処置時の鎮静・鎮痛ガイド
患者も術者もラクになる。処置時の鎮静・鎮痛を使いこなそう!
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縫合・除細動・内視鏡の挿入など、一般的な処置の際に、患者の痛みや不安を軽減する鎮静や鎮痛について、入門的に解説したガイドブック。基本的な考え方から薬剤の使い分け、場面別での方法やケーススタディも収録。非麻酔科医でも安全にできる、鎮静・鎮痛の世界的スタンダード。付録には、鎮静・鎮痛施行の際に必要な各種チェックリスト、同意書のひな形などを掲載し、またPDF形式でのダウンロード配信も行っている。
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『処置時の鎮静・鎮痛ガイド』 巻末付録1~4 (sedation.pdf) [A4・11頁 4.5MB]
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編集 | 乗井 達守 |
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発行 | 2016年11月判型:A5頁:256 |
ISBN | 978-4-260-02830-1 |
定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
更新情報
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- 序文
- 目次
- 書評
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序文
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まえがき
私は本屋を歩くのが好きです.色とりどりの表紙や,工夫された帯を見ると,幸せな気持ちになります.著者たちのグループが処置時の鎮静および鎮痛(procedural sedation and analgesia:PSA)コース,通称セデーションコースを始めたのが,2012年です.それ以降,本屋に行くたびに,PSAについての記述を探すようになりました.
つい先日,医学書コーナーで,消化器内視鏡の本を端から端まで読んでみましたが,PSAに関する記述があるのはたった1冊だけでした.しかも,半ページだけ.どれも,300ページ以上あるしっかりした厚みのある本です.PSAとよく関わりのある救急の本を見ても似たようなものでした.残念ながら,PSAについて学べる機会はいまだに多くありません.
米国で行われていたコースを日本向けに改良し,定期的に開催するようになってから5年.多くの方がコースを受講してくれました.麻酔科医だけでなく,救急医,小児科医,消化器内視鏡をされている先生や,循環器の医師や歯科医など,多様な医師が参加してくれました.PSAに定期的に関わる看護師の参加もよくあります.
参加者や,新しくインストラクターになった方から「もっと勉強したいが,よい教科書はないか?」という質問をよく受けました.残念ながら,そんな本はありませんでした.
そこで,この本を作ることにしました.この本は,小児から高齢者まで,どのような患者へのPSAも扱う対象としています.そのような,PSAのための実践的な本は日本で初めてです.麻酔科以外を専門にしている人にも読みやすいように,工夫しています.
そもそも鎮静は,麻酔科だけのものではありません.「“非”麻酔科医のための鎮静・鎮痛ガイドライン」という,ちょっと変わったタイトルのガイドラインがあります.この本の骨格となっているガイドラインで,本文中でも,何度も繰り返し引用されています.“非”麻酔科,というと,当然,麻酔科以外みんなを指します.内科,外科,救急科,産婦人科,小児科,それに放射線科だって入ります.
ところがこのガイドライン,麻酔科医によって書かれ,そして麻酔科医も読むことを前提に書かれています.載った雑誌も,ずばり“Anesthesiology(麻酔学)”.この雑誌を読んでいるのは,普通は麻酔科医です.“Anesthesiology”が机に並んでいる内科や外科の先生なんて見たことがありません.
論文のタイトルは,“非麻酔科医のための”と書かれていますが,“麻酔科医”が読むように書かれているわけです.非麻酔科医も,麻酔科医も,みんなが関わるトピック.それがPSAです.
本の前半でPSAの体系的なアプローチを紹介します.“リスクの評価はどうするのか”“鎮静中のモニタリングのピットフォール”“薬剤の特徴”など,PSAを行うにあたって土台となる知識を扱います.読者の方が施行される処置が,ある特定の処置であったとしても,各論を読まずに,まずこちらを読んでもらいたいと思います.
後半は,行う処置に応じたPSAを紹介しています.小児患者に対するMRI撮影とERCPのときのPSAでは,何が違うのでしょうか? 安全にPSAを行うためには,薬剤の選択やモニタリングをどうすればいいでしょうか? そのような具体的な内容を,エビデンスを吟味しながら記述しています.頻繁にPSAが行われる処置に関しては,ケーススタディで,実際の方法をイメージしやすいようにしています.
あなたが,PSAを始めたばかりの方であっても,毎日実践しているベテランの方であっても,麻酔科として院内で指導的な立場であったとしても,得るものがあると思います.その結果として,患者さんが安全に快適に処置を受けられるようになることが,私たちの希望です.
