臨床に活かす病理診断学 第3版
消化管・肝胆膵編
臨床医に必須の消化器病理情報を凝縮
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「病理に強い臨床医」にあなたをかえる1冊! 今、現場で知りたい消化器検体提出時の注意点/病理診断報告書の読み方から、差がつく学会・論文発表のコツまで、病理情報活用術を徹底解説。入門/基礎/応用/資料編の4部構成で段階的に読む! 用語集/抗体早見表で知りたいことにすぐにたどりつく! 美麗な写真とシェーマで初学者も納得! 外科医、内科医、放射線科医まで必須の消化器病理情報を凝縮した、渾身の改訂第3版。
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- 目次
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序文
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第3版はじめに
みなさま,こんにちは.活かすプロジェクト,初版から14年弱,前版からほぼ7年の時を経て,渾身の力を籠めて第3版をお届けします.このご時世,教科書でもガイドラインでもマニュアルでもない医学書(つまり皆が常備しておかなければならない訳ではない本)が複数の改訂を重ねることは,実はかなり異例なこととお聞きし,少し驚きながら,うれしく思っています.
さて,2回目の改訂を行うことになり,著者二人で,話し合いました.まず,そもそもなぜ,改訂版を出すのか? 前版を今パラパラと見返してみても,それほど古臭い感じはしませんし,基本+αとしては,今でも十分活用できる内容だと考えていました.しかし,それは「パラパラと見返しても」という条件付きかも知れません.側注やコラムなどを含めて細かく読んでいくと,やはり7年の歳月が過ぎていることは実感させられました.これでは,真面目に読んでくださる読者の先生方に申し訳ない.読み返しているうちに,そういう思いが強まってきました.
そして,もう一つ.何のために私達が「臨床に活かす 病理診断学」を掲げて,この本を作ってきたかという「初心」に帰りました.それは,「臨床の現場に病理の情報をしっかり伝え,それを診療に十分に活用してほしい」という思いだったと思います.その思いは今も変わっていませんが,十数年の時を経て,著者二人には「自分たちを育ててくれた臨床家への恩返し」にも近い思いが加わっていることに気づきました.
そんな思いを,もう一人の著者である二村君は「中島みゆき」の「糸」の歌詞にある「縦の糸」と「横の糸」で表現してくれました.つまり,「縦の糸」は臨床家,「横の糸」は病理医だということらしいです.縦の糸と横の糸があってしっかりした布はできるのです.そして,それが「織りなす布は,いつか誰かの傷をかばうかもしれない」.「逢うべき糸に出逢えることを,人は仕合わせと呼びます」.なるほどですね.
さて,改訂のポイントを今回も簡単にまとめておきます.テーマは,「ゲノム,AI時代にも普遍な消化器病理診断学の基本」といったところでしょうか.
入門編,基礎編,応用編,資料編の枠組みはそのままですが,「特殊染色の基礎知識」を基礎編(1)にもってきて,抗体リストは直ぐに確認できるように,思い切って表紙裏に移動させました.適切な検体処理法,切り出し法などは本書の要といえますので,その基本は変えていませんが,ゲノム解析を想定した検体処理法などについても加えました.基礎編の各論事項の改訂は,今回の最大の目的であり,最新情報を盛り込みましたので,側注も含めかなり変わっています.用語集は,全ての用語についてその採否からもう一度検討し,今回は160用語を選び,文章も推敲を繰り返しました.コラムも,コーヒーブレイク的なものから最近のトピックスまで,すべて改訂し内容も半分以上新しいものに変えました.そして,これらの改訂の過程で,文章自体もかなりスリム化され読みやすくなったと思っています.この結果,内容は充実しましたが,ページ数は前版とほぼ同じに抑えることができました.
今回も,消化器WHO分類(2019年発行予定)の改訂作業が,本書の執筆・編集作業に重なりましたが,2010年の大幅改訂に比べれば,その修正は限定的です.したがって,病理診断学の根本を扱う本書にあえて取り上げるべき事項はそれほどなく,その点については一部側注などでカバーする程度に留めました.
以上のような調整,編集方針に関する話し合いは第1回目の会議で,それを持ち帰って改訂・執筆作業を行い,完成した初校原稿をそれぞれ事前に読んできての第2回目の会議では,前回同様,原稿に対して一つひとつコメントを出し合っていきました.朝早くに集合したはずですが,結局いや当然のごとく作業終了は夜になりクタクタでした.ただ確かに疲れもしましたが,終了した時は,前回にも増した満足感と高揚感のようなものを執筆の二人だけでなく,医学書院編集部の志澤真理子氏にも感じていただいていたと思います.
