触診解剖アトラス 第3版
鮮明な写真で体表からの解剖学的構造と徒手的検査法を解説、待望の第3版
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体表からの解剖学的構造を鮮明なモノクロ写真により解説する「触診解剖アトラス」の第3版。上肢・下肢が合本となり、全身の触診解剖が1冊で学べるようになった。触診部位の加筆に加え、体節部ごとの解剖図はより詳細となり、また、臨床にいかせる触診上の注意点がコラム「クリニカルヒント」として追加された。
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序文
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監訳者の序
本書,Serge Tixa教授著の「触診解剖アトラス」の翻訳版は,これまで「頸部・体幹・上肢」「下肢」に分けて発刊されていた仏語原書に基づき初版(2001年)と第2版(2007年)は,2冊に分けて発行した.第3版は仏語版(2012年刊),英語版(2016年刊)をもとに2冊を1冊にまとめ発行されたものである.
第3版の特長としては,(1)体節部ごとに骨学と筋学の全体像を確認できる図がカラーになり詳細に記載されていること,(2)触診部位とそれらの写真が増えたこと,(3)「付着」に加え「神経支配」の記載が追加され,また,新しく「クリニカルヒント」の項目が設けられ,筋の起始・停止・走行と臨床上の留意点などが記述されていることなどである.よって,より幅広く解剖学の知識を確認しながら,対象者の病態に応じて触診できるように配慮され,これまでと同様,各部位を触診する際に1冊の本で済ませられることは便利である.
理学療法士・作業療法士の基礎科学として,解剖学・生理学・運動学が重要視されてきた.しかし,日本の双方の養成校の現実的な教育環境からして,解剖学の実習においてご遺体を通じて人体構造を学ぶ機会は極めてまれである.
私的なことであるが,私が留学していた米国の大学での解剖学実習では,1学期に120時間にわたりご遺体を通じて学んだ経験がある.日本の実情に鑑みると,それを補う教育方法として,解剖学,運動学,画像診断情報を含む評価学の科目のなかに触診解剖を十分に取り入れることの必要性があると思える.さもなければ,セラピストの治療介入は,表面的な病態水準に留まり,空を切ることに終始しかねないと思われる.
日本における理学療法士・作業療法士養成から半世紀余りの歴史的変遷において,基礎科学と臨床的治療介入の関連性は進歩してきていることは事実である.だが,それらの距離をさらに近づける必要性があることを認知しておくことが求められることも事実であると考える.
2017年12月
金城大学特任教授
奈良 勲
本書,Serge Tixa教授著の「触診解剖アトラス」の翻訳版は,これまで「頸部・体幹・上肢」「下肢」に分けて発刊されていた仏語原書に基づき初版(2001年)と第2版(2007年)は,2冊に分けて発行した.第3版は仏語版(2012年刊),英語版(2016年刊)をもとに2冊を1冊にまとめ発行されたものである.
第3版の特長としては,(1)体節部ごとに骨学と筋学の全体像を確認できる図がカラーになり詳細に記載されていること,(2)触診部位とそれらの写真が増えたこと,(3)「付着」に加え「神経支配」の記載が追加され,また,新しく「クリニカルヒント」の項目が設けられ,筋の起始・停止・走行と臨床上の留意点などが記述されていることなどである.よって,より幅広く解剖学の知識を確認しながら,対象者の病態に応じて触診できるように配慮され,これまでと同様,各部位を触診する際に1冊の本で済ませられることは便利である.
理学療法士・作業療法士の基礎科学として,解剖学・生理学・運動学が重要視されてきた.しかし,日本の双方の養成校の現実的な教育環境からして,解剖学の実習においてご遺体を通じて人体構造を学ぶ機会は極めてまれである.
私的なことであるが,私が留学していた米国の大学での解剖学実習では,1学期に120時間にわたりご遺体を通じて学んだ経験がある.日本の実情に鑑みると,それを補う教育方法として,解剖学,運動学,画像診断情報を含む評価学の科目のなかに触診解剖を十分に取り入れることの必要性があると思える.さもなければ,セラピストの治療介入は,表面的な病態水準に留まり,空を切ることに終始しかねないと思われる.
日本における理学療法士・作業療法士養成から半世紀余りの歴史的変遷において,基礎科学と臨床的治療介入の関連性は進歩してきていることは事実である.だが,それらの距離をさらに近づける必要性があることを認知しておくことが求められることも事実であると考える.
