• HOME
  • 書籍
  • 内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術 [手術動画・3DCT画像データDVD-ROM付] 第2版


内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術 [手術動画・3DCT画像データDVD-ROM付] 第2版
CT読影と基本手技

もっと見る

初心者でも行えるわかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニックをコンセプトにした鼻科手術書の改訂版。今改訂では特に内視鏡下経鼻頭蓋底手術の解説を充実させている。また付録DVD-ROMには新たに手術動画61本(計2時間超)を収載することで、手術手技の解説がさらにわかりやすくなった。さらに読者自身が三次元的にCT画像の読影ができる3DCT画像データを、初版より症例を増やして拡充している。
編集 中川 隆之
発行 2019年05月判型:A4頁:368
ISBN 978-4-260-03839-3
定価 16,500円 (本体15,000円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

第2版の序

 内視鏡下鼻内手術は,最も広く行われている耳鼻咽喉科領域の手術の1つであり,ほとんどの耳鼻咽喉科医が経験する基本的な手術です.鼻副鼻腔炎は,症例が多いだけでなく,手術治療に対する社会的なニーズも高く,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の重要な手術治療といえます.しかし,その一方で,副損傷が問題となる危険な手術であることも事実です.これは,日本だけでなく,世界中で共通の問題で,内視鏡下鼻内手術に関する医師教育の重要性が耳鼻咽喉科領域で課題となっています.また,近年では脳神経外科領域においても経鼻内視鏡頭蓋底手術が広まりはじめ,この領域に興味をもつ脳神経外科医が増えてきています.しかし,脳神経外科医にとって副鼻腔は不慣れな領域であり,この分野についてわかりやすい解説書を望む声が高まりつつあります.
 鼻・副鼻腔には,眼窩や頭蓋底が隣接し,重要な脳神経も存在します.さらに個体差が大きく,その手術解剖は複雑に感じられます.しかし,適切に術前CT読影を行い,しっかりとしたプランニング(手術計画)を立てれば,目的とする手術に必要な道筋が見えてきます.そして,できる限り副損傷が起こりにくい,合理的な手術アプローチおよび手技を用いることにより,適切かつ安全な手術を行うことができます.本書は,「初心者でも行えるわかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニック」をコンセプトとして作成しました.そして,基本的な内視鏡下鼻内副鼻腔手術に必要なCT読影のポイント,手術計画の立て方,実際の手術テクニックをわかりやすく解説することを目標としました.また,応用編として,通常の内視鏡下鼻内副鼻腔手術から一歩進んだ手術として頭蓋底手術などについても同様のコンセプトでの解説を加え,脳神経外科医にとっても経鼻手術の基本解剖のガイドとなるように留意しました.もちろん,副鼻腔手術が中心となる耳鼻咽喉科医にとっても,「一歩外側」の解剖を知ることは,重篤な副損傷の回避,起こった場合の対応に役に立つと思います.さらに,第2版では一歩踏み込んで,内視鏡下経鼻頭蓋底手術のより詳細な手技と関連する解剖に関する項目を追加しました.鼻副鼻腔悪性腫瘍については,現在のところ内視鏡下経鼻アプローチの位置づけは明確になっていませんが,海外では応用が進んでいます.本書では,副鼻腔炎,良性腫瘍,悪性腫瘍における手術コンセプト,プランニングの違いを解説し,基本解剖を理解していれば将来的に読者が発展させることができるように留意しました.
 本書のベースは,京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科で行ってきた解剖実習にあります.分担している著者もこの手術解剖実習で講師を務めているメンバーです.頭蓋底に関しては,千葉大学大学院医学研究院脳神経外科が行っている解剖実習などを基盤として,これらの実習で講師を務めているメンバーに分担執筆していただきました.本書で使用している内視鏡画像は,京都大学内視鏡下鼻副鼻腔解剖実習,千葉大学クリニカルアナトミーラボ,愛媛脳神経外科・耳鼻咽喉科ジョイント手術研修セミナーなどでの実習に際して撮影したものです.
 本書では正常解剖を中心としてCT読影や手術手技を述べています.実際の症例とはやや異なる部分もあると思いますが,基本の正常解剖を理解することが手術解剖を学ぶ基本となります.3章では,耳鼻咽喉科医が内視鏡下鼻副鼻腔手術を行ううえで理解しておくべき手術解剖と手技について解説しています.手術手技に関して,よりわかりやすくするために動画を追加しています.専門医がマスターしておくべきレベルとも言えます.4章では,内視鏡下鼻副鼻腔手術V型など拡大副鼻腔手術に関連する手術解剖と手技について解説しました.鼻科手術を専門とする医師が習得しておくべき手術を想定しています.また,5章で述べる頭蓋底手術に移行するためには,マスターが必須のステップと言えます.5章では,視点を内視鏡下経鼻頭蓋底手術に変え,頭蓋底手術の観点での鼻副鼻腔の取り扱いとその向こうにある頭蓋底あるいは頭蓋内に関して解説し,内視鏡下経鼻頭蓋底手術を学ぼうとする耳鼻咽喉科医と脳神経外科医のよき入門書となるように企図しました.また,実際の症例を追加することにより,実際の手術でどのように応用されているのかが理解できるように工夫しました.
 是非,本書を基本として,独自の手術手技やコツを開発してください.

