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脳神経外科レジデントマニュアル

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定評あるレジデントマニュアルシリーズ、待望の脳神経外科版。脳神経外科診療の現場においてレジデントレベルで必要とされる全般的事項を、実践的かつコンパクトにまとめた。実際の診療手順や処方例、患者管理、救急対応など具体的な記載にあふれ、本書を開けばすぐに知りたいことを確認できる。脳神経外科研修医はもちろん、脳神経外科疾患に携わる機会のあるすべての医師にお勧めしたい、ポケットサイズの頼りになる1冊。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 若林 俊彦
編集 夏目 敦至 / 泉 孝嗣
発行 2016年05月判型:B6変頁:384
ISBN 978-4-260-02533-1
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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 近年の医理工農薬学等の横断的研究領域の著しい進歩により,脳神経外科医がかかわる医療現場には大きな変革が起こってきている.数年前までは治療不可能であった脳神経疾患も,今では新たに開発された最新診断技術や手法技法を用いて果敢な挑戦が実践され,以前とは比べ物にならないほどの好成績をあげている疾患も数多い.この,時代を超えた「光と影」の医療現場の現実に携わり,元気に退院していく患者さんに手を振って送り出しながら,その一方で,自分がレジデント時代に診てきた数多くの難治性疾患の患者さん一人ひとりの顔が頭をよぎり,“あのときに何もしてあげられなかったあの人に,今の時代であれば,こんな治療ができたのに,治してあげられたのに”と思うことしばしばである.

 そんな医療技術の大きな変革の時期に,脳神経外科レジデントのメンバーに向けて最新の診断および治療マニュアルを監修作成する要請を,医学書院 医学書籍編集部の飯村祐二氏から受けた.小生の高校の後輩でもある飯村氏は,私には容赦はない.単刀直入に,“この『レジデントマニュアル』に課せられた使命として,(1)臨床現場の脳神経外科領域全般を網羅し,(2)最新の医療情報を,(3)簡潔な記載で迅速に参照でき,(4)繰り返しの改訂にも耐えられる知力と組織力が要求されます”と伝えてきた.若い頃には血気盛んで寝食も忘れて,どんな難題にも前向きに挑戦し続けてきた「脳神経外科医」が,救えなかった患者さんへのせめてもの償いとして今できることは,現在の若きレジデントに最新の技術と情報をいち早く伝授し,そして今まさに医療現場で生命の危機に瀕している患者さん達に最高の医療を持って応えてもらうように,最大限の支援をすることと決意した.そのため,今回は小生の所属する名古屋大学脳神経外科同門メンバーに依頼し,その総力を結集して,編集・執筆・校正・発刊に挑んだ.

 脳神経外科医のかかわる疾患は,往々にして時間との戦いとなる.現場での適切な診断と最高の医療技術を駆使してこそ救える命に直面する.この本を産み出す現場も,執筆者全員で全く同じ精神で臨んだ.緊急の医療現場には,往々にして上司も相談相手もおらず,君しか居ない.そんなときに,このレジデントマニュアルを開けば,今,君が何をすべきかを瞬時に理解できるようにという想いを込めて作成した.本書が,読者の君が「脳神経外科レジデント」として最高の医療を実践する一助になり,現場で苦しむ患者さんを一人でも多く救ってあげられることができたら,本望である.

 2016年5月
 若林俊彦

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 本書で使用した主な略語一覧

第1章 基本的診察の手順
 1.主訴・病歴の聴取と身体所見
 2.神経学的所見
 3.意識障害の鑑別
 4.頭痛の鑑別
 5.めまいの鑑別
 6.痙攣の鑑別
 7.運動障害の鑑別
 8.感覚障害の鑑別
 9.言語障害の鑑別
 10.小児症例の診察
 11.高齢者症例の診察

