SCID-5-PD
DSM-5パーソナリティ障害のための構造化面接

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パーソナリティ障害の構造化面接法「SCID-II」がDSM-5に準拠しリニューアル。各疾患の症状および診療場面で行う半構造化面接について解説した「使用の手引き」に加え、具体的なインタビュー項目をまとめた「質問票」、患者が自分で記入するための「自己記入式の質問用紙(SCID-5-SPQ)」の3点を1冊に収載。「質問票」と「SCID-5-SPQ」はWebからダウンロードも可能(書籍購入者特典)。

原著 Michael B. First / Janet B. W. Williams / Lorna Smith Benjamin / Robert L. Spitzer
監訳 髙橋 三郎
大曽根 彰
発行 2017年09月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-03211-7
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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訳者の序(大曽根彰)/原書の序

訳者の序

 今から15年前,不安症群の研究に没頭していた訳者は,当時DSM-IV診断でI軸と分類されていた不安症全般を理解するためには,併存するII軸と呼ばれていたパーソナリティ障害を理解しなくてはならないと感じ始めていた.海外の文献を読み進めていくうちに,SCID-IIという構造化面接法が存在することを知り,これをぜひ日本語化し活用したいと考え,当時訳者がパート勤務していた埼玉江南病院の院長であった高橋三郎先生に申し出た.高橋先生は快諾され医学書院に問い合わせて下さり,訳者が日本語訳を担当することが出来たという懐かしい思い出がある.
 その後,DSM-IVはDSM-IV-TR,そしてDSM-5へと進化を続けた.とりわけDSM-5では,精神医学におけるめざましい生物学的研究の発展を反映し,大幅な疾患分類の再編成が行われている.これに対し,DSMに準拠したパーソナリティ障害診断の構造化面接法であるSCID-IIはSCID-5-PDとなったが,内容に大きな変更はみられない.パーソナリティを特徴づける症状は,生物学的研究の知見とは疎遠な,人間学的考察によるものであることが大きな理由と考えられる.ただし,DSM-5では第III部の「新しい尺度とモデル」で,「パーソナリティ障害の代替DSM-5モデル」として,パーソナリティ障害群をパーソナリティ機能の障害および病的パーソナリティ特性によって評価しようとする試みも紹介されている.この研究方法では,従来ほとんど情報とならなかった「他の特定されるまたは特定不能のパーソナリティ障害」診断をすくい上げることができるが,従来からあるいくつかのパーソナリティ障害が抜けおちてしまい,いまだ開発途上と思われ,今後の課題も残されている.
 SCID-5-PDはパーソナリティ障害診断を下すにあたり「あり または なし」とカテゴリー的に,あるいはそれぞれのパーソナリティ障害診断項目に対する「0, 1または2」の評価を合計し,これらの合計をディメンションとして取り扱うことで,ディメンション的にも用いることができる.SCID-5-PDでは,SCID-II時代から模索されていたディメンション的パーソナリティ障害診断がより明瞭にされている.すなわち,SCID-5-PD診断サマリースコアシートにおいてディメンション的プロファイル評価の合計の欄が設けられているのみならず,「もし基準があてはまっていない場合に,臨床的に意味のある特徴が存在するか?」という欄も新設され,前述した「他の特定されるまたは特定不能のパーソナリティ障害」診断を無駄にしない配慮もされている.
 このように,診断カテゴリーや診断項目に大きな変化はないものの,パーソナリティ障害診断の評価に関しては改良が加えられている.今後,パーソナリティ障害評価のゴールデンスタンダードといえるSCID-5-PDの日本語版が広く臨床で活用されることを願う.

