標準組織学 各論 第5版

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読んで面白く、わかりやすい教科書として絶大な支持を得ている「標準組織学」。本書は、脈管系から神経系まで臓器ごとに解説した「各論」編の改訂第5版。吟味を重ねた美麗な組織写真やイラストを眺めるだけでもわくわくするビジュアルテキスト。今改訂では構成を見直し、よりわかりやすく22の章に細分化。各章の概要と関係を解説した「序章」も冒頭に追加し、人体の構造と機能に沿って「生きた組織学」を楽しく学べる。

『標準医学シリーズ 医学書院eテキスト版』は「基礎セット」「臨床セット」「基礎+臨床セット」のいずれかをお選びいただくセット商品です。
各セットは、該当する領域のタイトルをセットにしたもので、すべての標準シリーズがセットになっているわけではございません。
シリーズ 標準医学
原著 藤田 尚男 / 藤田 恒夫
改訂 岩永 敏彦 / 石村 和敬
発行 2017年01月判型:B5頁:568
ISBN 978-4-260-02404-4
定価 12,100円 (本体11,000円+税)
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第5版 序

 読んでおもしろい教科書にしたいという願望は,すべての教科書の著者がもち合わせているだろう。また事実だけを淡々と記述するのが教科書の本筋であるが,そうすれば医学書,とくに解剖学・形態学の教科書はどうしても無味乾燥になってしまう。本書の改訂にあたり,この本が初版からもち合わせていたストーリー性を大切にし,時に研究の歴史を説明し,驚きが伝わるような書き方にも注意を払った。また下等動物を含めた比較解剖学的知見も 読者の興味をひくだろう。しかし,力量不足のため,それらの効果が十分あらわれたかは自信がない。
 幸い,組織学書では美しさを求めることができる。各論第5版では,つとめて光顕レベルのカラー写真を増やした。眺めるだけでも楽しんでもらうことを念頭において作業を進め,この点では,かすかな自信がある。また,教科書以外に,組織学のアトラスを買わなければならないという医学生の要望に答えたつもりでもある。図が多くなったあらわれとして 図の総数が前版の684枚から728枚に増加した。
 その一方,記述や文献を整理したことで,本文部分のページ数が前版の577ページから532ページに減少している。また,総論第5版同様 この改訂版でも,紙質の低下を招くことなく,軽くて鉛筆で書き込みやすい紙を採用した。これらの工夫の結果,本体重量が500gも減少したことは歓迎されるであろう。加えて,製本技術も着実に進化しており,読者が読みやすいよう 見開きのよい製本方法を取り入れた。
 日本では,臨床実習にあてる時間増が求められ,その分 基礎医学科目の前倒しや短縮が行われている。臨床実習の前に行われるCBTやOSCEの準備に追われている学生も多いだろう。大学にいる間だけでも,基礎医学をじっくり学び,疑問をもち,文献を探索してもらいたいが,考えたり調べたりする時間が減る傾向にあるのは 残念なことである。本書が組織学の美しさに触れ,形態学に興味をもつ きっかけになることを切に希望する。
 本書の改訂にあたり,多くの方のご協力を仰いだ。また,新しい情報のご教示や貴重な資料・写真のご提供をいただいた。とくに 章単位でご協力いただいた方々のお名前を以下にあげさせていただく(敬称略)。
脈管系(下田 浩),リンパ性器官(木村俊介),脾臓(久住 聡),歯(原田英光),唾液腺(天野 修),呼吸器系(寺田正樹),泌尿器系(岩永ひろみ),下垂体(渡部 剛),松果体(加地 隆),男性生殖器(年森清隆),女性生殖器(小林純子),視覚器(須藤史子),平衡聴覚器(浦野正美),神経系(山崎美和子),神経系(今野幸太郎)
 模式図の改善では,総論第5版と同じく,北海道大学医学生 工藤ありさ君の労を忘れることはできない。また,念校レベルの校正を担当してくれた医学生の山村みつ江君にも感謝したい。
 最後に,改訂作業全体を統括し 励ましていただいた医学書院・医学書籍編集部の中 嘉子女史と すべての作業をわれわれと共同で進めていただいた制作部の富岡信貴氏には,こころから感謝申し上げたい。

