脳卒中の下肢装具 第3版
病態に対応した装具の選択法

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脳卒中の下肢装具療法は種類が多く(短下肢装具:約30種類、長下肢装具、股装具、膝装具など)、患者の病態もさまざまなため、フィッティングは容易でない。本書は装具の機能分類だけでなく、片麻痺者の身体機能を加味し、個々の状態に適した装具の機能を紹介。今版では、理学療法士へのアンケートをもとにした項目「脳卒中歩行訓練と装具の選定・適応に関する理学療法士の質問」を新設し、より実践に即した内容に改訂。
渡邉 英夫 / 平山 史朗 / 藤崎 拡憲
発行 2016年03月判型:A5頁:208
ISBN 978-4-260-02488-4
定価 4,620円 (本体4,200円+税)
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第3版 序

 初版の序文にもある通り,本書は脳卒中の装具の知識が深くなくても,適切な装具を選択する方法はないものかとの考えから出発している。また,なるべく図,表を主として,直感的にわかりやすくまとめるという編集方針も初版から一貫しているところである。

 2007年10月の初版,2012年5月の第2版と,比較的短い期間で版を重ねることができたことは,本書の編集方針が読者対象となる医師,理学療法士,義肢装具士などの方々に受け入れていただけた証であろう。

 さて,今回の第3版は次のように大幅な内容の変更を行った。

1.オールカラーになった。
 旧版は2色刷りであったが,今回は本文が4色フルカラーとなった。そのために装具の写真を数多く入れ替えた。それで主役の装具の写真が大幅に見やすくなったと思う。

2.旧版出版後に新しく発表された短下肢装具5種類を加え,改変・改良された短下肢装具の4種類を変更し,販売中止となった装具は削除した。
 さらに一般的な装具の教科書に掲載されているような項目はできるだけ省き,総ページ数が旧版より増え過ぎないように取捨選択を行った。

3.理学療法士へのアンケート調査を掲載した。
 脳卒中片麻痺患者に下肢装具を装着し,歩行訓練を行っている現場の理学療法士139名に対し,日頃この分野で疑問に思っていることを尋ね,それらに対する著者の回答を掲載した。

4.病院に常備すべき訓練用装具の記述を一層充実させた。
 脳卒中の急性期や回復期リハビリテーションを行う病院が,適切な訓練用下肢装具を常備することは大変重要なことだと考えるので,これに関連して股装具の意義などを含め記述を充実した。

5.臥床中に生じうる廃用症候群の予防対策の項目を新しく加えた。
 理学療法士のアンケートにもあるが,脳卒中の臥床患者で特に起こりやすい尖足,内反足などの廃用症候群の予防は重要関心事であり,新しい工夫も紹介した。