最後に,著者たちを支えてくれた家族や友人たち,そして出版社のスタッフに感謝の意を表したいと思います.多くのサポートがあって完成しました.
2016年10月
著者を代表して 乗井達守
私は本屋を歩くのが好きです.色とりどりの表紙や,工夫された帯を見ると,幸せな気持ちになります.著者たちのグループが処置時の鎮静および鎮痛(procedural sedation and analgesia:PSA)コース,通称セデーションコースを始めたのが,2012年です.それ以降,本屋に行くたびに,PSAについての記述を探すようになりました.
つい先日,医学書コーナーで,消化器内視鏡の本を端から端まで読んでみましたが,PSAに関する記述があるのはたった1冊だけでした.しかも,半ページだけ.どれも,300ページ以上あるしっかりした厚みのある本です.PSAとよく関わりのある救急の本を見ても似たようなものでした.残念ながら,PSAについて学べる機会はいまだに多くありません.
米国で行われていたコースを日本向けに改良し,定期的に開催するようになってから5年.多くの方がコースを受講してくれました.麻酔科医だけでなく,救急医,小児科医,消化器内視鏡をされている先生や,循環器の医師や歯科医など,多様な医師が参加してくれました.PSAに定期的に関わる看護師の参加もよくあります.
参加者や,新しくインストラクターになった方から「もっと勉強したいが,よい教科書はないか?」という質問をよく受けました.残念ながら,そんな本はありませんでした.
そこで,この本を作ることにしました.この本は,小児から高齢者まで,どのような患者へのPSAも扱う対象としています.そのような,PSAのための実践的な本は日本で初めてです.麻酔科以外を専門にしている人にも読みやすいように,工夫しています.
そもそも鎮静は,麻酔科だけのものではありません.「“非”麻酔科医のための鎮静・鎮痛ガイドライン」という,ちょっと変わったタイトルのガイドラインがあります.この本の骨格となっているガイドラインで,本文中でも,何度も繰り返し引用されています.“非”麻酔科,というと,当然,麻酔科以外みんなを指します.内科,外科,救急科,産婦人科,小児科,それに放射線科だって入ります.
ところがこのガイドライン,麻酔科医によって書かれ,そして麻酔科医も読むことを前提に書かれています.載った雑誌も,ずばり“Anesthesiology(麻酔学)”.この雑誌を読んでいるのは,普通は麻酔科医です.“Anesthesiology”が机に並んでいる内科や外科の先生なんて見たことがありません.
論文のタイトルは,“非麻酔科医のための”と書かれていますが,“麻酔科医”が読むように書かれているわけです.非麻酔科医も,麻酔科医も,みんなが関わるトピック.それがPSAです.
本の前半でPSAの体系的なアプローチを紹介します.“リスクの評価はどうするのか”“鎮静中のモニタリングのピットフォール”“薬剤の特徴”など,PSAを行うにあたって土台となる知識を扱います.読者の方が施行される処置が,ある特定の処置であったとしても,各論を読まずに,まずこちらを読んでもらいたいと思います.
後半は,行う処置に応じたPSAを紹介しています.小児患者に対するMRI撮影とERCPのときのPSAでは,何が違うのでしょうか? 安全にPSAを行うためには,薬剤の選択やモニタリングをどうすればいいでしょうか? そのような具体的な内容を,エビデンスを吟味しながら記述しています.頻繁にPSAが行われる処置に関しては,ケーススタディで,実際の方法をイメージしやすいようにしています.
あなたが,PSAを始めたばかりの方であっても,毎日実践しているベテランの方であっても,麻酔科として院内で指導的な立場であったとしても,得るものがあると思います.その結果として,患者さんが安全に快適に処置を受けられるようになることが,私たちの希望です.
最後に,著者たちを支えてくれた家族や友人たち,そして出版社のスタッフに感謝の意を表したいと思います.多くのサポートがあって完成しました.