 2017年7月
 獨協医科大学精神神経医学講座 大曽根彰


原書の序

謝辞
 我々は,SCID-5研究版(SCID-5-RV)およびSCID-5臨床家版(SCID-5-CV)の共著者であるRhonda Kargに対し,DSM-5®パーソナリティ障害のための構造化面接(SCID-5-PD)の改訂に対する価値ある貢献に,またSCID-5-PDユーザーズガイドの査読に対して感謝する.
 我々はまた,我々の研究助手であり,またコロンビア大学生物測定学部門の多芸な何でも屋のDesiree Cabanによる,SCID-5-PDの開発を可能にしてくれたたいへん貴重な援助のすべてに対して感謝する.
 最後に,SCID-5-PDの製作を援助してくれた米国精神医学会出版局の人々,すなわち,編集長のRobert E. Hales, M. D., 出版局社長のRebecca Rinehart,出版局副社長のJohn McDuffie, Susan Westrate出版部長に,すべての要素の注意深い植字と表紙および書籍の装丁に対して感謝したい.またとりわけ,上席開発編集者のAnn. M. Engは,彼女の几帳面で思慮深い編集で,この複雑な道具の様々な細部の切れ目ない組み合わせについて確認することを助けてくれたことに感謝したい.

引用と追加の著作権の告知
 引用について:First MB, Williams JBW, Benjamin LS, Spitzer RL:User’s Guide for the Structured Clinical Interview for DSM-5 Personality Disorders(SCID-5-PD).Arlington, VA, American Psychiatric Association, 2016
 DSM-5®パーソナリティ障害のための構造化面接(SCID-5-PD)は,DSM-5®スクリーニングパーソナリティ質問票のための構造化面接(SCID-5-SPQ)を含む.SCID-5-PDユーザーズガイドも利用可能である.米国精神医学会出版局からの書面により,あるいは法律により,免許により,あるいは適切な複製権組織により合意された用語により明白に許諾されたものとして許諾をえることなく,これらの出版物のいかなる部分も写真複写,複製,情報検索システムでの保管,あるいはいかなる形態や方法でも伝えられてはならない.上記の範囲外についての複製を含めてすべての照会は,米国精神医学会出版局の権利部門,1000 Wilson Blvd., Suite 1825, Arlington, VA 22209またはhttp://www.appi.org/permissions宛オンライン許諾形態を通して送っていただきたい.さらなる情報は,www.appi.orgのSCIDのページを見ていただきたい.
 DSM-5®診断基準は,米国精神医学会の許諾,すなわち「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版.Arlington VA, American Psychiatric Association, 2013. Copyright©2013 American Psychiatric Association.許可のもと使用」があれば複製あるいは翻案できる.
 米国精神医学会(APA)により書面による許諾なしには,DSM-5®基準のいかなる部分も複製できず,APAの著作権と一致しない方法では使用できない.この禁止事項は,電子的な適用を含み,いかなる形態での許諾のない使用あるいは複製に対しても適用される.DSM-5®基準に対する複製許諾に関する書状は米国精神医学会出版局のDSM許諾(1000 Wilson Boulevard, Suite 1825, Arlington, VA 22209-3901)宛に書いていただきたい.
 付録の症例はSpitzer RL, Gibbon M, Skodol AE, Williams JBW, First MBのDSM-IV-TR CasebookA Learning Companion to the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition. Arlington, VA, American Psychiatric Publishing, 2002. Copyright©2002.許諾をえて使用」から許諾をえて翻案している.
 著者註(訳注:原著者):SCID-5-PDで記載されているいくつかの情報は,以下の雑誌から一部許諾をえて翻案された.First MB, Spitzer RL, Gibbon M, Williams JBW:“The Structured Clinical Interview for DSM-III-R Personality Disorders(SCID-II),Part I:Description.”Journal of Personality Disorders 9:2, June 1995.

開示
 以下の著者らは,原稿の提出から12か月以内に受け取り,この本での出版の仕事に関連した利益相反を表しうる支援のすべての種類を公表した.次の通りである.
 Lorna Smith Benjamin, Ph.D.はUtah大学が所有する「Structural Analysis of Social Behavior(SASB)models, questionnaires, and software」の著者である.彼女は「Interpersonal Diagnosis and Treatment of Personality Disorders, New York, Guilford Press, 1933, 1996, 2003.」および「Interpersonal Reconstructive Therapy, New York, Guilford Press, 2003, 2006.」の著者である.
 Janet B.W.Williams, Ph.D. は薬事業務会社であるGlobal Science, MedAvante, Inc.の上席副社長として常勤で働いている.