2017年12月
金城大学特任教授
奈良 勲
目次
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はじめに
1 頸部
骨学
頸部前面
頸の背部および側部
筋学
頸部外側面
頸部前面
神経および血管
主な神経と血管
2 体幹・仙骨
骨学
胸郭
胸腰椎
仙骨
筋学
背面の筋群
胸腹部の前外側の筋
神経および血管
主な血管
3 肩
骨学
鎖骨
肩甲骨
上腕近位部
筋学
腹側筋群
内部筋群
背側筋群
外側筋群
4 上腕
筋学
掌側筋群
背側筋群
神経および血管
主な神経と血管
5 肘関節
骨学
肘の全体像
神経および血管
主な神経と血管
6 前腕
筋学
外側筋群
背側筋群
掌側筋群
7 手関節・手
骨学
前腕の2つの骨の下端
近位手根骨列
遠位手根骨列
中手骨と指節骨
筋学
手関節前面の腱
手関節外側の腱
手関節後面の腱
手の内在筋
神経および血管
主な神経と血管
8 股関節部
骨学
寛骨大腿部
筋学
外側鼠径大腿部
鼠径大腿内側部または大腿三角
殿部
神経および血管
内側鼠径部
殿部
9 大腿部
筋学
大腿前面:前方区画と筋群
大腿四頭筋
大腿筋膜張筋
大腿後部
10 膝関節周囲
骨学
前部構成体
内側構成体
外側構成体
関節学
靱帯
神経および血管
主な神経と血管
11 下腿部
骨学
下腿の骨
下腿の関節
関節学
筋学
下腿の前面の筋群
外側の筋群
後面の筋群
12 足関節および足部
骨学
外側縁
内側縁
足関節前面および足背面
足関節および足部の後面
足底面
関節学
関節腔と靱帯
筋学
足関節および足部の筋・腱構造
足部の内在筋
神経および血管
主な神経
主な血管
和文索引
欧文索引
1 頸部
骨学
頸部前面
頸の背部および側部
筋学
頸部外側面
頸部前面
神経および血管
主な神経と血管
2 体幹・仙骨
骨学
胸郭
胸腰椎
仙骨
筋学
背面の筋群
胸腹部の前外側の筋
神経および血管
主な血管
3 肩
骨学
鎖骨
肩甲骨
上腕近位部
筋学
腹側筋群
内部筋群
背側筋群
外側筋群
4 上腕
筋学
掌側筋群
背側筋群
神経および血管
主な神経と血管
5 肘関節
骨学
肘の全体像
神経および血管
主な神経と血管
6 前腕
筋学
外側筋群
背側筋群
掌側筋群
7 手関節・手
骨学
前腕の2つの骨の下端
近位手根骨列
遠位手根骨列
中手骨と指節骨
筋学
手関節前面の腱
手関節外側の腱
手関節後面の腱
手の内在筋
神経および血管
主な神経と血管
8 股関節部
骨学
寛骨大腿部
筋学
外側鼠径大腿部
鼠径大腿内側部または大腿三角
殿部
神経および血管
内側鼠径部
殿部
9 大腿部
筋学
大腿前面:前方区画と筋群
大腿四頭筋
大腿筋膜張筋
大腿後部
10 膝関節周囲
骨学
前部構成体
内側構成体
外側構成体
関節学
靱帯
神経および血管
主な神経と血管
11 下腿部
骨学
下腿の骨
下腿の関節
関節学
筋学
下腿の前面の筋群
外側の筋群
後面の筋群
12 足関節および足部
骨学
外側縁
内側縁
足関節前面および足背面
足関節および足部の後面
足底面
関節学
関節腔と靱帯
筋学
足関節および足部の筋・腱構造
足部の内在筋
神経および血管
主な神経
主な血管
和文索引
欧文索引
書評
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人体を触り,診るセラピストの必携本
書評者: 高橋 哲也 (順大特任教授)
「美しい本」というのが最初の印象である。
統一された背景に,洗練された美しい男女のモデルと繊細なタッチのmasso-kinésithérapeute(理学療法士)の指先が,danse contemporaine(コンテンポラリー・ダンス)を思わせる。この「美しい本」の著者が,フランス人のSerge Tixa氏であると確認し,その印象に間違いがなかったと納得する。静止した写真であるにもかかわらず躍動感あふれ,舞踊芸術を観ているような錯覚にすら陥る。愛情表現豊かなフランス人らしさが感じられる。
フランスは,理学療法をphysiotherapyまたはphysical therapyと表現せず,kinésithérapieと表現する。Kineの接頭語から,kinesiology(運動学),kinetics(動力学),kinesthetic(運動感覚)が頭に浮かぶ。運動や動作を学ぶうえで,骨学,筋学,神経学,脈管学が1冊で学べる貴重な本でもある。著者のSerge Tixa氏はオステオパシー,カイロプラクティック,理学療法の学校の講師を務めている。オステオパシーやカイロプラクティックは,わが国では,民間療法として受け止められているが,理学療法同様,手を使って施術を行うものであり,特にオステオパシーは骨や筋に限らず,動脈や静脈などの循環器系や脳神経,末梢神経などの神経系の広範囲の知識を基に,施術を行うものである。そのため,本書においても,「主な神経と血管」という項を設け解説されており,局所の解剖学的理解を助ける構成になっている。患者の触診に焦点を絞れば,幅広く性質の異なるアプローチであるが,多様性として理解し十分受け入れることができる。