第2章 画像診断の手順
 1.単純X線
 2.CT
 3.MRI
 4.脳血管撮影(DSA)
 5.PET
 6.SPECT

第3章 日常よく遭遇する脳神経外科疾患
 1.脳血管障害
  (1)脳梗塞
  (2)脳出血
  (3)くも膜下出血(SAH)
  (4)脳動静脈奇形(AVM)
  (5)頸部内頸動脈狭窄症
  (6)もやもや病
 2.脳腫瘍
  (1)神経膠腫(グリオーマ)
  (2)髄膜腫
  (3)下垂体腫瘍
  (4)聴神経腫瘍
  (5)転移性脳腫瘍
 3.脊髄脊椎疾患
  (1)椎間板ヘルニア
  (2)脊柱管狭窄症
  (3)靭帯骨化症
  (4)脊髄腫瘍
  (5)脊髄脊椎損傷
  (6)脊椎感染症(化膿性脊椎炎)
  (7)脊椎硬膜外血腫
 4.機能的脳神経外科疾患
  (1)Parkinson病
  (2)ジストニア
  (3)振戦
  (4)てんかん
 5.小児脳神経外科疾患
  (1)頭蓋骨奇形
  (2)脳瘤
  (3)二分脊椎症
  (4)幼児虐待症候群
 6.頭部外傷
  (1)急性硬膜下血腫
  (2)急性硬膜外血腫
  (3)脳挫傷
  (4)慢性硬膜下血腫
 7.感染症
  (1)髄膜炎
  (2)脳炎
  (3)脳膿瘍
  (4)敗血症

第4章 基本的術前術後の管理
 1.バイタルサインと身体所見
 2.入院時の検査
 3.予定手術前の指示
 4.緊急手術前の指示
 5.抗菌薬の予防的投与法
 6.手術後の指示
 7.静脈栄養と経腸栄養
 8.術後合併症の予防と対策
 9.ドレナージチューブの管理
 10.頭蓋内圧モニターの管理
 11.手術創の管理
 12.褥瘡の管理
 13.輸血

第5章 各種疾患を有する患者の管理
 1.感染をもつ患者の管理
 2.神経・精神疾患をもつ患者の管理
 3.呼吸器疾患をもつ患者の管理
 4.循環器疾患をもつ患者の管理
 5.肝疾患をもつ患者の管理
 6.腎疾患をもつ患者の管理
 7.糖尿病をもつ患者の管理
 8.痙攣をもつ患者の管理
 9.内分泌疾患をもつ患者の管理
 10.消化管疾患をもつ患者の管理
 11.疼痛をもつ患者の管理

第6章 脳神経外科疾患の救急対応
 1.意識障害の救急対応
 2.脳梗塞の救急対応
 3.脳出血の救急対応
 4.くも膜下出血(SAH)の救急対応
 5.頭部外傷の救急対応
 6.脳圧亢進症状の救急対応
 7.痙攣重積の救急対応
 8.呼吸・循環障害の救急対応

第7章 薬剤の管理
 1.抗血小板薬,抗凝固薬
 2.抗痙攣薬
 3.抗がん剤
  (1)テモゾロミド(テモダール®
  (2)ベバシズマブ(アバスチン®
 4.鎮痛薬
 5.抗うつ薬
 6.静脈麻酔薬
 7.小児の投薬量

第8章 代表的手術アプローチ
 1.前方アプローチ
  (1)Pterional approach
  (2)Transsylvian approach
  (3)Subfrontal approach
  (4)Interhemispheric approach
 2.側方アプローチ
  (1)Subtemporal approach
  (2)Anterior petrosal approach
 3.後方アプローチ
  (1)Occipital transtentorial approach
  (2)Posterior transcallosal approach
 4.後頭下アプローチ
  (1)Posterior transpetrosal approach
  (2)Infratentorial supracerebellar approach
  (3)Midline suboccipital approach
 5.経鼻的アプローチ
  (1)Endonasal endoscopic approach
  (2)Extended endonasal endoscopic approach
 6.水頭症の管理
  (1)水頭症
  (2)正常圧水頭症
 7.血管内治療
  (1)脳動脈瘤コイル塞栓術
  (2)頸動脈ステント留置術(CAS)
  (3)急性期血管再開通療法
 8.脊椎手術
  (1)頸椎前方固定術
  (2)頸椎椎弓形成術(両開き式)
  (3)腰椎片側開窓術
  (4)腰椎後方除圧術(棘突起縦割法)

第9章 緩和医療
 1.脳神経外科における終末期緩和医療

付録 データファイル
 1.JCS
 2.GCS
 3.Hunt & Kosnik分類
 4.WFNS分類
 5.Fisher分類
 6.NIHSS
 7.Spetzler-Martin分類
 8.脊髄疾患における脊髄高位診断
 9.Hoehn & Yahrの重症度
 10.頭部外傷分類
 11.乳幼児用GCS
 12.早期癒合した縫合線と頭蓋変形
 13.虐待チェックシート
 14.小児の抗痙攣薬と血中濃度

索引

Side Memo
もやもや病の外科治療における合併症の回避
ガンマナイフ
ノバリス
たこつぼ型心筋症
出血による危険性の高い手術の場合の抗血小板薬および抗凝固薬の休薬期間
世界のクリップ
DWI-ASPECTSの求め方
刃の使い方
助手の役割と顕微鏡
患者から「自殺したい」と言われたら…
脳死判定

