看護現場のストレスケア
ナースだって癒されたい!!

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ナースのストレス、バーンアウトの実情について解説し、そのセルフマネジメントのための具体的な方策を紹介。現場からのストレス報告、コーピング事例報告、ナースへのメッセージを交えながら、看護管理者のストレスケア面接の方法も紹介。ナースを元気にする情報が満載。
編集 吉本 武史
編集協力 小島 通代 / 中村 俊規 / 加藤 薫
発行 2007年03月判型:A5頁:232
ISBN 978-4-260-00382-7
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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はじめに

執筆者/吉本 武史(編者)



 ナースの皆さんが働いている看護現場は,数ある仕事のなかでももっともストレスが大きいものの1つです。ストレスマネジメントは今,各方面で等しく重要な課題として取り組まれていて,看護の世界でも,この問題に対してかねてから取り組みの努力がなされてきましたが,それにも増して,成果主義や効率主義の導入による昨今の社会状況全体のストレスフルな変化は,看護の世界にもそのままいっそう大きな影響を投げかけているのが実情です。事実,ストレスから心身の不調をきたしたり,燃え尽きてしまうナースはますます増えています。

 これは大いに考えさせられることです。患者を癒すナースは,まず自らが癒されなければならないはずです。

 ナースのお一人おひとりがきちんと自らのストレス状況を把握し,しっかりと自らのストレス対策を考える出発点にすること,そして次に,看護現場全体でこの課題に積極的に取り組むことが急務になっています。



 「ナースのためのメンタルヘルスとストレスケア」--今,看護の現場,そして看護管理の領域で,もっとも切実で具体的な課題をテーマにして,この本は作られています。

 看護現場におけるストレスの把握から始まって,ストレスやストレスマネジメントの基礎理論とその実際,ストレスの自己管理のしかたとセルフケアの方法,さらに職場の部下,スタッフへのストレス相談のための面接方法とその実際について,ここでは具体的に,現場の条件に即した内容を提案しています。看護現場で求められるスタッフ一人ひとりへの心身の健康支援,この取り組みこそ,看護管理がめざす,スタッフや組織の問題点の解決と,組織,チームの活性化を考えるうえで,何にも勝るいちばん根本的なテーマとなることでしょう。



 ストレスについては,手に負えない魔物のようには決して考えないでください。実際のところ,多くのナースは厳しいストレス状況のなかを,これまでも,意識的にも,また無意識のうちにも上手に対処することをしてこられたし,今もそうされています。何よりもストレス学では,ストレス反応それ自体は,生命体としての人間の1つの妥当な適応反応であると考えられています。ストレス恐るるに足らず。要はストレスについての認識と対策さえきちんとできていれば,一見困難な事態は大いに打開できるのです。

 そしてそのためには,まず何よりも職場におけるストレスの存在を決してタブーにしないで,しっかりと職場全体で共通の認識にすることから始めて,次に現場のストレスを全体の問題として積極的に取り組むようにしましょう。

 ストレス状況は,そのままでは個人だけではなく,チームや組織の力を弱めますが,それを全体の理解として取り組むことで,チームの力,組織の力をも強化することができます。ストレス問題は,それにしっかりと取り組むことで,逆に職場をさらに活性化し,育てる力ともなるのです。そしてその時,皆さんの職場におけるストレスは,もはや悪いストレス(ディストレス)ではなくて,よいストレス(ユーストレス)にきっとその姿を変えていくことになるでしょう。



 ナースの皆さんがストレスに負けない,いっそうしなやかな存在になり,それによって,皆さんの職場がさらにもっと生き生きすることに本書がお役に立てるように,心から願っています。

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はじめに
この本の特長と使い方

第1章 ナースのストレスを検証する-看護師の仕事=ストレス×2
第2章 ナースのストレスとそのセルフマネジメント(自己管理)
第3章 管理者だからできる心のストレス管理
    -ストレスケア面接の効果的な活用法
第4章 セルフケア・エクササイズでストレスにうまく対処しよう

付録
 A ストレスチェックによる自己診断
 B 看護現場にみるストレス要因のチェックリスト
 C ケア・コミュニケーションとナーチャリング
 D ナースのためのストレスケア・サポート
参考文献
あとがき
ウェブページ参考資料

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現場で悩む看護職や面接に苦慮している看護管理者に(雑誌『看護管理』より)
書評者: 早坂 早苗 (宮城社会保険病院看護局長)
◆看護職のストレスは職場全体の問題

 厚生労働省は2000(平成12)年8月に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を示し,2006(平成18)年3月には新たに「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を出して労働者のメンタルヘルス対策への取り組みを図っている。また2005(平成17)年の労働安全衛生法改正により,過重労働防止対策も充実強化されている。

