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日常生活活動学・生活環境学 第2版

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理学療法におけるADLの位置付けを解説し,具体的な評価方法と,生活自立を目指したADLの指導法を提示。また,病院から地域へと理学療法の対象が広がるなかで不可欠となる生活環境評価から,その問題点を思考するプロセスを解説。第2版ではICF(国際生活機能分類)に準拠し,ICIDH(国際障害分類)との違いについても紹介する。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 鶴見 隆正
発行 2005年04月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-26678-9
定価 5,940円 (本体5,400円+税)
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  • 目次
  • 書評

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□日常生活活動学
第1章 総論
第2章 各論-ADL指導の実際

□生活環境学
第1章 生活環境学の概念
第2章 生活環境の評価と改善計画-バリアフリーを踏まえて
第3章 生活環境と法的諸制度
第4章 生活環境としての住宅・住宅改造
第5章 高齢者の在宅生活サービス
第6章 生活を支える福祉・リハ関連機器
第7章 地域環境と公共交通
索引

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ADLと生活環境についての明快なテキスト
書評者: 小林 量作 (新潟医療福祉大助教授・理学療法学)
 日常生活活動(ADL)学の講義を担当していて最初に悩むのは,テキストの選択である。基本的事項がわかりやすくまとめられ,臨床実習にも活用できる内容のテキストを欲張ると選択がなかなか難しいが,本書はこの要望を満たしており,推薦できる一書である。

 本書は本来ならそれぞれで1冊となるべきADL学と生活環境学の2つの領域を1冊にまとめたものである。ADLと生活環境は相互関係にあることから2部構成にしたものであろう。内容は基本と具体的なことを簡明にまとめてある。ADL学は「第1章総論」,「第2章各論―ADL指導の実際」(疾患別にI―IXまで),生活環境学は第1章から第7章まで構成されている。今回の第2版改訂に当たっては,内容を国際生活機能分類(ICF)の考え方に統一してある。

 ADL学では第1章の「II ADLと障害」でICFについて詳述,「VIII ADLを支援する機器(2)―歩行補助具」の項を新設,生活環境学では第3章に介護保険法と関係が深い“支援費制度”の解説を追加,などの改訂がなされている。卒前教育のみでなく臨床にも即応できる改訂内容をめざしたという。内容には図表を多用して読者が理解しやすい編集の努力がうかがえる。せん越ながらあえて注文を記すならば,筆者がかかわる在宅理学療法の立場から考えて,本来の生活の場である在宅環境と在宅ADL,あるいは入院中の生活の場である病棟環境と病棟ADLなど,生活環境とADLをリンクさせた内容が加えられると学生にとっても,臨床家にとってもさらに有用な内容となろう。

 筆者の経験では,理学療法士の経験を積むほど,また,患者・障害者の現実の生活に接するほど,ADLの重要性を強く認識する。そんな経験から,学生にADLの重要性は繰り返し説いても強調しすぎることはないと考えている。時代に即した明快なテキストを基にしてADL重視の考えを学生に伝えられればと思う。

 ADLの自立度や方法は,ADL能力と活動を行う物理的環境との相互作用によって決まる。椅子からの起立が困難である場合,起立動作の練習をするだけではないし,直ちに手すりを付けることや座面を上げるなどの物理的環境整備だけで解決を図るわけでもない。起立が困難な原因を探り,起立に必要な運動機能を強化するのか,正しい起立方法の指導をするのか,物理的環境整備をするのか,あるいはこれらの組み合わせで解決を図るのかは,理学療法士が臨床でたびたび直面する思考過程である。運動機能,動作分析,物理的環境を関連づけて評価し,最良の方法を提示できることがADL学や生活環境学における理学療法士の専門性である。このような知識・技術は臨床場面で積極的に生かされてこそ意味をなす。臨床場面におけるADL指導や生活環境整備の充実は,常に理学療法士が意識していなければならない領域である。本書がADL学および生活環境学の重要性を改めて認識できる書として,学生にも,臨床家にも役立つことを願っている。

ニーズに応えた改訂 最新のADLスタンダードを網羅
書評者: 内田 成男 (富士リハビリテーション専門学校・理学療法学科長)
◆より洗練され,up to dateなADLのテキスト

 1999年―2000年にかけて,21世紀の理学療法士・作業療法士教育に向けたテキストが,セラピスト主導の下に刊行された。それは膨大な知識・技術について系統的な学習が可能となるように編集されており,新たな理学療法教育の幕開けを意味していた。本書はそのシリーズの中の一冊である。

 障害や疾病を持つ人々の生活スタイルは大きな変貌を遂げ,それに呼応し理学療法を取り巻く環境も目まぐるしく変化している。日常生活活動(ADL)を1つの学問分野として解説するためには,このような時代の変化を鋭敏にとらえる必要がある。本書はまさに現在の要請に応えた発展的な改訂がなされ,社会科学・人文科学・自然科学な立場よりADLを考究した格好のテキストに仕上がっている。

◆的確な改訂,スタンダードからインディビデュアルへ

 ADLのように変化が著しい分野では,的確な改訂が求められる。本書の大きな変更点は第2版の序において編者が述べているように,国際障害分類(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)への移行に伴う変更である。すなわち,生活機能を重視し,ICIDHのカテゴリーから,ICFの機能・構造障害,活動制限,参加制約に修正し統一したことである。特に日常生活活動学の第1章「II ADLと障害」では,まずICF採用の経緯や意義について解説している。つぎに「障害がADLに及ぼす影響・因子」について,代表的疾患を例にICFによる障害構造の分析を図説した上で,ADLとの関係を追求している。この解説によりICFを応用した分析,ADL上の課題や理学療法上の指針が具体的に理解できるようになっている。

 その他の主な変更点を列挙すると,日常生活活動学では,(1)第1章「IV ADLと運動学」:不要な部分を削除し,実際的な動作(立ち上がり動作)を例題として,動作分析について詳述,(2)第1章「V ADL評価」:評価表を「リハビリテーション総合実施計画書」に改め,「目標とするADL」についても言及,(3)第1章「VIII ADLを支援する機器(2)―歩行補助具」:歩行補助具について解説と紹介をした章の新設などがあげられる。生活環境学では,(1)第3章「生活環境と法的諸制度」:支援費制度について追加,(2)第4章「生活環境としての住宅・住宅改造」:住宅改造の不適切例を提示,(3)第7章「地域環境と公共交通」:「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」を一覧表として提示,などがあげられる。この他にも細部にわたり図表の追加・修正・位置の変更などがなされ,読者の便宜を図っている。

 以上のように,本書は今回の改訂において可能な限りのup to dateがなされ,最新のADLスタンダードを網羅している。また,ADLと生活環境について一連の理学療法支援の流れが理解でき,学生のテキストとして,あるいは臨床における参考図書として,有用な書籍である。是非ご一読され,本書により基本を学び,対象者となる方々へ個別性(individual)を重視した支援に発展させてほしい。

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