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執筆陣の熱意が詰まった,渾身の臨床マニュアル
書評者: 高橋 淳 (国立循環器病研究センター脳神経外科部長)
 本書『脳神経外科レジデントマニュアル』を,レジデントのみならず全ての脳神経外科医に薦めたい。

 本書の特徴は,(1)脳神経外科実臨床に必要とされる膨大な知識を大胆に取捨選択し,ポケットサイズのB6変型判わずか350ページの中に集約したこと,(2)単なるデータブックではなく,内容に深く「血が通っている」ことである。

 前半1~3章では基本診察手順や画像読影手順,疾患別のポイントが簡潔に述べられており,従来のマニュアル本の形を踏襲している。しかし本書では,書の後半になるほど内容の深みが猛烈に増してくる。

 第4章「基本的術前術後の管理」では,鎮痛薬の選択,手術創の管理など,通常の教科書には記載されない実践的な知識が網羅されている。第5章「各種疾患を有する患者の管理」では,呼吸器疾患患者への低容量換気のプロトコールやFiO2とPEEPの至適調整表,急性腎障害の鑑別ポイント,そして疼痛を訴える患者に対する執筆陣の体系的アプローチなど有益な情報が詳細に網羅され,読者はナルホドと膝を打つこと請け合いである。第7章「薬剤の管理」はNOACsをはじめとする多くの新規薬剤の実践的使用法を示すとともに小児の投薬量にも明確に言及し,まさに痒いところに手が届く構成となっている。第8章「代表的手術アプローチ」は単なる基本術式の羅列かと思いきや,ヘッドピン刺入位置やクラニオトームの刃の傾け方,脳べらの正しい使用方法など,毎日手術室でシニアスタッフがレジデントに逐一教える内容が,全て具体的に書かれているのである。

 最終第9章「緩和医療」はまさに本書の白眉である。脳神経外科における終末期緩和医療の特性,鎮痛剤使用の5原則などが解説されている。なんと,臨終の看取り方にまで言及されている(!)。さらに,「患者から『自殺したい』と言われたら」というコラム(Side Memo)を読むに至り,本書はもう,「レジデントマニュアル」というシリーズ名のレベルを超越していることを確信した。最終付録「データファイル」を見て,本書がマニュアル本であったことにはっと気づく。

 本書は海外の優れたレジデントマニュアルと堂々と渡り合える,渾身の一冊である。医学書院の同名のシリーズの中でも,特に輝いている。名大脳神経外科若林教授の監修コンセプト,そして執筆に当たった同教室員の熱意と労力に心から敬意を表したい。熱い思いは,多くの読者に間違いなく届くであろう。

 本書はシニアスタッフにとっても,十分に読み応えがある。実は私も,院内ではポケットに入れて頻繁に持ち歩いている。素晴らしい書の完成に,心から賛辞を送りたい。
脳神経外科臨床を学ぶレジデントの力強い味方
書評者: 寳金 清博 (北大教授・脳神経外科)
 名古屋大学脳神経外科講座とその関係者の総力を挙げた力作である。出版の医学書院の力の入れようも半端なものではなかったことが,若林教授(名大大学院教授)の「序」からもよく理解できる。

 現代の脳神経外科学が,学問領域として独立した時期をHarvey Cushing先生のハーバード大学教授就任のときと仮定しても,もう既に100年以上が経過している。この間,先人たちの努力による膨大な知識と経験の蓄積がある。その情報量は,既にbig dataの領域に達している。

 これを系統立った成書として記載することは容易ではない。精度を追求すれば,百科事典的なものにならざるを得ない。しかし,新たに脳神経外科を学ぶレジデントや学生には,限られた時間しか与えられていない。彼らは実に勤勉であり,よく働く。しかし,最近の医療現場は,知識が最も必要なレジデントの先生方から時間的余裕を奪いつつある。そして,彼らレジデントが,実際の患者診療の現場では患者さんに最も近い「主役」であることは,看過できない事実である。つまり,最も知識と経験を必要とするべき「主役」たちには,膨張し続ける「脳神経外科学」を学ぶ時間も手引きもないことは,患者さんにとっても深刻な事態である。そして,この憂慮すべき状況は,脳神経外科学に限らないことである。

 いわゆる「マニュアル」本を依頼された側は,膨大な学問体系の中から実臨床に必要な知識をいかに大胆に,かつ細心にダウンサイズするかに苦悩する。そして当然のことながら,学問領域の膨張を考えると,いかなる博覧強記の人間といえども,単独で成し遂げられないことは明らかである。結果,ある知識集団による分担執筆となる。