2016年10月
著者を代表して 乗井達守
目次
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Part 1 序論
(1)処置時の鎮静および鎮痛とは
Part 2 処置前の評価と準備
(1)体系だった問診・身体診察
Part 3 モニタリング
(1)モニタリングの必要性と注意点
Part 4 薬剤の特徴と使い分け
(1)PSAに使う薬剤:総論
Part 5 処置後のケア
(1)処置後の経過観察
Part 6 合併症対策
(1)主な合併症の種類と頻度
Part 7 状況別の鎮静・鎮痛
(1)救急外来
Part 8 小児と高齢者について
(1)小児における注意点
Part 9 ケーススタディ
(1)骨折整復の患者
(2)除細動の症例
(3)縫合を必要とする小児
(4)小児のMRI
(5)内視鏡
(6)歯科・口腔外科患者
(7)合併症:モニタリング・蘇生の失敗
(8)合併症:拮抗薬の不適切な使用
Part 10 トレーニング乗井達守
付録
索引
(1)処置時の鎮静および鎮痛とは
誰でも不快なのは嫌だ/処置時の鎮静および鎮痛(PSA)とは/合併症は珍しいが怖い/時には鎮静をしないという選択肢も/インフォームド・コンセント
(2)ガイドライン諸外国のガイドライン/日本のガイドラインの現状
(3)PSAをめぐる歴史と研究進化し続けるPSA/やはり気になるのは安全性/鎮痛は本当に必要なのか?/忘れるということ/これも,PSAといっていいの?/日本は発展途上
Part 2 処置前の評価と準備
(1)体系だった問診・身体診察
AMPLEで問診を行う
(2)気道の評価LEMONSで挿管困難を予測する!/MOANSで換気困難を予測する!/HOPで病態困難を予測する!/実際に気道トラブル,換気困難が起きたとき
(3)ASA分類ASA分類とは/ASA分類によるPSAのリスク評価
(4)準備するもの必要な物品はSOAPIERでチェック/実は大切な経過観察のための人員と場所/ACLSは必修科目!
(5)前酸素化のメリット/デメリット前酸素化の方法/酸素化をめぐるエビデンス/前酸素化のデメリット
Part 3 モニタリング
(1)モニタリングの必要性と注意点
全身麻酔とPSA/モニタリングの原則/各臓器機能とモニター
(2)モニタリング各論パルスオキシメーター/灌流指数(PI)/心電図モニター/非観血的血圧測定/カプノグラフィ/BISモニター/深部体温
(3)モニタリングのTips最新のモニター/モニターの配置/アラームの設定/最も重要なモニターはどれか/[Q&A] 人手が少ないときはどうしたらよいでしょうか?
Part 4 薬剤の特徴と使い分け
(1)PSAに使う薬剤:総論
中枢神経系での濃度上昇が大事!/過量投与を防ぐためには/胎児にも薬は届きます
(2)鎮静薬ゆっくり効いてゆっくり目覚めるミダゾラム/素早い入眠と覚醒が特徴のプロポフォール/小児へのプロポフォール投与/[Q&A] プロポフォールとミダゾラムの使い分けは?/プレセデックス® は今後に期待/バルビツレート系薬剤
(3)鎮痛薬強力な鎮痛薬フェンタニルを使いこなす!/麻薬ではない鎮痛薬
(4)ケタミン古くて新しい薬・ケタミン/ケタミンとインフォームド・コンセント/ケタミン+プロポフォール=ケトフォール
(5)拮抗薬・補助薬・薬物以外拮抗薬の作用は一時的/音楽・アロマ/血腫ブロック
Part 5 処置後のケア
(1)処置後の経過観察
「処置の終わり=鎮静の終わり」ではない/処置後モニタリングの目安は30分
(2)帰宅基準帰宅OKの基準は意識とバイタルサインの回復(+α)
(3)帰宅時の指導帰宅後にも鎮静薬の影響は残りうる/車の運転には特に注意/帰宅後の注意事項説明用紙を作っておくと便利/[Q&A] 処置後の評価をするのは,医師でないとダメでしょうか?/[Q&A] 患者さんを早く帰宅させたいので,拮抗薬を使ってもよいでしょうか?
Part 6 合併症対策
(1)主な合併症の種類と頻度
飛行機事故による死亡事故なみに珍しい,重篤な合併症/事前評価とモニタリングで合併症を防ぐ/緊急着陸はしたくない,でも必要なときにはうまくやらなければならない/早期の対応が,重篤な合併症を防ぐ
(2)基本は常にABCDAirway:気道の問題は,一刻を争う/Breathing:合併症のなかでは呼吸器系が多い/Circulation:ハイリスク患者は,静脈ルートを2ルート確保/Disability:事前に行う家族への説明が重要
(3)合併症から何を学ぶのか合併症対策は国際的には最も重要視される医療評価である/[Q&A] 合併症が発生したときの蘇生に自信がありません.どうすればよいでしょうか?/[Q&A] 合併症に関するデータは,海外のデータばかりです.日本にも,そのようなデータが当てはまるのでしょうか?
