内分泌外科標準テキスト

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内分泌外科の領域では従来、その数が少ないことから1施設からの診療結果や手術方法による症例報告が多かった。本書は診療の現場で、最新かつ最善の医療を行うための診断・治療方針を示す待望の「標準」テキスト。文献的考察を前提に比較検討を行い、日本の医療事情に合致した最善と考えられた診断・治療法をわかりやすく記載した。
監修 日本内分泌外科学会
編集 村井 勝 / 高見 博
発行 2006年05月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-00250-9
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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  • 目次
  • 書評

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第I章 内分泌外科総論
 第1節 内分泌外科の歴史-現在と概念
 第2節 内分泌外科手術のための局所解剖
第II章 甲状腺
 第1節 診断・検査
 第2節 疾患各論
 第3節 手術・放射線療法
第III章 副甲状腺
 第1節 診断・検査
 第2節 原発性副甲状腺機能亢進症
 第3節 腎性副甲状腺(上皮上体)機能亢進症の病態と外科
第IV章 副腎
 第1節 診断・検査
 第2節 疾患各論(病態生理と外科治療)
 第3節 手術適応
第V章 膵・腸管の内分泌腫瘍
 第1節 病態生理・診断
 第2節 疾患各論(診断と治療)
第VI章 遺伝性腫瘍
 第1節 内分泌腫瘍の遺伝性と家族内発生
索引

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重要項目を漏れなく網羅 最新・標準診療テキスト
書評者: 藤本 吉秀 (癌研有明病院顧問)
 内分泌外科が外科の一専門分野として世界的に注目されるようになったのが1979年であった。あれから30年を経て今日成熟期に入り,日本内分泌外科学会監修の標準テキストができあがったことはまさに時宜を得たことで同慶の至りである。

 手にとってみると,今日の内分泌外科の全貌が実によくまとまって紹介されている。外科は手術を中心とした実技の治療学であるだけに,手術適応と手術手技の記載が特に大切であり,本書はそれを十分に満たしている。本そのものも手ごろな大きさである。よく短期間にここまで進歩したものと感心する。

 振り返ってみると,前述のごとく1979年,ノルウェーのベルゲン大学のHeimann教授の呼びかけで,万国外科学会がサンフランシスコで開かれた際に,この分野に関心のある者が集まり国際内分泌外科学会発足の基礎ができた。それ以後1年おきに万国外科学会の一分科会の形で学術集会がもたれ,発表論文はWorld J. Surg.に掲載され,まさにバイブル的存在として珍重されてきた。この会は,万国外科学会の中でも異彩を放つほどよくまとまった仲のよい医師集団で,討議が活発であり内容が抜群に高いのが評判であった。

 それから10年を経て1989年,ようやく日本で内分泌外科学会が創設されたが,当時まだ国内では「内分泌外科」の名称からして目新しかった。今年5月に第18回学術集会が行われたが,もう内分泌外科も文句なしに外科の重要な一領域を確保するようになった。この30年を振り返ってみると,各種ホルモンの定量,CT,MRI,シンチグラフィなどによる病変の部位診断,さらには超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診,多発性内分泌腺腫瘍症の遺伝子診断など,日常の内分泌疾患外科治療に必要な診断技術は一通り可能になった。

 もともと内分泌疾患は稀なものと思われていたが,近年における検査技術の画期的進歩により,偶然発見される内分泌疾患が予想をはるかに越えて多くみつかるようになった。そのお蔭で今まで不定愁訴として的確な診断がつかず病人も担当医師も困っていたのが,病因が判明し手術で快癒して喜ぶものが少なからずある反面,一方では軽症・無症状のものが多くみつかるようになった。原発性副甲状腺機能亢進症や小さい副腎非機能性腫瘍などがそれであり,手術適応のガイドラインが設けられるようになった。さらに,手術侵襲を最小限にするための種々の試みがなされるようになった。副腎腫瘍に対する内視鏡手術は日本で開発され,今日世界的に広く行われるようになった。副腎が身体のいちばん奥に位置する臓器であるため,そこに生じる径1cmの小腫瘍を取るのに大きな開腹あるいは後腹膜手術をしていたことを思うと,まさに隔世の感がある。

 かつては,内分泌外科手術は,一般外科医,泌尿器科医,あるいは耳鼻咽喉科医が片手間にやる手術であったが,今日面目を一新した。患者にとって大変な福音である。その今日における集大成を実に要領よくまとめたのが本書であり,すべての重要な項目が漏れなく網羅されている。それぞれ執筆者は当を得ている。

 今後の課題として,各種内分泌疾患の診断・治療を,一層合理的に,無駄なく要領よく,かつ合併症・後遺症を最小限にとどめるためのガイドライン作成が待たれる。

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