6.今回の大幅な改変に伴い,著者に理学療法士2人を加え3人体制で執筆を行った。

 本書がこれまで以上に,脳卒中片麻痺者の早期のADL回復,社会復帰に少しでも役立つことを願っている。

 2016年3月
 著者代表 渡邉英夫

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1 はじめに
2 脳卒中に用いられる主な短下肢装具(AFO:ankle foot orthosis)
3 脳卒中に用いられる主な足継手
4 脳卒中のAFOの全国アンケート調査
 -回復期リハビリテーション病院で処方したAFOの種類
5 脳卒中に用いられる下肢装具の種類
  1)短下肢装具(AFO:ankle foot orthosis)
  2)長下肢装具(KAFO:knee ankle foot orthosis)
  3)股装具(HO:hip orthosis)
  4)膝装具(KO:knee orthosis)
  5)その他
6 脳卒中の下肢装具療法
  1)下肢装具の効果
  2)下肢装具療法の特徴
  3)処方に際しての実用的考え
7 脳卒中早期の装具選定法
  1)脳卒中の早期リハビリテーションにおける下肢装具の目的
  2)早期歩行訓練における下肢装具の選定法
  3)脳卒中のAFO選択法-平行棒内の裸足歩行から判断する
   問題点と望ましいAFOの機能-
8 脳卒中の下肢装具での歩行訓練について
9 脳卒中のAFO選択について検討すべき事項
  1)歩行周期とAFOの望ましい機能
  2)脳卒中の裸足歩行で観察すべき異常とその原因
  3)AFOの足継手機能と適応病態
  4)脳卒中の調節式足継手付きAFOにおける機能と適応
  5)下肢関節の拘縮・変形に対する装具での対応
  6)プラスチック一体型AFOの撓みの種類
  7)AFOの背屈角度とSVA
10 脳卒中に用いられるAFOの分類
  1)足継手の有無による分類
  2)機能面からの分類
  3)足継手付きプラスチックAFOで底屈制限の方法
  4)足継手付きプラスチックAFOで背屈補助の方法
11 脳卒中の病態からのAFOの選定,処方
  1)AFO選定のための検討順序
  2)脳卒中のAFO処方に際しての病態チェック表
  3)脳卒中の病態チェック表(参考例)
  4)病態のチェック表の項目に関する基本的な考え方
  5)足関節MMTからのAFOの機能選択案
  6)シューホーン型AFO処方で考慮すべきこと
12 シューホーン型AFOの使い方
  1)シューホーン ブレースの名称は?
  2)シューホーン型AFOに含まれるもの
  3)シューホーン型AFOの特徴
  4)シューホーン型AFOの撓みと適応病態(原則)
  5)シューホーン ブレースのトリミングによる撓みの違いと適応
  6)シューホーン ブレースの初期背屈角度の違いによる適応
  7)シューホーン型AFOのチェックアウト
13 ダブルフレキシブルAFOの使い方
  1)ダブルフレキシブルAFOの種類
  2)ダブルフレキシブルAFOの特徴
  3)背屈設定角度からみたSaga plastic AFOの適応
  4)足関節筋力に応じたSaga plastic AFOの処方
14 コンベンショナルAFOの使い方(調節式足継手付きAFOを含む)
  1)コンベンショナルAFOの特徴
  2)足継手付きAFOの分類
  3)脳卒中に使われる調節式足継手の機能分類
  4)調節式足継手付きAFOの調節法(原則)
15 リハビリテーション室常備の訓練用下肢装具
  1)意義
  2)必要な機能
  3)訓練用下肢装具の問題点
  4)種類(著者の施設での例)
16 脳卒中の長下肢装具(KAFO)
  1)脳卒中のKAFOの種類
  2)KAFOの膝継手
  3)KAFOの足継手
  4)脳卒中下肢装具の足部
17 脳卒中の股装具(HO)
  1)望ましい股継手の機能
  2)組立式股装具の特徴
18 脳卒中の膝装具(KO)
  1)膝装具の適応
  2)訓練用膝装具
  3)組立式膝装具
19 すぐ装着できる下肢装具
  1)リハ室に常備されている訓練用下肢装具
  2)既製品の下肢装具
  3)組立式下肢装具
  4)即席下肢装具
20 脳卒中のAFO歩行で見られる問題点と対処法
21 脳卒中片麻痺に合併しやすい障害への装具による対策
  1)下垂足
  2)尖足
  3)内反足
  4)膝折れ
  5)膝屈曲拘縮
  6)反張膝
  7)鉤爪趾(claw toe)など
  8)痙縮(筋緊張緩和装具)
  9)ボツリヌス療法と下肢装具
  10)感覚障害
22 脳卒中で臥床中に生じる足関節の廃用症候群予防の工夫
23 AFOの装着に関して問題が生じた症例の紹介と解決法
24 脳卒中歩行訓練と装具の選定・適応に関する理学療法士の質問
 (6病院139名,165問より)
  1)装具治療開始時の問題
  2)足継手付きAFOとプラスチック一体型AFO
  3)プラスチックAFO
  4)装具の屋内と屋外使用の問題
  5)AFOの選択について
  6)長下肢装具(KAFO)の問題
  7)装具歩行での異常,合併症
  8)装具の除去について
  9)維持期の装具
  10)その他
25 各AFOおよび足継手の機能
  1 ウォークオン シリーズ
  2 ウルトラ セーフ ステップAFO
  3 愛媛大学式プラスチックAFO
  4 大川原式AFO
  5 大牟田式AFO
  6 オクラホマ足継手
  7 オルソレン ドロップフット ブレース
  8 オルトップAFO
  9 キャンバー足継手
  10 ギャフニー足継手,フレクサーストラップ付きAFO
  11 クレビスフィア アンクルジョイント
  12 ゲイトソリューション,ゲイトソリューション デザイン
  13 シューホーンブレース
  14 ジレット足継手,ジレット背屈補助足継手
  15 セレクト足継手
  16 ダイナミックAFO
  17 ダイナミックウォーク
  18 タマラック足継手,タマラック背屈補助足継手
  19 トーオフ短下肢装具,イプシロン短下肢装具,ブルーロッカー短下肢装具
  20 トレラック クリア製短下肢装具,ファイナー短下肢装具,HFG短下肢装具
  21 ドリーム ブレース,トルク調整型ドリーム ブレース2
  22 ニューラビットⅠ型
  23 福井大学医学部式プラスチックAFO
  24 フットアップブレース
  25 フット サスペンダー
  26 プロフッター
  27 ヘミスパイラルAFO
  28 メリディアン足継手
  29 ユニバーサル アンクル ジョイント
  30 湯之児式AFO
  31 リーストラップおよび類似装具
  32 両側金属支柱付きAFO(コンベンショナルAFO)
  33 ワイヤー支柱式AFO
  34 APS-AFO,RAPS
  35 C.C.AD 足継手付きAFO
  36 CEPA
  37 DACS AFO
  38 FAJO
  39 KU-half AFO,KU-half AFO革紐付き
  40 KU-half AFOゴムバンド付き,KU-half AFO二方向補助
  41 MRダンパ搭載 短下肢装具
  42 PDC足継手,PDA足継手
  43 Saga plastic AFO
  44 TIRR AFO
  45 UDフレックスAFO
  46 UGC AFO
  47 WING FORM AFO(Aタイプ,Bタイプ)