 ところが,仕事上のストレスによるうつ病など精神障害で労災認定を受けた人は,2006年度に205人と前年比1.6倍に急増し,過去最多となった。

 最近の看護現場は,医療安全対策や新人看護師の育成のほか,患者とその家族,医師,同僚,上司との人間関係,そして成果主義など,経営状況の厳しさも相まって複雑な状況にある。仕事が過重となるなかで,看護職が労働災害のハイリスクグループの一員に位置づけられているのも納得できる。

 日本看護協会は,人々の健康を守るには,看護職自身が健康で,質の高い看護を提供することが不可欠であるとし,さらに看護職の健康管理には,看護職個人だけでなく病院経営者の義務として組織的に取り組むことが必要であると述べている。

 本書『看護現場のストレスケア』でも,看護職のストレスを個人の問題ではなく職場全体の問題として捉えることが必要であるとし,職場の環境改善と管理者の支援体制確立の重要性が提言されている。看護職にはいつも元気でいてもらいたいという著者の意図を感ずる。


◆管理者が現場で迷う部分のポイントを解説

 著者はストレスを抱えている看護職と実際に向き合う経験から,看護現場での悩みや不安,ストレスを検証し,適切な自己管理(セルフマネジメント)の方法を紹介している。また看護現場でのストレスケア面接の実際も取り上げるなど,非常に現実的でイメージしやすい内容になっている。現場で悩んでいる看護職や,スタッフとの面接に苦慮している看護管理者にぜひ読んでほしい一冊である。

 第1章「ナースのストレスを検証する――看護師の仕事=ストレス×2」では,看護職のストレスやバーンアウトの実情が解説される。第2章では「ナースのストレスとそのセルフマネジメント(自己管理)」として,自尊感情と自己効力感を自ら確かめ強めることでストレスの受けとめ方が変わることや,ストレス日記の活用法,コーピングの事例報告も紹介されている。

 第3章の「管理者だからできる心のストレス管理――ストレスケア面接の効果的な活用法」では,ストレスケア面接の実際の他,部下の不調のサイン,専門家にゆだねる判断など,現場で管理者が迷う部分のポイントが解説されていて非常に参考になる。最終章の第4章「セルフケア・エクササイズでストレスにうまく対処しよう」では,ストレス反応を緩和する呼吸法などのエクササイズを豊富に紹介している。

 各章に「現場からのストレス報告」「ナースへのメッセージ」などもあり,読者が自身の問題と共有できる工夫がされている。看護職のメンタルヘルスの著書は少ないだけに,一読の価値がある。

 本書全体を通して,臨床心理士である著者の看護職に対する温かい心づかいが感じられる。今日の看護職にとって最も必要な一冊ではないだろうか。
現場の事例を豊富に紹介した,時宜を得た“使える”一冊
書評者: 廣田 玲子 (愛媛県看護協会会長)
 私たちは社会生活を営む中で,何らかのストレスを感じながら過ごしている。また看護職は,人の生病老死にかかわりながら,責務の重さを刻々感じ,緊張の連続のなかで業務を遂行している。

 看護職は,これまで患者の健康だけに焦点を当ててケアを提供してきた。その結果,看護職員自身の健康についての関心は,あまりもたれることがなかった。健康を害した時,その責任は個人に向けられる傾向にあった。健康を守る立場にある看護職が自身の健康を害していては,他人の健康を守ることはできないであろう。

 近年,医療をとりまく環境が大きく変化し,雇用者が職員を保護するために,快適な環境づくりと労働条件の改善に大きな努力が払われている。21世紀になって,医療現場は大きな変革の時代に入り,医療制度改革のなかで,国民と共に協働して安全・安心の医療を進めるという動きの下で,ストレスケアの必要性がますます強調されている。

 本書は,医師・看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・作業療法士・検査技師・放射線技師・事務職など医療チームのなかで織り成す人間模様を考えると,すべての職種の人々に役立つ内容となっている。

 また,医療従事者だけでなく,誰にでも理解しやすく書かれており,必要な時に参考書として活用できるような構成になっている。

 新人から管理者への相談,また管理者からの相談・面談など,具体的に事例を示しながら方策を考える構成になっているので,現場において非常に参考となる。

 第4章の「セルフケア・エクササイズでストレスにうまく対応しよう」では,楽しみながらストレス反応を緩和できるように図解されている。また手軽に応用でき,場所を選ばずに実施できるストレス対処法が紹介されている。

 付録には,ストレスチェックによる自己診断,看護現場にみるストレス要因のチェックリスト,ケア・コミュニケーションとナーチャリング,ナースのためのストレスケア・サポートなどストレス尺度やストレスのチェックリストが紹介されており,本書の利用価値を高めている。

 現場での事例を具体的に示していること,さまざまな段階の職位の人にも活用・実践ができること,医師・看護大学教授,教員からのメッセージなども掲載されているので,学生にも,また医療現場の方々にも活用できる書として一読をお推めしたい。

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