 2019年4月
 中川隆之

開く

第2版の序
初版の序
本書の使い方

1 セットアップ
  1 手術ポジション
  2 手術器機
   a 手術器具標準セット
   b デブリッダー,止血器機
   c 内視鏡
   d 麻酔

2 基本操作(手術器機の基本的使用方法)
  1 シェーバー(デブリッダー),キュレットの使い方
  2 止血操作
  3 ガーゼパッキングについて
  Tips 45°斜視鏡の使い方のちょっとしたコツ

3 鼻副鼻腔炎に対する手術─基本編
 A ポリープ切除
  1 鼻腔内と副鼻腔内で分けて考える
  2 鼻腔内ポリープはトリミングする
  3 鼻腔内のコンパートメントごとに切除していく
  4 中鼻甲介,鈎状突起,篩骨胞,上鼻甲介をきちんと残す
  5 嗅裂のポリープには注意する
  6 手術手技解説動画
      症例1(動画1)
 B 鈎状突起切除
  1 CT読影のポイント
   a 上顎洞自然口,鼻涙管をきっかけに鈎状突起を見つける
   b 鈎状突起上端とagger nasi cell
   c 鈎状突起の基部
  2 手術手技
   a 鈎状突起の観察
   b 鈎状突起切開
   c 鈎状突起下半分切除
   d 上顎洞自然口拡大
   e 鈎状突起上半分切除
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画2)
 C 前頭洞とagger nasi cell
  1 CT読影のポイント
   a agger nasi cellと鈎状突起上方付着部
   b 前頭洞ドレナージルート
  2 手術手技
   a 鈎状突起上部付着部の処理
   b agger nasi cell内側壁,後壁の切除と前頭洞開放(動画3)
   c 前頭洞口の拡大
   d building block concept
   e axillary flap technique
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画4)
      症例2(動画5)
      症例3(動画6)
      症例4(動画7 動画8)
 D 篩骨胞とsupra bulla cell(recess)
  1 CT読影のポイント
   a 篩骨胞(ethmoid bulla)とretrobullar recessの同定
   b supra bulla cell,supra bulla frontal cellの同定
   c 前篩骨動脈の同定
  2 手術手技
   a 篩骨胞の処理と中鼻甲介基板の露出
   b 眼窩,前頭蓋底,前篩骨動脈の確認
  3 supra bulla cellとsuprabullar recess
  4 手術手技解説動画
      症例1(動画9)
      症例2(動画10)
      症例3(動画11)
 E 中鼻甲介基板と上鼻道
  1 CT読影のポイント
   a 中鼻甲介基板の同定
   b 上鼻甲介,上鼻道の同定
   c 中鼻甲介開窓部位の同定
  2 手術手技
   a 嗅裂からの上鼻道観察
   b retrobullar recess開窓
   c 中鼻甲介基板天蓋方向の操作
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画12)
 F 後篩骨洞と蝶形骨洞
  1 CT読影のポイント
   a 上鼻甲介と後篩骨洞
   b 後篩骨洞と蝶形骨洞
   c 蝶形骨洞の危険部位の把握
  2 手術手技
   a 後篩骨洞の開放
   b 蝶篩陥凹の観察
   c 蝶形骨洞の開放
   d 蝶形骨洞内操作が必要な場合
 G 下鼻道から上顎洞へのアプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 鼻涙管
   b 下鼻道側壁
  2 手術手技
   a 鼻涙管の同定
   b 下鼻道側壁粘膜弁挙上
   c 上顎洞開放
   d 鼻涙管前方からのアプローチ
 H 中隔矯正術
  1 CT読影のポイント
  2 手術手技
   a 粘膜切開と粘膜剥離
   b 軟骨・骨境界部の同定と骨切除
   c 前弯や外鼻変形の取り扱い(動画13 動画14 動画15)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画16)
      症例2(動画17)
      症例3(動画18)
 I 下鼻甲介手術
  1 CT読影のポイント
   a 下鼻甲介の形態
   b 中鼻道との関係
  2 手術手技
   a 粘膜切開と止血
   b 骨粘膜の剥離
   c 下鼻甲介骨の摘除
   d 下鼻甲介形成
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画19)
 J 後鼻神経切断術
  1 CT読影のポイント
   a 蝶口蓋孔の同定
   b 中鼻甲介,篩骨胞下端との関係
  2 手術手技
   a 中鼻道からアプローチする方法
   b 下鼻道からアプローチする方法
   c 後鼻神経の末梢枝の同定方法
 K 嗅覚温存のための工夫
  1 CT読影のポイント
   a 嗅裂の位置と篩板,嗅糸
   b 嗅粘膜と中鼻甲介,上鼻甲介との位置関係
   c 共通甲介板
  2 手術手技
   a 嗅裂構造物(中鼻甲介,上鼻甲介,鼻中隔)の温存
   b 嗅裂ポリープの切除
   c 上鼻道の開放
   d 嗅裂の癒着予防処置
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画20)