触診は,一般的にはmanipulationまたはpalpationと英訳されるが,この本は,冒頭から触診をmanual exploration of surface anatomy(表面解剖の徒手的探索)と表現し,新たな触診的解剖学を提案している。Manual exploration(徒手的探索)とあるように,著者の丁寧な「探索」は,理学療法士や作業療法士にとって重要な解剖学的構造の特定方法を示し,最適な徒手療法の選択を可能にしてくれる。
この新しい第3版では130種類以上のカラーイラストがあり,900枚以上の白黒写真一つひとつにわかりやすい解説が付く。美しい写真に目を奪われてしまうが,要所に登場する「クリニカルヒント」も素晴らしく,訳者の丁寧な作業に感心する。本書を片手に隅々まで触診する楽しみが広がる。
理学療法士=masso-kinésithérapeute,という表現からもわかるように,masseurs(マッサージ)がフランスでは大変重要視されていることがわかる。人体を触り,診るための必携本といえるだろう。
3次元が意識できる体表解剖書
書評者: 福井 勉 (文京学院大教授・理学療法学)
本書はSerge Tixa氏の著書『触診解剖アトラス 第3版』の日本語訳本である。頸部,体幹・仙骨,肩,上腕,肘関節,前腕,手関節・手,股関節部,大腿部,膝関節周囲,下腿部,足関節および足部という12章で構成されている。
本邦にも触診解剖あるいは体表解剖の類書は複数あるが,本書は550ページを超える大著である。骨学と筋学を中心に構成されているが,神経および血管についても記載されている。触診方法の特徴としては,関節を特定のポジションに保持して神経の触診を容易にする工夫や,「性差」について述べられている箇所もある。学習書として第1章から順次読み進めることももちろん良いが,必要な情報が網羅されているため,索引を用いて辞書的に活用することも可能である。また随所に記述されている「クリニカルヒント」は,運動器疾患患者を検査・評価する際に遭遇するさまざまな場面を想定して大変詳細に述べられている。
このような専門書が改訂を重ねていることは,すなわち定評があることを示していると考えられるが,全体を概観すると,そのことをうかがわせる点がさまざまにある。
その一例が写真被写体のモデルの身体である。骨学と筋学での描写が非常にわかりやすい体表面を有していることに加え,触診部位をわかりやすく見せる写真を豊富に用いている。触診解剖の専門書としてこの種の写真は読者の理解を深める重要な鍵であると言える。掲載写真の何十倍ものショットから厳選されたのであろうことが推定される。またモデルの身体の背景面,身体の凹凸を際立たせるための照明の素晴らしさも秀でている。さらに,触診部位に応じた被検者と検者のポジショニング(肢位)を選んでいることも読み進めるうちにわかってくる。2次元の紙面であるにもかかわらず,3次元を意識して撮影されている点も本書の魅力の一つである。
触診解剖の技術的洗練度は運動器疾患だけではなく,中枢神経疾患や呼吸器疾患などにも重要なことであり,その方法論を詳細に習得することが求められる。これは,疼痛部位のメカニカルストレスを類推する手段としても有効である。米国版の原書のネット上評価も高く,近年盛んになっている超音波装置による身体の構造把握にも有益である。
本書は,学生が触診解剖書として活用するために十分な内容であるだけでなく,ベテランセラピストが検査・評価方法を再学習する手段にも十分堪え得る深い内容を有している。手元に置いておきたい好著である。
書評者: 高橋 哲也 (順大特任教授)
「美しい本」というのが最初の印象である。
統一された背景に,洗練された美しい男女のモデルと繊細なタッチのmasso-kinésithérapeute(理学療法士)の指先が,danse contemporaine(コンテンポラリー・ダンス)を思わせる。この「美しい本」の著者が,フランス人のSerge Tixa氏であると確認し,その印象に間違いがなかったと納得する。静止した写真であるにもかかわらず躍動感あふれ,舞踊芸術を観ているような錯覚にすら陥る。愛情表現豊かなフランス人らしさが感じられる。