 次の著者は,この仕事で報告すべき利益相反はない.Michael B.First, M.D.;Robert L.Spitzer, M.D.

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SCID-5-PDユーザーズガイド
 1.はじめに
 2.歴史
 3.SCID-5-PDの特徴
  3.1 適用範囲
  3.2 診断サマリースコアシート
  3.3 基本構造
  3.4 スクリーニングパーソナリティ質問票(SCID-5-SPQ)
  3.5 DSM-5からの変更
 4.SCID-5-PDを施行する
  4.1 情報源
  4.2  SCID-5-PD面接の質問
  4.3 太字の言葉を伴った質問面接
  4.4 基準項目の評価
  4.5 他の特定されるパーソナリティ障害の評価
  4.6 SCID-5-SPQを用いたSCID-5-PDの使用
  4.7 SCID-5-SPQを用いないSCID-5-PDの使用
 5.項目ごとのSCID-5-PDの注釈
  5.1 回避性パーソナリティ障害
  5.2 依存性パーソナリティ障害
  5.3 強迫性パーソナリティ障害
  5.4 猜疑性パーソナリティ障害
  5.5 統合失調型パーソナリティ障害
  5.6 シゾイドパーソナリティ障害
  5.7 演技性パーソナリティ障害
  5.8 自己愛性パーソナリティ障害
  5.9 境界性パーソナリティ障害
  5.10 反社会性パーソナリティ障害
 6.練習
 7.信頼性と妥当性
  7.1 SCID-5-PDの信頼性
  7.2 SCID-IIの妥当性
  7.3 SCID-II患者質問票の精神測定上の特性
 8.文献
 9.付録:SCID-5-SPQおよびSCID-5-PDの症例

SCID-5-SPQ

SCID-5-PD

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研究・臨床の両面で役立つ実用的診断ツール
書評者: 西村 勝治 (女子医大教授・精神医学)
 パーソナリティ障害診断のゴールデンスタンダードの日本語版が上梓された。前身である『SCID-II(DSM-IV II軸人格障害のための構造化面接)』と同じ訳者の手による。本書にはDSM-5に準拠した「ユーザーズガイド」「評価者質問票(SCID-5-PD)」「患者自己記入シート(SCID-5-SPQ)」が収載され,大変実用的で活用しやすい構成となっている。

 パーソナリティ障害の臨床的インパクトは大きい。これを適切に把握することの重要性は,臨床家であれば誰もが実感する。しかし評価,診断は必ずしも容易ではない。さらに根本的な課題としてパーソナリティ障害の概念化をめぐる歴史的な議論の存在は周知のとおりである。DSM-5では,DSM-IV-TRのパーソナリティ障害の診断基準がそのまま踏襲されると同時に,「パーソナリティ障害の代替DSM-5モデル」が特例的に付記され,さらなる研究が求められている。これまでのカテゴリカルモデルからディメンショナルモデルへの,産みの苦しみがそこにある。両者のハイブリッドといわれる代替モデルは,特定のパーソナリティ障害の診断名に,パーソナリティの機能や特性に関する情報を特定用語を用いて併記することによって,パーソナリティの病理の系統的評価を可能にすることを試みている。米国立精神衛生研究所(NIMH)のResearch Domain Criteria(RDoC)とも連動しながら,この新モデルはさらに洗練されていく方向にあるだろう。

 本書にもこのディメンショナル・アプローチが反映され,さまざまな工夫がなされている。例えば,「診断サマリースコアシート」では各パーソナリティ障害の診断項目に対する評価得点をディメンジョン的に用いることができる。

 また,本書は臨床でスムーズに使用できるようにも配慮されている。例えば被験者とのラポールを形成しやすくするために,SCID-5-PDを用いた評価はDSM-5の配置とは異なり,回避性などのC群パーソナリティ障害から始まり,B群の反社会性パーソナリティ障害が最後に評価される。
 評価時間を短縮するために,スクリーニングのためのSCID-5-SPQを用いることもできる。あらかじめ被験者に回答してもらい,「はい」と答えた項目に関してのみ評価者が質問すればよい。また,特別に関心のあるパーソナリティ障害だけを取り出して評価することもできる。