そうして完成した改訂第3版ですが,我々の手を離れてしまってからは,本書を活かすも無視/放置するも,それは皆さまの心一つです.読んでみて思わぬ「納得」を得たり,消化器病理への興味が沸いたと感じてくれたりする人たちがいたらうれしく思いますが,一方で,物足りない所,分かりにくい記述,取り上げてほしかったのに説明のない項目もあるかもしれません.しかし,いずれの感想でも,ある程度は目を通してもらわないと感じてもらえないことだと思います.そういう意味では,どちらの方々にも感謝です.本書に関しても,直接にでも間接的にでも構いません,感想や意見をいただければ嬉しく思います.
最後に,この本の改訂に様々に尽力してくださいました医学書院の皆様や,著者を陰で支えてくださった身近な皆様方にお礼を申し上げます.ありがとうございました.
2018年6月
著者を代表して 福嶋敬宜
みなさま,こんにちは.活かすプロジェクト,初版から14年弱,前版からほぼ7年の時を経て,渾身の力を籠めて第3版をお届けします.このご時世,教科書でもガイドラインでもマニュアルでもない医学書(つまり皆が常備しておかなければならない訳ではない本)が複数の改訂を重ねることは,実はかなり異例なこととお聞きし,少し驚きながら,うれしく思っています.
さて,2回目の改訂を行うことになり,著者二人で,話し合いました.まず,そもそもなぜ,改訂版を出すのか? 前版を今パラパラと見返してみても,それほど古臭い感じはしませんし,基本+αとしては,今でも十分活用できる内容だと考えていました.しかし,それは「パラパラと見返しても」という条件付きかも知れません.側注やコラムなどを含めて細かく読んでいくと,やはり7年の歳月が過ぎていることは実感させられました.これでは,真面目に読んでくださる読者の先生方に申し訳ない.読み返しているうちに,そういう思いが強まってきました.
そして,もう一つ.何のために私達が「臨床に活かす 病理診断学」を掲げて,この本を作ってきたかという「初心」に帰りました.それは,「臨床の現場に病理の情報をしっかり伝え,それを診療に十分に活用してほしい」という思いだったと思います.その思いは今も変わっていませんが,十数年の時を経て,著者二人には「自分たちを育ててくれた臨床家への恩返し」にも近い思いが加わっていることに気づきました.
そんな思いを,もう一人の著者である二村君は「中島みゆき」の「糸」の歌詞にある「縦の糸」と「横の糸」で表現してくれました.つまり,「縦の糸」は臨床家,「横の糸」は病理医だということらしいです.縦の糸と横の糸があってしっかりした布はできるのです.そして,それが「織りなす布は,いつか誰かの傷をかばうかもしれない」.「逢うべき糸に出逢えることを,人は仕合わせと呼びます」.なるほどですね.
さて,改訂のポイントを今回も簡単にまとめておきます.テーマは,「ゲノム,AI時代にも普遍な消化器病理診断学の基本」といったところでしょうか.
入門編,基礎編,応用編,資料編の枠組みはそのままですが,「特殊染色の基礎知識」を基礎編(1)にもってきて,抗体リストは直ぐに確認できるように,思い切って表紙裏に移動させました.適切な検体処理法,切り出し法などは本書の要といえますので,その基本は変えていませんが,ゲノム解析を想定した検体処理法などについても加えました.基礎編の各論事項の改訂は,今回の最大の目的であり,最新情報を盛り込みましたので,側注も含めかなり変わっています.用語集は,全ての用語についてその採否からもう一度検討し,今回は160用語を選び,文章も推敲を繰り返しました.コラムも,コーヒーブレイク的なものから最近のトピックスまで,すべて改訂し内容も半分以上新しいものに変えました.そして,これらの改訂の過程で,文章自体もかなりスリム化され読みやすくなったと思っています.この結果,内容は充実しましたが,ページ数は前版とほぼ同じに抑えることができました.
今回も,消化器WHO分類(2019年発行予定)の改訂作業が,本書の執筆・編集作業に重なりましたが,2010年の大幅改訂に比べれば,その修正は限定的です.したがって,病理診断学の根本を扱う本書にあえて取り上げるべき事項はそれほどなく,その点については一部側注などでカバーする程度に留めました.
