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助産師のための性教育実践ガイド

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助産師のメインの仕事は出産介助を原点とした周産期の母子ケアであるが、「性」と直接かかわっていることから、性教育の実践に有用な人材としても認められつつある。学校教育現場や地域から、性教育の要請があったとき、助産師が自信をもって受けて立つための基本となる知識とノウハウを網羅した本。
編集 川島 広江 / 大石 時子
発行 2005年11月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-00091-8
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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I 助産師と性教育
 1. 現代社会において助産師が性教育をになうということ
 2. 性の自己決定権とジェンダー
II 性教育実践のための基本
 1. 学校性教育のアウトライン
 2. 保健センターがかかわる地域と学校の連携
 3. 思春期の心の理解
 4. 性教育で押さえておきたい大切なこと
 5. 医療と教育の役割と連携
III 助産師に期待する性教育
 1. 学校長が助産師に望む性教育
   開かれた学校をめざし,社会人活用の視点から
 2. 中学校養護教諭が助産師に望む性教育
 3. 高等学校養護教諭が助産師に望む性教育
IV 性教育の実際
 1. 小学生への性教育
 2. 中学生への性教育
 3. 高校生への性教育
 4. 性教育の教材
V 助産師のチャレンジ性教育
 1. 総合周産期母子医療センターからの出張授業
 2. ケアの心で年間100回「生と性の学習会」を実践
 3. ピアカウンセリング
 4. 保護者・教職員への性教育
 5. 地域で多彩な性教育にチャレンジ
付録 性教育をになう助産師育成のためのワークショップ試案
 ニューヨーク大学「性の専門家養成プログラム」をもとに
索引

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性教育実践のときの助産師のバイブルです (雑誌『助産雑誌』より)
書評者: 光本 朱實 (高知県思春期相談センター PRINK)
 やっと出ました。

 助産師が性教育を実践しようとするとき,ぜひ読んで欲しい1冊です。

 昭和60年頃から,私は学生と一緒の臨床実習場で十代の望まない妊娠や人工妊娠中絶に出会い,何かできることはないかと考えていました。そして平成2年から思春期の若者たちからの相談を受け,学校や地域で性教育を行なってきました。この頃,性教育を実施するための知識の多くは,医学書関係であり母性や助産領域の“保健”分野でした。これらの本を参考に知識を教えることに重点が置かれていたように思います。でも,医療・保健領域の知識だけでは行動の変容は起こらないのです。行動の変容がない限り教育の効果は上がらないのです。

 今,この本を手にしてまず感じたことは,助産師が性教育をするための本であり,助産師だからこそできる性教育の姿がここにあるということです。助産師はもともと人間の健康を,性に関する視点からその保持と増進のために,生殖にかかわっています。だからこそ,助産師に性教育が求められているのではないでしょうか。また,助産師の多くは性教育にかかわる必要性を感じており,私の周りの助産師もいろいろな形で活動しています。

 助産師が性教育をしようとするとき,ともすれば妊娠や出産,避妊,性感染症などの知識を与えればよいと考えるかもしれませんが,性教育はそれほど単純ではなく,学校によって,学年によって,あるいは学習の進度によって受け手側の児童・生徒は千差万別です。受け手側の児童生徒の望むものと,提供する側の助産師が示すことができるもの,それに保護者や学校がほしいものが一致して,初めて効果的な性教育ができるのです。これが一致するまで数回の打ち合わせが必要になるでしょう。

 性教育を実施するとき,性に関する知識だけでなく,事前に知っておくべき心理的な面や相手側との打ち合わせ,そして保護者や学校の教職員との打ち合わせ,時には保護者,教職員自身への性教育が必要になるかもしれないのです。だから性教育をしようとするとき,当然助産師は自分自身が「性教育とは何か」についても理解しておく必要があります。私が性教育を始めたころは,これらを1つひとつ本を開き勉強したものでした。

 本書には,助産師が性教育を実施しようとするとき,実際どのように学校側と打ち合わせをし,どのような教材を準備し,どのように進めていけばよいのか内容や留意点が挙げられています。その他,性教育を実践するときに当然持っていてほしい,性教育に関する情報が網羅されています。