索引

Column
・下肢装具関係の用語について
・病態からはリジッドAFOが適応と考えられたが,フレキシブルAFOのほうがよかった例
・パソコンでベストなAFOを選択できれば?

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下肢装具を熟知した先生方による「頼れる一冊」
書評者: 高嶋 孝倫 (長野保健医療大教授・義肢装具学)
 本書は脳卒中片麻痺者の下肢装具について,その全てを網羅した名著であると思う。著者である渡邉英夫先生(佐賀医科大学名誉教授)はリハビリテーションの分野では高名な先生であり,装具についても造詣が深く,ご自身の開発による装具の数々は障害のある多くの方々を支えてきた。

 私は本書を初版のポケット版から愛読させていただいており,今回は版を重ねてカラー印刷となり,著者に平山史朗先生(社会保険大牟田天領病院),藤崎拡憲先生(熊本託麻台リハビリテーション病院)の理学療法士2名が加わっての登場である。図・表を中心とした直感的にわかりやすい記述という方針は貫かれているが,内容面ではより一層の充実がみられる。

 本書の特徴の一つとしては,現在,数多くの種類がある下肢装具がほぼ全て網羅されているという点であろう。多岐にわたる短下肢装具・足継手群については,実に47種類が収載され,カラー写真などに加えて,ポイントをついたわかりやすい解説がなされている。そしてさらに,改版ごとに新しい装具が追加され,販売中止などによって主流ではなくなった装具は除かれてリニューアルされている。現状にマッチした情報が網羅されていることにより,臨床現場で装具を処方する医師,歩行訓練を行うセラピストはもとより,製作・適合を担当する義肢装具士,さらにはこれらを学ぶ初学者の人たちにとっても有益な情報源と考えられる。