以上のような調整,編集方針に関する話し合いは第1回目の会議で,それを持ち帰って改訂・執筆作業を行い,完成した初校原稿をそれぞれ事前に読んできての第2回目の会議では,前回同様,原稿に対して一つひとつコメントを出し合っていきました.朝早くに集合したはずですが,結局いや当然のごとく作業終了は夜になりクタクタでした.ただ確かに疲れもしましたが,終了した時は,前回にも増した満足感と高揚感のようなものを執筆の二人だけでなく,医学書院編集部の志澤真理子氏にも感じていただいていたと思います.
そうして完成した改訂第3版ですが,我々の手を離れてしまってからは,本書を活かすも無視/放置するも,それは皆さまの心一つです.読んでみて思わぬ「納得」を得たり,消化器病理への興味が沸いたと感じてくれたりする人たちがいたらうれしく思いますが,一方で,物足りない所,分かりにくい記述,取り上げてほしかったのに説明のない項目もあるかもしれません.しかし,いずれの感想でも,ある程度は目を通してもらわないと感じてもらえないことだと思います.そういう意味では,どちらの方々にも感謝です.本書に関しても,直接にでも間接的にでも構いません,感想や意見をいただければ嬉しく思います.
最後に,この本の改訂に様々に尽力してくださいました医学書院の皆様や,著者を陰で支えてくださった身近な皆様方にお礼を申し上げます.ありがとうございました.
2018年6月
著者を代表して 福嶋敬宜
目次
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I 入門編:これから始める病理診断
1 病理診断の全体像
Q1. 病理学的検索で何がわかりますか?
Q2. 病理診断の強みは何ですか?
Q3. 病理診断の弱点は何ですか?
Q4. 病理診断に用いられる特殊な検査法には何がありますか?
Q5. 病理医は少ないと聞きますが地域差もありますか?
2 病理検体・細胞検体の流れ
Q6. 病理部門での病理検体の流れについて教えてください.
Q7. 術中迅速検体の流れは,通常検体と何が異なりますか?
Q8. 細胞診検査の流れは,通常の病理検体と何が異なりますか?
3 病理検体の固定と提出
Q9. 病理検体の(ホルマリン)固定時に注意すべきことは何ですか?
Q10. ホルマリン固定による負の影響はありますか?
Q11. 通常のホルマリンと緩衝ホルマリンの違いは何ですか?
Q12. ホルマリン固定してはいけない検体はありますか?
Q13. 病理診断の申込書に書くべき臨床情報は?
4 肉眼観察と切り出し
Q14. 病理検体の肉眼観察では何を見ればよいのですか?
Q15. 「切り出し」の注意点は何ですか?
5 病理組織診断から報告まで
Q16. 顕微鏡観察にコツはありますか?
Q17. 生検標本観察のポイントは何ですか?
Q18. 外科切除標本の検索事項は何ですか?
6 術中迅速病理診断
Q19. 術中迅速病理診断と普通の病理診断は何が違うのですか?
Q20. 術中迅速検体提出時に病理医に伝えるべきことは何ですか?
Q21. 迅速病理検体の変性や細胞の脱落を防ぐ方法はありますか?
7 細胞診
Q22. 消化器疾患の診断で細胞診が有効なものは何ですか?
Q23. 胆汁・膵液細胞診の診断精度を上げる方法はありませんか?
8 報告書の読み方に関すること
Q24. 病理診断における「検体不良(insufficient material)」は
どういう意味ですか?
Q25. 病理診断報告に使われる「see comments」「probably」「most likely」
「suggestive of」「suspicious of」などはどういうニュアンスですか?
Q26. 病理組織診断報告書を見るとき,診断以外でチェックすべき項目は何ですか?
Q27. 病理組織診断報告書のコピーは患者に渡してもよいですか?
II 基礎編(1):特殊染色の基礎知識
1 組織化学検査
1. 結合組織を染める
2. 粘液を染める
3. 脂肪や沈着物・細胞内顆粒を染める
4. 組織内病原体を染める
5. 組織内無機物を染める
6. 細胞診で用いられる染色
2 免疫組織化学染色
3 染色法の選択と結果の解釈
III 基礎編(2):臓器・病変別 病理学的アプローチ
1 食道
1. 食道検体の取り扱い
2. 食道の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 食道の腫瘍性病変へのアプローチ
2 胃
1. 胃検体の取り扱い
2. 胃の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 胃の腫瘍性病変へのアプローチ
3 十二指腸・小腸(十二指腸乳頭部を除く)
はじめに
1. 十二指腸・小腸検体の取り扱い
2. 十二指腸・小腸病変へのアプローチ
4 大腸
1. 大腸検体の取り扱い
2. 大腸炎症性疾患へのアプローチ
3. 大腸ポリープへのアプローチ
4. 大腸癌へのアプローチ
5 肝臓
1. 肝臓検体の取り扱い
2. 肝臓の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 肝臓の腫瘍性病変へのアプローチ
6 胆道・十二指腸乳頭部
1. 胆道・十二指腸乳頭部検体の取り扱い
2. 胆道・十二指腸乳頭部病変へのアプローチ;非腫瘍性病変
3. 胆道・十二指腸乳頭部病変へのアプローチ;腫瘍性病変
7 膵臓
1. 膵臓検体の取り扱い
2. 膵臓の結節状病変へのアプローチ
3. 膵臓の胞状病変へのアプローチ
8 リンパ増殖性疾患
1. 消化器リンパ腫へのアプローチ
2. リンパ腫と反応性リンパ増殖性病変の鑑別
3. 消化管リンパ腫とほかの悪性腫瘍の鑑別
IV 応用編:病理を疾患研究に活かそう!