 助産師の特性を生かし,豊かなセクシュアリティに向けて助産師らしい性教育ができるためにもこの本を手にし活動を広げていってほしいと思います。

(『助産雑誌』2006年4月号掲載)
もっと前に発刊されてほしかった!
書評者: 山本 美貴 (相模原市出張専門開業助産師)
 本著を読み終わりまず思ったのは,「わたしが性教育を始めた時にこの本があれば,あんなに苦労しなかったのに!くやしー!」というものだった。

 私は助産師として総合病院や地域の助産院などで勤務,今年で7年になる。この間,たくさんの人々に出会った。家族皆に囲まれて待ち望まれてわが子を出産する人,その一方,何度も中絶を繰り返す人,欲しくても授かれない人,健診を一度も受けずに分娩に至る人など様々な出産にまつわることに関わってきた。少しでも多くの母子とその家族が,よりハッピーになれるにはどうしたらよいのか,そして自分の出産や育児を通し,我が子を含めたすべての子どもたちの生きていく社会を少しでも良いものにしたいと思っていた。出産は,医学的にみれば生殖行動の大きな要素だが,「性」というものと切っても切れない。

 私は,さかのぼること4年前,10代の犯罪が多発したことがきっかけで一念奮起! 性教育活動をスタートさせた。多くの本を読み,講演会に出かけ,知識と技術と自信をたっぷりと詰め込んで「さあ話そう!」と意気込んだ。しかし一介の助産師にすぐに性教育の依頼があるはずもない。悶々とする日々。どうやって話を聞いてもらおうか試行錯誤し,とりあえず知人に頼みこみ,コツコツと取り組み始めた。月1回程度だが現在は「いのちの大切さを伝える性の話」を親子セットで行っている。

 性とは「心の生き方」と書く。つまり「どう生きるかを考えることだ」と私はとらえている。それは,生殖に関することだけでなく,性を持つ「人」に関わることすべて,そして「人々」が集まって形成している社会全般に関わる問題である。性と生は深く大きく影響しあっているのだ。しかし,多くの大人は,以前の私のように「性=生殖に限定される言葉」という狭い意味での「性」という言葉にとらわれてしまっている。だから性について子どもにどうやって伝えたらいいかわからないと戸惑っているのだと思う。

 保護者の方々とお話する機会も多いが,「命はなぜ大切なの?」「パパとわたしはなぜ身体が違うの?」「赤ちゃんを買ってきて!」など聞かれて困ってしまって……と,様々に訴えられる。学校でどんな性教育が行われているかもわからず,先生にも聞けないと。性については,子どもはほっとけば自然にわかると思った,といった声をよく聞かされる。生の意見を聞かせていただくことで毎回勉強させてもらってきたのだが,今まで手間ひまかけて手に入れた情報・経験のほとんどが,本著一冊でカバーできることを知り,「くやしー!」という感想を持ったのだ。

 本書は数多くの性教育を実践してきた助産師をはじめ,教員,保健師,臨床心理士などの共著で,幅広い視点で性教育をとらえており,助産師として伝えたいこと,学校側として伝えてほしいこと,生=性についておさえておきたい基本的なこと,豊富な客観的データに基づく性の現状などが解説されている。すなわち,助産師が性教育を行う上で,今必要なことがわかりやすくまとめられている。教員向けの性教育マニュアルは多く見かけるが,助産師向けのものはおそらく初めてだと思う。

 いのちの教育の一環として生命とはいかに尊いものなのかを子どもたちに伝えてほしいと多くの助産師が依頼されるようになり数年がたつ。幼稚園から高校,さらには育児サークルから依頼される場合もある。わかりやすく話すにはどうすればいいのか,私ばかりでなく,数多くの助産師が悩みながらもなんとか取り組んでいる。生や性について伝えたいことはたくさんあるのにどうすればいいんだろう,学校側と助産師側の双方の立場からみた微妙な違いがどこから生ずるのか,そんな迷いのある助産師にこそぜひお勧めしたい一冊である。もちろん,これからトライしようと思っている助産師にも!

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