 「臨床マニュアル」は,持ち運べる分量であり文庫程度の「量的な制限」の中で,(1)知識が実臨床の多様性と即時性の観点から真に実用的であること,(2)全体の整合性が取れていることという,実に高いハードルが設定されることになる。この2つは,一般には両立が難しいことで,そこに「マニュアル」作りの難しさがある。まして,スマートフォンでインターネットを使えば,あっという間に最低限の知識にたどり着く時代である。正直,「マニュアル本」を引き受けるのは相当な勇気と実力が必要な時代である。

 本書は,上記の全ての点を見事に克服している。膨大な学問に発展した脳神経外科臨床に必要十分な知識や技術が実に見事に整理され,ベッドサイドで力を発揮できるマニュアルとなっている。第1章の診察の手順から第9章の緩和医療,付録のデータファイルまで,現在の脳神経外科臨床を学ぶレジデントには,力強い味方となってくれる。臨床の主役,患者さんに一番近いレジデントの力になることは,言い換えれば,「患者さん」の力強い味方である。

 本書が,ひとりでも多くのレジデントの学びをサポートすることで,患者さんの幸せに貢献することを期待するものである。
日常診療の様々な場面を想定した実践的ポケットマニュアル
書評者: 齊藤 延人 (東大教授・脳神経外科)
 このたび,『脳神経外科レジデントマニュアル』が,名古屋大学脳神経外科の若林俊彦教授の監修で上梓された。編集・執筆陣を見ると,名古屋大学脳神経外科教室の総力を挙げての力作であることがうかがえる。

 まず,この本は編集コンセプトが良い。常に持ち運んで使用することを想定し設計された実践的なマニュアルである。厚すぎず薄すぎず,程よいサイズのポケットマニュアルとなっている。

 序文の中で若林教授は,(1)臨床現場の脳神経外科領域全般を網羅し,(2)最新の医療情報を,(3)簡潔な記載で迅速に参照でき,(4)繰り返しの改訂にも耐えられる知力と組織力が要求されることを,このマニュアルのコンセプトとして挙げている。脳神経外科診療に関する情報量はますます増え,教科書は何倍もの厚さに膨れ上がっている。外国版の著名なレジデントマニュアルもあるが,内容は充実しているものの,もはや常時持ち運ぶサイズではない。本書はポケットサイズの中に何を詰め込むか,レジデントが現場で遭遇するさまざまな事態を想定して必要かつ十分な知識と情報を収載する,そのことにこだわり抜いて内容を取捨選択し,まとめ上げることに成功している。当然,内容の充実度も比類がない。単なる備忘録でもなく,概念や論理を学ぶための教科書とも違った,ポケットマニュアルのジャンルの中に,新たな存在感を示している。

 さて,実践の経験が乏しいレジデントにとって,病気の知識は学んでいるが,実践用の知識は足らず,これを新たに修得する必要がある。また,教科書などに溢れる情報の中から迷子にならず,当面必要なものを取捨選択し実践に備える必要がある。このマニュアルはそのための最適な道標を提供してくれる。

 この本の章立てを見ると,日常診療のさまざまな場面を想定して,まとめられている。すなわち,「第1章 基本的診察の手順」「第2章 画像診断の手順」「第3章 日常よく遭遇する脳神経外科疾患」「第4章 基本的術前術後の管理」「第5章 各種疾患を有する患者の管理」「第6章 脳神経外科疾患の救急対応」「第7章 薬剤の管理」「第8章 代表的手術アプローチ」「第9章 緩和医療」「付録 データファイル」の10項目である。中でもレジデントにとってありがたいのは,第4章の術前術後管理における薬の処方例だろう。また,第9章の緩和医療の項は他書では見られない特色である。患者さんの意識レベルの低下を伴う脳神経外科の緩和医療は,教科書にもあまり書かれていない分野だが,レジデントにとっては現場で遭遇する重要な分野なのである。その他にも,図やさまざまなグレーディングスケール,必要事項が満載されている。

 このマニュアルは,どこに何が書いてあるかざっと目を通しておいて,後はポケットに入れておいて必要なときにすぐに読む,そんな使用方法が推奨される。内容の濃さからは,レジデントばかりでなく指導医クラスにも役立つであろう。繰り返しの改訂が想定されての一冊である。内容が良い分,責任も大きい。今後の進化も含め,脳神経外科レジデントの定番となることを確信している。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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