1 病理を疾患研究に活かすポイント15
1. 組織凍結保存のポイント
2. パラフィンブロック検体を活かすポイント
3. 特殊(免疫組織化学を含む)染色を活かすポイント
4. 病理情報を活かすポイント
2 学会発表・論文投稿に役立つ病理写真の見せ方
1. 病理写真呈示の大原則
2. 肉眼写真撮影の基本
3. 顕微鏡写真撮影の基本
V 資料編
1 病理診断関連用語160
A. 病理・細胞検体に関する用語
B. 標本作製に関する用語
C. 病理診断報告に関する用語
D. 病理診断分類に関する用語
E. 肉眼所見に関する用語
F. 組織所見(総論)に関する用語
G. 組織所見(組織パターン)に関する用語
H. 細胞診に関する用語
2 正常組織像アトラス
索引
著者紹介
Coffee Break
1 グレーゾーンをどこに置く?
2 離島医療圏における病理診断学の役割
3 目指そう! 3D的思考
4 術中迅速病理診断の舞台裏
5 マクロとミクロ視点
6 病理でアクティブ・ラーニング
7 自分の「枠」を広げる努力
8 異形成と上皮内腫瘍
9 胃炎とその分類
10 見込み診断
11 デキる臨床医はマネジメントがうまい
12 日々の病理診断での学び
13 デジタル病理で何が変わる?
14 消化器WHO分類にまつわるよもやま話
耳より
1 ヨード不染帯または濃染帯となる良性の食道粘膜病変
2 胃ポリープの肉眼分類
3 低異型度癌と超高分化腺癌の概念
4 腸結核と黒丸の分類
5 肉芽腫の定義と診断学的意義
6 大腸癌発育先進部における簇出の臨床的意義
7 生検での膵腫瘍診断―顕微鏡観察のポイント
8 PanIN(パニン)のその後
ここがHOT
1 消化器癌の個別化医療
2 大腸のCold polypectomy検体の組織学的特徴
3 胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)のゆくえ
4 癌の化学療法・放射線療法後の病理組織学的評価
5 PL(神経叢浸潤)とは何か?
6 ADMとAFL
臨床-病理ブリッジング
1 消化器切除検体の病理診断過程
2 臨床-病理の良好な連携が仕事を楽しくする!
これが定石
1 肉眼写真におけるスケールの位置
2 写真撮影における交点の利用
1 病理診断の全体像
Q1. 病理学的検索で何がわかりますか?
Q2. 病理診断の強みは何ですか?
Q3. 病理診断の弱点は何ですか?
Q4. 病理診断に用いられる特殊な検査法には何がありますか?
Q5. 病理医は少ないと聞きますが地域差もありますか?
2 病理検体・細胞検体の流れ
Q6. 病理部門での病理検体の流れについて教えてください.
Q7. 術中迅速検体の流れは,通常検体と何が異なりますか?
Q8. 細胞診検査の流れは,通常の病理検体と何が異なりますか?
3 病理検体の固定と提出
Q9. 病理検体の(ホルマリン)固定時に注意すべきことは何ですか?
Q10. ホルマリン固定による負の影響はありますか?
Q11. 通常のホルマリンと緩衝ホルマリンの違いは何ですか?
Q12. ホルマリン固定してはいけない検体はありますか?
Q13. 病理診断の申込書に書くべき臨床情報は?
4 肉眼観察と切り出し
Q14. 病理検体の肉眼観察では何を見ればよいのですか?
Q15. 「切り出し」の注意点は何ですか?
5 病理組織診断から報告まで
Q16. 顕微鏡観察にコツはありますか?
Q17. 生検標本観察のポイントは何ですか?