(4)局所麻酔薬中毒頻度は低いが,危険な合併症/LAST発生時の対処法/何よりも予防が重要!
Part 7 状況別の鎮静・鎮痛
(1)救急外来
救急外来におけるPSAとは/救急外来と一般外来の違いを認識する/鎮静・鎮痛の事前の評価・準備をし,処置の緊急度を把握する/処置の種類や患者背景により,PSAを最適化する/鎮静の前に準備すべきモノ・ヒトをそろえる/起こりえる合併症とその頻度/帰宅時の注意点/[Q&A] 処置に対する鎮静と画像検査時の鎮静の違いは何ですか?
(2)CT/MRI撮影時CT/MRI検査時の鎮静について/MRI室の特殊性を理解する/モニタリングについて/[Q&A] CTやMRI検査時の鎮静に使用される代表的な薬剤について,具体的な投与量と投与方法を教えてください
(3)上下部消化管内視鏡内視鏡時の目標深度/状況別の鎮静薬・鎮痛薬の使い分け/麻酔科へコンサルトをしたほうがよいケース/内視鏡における拮抗薬について/飲酒と鎮静薬の関係
(4)気管支鏡局所麻酔/気管支鏡時の目標深度/経静脈麻酔/抗コリン薬/内視鏡の際の気道デバイス
(5)歯科・口腔外科日本における歯科麻酔の現状/なぜ歯科治療において鎮静が必要なのか/歯科における鎮静は浅~中等度の鎮静を目安に行う/救急外来における歯科・口腔外科領域の麻酔
Part 8 小児と高齢者について
(1)小児における注意点
小児の解剖・生理学的特徴を把握する/事前準備:絶食時間,気道困難のリスク評価/それぞれの患児にあわせた鎮静,鎮痛方法の選択/患児,保護者への説明/[Q&A] 慣れていない小児の患者に鎮静をかけることが不安ですが,どうにかなりませんか?/ [Q&A] 保護者は鎮静時,処置時には待合室に出すべきですか?/[Q&A] LET液のレシピを教えてください
(2)高齢者における注意点科を問わず,高齢者への処置の機会は多い/生理機能の低下+個人差が大きい/高齢者では鎮静薬・鎮痛薬の感受性が高い/高齢者ではpolypharmacy(多剤多量処方)の患者が多い/高齢者はバッグバルブマスクによる陽圧換気が難しい/[Q&A] 高齢者の処置時の鎮静は,いろいろ注意する点が多くて,不安になってきました/[Q&A] 少量投与とは,具体的にどれくらいの量を投与すればよいのでしょうか?
Part 9 ケーススタディ
(1)骨折整復の患者
(2)除細動の症例
(3)縫合を必要とする小児
(4)小児のMRI
(5)内視鏡
(6)歯科・口腔外科患者
(7)合併症:モニタリング・蘇生の失敗
(8)合併症:拮抗薬の不適切な使用
Part 10 トレーニング乗井達守
有害事象は必ず発生する/なぜシミュレーションコースが必要なのか/米国におけるトレーニングコース/日本の現状/シミュレーションにおける工夫/[Q&A] 看護師や技師など(医師以外)が受けられるコースはないのでしょうか?