4 鼻副鼻腔炎に対する手術─応用編
 A 拡大前頭洞手術(Draf type IIb・III手術) ①inside-outアプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 鼻涙管,涙嚢,鼻堤
   b 前頭洞底削除の予定部位
  2 手術手技
   a agger nasi cellの前壁削除
   b 前頭洞自然口の確認
   c 中鼻甲介の部分切除
   d 鼻堤の骨削除
   e 前頭洞frontal beakの削除
   f 前頭洞底の骨削除,嗅糸の確認
   g 前頭洞の単洞化(Draf type III手術)
  Tips ドリリングのコツとピットフォール(動画21)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画22)
 B 拡大前頭洞手術(Draf type IIb・III手術) ②outside-inアプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 正中部における前頭洞底の骨肥厚の程度
   b 第一嗅糸とA-P diameter
  2 手術手技
   a  鼻中隔開窓(動画23)
   b 第一嗅糸の確認
   c 鼻中隔上端の処理と側方限界の確認
   d 鼻堤上部の処理
   e 前頭洞底の骨削除,ドリリング
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画24)
      症例2(動画25)
 C endoscopic medial maxillectomy(EMM)
  1 CT読影のポイント
   a 切除範囲
   b 手術アプローチの選択
  2 手術手技
   a 鼻涙管と下鼻甲介を温存するEMMの変法(動画26)
   b 鼻涙管と下鼻甲介を切除するEMM(動画27)
  Tips 内反性乳頭腫に対する術式の変遷─EMMからEMMMへ
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画28)
      症例2(動画29)
 D 涙嚢鼻腔吻合術
  1 CT読影のポイント
   a 涙嚢と鼻涙管の同定
   b 周囲の骨の厚みの評価
  2 手術手技
   a 粘膜弁
   b 骨削開
   c 涙嚢開放
   d ステントについて
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画30)
      症例2(動画31)
 E 蝶形骨洞自然口からの蝶形骨洞アプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 蝶形骨洞の拡がりと蝶形骨洞前壁切除範囲の決定
   b 蝶形骨洞内の隆起(内頸動脈,視神経,正円孔,翼突管)の確認
  2 手術手技
   a 鼻中隔,蝶篩陥凹粘膜の処理
   b 蝶形骨洞自然口の拡大,鋤骨の切除
   c 上鼻甲介の処理
   d 蝶口蓋動脈,翼突管神経の同定
   e 眼窩下神経の同定
   f 中鼻甲介,上顎洞後壁,翼口蓋窩の処理
   g 蝶形骨洞内病変に対する操作
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画32)
 F 髄液漏閉鎖術
  1 CT読影のポイント
   a 篩板
   b 蝶形骨洞側窩
  2 手術手技
   a 瘻孔部位の確認と周辺鼻粘膜の郭清
   b 穿孔閉鎖法
 G 視神経管開放術
  1 CT読影のポイント
   a 視神経管と蝶形骨洞または最後部篩骨洞(Onodi cellの有無)の位置関係
   b 視神経管の内側後方断端(頭蓋側)の位置確認
   c 鈎状突起や篩骨胞,中鼻甲介基板の眼窩付着部と眼窩内壁骨の厚さを確認
  2 手術手技
   a 篩骨洞,蝶形骨洞を開放
   b 眼窩内側壁を外す
   c 視神経管の上面側から順に開放,眼動脈と内頸動脈損傷に注意
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画33)