 2016年9月
 岩永 敏彦
 石村 和敬

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序章 各論の構成
1章 脈管系
 毛細血管
 動脈
 静脈
 動静脈吻合
 心臓
 リンパ管
2章 リンパ性器官
 リンパ浸潤とクリプトパッチ
 リンパ小節
 リンパ節
 扁桃
 胸腺
3章 脾臓と骨髄
 脾臓
 骨髄
4章 口腔と歯
 口腔
 歯
 唾液腺
 咽頭
5章 食道と胃腸
 食道
 胃
 小腸
 大腸
6章 肝臓と膵臓
 肝臓
 膵臓
7章 呼吸器系
 鼻腔と副鼻腔
 咽頭
 喉頭
 気管
 肺
8章 泌尿器系
 腎臓
 腎盤と尿管
 膀胱
 尿道
9章 胃腸膵内分泌系
 内分泌系の概要
 胃腸膵(GEP)内分泌系
 消化管の内分泌
 ランゲルハンス島(膵島)
10章 下垂体と松果体
 下垂体
 松果体
11章 甲状腺と上皮小体
 甲状腺
 上皮小体(副甲状腺)
12章 副腎とパラガングリオン
 副腎
 パラガングリオン
13章 男性生殖器
 精巣
 精路とその付属腺
 陰茎
14章 女性生殖器
 卵巣
 卵管
 子宮
 胎盤と臍帯
 腟
 外陰部
15章 皮膚
 表皮
 真皮
 皮下組織
 角質器
 皮膚の腺
 皮膚の脈管と神経
16章 視覚器
 眼球線維膜
 眼球血管膜
 眼球神経膜
 眼球の内容物
 眼球の血管と神経
 眼球付属器(副眼器)
17章 平衡聴覚器
 外耳
 中耳
 内耳
18章 味覚器と嗅覚器
 味覚器
 嗅覚器
19章 大脳
 終脳(大脳半球)
 間脳
20章 脳幹と小脳
 中脳
 橋
 延髄
 小脳
21章 脊髄
22章 末梢神経,髄膜,脳室
 末梢神経系
 髄膜と脳室

和文索引
欧文索引
人名索引

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ナラティブな組織学の魅力
書評者: 藤本 豊士 (名大大学院教授・分子細胞学)
 「藤田・藤田の組織学」という名で親しまれてきた名著『標準組織学 各論』の第5版が,装いも新たにして出版された。原著者であるお二人の藤田先生の薫陶を受けられた岩永敏彦先生(北大教授)と,石村和敬先生(徳島大名誉教授)の手になる労作である。

 組織学は人体を構成する臓器や組織の構造を知るために,主に光学顕微鏡を使って,さまざまな細胞がどのように配置されているかを調べ,臓器や組織の生理機能を支える構造を学ぶ学問である。当然のことながら,組織学がカバーする範囲は人体の隅々にまで及び,含まれる情報量は膨大なものになる。多くの科目が詰め込まれている医学部・歯学部の6年の学部教育課程の中で,組織学をどのように学んだらよいか?世の中に出回っている教科書のスタンスは,2つに分かれるようである。

 一つはできるだけ分量を切り詰め,ぎりぎり必要な事項だけ記述するという方針で書かれた本である。この種類の教科書の記載は事実の列挙に限りなく近く,どうしても無味乾燥なものになってしまう。既に身につけた知識を確認,整理するには効率的かもしれないが,初学者が読んで組織学を理解するためにはあまり適当とは言えない。

 一方,『標準組織学』では,細胞たちが織りなす物語(narrative)として組織学が語られる。このような記載を無駄と思う人もあるかもしれない。しかし組織学に限らず,初めての内容を学び,頭の中に知識を定着させるためには,物語として語られるほうがずっと有効である。ここで「有効」という意味は,何かの知識が教授のジョークと一緒に思い出されるというような類いのことだけを言っている訳ではない。教科書に記載されている内容は,数学の定理のように未来永劫変わらない真理ばかりではない。もちろん現時点では正しいと信じられている事柄ではあるが,それぞれの確からしさには少しずつ程度の違いがある。物語にはそのニュアンスを伝える力があり,それによって読者はより正しい全体像の理解に到達することができる。細胞の物語を読み解いてきた研究者たちについての記載も,その一助になるはずである。