Q18. 外科切除標本の検索事項は何ですか?
6 術中迅速病理診断
Q19. 術中迅速病理診断と普通の病理診断は何が違うのですか?
Q20. 術中迅速検体提出時に病理医に伝えるべきことは何ですか?
Q21. 迅速病理検体の変性や細胞の脱落を防ぐ方法はありますか?
7 細胞診
Q22. 消化器疾患の診断で細胞診が有効なものは何ですか?
Q23. 胆汁・膵液細胞診の診断精度を上げる方法はありませんか?
8 報告書の読み方に関すること
Q24. 病理診断における「検体不良(insufficient material)」は
どういう意味ですか?
Q25. 病理診断報告に使われる「see comments」「probably」「most likely」
「suggestive of」「suspicious of」などはどういうニュアンスですか?
Q26. 病理組織診断報告書を見るとき,診断以外でチェックすべき項目は何ですか?
Q27. 病理組織診断報告書のコピーは患者に渡してもよいですか?
II 基礎編(1):特殊染色の基礎知識
1 組織化学検査
1. 結合組織を染める
2. 粘液を染める
3. 脂肪や沈着物・細胞内顆粒を染める
4. 組織内病原体を染める
5. 組織内無機物を染める
6. 細胞診で用いられる染色
2 免疫組織化学染色
3 染色法の選択と結果の解釈
III 基礎編(2):臓器・病変別 病理学的アプローチ
1 食道
1. 食道検体の取り扱い
2. 食道の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 食道の腫瘍性病変へのアプローチ
2 胃
1. 胃検体の取り扱い
2. 胃の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 胃の腫瘍性病変へのアプローチ
3 十二指腸・小腸(十二指腸乳頭部を除く)
はじめに
1. 十二指腸・小腸検体の取り扱い
2. 十二指腸・小腸病変へのアプローチ
4 大腸
1. 大腸検体の取り扱い
2. 大腸炎症性疾患へのアプローチ
3. 大腸ポリープへのアプローチ
4. 大腸癌へのアプローチ
5 肝臓
1. 肝臓検体の取り扱い
2. 肝臓の非腫瘍性病変へのアプローチ
3. 肝臓の腫瘍性病変へのアプローチ
6 胆道・十二指腸乳頭部
1. 胆道・十二指腸乳頭部検体の取り扱い
2. 胆道・十二指腸乳頭部病変へのアプローチ;非腫瘍性病変
3. 胆道・十二指腸乳頭部病変へのアプローチ;腫瘍性病変
7 膵臓
1. 膵臓検体の取り扱い
2. 膵臓の結節状病変へのアプローチ
3. 膵臓の胞状病変へのアプローチ
8 リンパ増殖性疾患
1. 消化器リンパ腫へのアプローチ
2. リンパ腫と反応性リンパ増殖性病変の鑑別
3. 消化管リンパ腫とほかの悪性腫瘍の鑑別
IV 応用編:病理を疾患研究に活かそう!
1 病理を疾患研究に活かすポイント15
1. 組織凍結保存のポイント
2. パラフィンブロック検体を活かすポイント
3. 特殊(免疫組織化学を含む)染色を活かすポイント
4. 病理情報を活かすポイント
2 学会発表・論文投稿に役立つ病理写真の見せ方
1. 病理写真呈示の大原則
2. 肉眼写真撮影の基本
3. 顕微鏡写真撮影の基本
V 資料編
1 病理診断関連用語160
A. 病理・細胞検体に関する用語
B. 標本作製に関する用語
C. 病理診断報告に関する用語
D. 病理診断分類に関する用語
E. 肉眼所見に関する用語
F. 組織所見(総論)に関する用語
G. 組織所見(組織パターン)に関する用語
H. 細胞診に関する用語
2 正常組織像アトラス
索引
著者紹介
Coffee Break
1 グレーゾーンをどこに置く?
2 離島医療圏における病理診断学の役割
3 目指そう! 3D的思考
4 術中迅速病理診断の舞台裏
5 マクロとミクロ視点
6 病理でアクティブ・ラーニング
7 自分の「枠」を広げる努力
8 異形成と上皮内腫瘍
9 胃炎とその分類
10 見込み診断
11 デキる臨床医はマネジメントがうまい
12 日々の病理診断での学び
13 デジタル病理で何が変わる?