5 頭蓋底手術における鼻副鼻腔操作
 A 副鼻腔炎手術と頭蓋底腫瘍手術の違い
 B 良性腫瘍と悪性腫瘍の違い
  1 CT,MRI読影のポイント
   a 良性腫瘍(内反性乳頭腫)
   b 悪性腫瘍(嗅神経芽細胞腫)
  2 手術手技
   a 断端病理組織検査(マージンスタディ)
   b 良性腫瘍の切除
   c 悪性腫瘍の切除
   d 再建術
   e 出血対策
 C 経鼻内視鏡頭蓋底手術のセットアップ
  1 適応
   a 3-4ハンド手術
   b 開頭・経鼻同時手術
  2 手術室のセットアップ
   a 3-4ハンド手術
   b 開頭・経鼻同時手術
  3 手術器機
   a 3-4ハンド手術
   b 開頭・経鼻同時手術
  4 手術進行
   a 3-4ハンド手術
   b 開頭・経鼻同時手術
  5 頭蓋底解剖の理解
 D 経蝶形骨洞アプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 経蝶形骨洞アプローチの選択
   b 視神経管と蝶形骨洞または最後部篩骨洞の関係(Onodi cellの有無)
   c 翼突管,口蓋鞘突管(palatovaginal canal)の走行と上鼻甲介の付着部
   d 蝶形骨洞の洞間中隔や洞内中隔の付着部と内頸動脈隆起の位置関係
  2 手術手技(動画34)
   a 経蝶篩陥凹アプローチ
   b 経篩骨洞アプローチ
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画35)
 E 拡大蝶形骨洞アプローチ(transplanum transtuberculumアプローチ)
  1 CT読影のポイント
   a 正常解剖
   b 症例によるバリエーション
  2 手術手技(動画36)
   a 鼻腔・副鼻腔の操作
   b 頭蓋底の骨削除
   c 硬膜内の操作
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画37)
 F 海綿静脈洞・メッケル腔アプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 後篩骨洞,上顎洞,蝶形骨洞側壁
   b 蝶形骨洞後壁,破裂孔
  2 手術手技
   a 蝶形骨洞開放(動画38)
   b 後篩骨洞開放,上顎洞開放(動画39)
   c 海綿静脈洞内構造物,メッケル腔の確認(動画40)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画41)
 G 経斜台アプローチ
  1 CT読影のポイント
  2 手術手技
   a 鼻腔・副鼻腔操作
   b 頭蓋底骨削除(動画42 動画43)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画44)
 H 経上顎洞アプローチ①翼口蓋窩
  1 CT読影のポイント
   a 翼口蓋窩の同定
   b 骨孔・管腔構造の確認
  2 手術手技
   a 鼻涙管の後ろからアプローチする方法(動画45)
   b 鼻涙管の前からアプローチする方法(動画46)
 I 経上顎洞アプローチ②側頭下窩
  1 CT読影のポイント
   a 翼突管,正円孔,卵円孔
   b 蝶形骨翼状突起
   c 頸動脈管
  2 手術手技
   a 上顎洞開放,翼口蓋窩開放(動画47)
   b V-Rラインから卵円孔(動画48)
   c 耳管軟骨部の露出(動画49)
   d 頸動脈管下壁削除(動画50)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画51)
 J 前頭蓋底アプローチ
  1 CT読影のポイント
   a 前頭蓋底切除の適応範囲
   b 前方切除端;前頭洞後壁と鶏冠
   c 左右の篩骨洞天蓋(前篩骨動脈,後篩骨動脈)
   d 後方切除端(蝶形骨洞の前壁)
  2 手術手技
   a 鼻腔内の腫瘍の分割切除
   b 鼻中隔粘膜弁の確保と鼻中隔の切り離し(動画52)
   c 両側前頭洞底の骨削除
   d 前篩骨動脈および後篩骨動脈の処理(動画53)
   e 前頭蓋底の骨離断(動画54)
   f 硬膜の切り離しと嗅球および嗅索の切断(動画55)
   g 腫瘍の摘出
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画56)
 K 経眼窩アプローチ・眼窩減圧術
  1 CT読影のポイント
   a 篩骨上顎板の眼窩壁付着部位と内直筋や下直筋との位置関係
   b 前篩骨動脈,後篩骨動脈の走行
   c 眼窩壁に対する上眼窩裂と下眼窩裂の位置関係
   d 頬骨顔面神経,頬骨側頭神経の走行
  2 手術手技
   a 経鼻眼窩アプローチ(動画57)
   b 経眼窩アプローチ(動画58)
   c 眼窩減圧術(動画59 動画60)
  3 手術手技解説動画
      症例1(動画61)
 L 有茎鼻粘膜弁と頭蓋底再建
  1 CT読影のポイント
   a 気脳症の経時的観察
  2 手術手技
   a 鼻中隔粘膜弁のデザイン
   b 筋膜2層+有茎鼻中隔粘膜弁による閉鎖
   c 脂肪片,骨,軟骨の使用について
   d 閉鎖素材の固定としての鼻内パッキング