付録
1.鎮静時のチェックリスト
2.セデーションタイムアウト時のチェックリスト
3.直前チェックのための参考資料
4.鎮静薬(・鎮痛薬)使用同意書
5.小児の鎮静前後の評価に用いるチェックシートの例
6.小児の鎮静後に家族への説明・指導に用いる文書の例
7.「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」の早見表
2.セデーションタイムアウト時のチェックリスト
3.直前チェックのための参考資料
4.鎮静薬(・鎮痛薬)使用同意書
5.小児の鎮静前後の評価に用いるチェックシートの例
6.小児の鎮静後に家族への説明・指導に用いる文書の例
7.「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」の早見表
索引
書評
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もうビビらない! 鎮痛・鎮静の安全・安心ガイド登場
書評者: 林 寛之 (福井大附属病院教授・総合診療部)
「医学は耳学問とみたり」などという指導を受けて育ったわれわれ古だぬき医者にとっては,本書は目からうろこの宝の山だ。特に事例が多く,薄い本というのが実によい(テヘ!)。古来,日本人は我慢強いのが美徳とされ,患者さんの痛みにはあまり共感的ではなく,処置を優先するのが当たり前であった。「胃カメラで鎮静してほしいなんて根性のない」などと言ったものだが,とんでもはっぷん,胃カメラは特に若い人であれば地獄のようにつらい手技であることに変わりはない。
不思議なことに,医療者も自分自身が患者にならないと患者に寄り添う本当の医療が実感できないものなのかもしれない。古狸先生が患者さんに優しい良医である場合,案外自分も健康を害したことがあり,その経験が良医たるべく肥やしになっているのではないかしらン? 「痛み」は第5のバイタルサインと言われ,患者さんの敏感であることも,医療者としてはすごく大事な資質なのだ。
でも,経験が少ない若先生に朗報です。海外では当たり前のように,鎮静・鎮痛のガイドラインに沿った医療が行われている一方,日本ではなかなか学ぶ機会のなかったこの手法を本書から学ぶことができるようになりました。パチパチ。
患者さんの安全安心を提供するためには,自分が慣れた薬剤を数種類知っていればよい。単なる薬剤の使い分けを知るのではなく,同時進行で必要なモニタリングの知識,副作用,合併症,状況別の使い分けを知っておくと臨床に自信が付いてくる。本書では,救急外来,CT室・MRI室,気管支鏡,歯科処置に関して具体的な記載があるので,基本的な鎮痛・鎮静はできるようになる。特に合併症をきたしやすい小児や高齢者に関して,別章を立てて解説しているのは特筆すべきことだ。鎮静も過ぎたるは及ばざるがごとし,ちょうどいいのが一番よい。その点,日本の保険診療に沿った形になっており,海外の単なる訳本とは根本的に異なる,日本の医療のための本と言える。
巻末にはいつでもすぐチェックできるように薬剤などのまとめが書いてあるので,読了後も本書を調べてひもとくのが便利な構成になっている。
小児の顔面縫合など,子どもを押さえつけるような野蛮な荒行は卒業して,適切な環境で適切な薬剤を適切な量使えるようになると,きっとあなたも自信を持って良医にまた一歩近づけたと言えるんじゃないかしらン?
書評者: 林 寛之 (福井大附属病院教授・総合診療部)
「医学は耳学問とみたり」などという指導を受けて育ったわれわれ古だぬき医者にとっては,本書は目からうろこの宝の山だ。特に事例が多く,薄い本というのが実によい(テヘ!)。古来,日本人は我慢強いのが美徳とされ,患者さんの痛みにはあまり共感的ではなく,処置を優先するのが当たり前であった。「胃カメラで鎮静してほしいなんて根性のない」などと言ったものだが,とんでもはっぷん,胃カメラは特に若い人であれば地獄のようにつらい手技であることに変わりはない。
不思議なことに,医療者も自分自身が患者にならないと患者に寄り添う本当の医療が実感できないものなのかもしれない。古狸先生が患者さんに優しい良医である場合,案外自分も健康を害したことがあり,その経験が良医たるべく肥やしになっているのではないかしらン? 「痛み」は第5のバイタルサインと言われ,患者さんの敏感であることも,医療者としてはすごく大事な資質なのだ。
でも,経験が少ない若先生に朗報です。海外では当たり前のように,鎮静・鎮痛のガイドラインに沿った医療が行われている一方,日本ではなかなか学ぶ機会のなかったこの手法を本書から学ぶことができるようになりました。パチパチ。
患者さんの安全安心を提供するためには,自分が慣れた薬剤を数種類知っていればよい。単なる薬剤の使い分けを知るのではなく,同時進行で必要なモニタリングの知識,副作用,合併症,状況別の使い分けを知っておくと臨床に自信が付いてくる。本書では,救急外来,CT室・MRI室,気管支鏡,歯科処置に関して具体的な記載があるので,基本的な鎮痛・鎮静はできるようになる。特に合併症をきたしやすい小児や高齢者に関して,別章を立てて解説しているのは特筆すべきことだ。鎮静も過ぎたるは及ばざるがごとし,ちょうどいいのが一番よい。その点,日本の保険診療に沿った形になっており,海外の単なる訳本とは根本的に異なる,日本の医療のための本と言える。
巻末にはいつでもすぐチェックできるように薬剤などのまとめが書いてあるので,読了後も本書を調べてひもとくのが便利な構成になっている。
小児の顔面縫合など,子どもを押さえつけるような野蛮な荒行は卒業して,適切な環境で適切な薬剤を適切な量使えるようになると,きっとあなたも自信を持って良医にまた一歩近づけたと言えるんじゃないかしらン?
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