14 消化器WHO分類にまつわるよもやま話
耳より
1 ヨード不染帯または濃染帯となる良性の食道粘膜病変
2 胃ポリープの肉眼分類
3 低異型度癌と超高分化腺癌の概念
4 腸結核と黒丸の分類
5 肉芽腫の定義と診断学的意義
6 大腸癌発育先進部における簇出の臨床的意義
7 生検での膵腫瘍診断―顕微鏡観察のポイント
8 PanIN(パニン)のその後
ここがHOT
1 消化器癌の個別化医療
2 大腸のCold polypectomy検体の組織学的特徴
3 胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)のゆくえ
4 癌の化学療法・放射線療法後の病理組織学的評価
5 PL(神経叢浸潤)とは何か?
6 ADMとAFL
臨床-病理ブリッジング
1 消化器切除検体の病理診断過程
2 臨床-病理の良好な連携が仕事を楽しくする!
これが定石
1 肉眼写真におけるスケールの位置
2 写真撮影における交点の利用
書評
開く
臨床医に役立つ手元に置きたい一冊
書評者: 真口 宏介 (手稲渓仁会病院教育研究センター顧問/亀田総合病院消化器内科顧問)
臨床現場において「病変の質的診断」は治療方針の決定に直結するため極めて重要である。特に,消化管,肝胆膵領域では悪性病変の頻度が低くなく,常にがんを念頭に置いて鑑別診断していく必要がある一方,がん以外の腫瘍や良性病変も存在するため慎重な診断が求められる。質的診断は画像診断と生検や細胞診などの病理診断の両者によって行われるが,ここに「落とし穴」があることを知っておく必要がある。臨床側では生検や細胞診の検体を病理に提出さえすれば確定診断が得られると考えている「勘違い」の医師が多いが,種々の理由によるサンプリングエラーがあること,肝生検やEUS-FNAの場合には腫瘍細胞の播種の危険性があることも忘れてはならない。片や,病理側では病理医の中でも専門性に差があること,HE染色だけでは確定診断ができない病変があること,病理判定の中にもグレーゾーンがあること,そしていまだわかっていない病態や病変も存在する。この「落とし穴」を埋めるために臨床医も病理を学ぶ必要があり,かつ病理医との連携を深めることが重要となる。
『臨床に活かす病理診断学―消化管・肝胆膵編 第3版』が医学書院から出版された。本書には,病理医だけではなく,臨床医が知っておくべき内容が満載である。入門編,基礎編,応用編で構成されており初学者にも理解しやすい。中でも入門編の「Q&A」,基礎編の「特殊染色の基礎知識」,見返しの「使用頻度の高い組織化学染色」は臨床医,研修医に大いに役立つ。「抗体早見表」や資料編として「病理診断用語集」も読者にはありがたい。
執筆者の福嶋敬宜先生とは日本消化器画像診断研究会にて知り合った。本研究会には,肝胆膵を専門とする消化器内科医,外科医,放射線科医,病理医が一堂に集まり,一例報告を数十例にわたり議論し,いかに「臨床医と病理医との連携」が大切であるかを学んでいる。本書は,そこに参加されている病理医の福嶋先生だからこその一冊であり,「臨床の現場に病理の情報をしっかり伝え,それを診療に十分に活用してほしい」との思いが込められている。
臨床現場での画像診断は病理のマクロ像をイメージして行うものであり,マクロを知らずして画像診断は行い得ない。そしてマクロはミクロ像が集まって作られるものである(入門編のCoffee Breakに記載されていた)。臨床医は,少なくとも主な腫瘍のマクロ像と病理学的特徴をしっかりと学んだ上で画像診断を行う必要があり,「検体を病理に提出すれば診断を付けてくれるとの勘違い」に終止符を打つべきである。検体を採取する前にどのような診断をしたのか,どの部位からどのように検体を採取したのか,それらの情報を正しく病理医に伝えることが重要であり,「より正確な診断と適切な治療方針の決定」につながることを肝に銘じてほしい。本書は,まさに「臨床に活かせる」病理診断学の解説書であり,臨床医に大いに役立つまさに「手元に置きたい一冊」である。
“消化器疾患に携わる者が診療内容を充溢させる,座右に置くべき良著だ。”
書評者: 小澤 俊文 (総合犬山中央病院消化器内科部長)
