エビデンス老年医療

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年間30兆円にのぼる医療費。その半分が65歳以上高齢者に分配される現在、老年医療はどこに向かうのか-戸惑う現場の医療者へ、特に頻度が高く且つ興味深い要介護老人の障害と周辺疾患を取り上げ、豊富な図表を収載し、内外のエビデンスに基づき解説。18年にわたり最前線で要介護老人を診療してきた著者が醸す老年医療のエッセンス。
佐々木 英忠
発行 2006年09月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-00209-7
定価 6,600円 (本体6,000円+税)
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  • 目次
  • 書評

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1. 要介護老人のQOL
2. 摂食・嚥下障害
3. 老人性肺炎
4. 認知症
5. 要介護老人の精神障害
6. 脳血管障害
7. 寝たきり
8. 難治性老人疾患の治療
9. 現代版養生訓
索引

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多数のエビデンスを集載した老年医療の集大成
書評者: 井口 昭久 (名大大学院教授・老年科学)
 本書は高齢者の食事から排泄といった日常基本動作にかかわる障害と周辺疾患について,最先端の医療と介護を内外のエビデンスに基づいて解説したものである。18年間にわたり要介護老人を最前線で診療されてきた佐々木先生による老年医療を集大成した一冊である。

 このような教科書的な本は多くの場合,複数の著者によるものである。それゆえ通読するのは時間的な余裕が必要であるのはもちろん,読みきるにはかなりの忍耐がいるものである。しかしこの本は佐々木先生が一人で書いているので,一息で読み終えてしまえた。

 エビデンスを基に医療,介護,看護,医療経済などが軽妙な語り口によって書かれている。エビデンスをあげ,解説し,著者の感想を述べるとした形式で,各々の節が一つの物語として読め退屈しなかった。

 医療や介護に携わる人以外の一般読者にもわかるように書かれている。例えば次のような記述がある。「アルツハイマー病の患者を介護している人の皮膚に傷をつけた場合,その治り方はそうでない人の場合より遅いという報告がある(頁81)」,「介護した人の達成感をもっている人はいくら仕事量が増えても落ち込みはないという(頁81)」これらの事実をエビデンスで示しているので説得力がある。

 そうかと思うと学生との交流のような個人的な体験が出てきて佐々木先生の人柄がわかるようにもなっている。また,医療と看護,介護,福祉の一貫性が無理なく連続的に記述されている。この連続性にこそ老年医学の本質があるのである。一貫して長生きは医療経済的に,むしろ安く済む,だからなるべく長生きすべきだという主張が貫かれている。老人をいとおしみ,優しく包む医療を書いた本である。老人に対する愛情に満ちあふれた本である。

 ぜひ一読をお薦めする。

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