 SCID-5-PD日本語版がわが国の精神医療にもたらす貢献はとても大きい。何より,訳文が素晴らしい。正確で,かつ大変こなれた翻訳である。この種の翻訳では正確さを期すためにback translationを経て不自然な日本語になることが多いが,本書の質問項目は自然な臨床場面で投げ掛けられる質問のように被験者には聞こえるだろう。このため,研究目的だけでなく,日常臨床においてもストレスなく用いることができる。診断ばかりでなく,これまで気が付かなかった患者のパーソナリティの機能や特性が浮かび上がり,大いに患者理解に役立つことだろう。そのようなツールとして臨床の中でこそ,ぜひ,活用してほしい一冊である。
臨床研究の発展と診断方法修得のための入場切符
書評者: 林 直樹 (帝京大教授・精神神経科学)
 本書は,米国精神医学会出版局から2016年に刊行された『DSM-5パーソナリティ障害のための構造化面接』“Structured Clinical Interview for DSM-5 Personality Disorders(SCID-5-PD)”の全訳である。これは,DSM-IVの時代に使われていたSCID-IIのDSM-5版である。本書の前身であるSCID-IIについている“II”は,当時のパーソナリティ障害が第II軸として評価されていたことを反映したものだったが,DSM-5で多軸診断が撤廃されたことから,今回の版での名称はSCID-5-PDと変更されている。しかし実際には,DSM-5(第二部)のパーソナリティ障害の診断手順や診断基準は,DSM-IVのものと基本的に同じ内容である。

 本書は,「ユーザーズ(面接者)ガイド」「患者自己記入シート」「評価者質問票」の3部から構成されている。「患者自己記入シート」は,面接前に情報を得るためのスクリーニングとして実施される106項目から成る自記式質問表である。「評価者質問票」は,診断面接で用いられる質問とそれへの患者の回答を評価・記録するための小冊子である。この2つは,「WEB付録」として所定のHPからダウンロードできるようになっている。つまりこれは,実際の診断面接において,ケースごとに使用されるこれらの用紙のコピーが利用できるということである。
 このパーソナリティ障害のSCIDでは,最初に刊行されたDSM-III-RのSCID以来,著者達によって営々と改良の努力が積み重ねられてきた。その結果,多くの言い回しが変更され,洗練の度合いが増すこととなった。また,本書の訳文は,DSM-5本体の翻訳のものとそろえられており,DSM-5本体との整合性が担保されている。

 パーソナリティ障害は,思春期・成人期早期に顕かとなる精神病理であり,発達障害や虐待といった発達期の要因の影響を受けて発生するものであると同時に,後に成人期においてうつ病や嗜癖,摂食障害などごく多彩な精神障害を発生させる素地ともなる,いわば“精神障害の交差点に位置する精神障害”である。精神障害の病因や病態の探求においてごく重要であることは論を俟たない。しかし,わが国におけるパーソナリティ障害の臨床や研究は,他国に比較するとごく低調であることを認めざるを得ない。それでも,臨床でそれとして扱われるケースが徐々に増えており,担当医の誠意のこもった紹介状や診療録を目にすることもまれでない。このような臨床での取り組みの広がりは,パーソナリティ障害の臨床研究が発展する基礎になるはずである。

 本書のような立派な構造化診断面接が提供されたことは,われわれを大いに勇気づけるものである。しかしそれは,あくまでも入場切符を手にしたまでのことである。本書の真価は,研究で使われてこそ発揮されるのであり,そして,研究の成果が挙がってこそ確認されるのである。つまり本書は,いわば道具として,使われなくてはならないものである。この道具を使いこなすのには,まだ次の課題がある。このSCID-5-PDを使うためには,面接者の多数回の研修の機会が必要なのである。ただし,その研修には,それだけの価値がある。なぜなら,このように評価・診断の条件がよく記述された診断方法を修得すれば,信頼性の高い構造化面接での診断について見識を深めることができるし,診断のための問診に習熟することが臨床的センスを磨くことに通じるからである。

 この意義深い翻訳作業を申し分ない完成度で成し遂げた髙橋三郎,大曽根彰両先生の労を多としたい。

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