膝MRI 第3版

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わが国の膝MRIの第一人者による定番テキストの改訂第3版。整形関係のホットトピックである関節軟骨の画像診断について、臨床応用されつつある各種の軟骨撮像法を紹介するほか、一般内科医にも興味深い関節リウマチを新たに収載した。また症例の蓄積とMRIの高性能化に伴い、全体的により典型的、より鮮明な画像への差し替えを行い、臨床上の有益性がさらに増した。
新津 守
発行 2018年07月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-03631-3
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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第3版の序 Preface to the 3rd edition

 2002年に初版,2009年に第2版を出版した本書も,ようやく第3版出版の運びとなった.第2版はお陰様で好評を得,多くの部数を販売し,英語版,中国語版も刊行できた.
 今回の追加・改訂点は
・解剖図をはじめ,3Tの画像を大幅に取り入れた.
・各疾患の解説,図も大幅に増やした.
・新たな疾患の紹介としては,下記を追加した.
  軟骨の撮像方法(第2章)
  半腱様筋腱損傷(第5章)
  膝窩筋腱損傷(第6章)
  AIMM(第7章)
  FOPE(第9章)
  軟骨損傷(第10章)
  TKA(第10章)
  関節リウマチ(RA)(第11章)
  Morel-Lavallée lesion(第12章)
・また,第5章MCLを広く「内側支持組織」として,鵞足や半膜様筋腱などをこちらに移した.さらに第6章LCLも同様に外側支持組織とし拡張した.

 今回も多くの方々から症例のご紹介やご助言をいただいた.
 池田耕太郎先生,江原茂先生,大原敏之先生,奥村宏康先生,金森章浩先生,小橋由紋子先生,佐志隆士先生,佐藤公一先生,杉田直樹先生,関矢一郎先生,田崎篤先生,立花陽明先生,仲田房蔵先生,野崎太希先生,村瀬研一先生,村松俊樹先生,本杉直哉先生,柳下和慶先生(五十音順).
 ここに改めてお礼申し上げます.
 本書出版にあたり今回も医学書院・大橋尚彦氏,多淵大樹氏に大変お世話になった.
 私ごとで恐縮だが,第2版出版のあと,多くの出来事があった.2010年,当時高校生だった息子(光と充)を残して妻・由紀子が天国に旅立ってしまった.2011年,大震災直後,私は首都大学東京から現在の埼玉医科大学に転任,その後,初版のときからお世話になった福林徹先生は早稲田大学,斎田幸久先生は聖路加国際病院をそれぞれご退官で新天地へ移られた.私の最高のパートナーである池田耕太郎先生はいちはら病院院長になられ,ご多忙にもかかわらず,いつもサポートいただいている.2017年,縁あって理英子を妻に迎え,新たな命,ゆり子を授かった.息子2人も社会人(医師と教師)になった.思い起こせば私の人生の節目には,必ずこの『膝MRI』が登場する気がする.私のライフワークとして,これからも末永くお付き合いいただければ嬉しいです.

 2018年5月 奥武蔵丘陵の新緑を眺めながら
 新津 守

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第1章 膝の解剖
 1-1 矢状断画像
 1-2 冠状断画像
 1-3 横断画像

第2章 MRI撮像法
 2-1 膝の固定方法:膝をコイル内で曲げる
 2-2 矢状断像の設定
 2-3 T1強調とfast spin echo法を用いたプロトン強調画像
 2-4 Magic angle effect
 2-5 In-phase法,out-of-phase法
 2-6 横断画像の有用性
 2-7 ACLに沿った斜冠状断像
 2-8 脂肪抑制法
 2-9 金属アーチファクトについて
 2-10 軟骨の撮像方法