著者の一人である二村聡医師とは某研究会や編集会議を通じ10年以上のお付き合いをさせていただいている。確信に満ちたその声色と表現,そして「言葉・用語」に対する妥協のない姿勢を見聞きするにつけ,親しくなるまでは年長者と思い込んでいた(失礼!)くらいだ。氏の講演から学ぶ多くの知識はもちろんだが,美麗な写真には毎度ながら感嘆すること枚挙にいとまがなかった。特に美麗なマクロ写真からは見る者に迫る主張が感じられる。ピントを合わせてガシャ,の写真とは一線を画すことを理解するのに,目的意識を持った人間ならそれほど時間は要さないはずだ。
この度,氏の共著となる『臨床に活かす病理診断学―消化管・肝胆膵編 第3版』の書評を担う機会を得た。最初に気付くのは,専門書にありがちなとっつき難い文体とは一味違ったスタイルが親しみやすく,内容がすんなりと頭に入ってくることである。限られたページ数の中,美麗なマクロおよびミクロ写真,そしてシェーマがこれでもかと収載されており著者らの本書にかける熱意が伝わってくる。生検場所や採取のポイントとピットフォール,切除標本の扱い方,用語の説明など,この一冊で十分な内容だ。文章は過不足なく記載されており,本文が冗長にならないよう追加説明は小さな赤字の脚注として左右に配置されている。また「Coffee Break」や「耳より」「ここがHOT」などの頭を休ませるコーナー(コラム)が全体に散りばめられており,読者を飽きさせない構成も評価したい。“脳の休憩”と表現はしてみたが,多くが実臨床に役立つ内容であり臨床医への熱いメッセージや応援でもあるのだ。さらに注目したいのは表紙と背表紙の裏を利用し,抗体や組織化学染色を表に,用語を一覧にして,読者がすぐに確認できる点である。まさに臨床医の日常的疑問と利便性に対応しており,限界まで本スペースを活用した著者と医学書院の創本姿勢に賞賛を送りたい。
本の末尾まで読了した読者はさしずめ病理教室で勉強し終えた錯覚に陥った感覚だろう。自らが撮像した内視鏡画像やX線画像,それから採取した組織検体から“何を観ているのか”が理解できたときの喜びを,本書を通じてぜひとも感じていただきたい。しかし,“日常的な”臨床画像と病理所見を対比することなしにはあくまで“わかったつもり”にすぎない。そこに王道はなく情熱とシツコさを持って病理医に対峙してこそ読者の診断力向上はもちろん,ひいては患者への福音となるはずだ。病理医が勤務する施設で診療する諸兄にはぜひそうしてほしい。残念ながらそのような環境にないが学習意欲の強い医師にとって,本書は鶴首した教科書であり江湖に勧めたい。本書タイトルのごとく病理学的知識を「臨床に“活”かす」ことが消化器疾患を扱うわれわれの日常であり責務なのだ。
最後に恨み節を一つ。もっと若い時分に本書に出会えていれば,小生も短期留学などを含め積極的に病理診断学を吸収できたのではないかと後悔している。病理診断学に興味のない者は消化器診療に携わるべきではないと愚考するが,いささか乱暴であろうか?
書評者: 真口 宏介 (手稲渓仁会病院教育研究センター顧問/亀田総合病院消化器内科顧問)
臨床現場において「病変の質的診断」は治療方針の決定に直結するため極めて重要である。特に,消化管,肝胆膵領域では悪性病変の頻度が低くなく,常にがんを念頭に置いて鑑別診断していく必要がある一方,がん以外の腫瘍や良性病変も存在するため慎重な診断が求められる。質的診断は画像診断と生検や細胞診などの病理診断の両者によって行われるが,ここに「落とし穴」があることを知っておく必要がある。臨床側では生検や細胞診の検体を病理に提出さえすれば確定診断が得られると考えている「勘違い」の医師が多いが,種々の理由によるサンプリングエラーがあること,肝生検やEUS-FNAの場合には腫瘍細胞の播種の危険性があることも忘れてはならない。片や,病理側では病理医の中でも専門性に差があること,HE染色だけでは確定診断ができない病変があること,病理判定の中にもグレーゾーンがあること,そしていまだわかっていない病態や病変も存在する。この「落とし穴」を埋めるために臨床医も病理を学ぶ必要があり,かつ病理医との連携を深めることが重要となる。
『臨床に活かす病理診断学―消化管・肝胆膵編 第3版』が医学書院から出版された。本書には,病理医だけではなく,臨床医が知っておくべき内容が満載である。入門編,基礎編,応用編で構成されており初学者にも理解しやすい。中でも入門編の「Q&A」,基礎編の「特殊染色の基礎知識」,見返しの「使用頻度の高い組織化学染色」は臨床医,研修医に大いに役立つ。「抗体早見表」や資料編として「病理診断用語集」も読者にはありがたい。