フランスは,理学療法をphysiotherapyまたはphysical therapyと表現せず,kinésithérapieと表現する。Kineの接頭語から,kinesiology(運動学),kinetics(動力学),kinesthetic(運動感覚)が頭に浮かぶ。運動や動作を学ぶうえで,骨学,筋学,神経学,脈管学が1冊で学べる貴重な本でもある。著者のSerge Tixa氏はオステオパシー,カイロプラクティック,理学療法の学校の講師を務めている。オステオパシーやカイロプラクティックは,わが国では,民間療法として受け止められているが,理学療法同様,手を使って施術を行うものであり,特にオステオパシーは骨や筋に限らず,動脈や静脈などの循環器系や脳神経,末梢神経などの神経系の広範囲の知識を基に,施術を行うものである。そのため,本書においても,「主な神経と血管」という項を設け解説されており,局所の解剖学的理解を助ける構成になっている。患者の触診に焦点を絞れば,幅広く性質の異なるアプローチであるが,多様性として理解し十分受け入れることができる。
触診は,一般的にはmanipulationまたはpalpationと英訳されるが,この本は,冒頭から触診をmanual exploration of surface anatomy(表面解剖の徒手的探索)と表現し,新たな触診的解剖学を提案している。Manual exploration(徒手的探索)とあるように,著者の丁寧な「探索」は,理学療法士や作業療法士にとって重要な解剖学的構造の特定方法を示し,最適な徒手療法の選択を可能にしてくれる。
この新しい第3版では130種類以上のカラーイラストがあり,900枚以上の白黒写真一つひとつにわかりやすい解説が付く。美しい写真に目を奪われてしまうが,要所に登場する「クリニカルヒント」も素晴らしく,訳者の丁寧な作業に感心する。本書を片手に隅々まで触診する楽しみが広がる。
理学療法士=masso-kinésithérapeute,という表現からもわかるように,masseurs(マッサージ)がフランスでは大変重要視されていることがわかる。人体を触り,診るための必携本といえるだろう。
3次元が意識できる体表解剖書
書評者: 福井 勉 (文京学院大教授・理学療法学)
本書はSerge Tixa氏の著書『触診解剖アトラス 第3版』の日本語訳本である。頸部,体幹・仙骨,肩,上腕,肘関節,前腕,手関節・手,股関節部,大
本邦にも触診解剖あるいは体表解剖の類書は複数あるが,本書は550ページを超える大著である。骨学と筋学を中心に構成されているが,神経および血管についても記載されている。触診方法の特徴としては,関節を特定のポジションに保持して神経の触診を容易にする工夫や,「性差」について述べられている箇所もある。学習書として第1章から順次読み進めることももちろん良いが,必要な情報が網羅されているため,索引を用いて辞書的に活用することも可能である。また随所に記述されている「クリニカルヒント」は,運動器疾患患者を検査・評価する際に遭遇するさまざまな場面を想定して大変詳細に述べられている。
このような専門書が改訂を重ねていることは,すなわち定評があることを示していると考えられるが,全体を概観すると,そのことをうかがわせる点がさまざまにある。
その一例が写真被写体のモデルの身体である。骨学と筋学での描写が非常にわかりやすい体表面を有していることに加え,触診部位をわかりやすく見せる写真を豊富に用いている。触診解剖の専門書としてこの種の写真は読者の理解を深める重要な鍵であると言える。掲載写真の何十倍ものショットから厳選されたのであろうことが推定される。またモデルの身体の背景面,身体の凹凸を際立たせるための照明の素晴らしさも秀でている。さらに,触診部位に応じた被検者と検者のポジショニング(肢位)を選んでいることも読み進めるうちにわかってくる。2次元の紙面であるにもかかわらず,3次元を意識して撮影されている点も本書の魅力の一つである。
触診解剖の技術的洗練度は運動器疾患だけではなく,中枢神経疾患や呼吸器疾患などにも重要なことであり,その方法論を詳細に習得することが求められる。これは,疼痛部位のメカニカルストレスを類推する手段としても有効である。米国版の原書のネット上評価も高く,近年盛んになっている超音波装置による身体の構造把握にも有益である。
本書は,学生が触診解剖書として活用するために十分な内容であるだけでなく,ベテランセラピストが検査・評価方法を再学習する手段にも十分堪え得る深い内容を有している。手元に置いておきたい好著である。
更新情報
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