あったとき
 A4 のどの痛みを訴えられたら
 A5 インフルエンザを疑うとき
 A6 抗酸菌が陽性ならば
 A7 急性の間質性肺炎に出あったとき
 A8 亜急性から慢性の間質性肺炎に出あったとき
 A9 気管支喘息の管理と救急
 A10 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理と救急
 A11 孤立性肺結節をみたら
 A12 喀痰細胞診陽性をみたら
 A13 胸水をみたら
 A14 縦隔に腫瘤性病変をみたら
 A15 胸膜肥厚をみたら
 A16 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うとき
 A17 突発性の呼吸困難をみたら
 A18 血痰・喀血をみたら
 A19 慢性の咳をみたら

第2章 B チーム医療のために
 B1 プレゼンテーションとコンサルテーション
 B2 他科から術前評価を依頼された際の注意
 B3 呼吸器診療に必要な循環器の知識(1):基本検査
 B4 呼吸器診療に必要な循環器の知識(2):心不全

第3章 C 基本検査
 C1 胸部身体診察のポイント
 C2 胸部X線写真の読み方
 C3 胸部CTの読み方
 C4 呼吸機能検査のポイント
 C5 血液ガス検査とパルスオキシメータのポイント
 C6 気管支鏡検査のポイント
 C7 気管支肺胞洗浄(BAL)のポイント
 C8 グラム染色のポイント
 C9 微生物検査のポイント

第4章 D 治療総論
 D1 抗菌薬
 D2 気管支拡張薬/抗炎症薬
 D3 マクロライド少量長期療法
 D4 副腎皮質ステロイド(内服・静注)
 D5 抗癌剤と分子標的薬
 D6 酸素療法
 D7 人工呼吸療法
 D8 NPPV
 D9 胸腔ドレナージ

第5章 E 臨床に役立つエッセンス
 E1 患者中心の医療-包括的評価の重要性
 E2 診療記録(カルテ)の記載
 E3 インフォームド・コンセント
 E4 外来での基本的コミュニケーション
 E5 悪い知らせを伝える-がんの告知の場合
 E6 医療事故への対応
 E7 こころある医療を求めて-患者そして家族・地域社会へ

読んでおきたい文献・ウェブサイト
索引

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患者の視点に立った実践の書
書評者: 永井 厚志 (東女医大教授/東女医大病院長・呼吸器内科)
 このたび,医学書院から『レジデントのための呼吸器診療マニュアル』が上梓された。本書は大変ユニークな日常診療への実践書である。冒頭に編者は,“医学は再び長崎から”と付言し,本書の作成に当たる意気込みを吐露している。その思いは,ポンぺ・ファン・メールデルフォートがわが国の西洋近代医学教育として長崎医学伝習所(現長崎大学医学部)で患者中心の臨床教育を最初に行った史実にあったであろう。

 これまでにも多くのマニュアルやハンドブックが作成されてきた。その構成は,症候や疾患を網羅的に取り扱い,整然とした記載内容はミニ成書の類であった。しかし,本書は大きく異なっている。まず第1章「疾患・症状のマネージメント」で目にするのは,“○○の疾患に出あったとき”や“○○症状をみたら”といった日常的に交わされる指導医とレジデントの会話が項目になっていることである。

 項の始めは“直伝極意”と銘打った,しっかりと覚えていなければならないポイントである。続けて診療のフローチャートが描かれ診断から治療までの流れが一見して理解できるように作成されている。このように疾患や病態への基本を踏まえたところで,医療面接と診察のポイントとしてチェック項目を掲げながら端的明瞭な解説を加えている。この解説も饒舌に走らず,1―2行で説明をしているので自然にキーワードとして頭の中に入るよう仕組まれている。

 最後に診療に役立つ豆知識として「Mini Lecture」が載っている。これがなかなか見逃せない内容となっている。例えば,伝染性単核症では全身性の皮疹が必発するため,ペニシリン系薬剤を使用してはならないと明記されている。このことを知っていても,風邪様症状の患者にはこれらの薬剤を使用しがちであり,改めてはっとさせられるに違いない。
 第2章は「チーム医療のために」として呼吸器疾患の診療と密接に関わる循環器の問題を取り上げている。これまでにも肺と心臓は病態や治療面で総合的に取り扱う必要性が指摘されてきた。しかし,このように呼吸器疾患における循環器病態の管理を正面切って扱った書はまれである。

 第3章は基本検査について解説されている。ここでは,図表を多用することにより一目見ることで検査結果を理解することが可能となるように工夫されている。この章でも“直伝極意”は面白い。気管支鏡検査のポイントでは「人は,『リラックスしろ』といわれてできるものではない」,そのとおりと思わずうなずくに違いない。このような患者の視点に立った医療行為が重要であることを随所に,さりげなく挿入しているのが本書の特徴の1つでもある。

 第4章は「治療総論」として最新の治療情報を漏れることなく紹介している。

 最終章の第5章では「臨床に役立つエッセンス」として,診療記録の記載,インフォームド・コンセント,コミュニケーション,医療事故への対応など日々の診療で心がけておかなければならないことや,いつか遭遇する問題への対応などについて記載されている。この章には第1項と最終項に“患者中心の医療”と“こころある医療を求めて”を取り上げている。本書に一貫してみられる医療の実践に際して心すべき基本がここに集約されている。まさにポンペの教えであり,医育発祥の地,長崎から発信された本書の根幹である。「レジデントのために」とされているが,医療に携わる多くの方々に優れた実践の書として本書をお勧めする次第である。

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