執筆者の福嶋敬宜先生とは日本消化器画像診断研究会にて知り合った。本研究会には,肝胆膵を専門とする消化器内科医,外科医,放射線科医,病理医が一堂に集まり,一例報告を数十例にわたり議論し,いかに「臨床医と病理医との連携」が大切であるかを学んでいる。本書は,そこに参加されている病理医の福嶋先生だからこその一冊であり,「臨床の現場に病理の情報をしっかり伝え,それを診療に十分に活用してほしい」との思いが込められている。
臨床現場での画像診断は病理のマクロ像をイメージして行うものであり,マクロを知らずして画像診断は行い得ない。そしてマクロはミクロ像が集まって作られるものである(入門編のCoffee Breakに記載されていた)。臨床医は,少なくとも主な腫瘍のマクロ像と病理学的特徴をしっかりと学んだ上で画像診断を行う必要があり,「検体を病理に提出すれば診断を付けてくれるとの勘違い」に終止符を打つべきである。検体を採取する前にどのような診断をしたのか,どの部位からどのように検体を採取したのか,それらの情報を正しく病理医に伝えることが重要であり,「より正確な診断と適切な治療方針の決定」につながることを肝に銘じてほしい。本書は,まさに「臨床に活かせる」病理診断学の解説書であり,臨床医に大いに役立つまさに「手元に置きたい一冊」である。
“消化器疾患に携わる者が診療内容を充溢させる,座右に置くべき良著だ。”
書評者: 小澤 俊文 (総合犬山中央病院消化器内科部長)
著者の一人である二村聡医師とは某研究会や編集会議を通じ10年以上のお付き合いをさせていただいている。確信に満ちたその声色と表現,そして「言葉・用語」に対する妥協のない姿勢を見聞きするにつけ,親しくなるまでは年長者と思い込んでいた(失礼!)くらいだ。氏の講演から学ぶ多くの知識はもちろんだが,美麗な写真には毎度ながら感嘆すること枚挙にいとまがなかった。特に美麗なマクロ写真からは見る者に迫る主張が感じられる。ピントを合わせてガシャ,の写真とは一線を画すことを理解するのに,目的意識を持った人間ならそれほど時間は要さないはずだ。
この度,氏の共著となる『臨床に活かす病理診断学―消化管・肝胆膵編 第3版』の書評を担う機会を得た。最初に気付くのは,専門書にありがちなとっつき難い文体とは一味違ったスタイルが親しみやすく,内容がすんなりと頭に入ってくることである。限られたページ数の中,美麗なマクロおよびミクロ写真,そしてシェーマがこれでもかと収載されており著者らの本書にかける熱意が伝わってくる。生検場所や採取のポイントとピットフォール,切除標本の扱い方,用語の説明など,この一冊で十分な内容だ。文章は過不足なく記載されており,本文が冗長にならないよう追加説明は小さな赤字の脚注として左右に配置されている。また「Coffee Break」や「耳より」「ここがHOT」などの頭を休ませるコーナー(コラム)が全体に散りばめられており,読者を飽きさせない構成も評価したい。“脳の休憩”と表現はしてみたが,多くが実臨床に役立つ内容であり臨床医への熱いメッセージや応援でもあるのだ。さらに注目したいのは表紙と背表紙の裏を利用し,抗体や組織化学染色を表に,用語を一覧にして,読者がすぐに確認できる点である。まさに臨床医の日常的疑問と利便性に対応しており,限界まで本スペースを活用した著者と医学書院の創本姿勢に賞賛を送りたい。
本の末尾まで読了した読者はさしずめ病理教室で勉強し終えた錯覚に陥った感覚だろう。自らが撮像した内視鏡画像やX線画像,それから採取した組織検体から“何を観ているのか”が理解できたときの喜びを,本書を通じてぜひとも感じていただきたい。しかし,“日常的な”臨床画像と病理所見を対比することなしにはあくまで“わかったつもり”にすぎない。そこに王道はなく情熱とシツコさを持って病理医に対峙してこそ読者の診断力向上はもちろん,ひいては患者への福音となるはずだ。病理医が勤務する施設で診療する諸兄にはぜひそうしてほしい。残念ながらそのような環境にないが学習意欲の強い医師にとって,本書は鶴首した教科書であり江湖に勧めたい。本書タイトルのごとく病理学的知識を「臨床に“活”かす」ことが消化器疾患を扱うわれわれの日常であり責務なのだ。
最後に恨み節を一つ。もっと若い時分に本書に出会えていれば,小生も短期留学などを含め積極的に病理診断学を吸収できたのではないかと後悔している。病理診断学に興味のない者は消化器診療に携わるべきではないと愚考するが,いささか乱暴であろうか?
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