第3章 前十字靱帯
 3-1 解剖
 3-2 健常前十字靱帯のMRI所見
 3-3 前十字靱帯断裂の特徴
 3-4 前十字靱帯完全断裂
 3-5 診断が難しい前十字靱帯部分断裂
 3-6 前十字靱帯急性断裂
 3-7 前十字靱帯急性断裂に伴う断片による伸展障害
 3-8 前十字靱帯陳旧性断裂
 3-9 前十字靱帯の変性
 3-10 前十字靱帯断裂の二次的所見
 3-11 脛骨顆間隆起骨折
 3-12 前十字靱帯再建術
 3-13 再建靱帯のMRI所見
 3-14 再建靱帯の再断裂と合併症
 3-15 膝蓋下脂肪体の関節鏡後の変化
 3-16 断裂前十字靱帯の保存療法

第4章 後十字靱帯
 4-1 解剖
 4-2 後十字靱帯断裂
 4-3 後十字靱帯断裂のMRI所見

第5章 内側側副靱帯を含む内側支持組織
 5-1 解剖
 5-2 内側側副靱帯断裂
 5-3 鵞足と鵞足包炎,膝内側の滑液包
 5-4 半膜様筋腱
 5-5 Stieda陰影(Pellegrini-Stieda病)

第6章 外側側副靱帯を含む外側支持組織
 6-1 解剖
 6-2 外側側副靱帯断裂
 6-3 腓骨頭裂離骨折と大腿二頭筋損傷
 6-4 Segond骨折
 6-5 Gerdy結節裂離骨折
 6-6 Iliotibial band friction syndrome(腸脛靱帯炎)
 6-7 腸脛靱帯包と膝外側の滑液包
 6-8 膝窩筋腱損傷

第7章 半月板
 7-1 解剖
 7-2 内側半月板と外側半月板
 7-3 半月板のMRI描出
 7-4 半月板断裂
 7-5 バケツ柄断裂
 7-6 高齢者の半月板病変
 7-7 半月板辺縁部断裂と半月板関節包分離
 7-8 円板状半月
 7-9 半月板石灰化/半月板小骨/ガス発生
 7-10 半月板術後のMRI所見
 7-11 半月板病変のピットフォール

第8章 骨折と脱臼,筋損傷
 8-1 脛骨高原骨折
 8-2 膝蓋骨骨折
 8-3 膝蓋骨脱臼(反復性/外傷性)
 8-4 Tangential osteochondral fracture(膝蓋骨脱臼による骨軟骨損傷)
 8-5 膝蓋骨スリーブ骨折
 8-6 離断性骨軟骨損傷
 8-7 外傷性膝関節血症
 8-8 ストレス骨折,疲労骨折
 8-9 Bone bruise(骨挫傷)
 8-10 筋腱損傷

第9章 若年者の膝
 9-1 大腿骨遠位皮質骨不整
 9-2 Femoral condyle irregularity 大腿骨顆部不整
 9-3 Focal Periphyseal Edema(FOPE) 傍骨端線部限局性骨髄浮腫
 9-4 有痛性分裂膝蓋骨
 9-5 膝蓋骨背側(骨化)欠損
 9-6 Osgood-Schlatter病
 9-7 Sinding-Larsen-Johansson病
 9-8 膝蓋腱炎,ジャンパー膝
 9-9 Blount病
 9-10 先天性前十字靱帯欠損症

第10章 軟骨損傷と変性・壊死
 10-1 軟骨損傷
 10-2 変形性関節症
 10-3 人工膝関節形成術
 10-4 特発性骨壊死,軟骨下脆弱性骨折
 10-5 骨髄の再転換

第11章 滑膜病変と脂肪体,タナ障害
 11-1 関節リウマチ
 11-2 腱滑膜巨細胞腫(色素性絨毛結節性滑膜炎)
 11-3 滑膜骨軟骨腫症
 11-4 滑膜血管腫
 11-5 樹枝状脂肪腫
 11-6 Hoffa症候群
 11-7 アミロイド関節症
 11-8 滑膜ヒダ(タナ)障害
  11-8A 膝蓋上ヒダ
  11-8B 内側滑膜ヒダ
  11-8C 膝蓋下ヒダ