付録DVD-ROMについて
索引

開く

経鼻内視鏡手術に興味を持つ全ての医師へ
書評者: 戸田 正博 (慶大准教授・脳神経外科学)
 最近の時代背景として,医療の役割・機能分化が進み,より高度な専門的知識,技術が求められています。専門医,技術認定などの制度化も進み,若手医師は技術習得に目を向けがちですが,困難な手術の成功には,正確な診断(画像解析)と手術解剖の深い理解に基づく論理的思考が重要です。また,頭蓋底疾患は耳鼻咽喉科,形成外科,脳神経外科など複数の診療科が協力することにより,治療成績を大きく向上させてきた歴史があります。最近では,耳鼻咽喉科と脳神経外科の合同で行われる経鼻内視鏡頭蓋底手術は,画期的な低侵襲手術として,これまで到達不可能であった部位にもアプローチ可能となり,治療概念を大きく変えました。一昔前までは極めて治療困難であった疾患も,最近では合併症なく根治性の高い治療が行われるようになってきました。医療の役割・機能分化が進む中で,困難な疾患に対して,診療科の枠を越えて治療に取り組むチーム医療こそ,今後求められる医療の形ではないかと思っています。

 さて本書ですが,内視鏡下鼻内手術に関して「初心者でも行えるわかりやすいプランニングと安全かつシンプルな手術テクニック」を基本概念として作成されています。さらに応用編として,経鼻内視鏡頭蓋底手術に関しても同じ概念で解説されています。耳鼻咽喉科が基本習得する鼻・副鼻腔解剖および手術もわれわれ脳神経外科では特殊な分野で,これまで系統立って学ぶことができる手術書はなかったため,本書がとても良い指南書になっています。本書を読んで興味深いと思ったことは,それぞれ意図することは同じでも違った表現で記載されていることであり,何気ない気付きがあることです。手術を理解,習得していく過程は個々で異なり,それぞれの段階でこの教科書を開いて確認することにより新たな気付きがあり,深い理解へつながるのではないかと思います。

 具体的な点として,まず各項目の冒頭にポイントが列挙され,自分の理解を確認できることが特徴です。鼻・副鼻腔は個人差が大きいため,手術解剖が複雑であり,術前画像の理解が重要です。基本編は全てしっかり読んで理解を深める構成に,応用編は,熟練の医師においても術前の確認に役立つ構成になっています。さらに解剖と手術手技をわかりやすく伝えるため,明解な図譜が豊富に盛り込まれており,直感的な理解を助けてくれます。テクニックを中心とした解説では,写真や図ではなかなかわかりづらい点も動画があることで理解しやすくなっています。経鼻内視鏡手術に興味を持つ全ての医師にぜひ読んでいただきたい教科書です。
鼻科手術書のstate of art
書評者: 川内 秀之 (島根大耳鼻咽喉科・教授/日本鼻科学会・理事長)
 今般,中川隆之先生の編集による本書の書評の執筆を依頼され,当初は気軽に引き受けたものの,本書を目の当たりにして,これは腰を据えてじっくり読み込んでいかなければ書評など書く資格はいただけないと思った。全ての章を読破したときに感じた正直な感想を述べると,本書は当該領域の手術に関する当代きっての国内屈指の手術書であり,さらには本領域の手術を志す若手の耳鼻咽喉科医への座右の銘となる指導書である,ということである。