 『標準組織学』の魅力として見逃せないのは,挿入図の質の高さである。組織学観察の基本であるヘマトキシリン-エオジン染色はもちろん,走査電子顕微鏡や蛍光抗体染色など,掲載されている写真がどれも実に美しい。一部のアトラスに散見される毒々しい色合いの図版と異なり,『標準組織学』では顕微鏡を覗いて見える像が忠実に再現されている。さらに付け加えると手書きの模式図やスケッチが素晴らしい。パソコンの描画ソフトでは難しい微妙な表現は,細胞の物語の挿画にふさわしいものである。

 初版刊行以来,40年にわたって多くの人々に愛読されてきた『標準組織学 各論』に新たな命が吹き込まれ,次の世代に受け継がれたことを心から喜びたい。
『標準組織学』を手に,始めよう医学の勉強を!
書評者: 後藤 薫 (山形大教授・解剖学)
 『標準組織学 各論』の改訂第5版が7年ぶりに出版された。この本は,総論と合わせて執筆者の名前を冠した「藤田・藤田の組織学」として知られており,1976年の第1版から40年以上の長きにわたり,医学生や研究者に読まれてきた日本オリジナルの教科書である。当時医学生だった私自身は第2版との出合いに始まり,改訂版を購入し続け現在,第5版を手にして今日に至る。書棚に並ぶ「藤田・藤田の組織学」を眺めていると,学生時代に奥深い組織学の知識と格闘した日々,そして教鞭を執り始めた頃に何度も読み込んだ日々が,懐かしく思い出される。

 さてその内容であるが,初版から本書の根底をなす理念,すなわち“それぞれの事象の単なる記載だけではなく,それにまつわる歴史や物語を入れて,どのようにしてその構造が明らかにされてきたか,将来どのような問題が残っているかをおのずと感じてもらえるような楽しい本にしたい”“わが国の研究業績を紹介し,できるだけそれに立脚して議論を進めたい”という熱い思いが伝わってくる。改訂を経るにつれ図版が刷新され新たな模式図が付加されてきたが,とりわけ第5版では,免疫染色を含めた光学顕微鏡のカラー写真がさらに増えた点と,ソフトカバーになり,見開きが良くなって紙面に鉛筆で簡単に書き込みができるようになった点が,大きな特徴である。

 ぜひ一度手に取って,ページをめくっていただきたい。美しい写真やわかりやすい模式図を拾っていくと,本書が組織学アトラスとしての機能も兼ね備えている点にお気づきになるであろう。そして,心臓刺激伝導系の房室結節(田原の結節)を発見した田原 淳博士や,インスリンの抽出に成功したバンチング博士と助手の医学生ベスト,アドレナリンを単離した高峰譲吉博士と上中啓三博士,そして世界初のクローンマウス作製に成功した柳町隆造博士のリアルな写真と共に紹介されるエピソードは,まさに「長い間に人類が生み出してきた文化や学問を背景にして,現在の医学が存在する」(「第2版序」より)ことを我々に知らしめるのである。医学は長年にわたる観察結果や臨床知見の蓄積に基づくものであり,個々の理論の構築や病因の解明,対処法に科学的にアプローチする学問である。しからば,知識の整理や蓄積と同様,日本そして世界各国の先人の業績とその物語を学ぶことが,未来の創造につながるものと信じる。医学生に,そして我々研究者,教育者に必要なものは,まさにこのような視点ではないだろうか。

 欧米の教科書には,『グレイ解剖学』や『セシル内科学』『ハリソン内科学』など,著者名で知られる医学書が数多く出版されており,これらの名著は時空を超えて受け継がれているのが特徴だ。『グレイ解剖学』に至っては,ヘンリー・グレイが1858年に初版を世に送り出してから,150年以上も次の世代の執筆者によって継続して改訂が行われ,現在第41版を数えている。『標準組織学 各論』は,藤田恒夫先生と藤田尚男先生が用意周到な準備期間を経て上梓された組織学の教科書であるが,その改訂は現在,岩永敏彦先生と石村和敬先生に引き継がれている。本書が医学生や若い研究者によって,50年そして100年と読み継がれる未来を夢見ることは楽しいものである。

 医学生諸君,『標準組織学』を日々の教本として基礎医学の習得を開始し,『グレイ解剖学』を人体構造の辞書代わりに,そして『セシル内科学』あるいは『ハリソン内科学』を書棚に並べ,さあ始めよう,解剖学の勉強を,いや医学の勉強を!

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