第12章 膝内外の液体貯留腔
 12-1 関節内ガングリオン
 12-2 半月板嚢胞
 12-3 膝窩嚢胞(ベーカー嚢胞)
 12-4 後方関節包
 12-5 滑液包と滑液包炎
  12-5A 膝蓋前滑液包
  12-5B 浅膝蓋下滑液包
  12-5C 深膝蓋下滑液包
  12-5D 脛骨前滑液包
  12-5E Morel-Lavallée lesion
  12-5F Prepatellar fibrosis
 12-6 膝関節周囲のガングリオン

索引
 欧文索引
 和文索引

コラム一覧
 短パン,検査着について
 マーカーの活用を
 T2強調とT2強調画像
 積極的に患者さんの診察を
 MTC(magnetization transfer contrast)法,MT効果
 3Tの利点と注意事項
 本書に用いた大半の症例の撮像条件
 前十字靱帯断裂の受傷機転
 知っておくべき膝の徒手検査(1)
 セッティングの重要性
 Pseudoligamentを呈する陳旧性前十字靱帯断裂
 前十字靱帯断裂における二次的所見
 前十字靱帯再建術の適応
 Cyclopsとは
 トップアスリートと一般人
 知っておくべき膝の徒手検査(2)
 膝MRIのレポートは整形外科医とのキャッチボールである
 外国人の名前のついた疾患
 可能な限り単純X線写真の参照を
 膝内障(internal derangement)とは
 これでいいのか膝のMRI
 半月板内部の高信号
 半月板内部の高信号のgradingについて
 混沌とする半月板断裂の用語
 知っておくべき膝の徒手検査(3)
 内側支帯とMPFL
 放射線科医にとっての膝外傷の画像診断
 膝蓋骨は人体最大の種子骨である
 「脆弱性骨折」と「不全骨折」
 膝靱帯損傷による骨挫傷の好発部位
 裂離骨折と剥離骨折
 T1,T2からプロトン,T2
 成長期の膝に特有な障害
 幼児の膝MRI
 変形性関節症のMRIの適応について
 膝MRI検査で化粧はどうする?
 膝蓋下脂肪体(Hoffa’s fat pad,infrapatellar fat pad:iFP)について
 ガングリオンと滑液包
 闇夜のカラス?
 膝は「内側顆,外側顆」,足関節は「内果,外果」

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質の高い画像がさらに増え,新たな章も加わった改訂版
書評者: 江原 茂 (岩手医大教授・放射線医学)
 関節のMRIについて長年にわたって研究・教育の先頭に立たれてきた新津守先生のご著書である『膝MRI』の第3版が上梓された。われわれの本棚で活躍しているこの書籍の初版が出されたのが2002年であるが,その当時から16年の長いお付き合いになる。

 その初版は今でもわれわれの読影室の本棚に置いてあるが,2002年当時には膝のみならず関節のMRIを対象としたまとまった教科書はなく,十分な質量の画像と簡潔な記述により日常診療や教育に簡便に使える教材は少なく,英語の教科書が1,2冊程度存在するだけだった。新津先生は持ち前の研究熱心さを発揮され,簡潔ながらも十分な記述の初版を仕上げられ,それは幅広く迎えられた。さらに2009年には内容を拡充した第2版を出され,そして今回の第3版はそれから9年が経ち,さらに拡充された内容になっている。ページ数では初版に倍する300ページ超となり,さらに相変わらずの質の高い豊富な画像と簡潔だが要点をおさえた記述から,従来の読者にも新しい読者にも期待を裏切らない内容をそろえている。

 MRIの技術はこの10年ほどの間にも着実に進歩し,3T装置の大幅な増加により高解像,高コントラストの画像が増え,骨・関節,特に膝関節の画像診断の非侵襲的で有利な診断技術として確立し,診療や教育の場面での高磁場装置の画像が多く使われるようになってきている。今回の改訂の大きな特徴としては,先の版と同様かあるいはそれ以上に質の高いMRI画像が増えた点が挙げられる。さらに今回追加された内容の大きな点としては,関節軟骨描出の技術的側面とリウマチ疾患の章が加わったことであり,整形外科領域にとどまらず,リウマチ疾患の診断からさらにはMRIの技術的側面に至る各領域を含めた内容になっている。また人工膝関節置換後のような技術的に難しい問題にも言及されているが,さらには最近の話題であるSegond骨折に関係したanterolateral ligamentと名付けられた靱帯,Hoffa病と呼ばれる定義の十分でない疾患群,AIMM(内側半月板の前十字靱帯への付着)やFOPE(傍骨端線部限局性骨髄浮腫)といった新しい概念など,経験ある診断医でないと扱いにくい項目まで網羅している。