 脳卒中の下肢装具について,最も重要と言える「病態に対応した装具の選択法」については,この文言が本書の副題であることからも推察される通り,チャートなどを利用したわかりやすい記述でまとめられている。私が愛読するポケットサイズの初版ではチャートのみであった部分などが,A5判の第2版からは解説が加えられ,第3版ではより詳しくなった。さらに,装具の選択については,理論に加えて実際にはどのような装具が使用されているのかが気になる所であるが,139人の理学療法士に対するアンケートから56問のQ&Aがまとめられ,脳卒中の下肢装具に関連する人たちが日頃抱いておられる多くの疑問が解消されることが期待される。独自の手法で実施された統計値が示されている点も興味深い。また,新たに臥床中に生じる,尖足,内反足などの廃用症候群に対する予防器具についても解説されている。

 本書を一言で表すとしたら,帯に印刷されている「達人に学ぶベストフィッティング」であろう。脳卒中のリハビリテーションにおいて,装具を使用した歩行訓練,そして多々ある下肢装具の全てを熟知した先生方による「頼れる一冊」である。
オールカラーになり,さらに臨床に沿った内容に
書評者: 長倉 裕二 (熊本保健科学大教授・理学療法学)
 『脳卒中治療ガイドライン2015』の歩行障害のリハビリテーションにおいて,「内反尖足がある患者に対して歩行の改善のために短下肢装具を用いることが勧められる(グレードB)」として推奨されている。また、「歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは,歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)」という推奨もあり,脳卒中のリハビリテーションにおいて歩行訓練は不可欠なものとなっている。さらに、理学療法士学会から出版されている『理学療法診療ガイドライン2011』において装具療法は推奨グレードA/エビデンスレベル2とされ,FIM得点の向上,歩行速度の向上やエネルギー消費の減少,転倒予防に効果があるとされている。いずれも推奨グレードが高いことから,脳卒中片麻痺の歩行再建やリハビリテーションの中で装具療法は大きな位置付けとなっていることがわかる。

 しかし装具療法の担い手となる理学療法士の卒前教育の中で,装具療法に関する内容は教科書を見る限り,昔から使用されている両側支柱型のダブルクレンザックタイプや後方支柱型靴べら式短下肢装具などがいまだ代表格として掲載され,比較的わかりやすく解説されているものの,新しい材料や部品など日々開発されている装具に関しては,臨床場面で試してみないとわからないというのが現状である。そしてこれらの情報が不十分なために,新しい装具作製に躊躇することもしばしばである。

 本書『脳卒中の下肢装具』はこれらの問題に対し,初版から第2版へと具体的な個々の装具を挙げ,その適応や機能,特徴などをわかりやすく解説してきた。今回の第3版は,これに加えさらに臨床に沿った内容となっている。そして今回,2名の理学療法士が著者となっていることにより,理学療法介入へより具体的な方法が提示され,装具選択の一助になることが期待される。

 第2版から変わったところでわかりやすいのはオールカラーになったことであり,これによって装具そのものがイメージしやすくなった。この分野においては言葉で装具を表現されるよりも画像そのものを見たほうがよりわかりやすく,臨床場面では片麻痺患者に写真を提示できることによって,装具装着のイメージや生活の場面でのイメージも付きやすくなると考える。また新しく開発され,臨床での利用価値も高い装具も多く紹介されている。このように日々変わっていく装具材料や部品,機能などを新しくしていくことで多様化する片麻痺患者のニーズにも応えられるものだと考える。

 そして今回,理学療法士に対するアンケート調査を基にしたQ&Aである第24章「脳卒中歩行訓練と装具の選定・適応に関する理学療法士の質問」はガイドラインなどで用いられるクリニカルクエスチョンに対応するもので,特に臨床における問題に対する具体的な対応策や考え方などを知ることができる。理学療法介入場面では患者への装具作製前の装着による利点や問題点を説明する道具として,装具装着時に起こるさまざまな問題に対する解決の糸口となるであろう。

 初版ではCDを添付することも検討されていたようであるが,できれば装着時の画像に加えて動画などで説明が加わるとさらに利用価値が高まるものと考え,今後に期待したい。

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