 本書は当該領域の手術手技の全てを包括しており,内容の量,質のいずれもが他に比類ない。また,模式図,CT,MRI画像,内視鏡下での術中写真,動画,cadaverでの解剖所見などを数多く使用し,何よりも読者に理解しやすく解説している点は,まさに称賛に値すると同時に,編集者の意図がひしひしと伝わってくる。慢性副鼻腔炎や鼻茸の手術はもちろんのこと,鼻中隔手術,外傷や腫瘍,各種頭蓋底病変に対する内視鏡手術についても,詳細な臨床解剖に基づいた手術手技が紹介されている。

 今回の第2版の拡大バージョンでは,鼻内視鏡下アプローチでの頭蓋底病変への手術について,機能解剖の基本的知識から豊富な編集者の手術経験による解説まで豊富な内容が紹介されており,いわゆるHow I do it ?という観点からの専門家による教育的姿勢が垣間見え,高く評価できる。

 頭蓋底病変においては,良性腫瘍であれ悪性腫瘍であれ,病変の病理学的特徴や発生部位さらには進展範囲(嗅神経芽細胞腫,脊索腫,軟骨肉腫など)により,脳神経外科との共同での対応が不可欠である。本書では,そのような症例に対応する際の必要な準備として,共同手術時のセットアップの仕方,実際の種々の手術器具を用いた手術操作,頭蓋底再建の在り方など,現場に即した解説が詳細になされている。これらは,編集者の長年の自己研さんの努力と,脳神経外科など他領域の熟練したスタッフとの交流によって結実した成果であると確信する。

 折しも日本鼻科学会では,日本耳鼻咽喉科学会の指導の下,国民の期待に応えるべく,熟達した技量を持ち安全な手術を提供する目的で鼻科手術指導医制度を設け,当該領域の手術を担当する耳鼻咽喉科医の育成を図ることになった。このような背景にあって,日本語で解説された本書第2版の鼻内内視鏡を用いた頭蓋底手術書の存在は国内的に高く評価されるだけではなく,今後は英語で出版されることを期待してやまない。その際は,欧米で出版されている多くの当該領域の文献の索引をつけていただき,後進の飛躍に裨益することを願う次第である。

 最後に,本書は私が自信を持って皆さんに読破されることをお薦めする素晴らしいstate of artであることをコメントして,筆をおく。
内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術のバイブル
書評者: 丹生 健一 (神戸大教授・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)
 内視鏡下鼻副鼻腔手術のバイブル『内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術―CT読影と基本手技』が5年ぶりに改訂され,待望の第2版が発売された。ご存知のように本書は京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科で行ってきた手術解剖実習をベースとしている。本書の特徴は,まず,付録のDVD-ROMに収められた3DCT画像を用いて,基本的な内視鏡下副鼻腔手術に必要な解剖のポイントを解説し,三次元的な構造を把握して安全な手術計画を立てる能力を身につけさせておき,鼻副鼻腔の構造に基づいて安全確実に行える「目から鱗」の手術手技が,経験豊富なインストラクターによりステップ・バイ・ステップでわかりやすく解説していることにある。2014年に刊行された初版は,これから内視鏡手術を始める専攻医はもちろんのこと,頭蓋底手術を行うエキスパートにとっても必読のバイブルとなった。

 初版から5年,本書で学んだ知識と技術を生かしてoutside-inアプローチやendoscopic medical maxillectomyなどの新たな手術手技が全国で行われるようになり,鼻副鼻腔腫瘍や頭蓋底腫瘍に対して内視鏡下経鼻アプローチを選択する施設も多くなってきた。これらの状況を反映し,第2版では,拡大前頭洞手術や視神経管開放術,有茎鼻粘膜弁による頭蓋底再建などの項目が新たに増設され,頭蓋底手術に関連する内容が充実した。さらに,手術テクニックの解説用に2時間を超える多数の手術動画が付録DVD-ROMに収録されるなど,大きな進化を遂げている。まだお持ちでない方はもちろんのこと,すでに初版をお持ちの方も,第2版を購入されることをお薦めする。

 まずは,1章から3章まで一気に通読して鼻副鼻腔の解剖と手術に関する最新のコンセプトを身につけ,続いて第4章の応用編に臨んでいただきたい。通常の鼻副鼻腔手術が中心の耳鼻咽喉科医にとっては,ここまでで十分と思われるかもしれないが,重篤な合併症を回避するためには,普段見慣れた術野の「向こう側」の世界を知ることは非常に役に立つ。第5章まで読破されることをお勧めする。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。