 本書は関節のMRIの学習を始めたばかりの初学者・研修医から膝のMRIにある程度の経験のある診断医,さらには整形外科医からリウマチ医まで,膝関節の診断に関心のある方に必要な内容が十分に盛り込まれている。膝MRIの第3版は先の版と同様に幅広い読者層に推薦できる内容を備えている。
3T MRI画像を主体とした「膝診断学書」
書評者: 宗田 大 (国立病院機構災害医療センター院長・整形外科)
 埼玉医大放射線科の新津守教授の『膝MRI』が9年ぶりに改訂され,第3版が出版された。私が昨年3月まで在籍した東医歯大整形外科の膝スポーツ班でMRIの依頼をする際には,可能な限り新津先生が読影を担当し,画像・画質の向上に日頃努力している東京駅近くのクリニックにオーダーすることにしていた。また軟骨や半月板の再生研究を中心に,軟骨の三次元画像や種々の軟骨描写法の研究も共同で進めている。先生は常に膝MRIの画像情報の進歩を自覚的に担っていらっしゃる。

 昨今駅前の画像センターが数多く生まれ,確かにそこそこの画像をてきぱきと撮像してくれる時代になった。機種の進歩もめざましくMRIでも3Tが標準的になり,撮像時間が短縮された。しかし画像そのものが進歩しているかどうかというと,以前よりも軟骨描写が改善していると感じるくらいである。画像診断の進歩もあまり感じない。一方,私たちが依頼しているMRIはスライス幅が細かく,画像が明瞭であり,標準的な画像の10倍くらい情報量が多い,と常日頃から感じている。

 今回の第3版は3T MRI画像を主体とした「膝診断学書」といえる。新たに軟骨の撮像法,前十字靱帯で移植腱として標準的に用いられ,またいわゆる肉離れも多い半腱様筋・腱の変化,膝後外側損傷の主体である膝窩筋・腱,軟骨損傷例の実際,人工膝関節後の意外なMRIの威力,近年早期の関節全体の診断に多く用いられるようになった関節リウマチなどが加わっている。膝の画像診断において筋,腱,膜,ヒダなどの軟部組織の変化や嚢胞性病変はMRI画像の独擅場である。これらのMRI診断を臨床診断にさらに役立てるためには,近年わが国において急速に発展し普及している運動器に対するエコー診断と組み合わせて用いるとよいと考える。1つの画像変化の解答例としてエコー診断をする前に,また照らし合わせてMRIを学んでおくべきだと思う。その点本書は膝を扱う多くの職種や専門を超えて,価値のある一冊である。

 まずMRI画像を眺めながら一通り所見を整理する。さらに先生の解説を読むとなるほどと納得する。個々の項目に加えられた数多くの文献は放射線医師においても,運動器MRI読影の専門性を高めるための入門書としてふさわしいかもしれない。私が日頃下している診断名とは異なるとらえ方をしていることも少なくない。MRI画像から変形性膝関節症や滑膜炎,筋腱付着部やその周囲の変化をもっと積極的に画像的診断名として提示してもよいのかもしれない。私たちが患者を通じてとらえる痛みやその原因とは次元が異なる,MRI撮像時のより機能的な診断がなされているといえる。

 MRIを中心とする画像診断の機器の発展に終わりはないと思う。痛みの治療や病態の把握により役立てるためには,画像と臨床所見の相互理解がもっと必要であろう。膝MRIを取り巻く世界の進歩にも限界はない。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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